2011年10月4日 議会運営委員会
教育委員の任命に関する質疑大要


・県教育委員の人選の基準について

【斉藤議員】
 人事案件は、知事の提案となっているが、選考のプロセスはどうなっているか。

【宮舘副知事】
 教育委員会制度の意義とされている、政治性的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映といった視点を踏まえ、候補者の活動歴や年齢構成、教育委員としての活動意欲等により判断している。
 選考のプロセスだが、具体的な任命にあたっては、教育にかかるさまざまな課題を踏まえ、教育に知見を有する人材の中から広く適任者を選び、教育委員会制度の意義、任命候補者の活動歴や現在の委員の年齢構成、教育委員としての活動意欲、さらには教育委員会の意向等を総合的に勘案した上で、知事がその責任のもと個別に判断をさせていただいている。

【斉藤議員】
 教育委員の人選の基準というのは法的に根拠はどうなっているか。いま副知事が答えられた政治的中立性の確保とか継続性安定性の確保というのは、県独自の基準ということになるか。

【教育長】
 教育委員の選任の要件だが、いわゆる資格の問題だと思う。地教行法と地方自治法にそれぞれ規定されており、地教行法においては副知事が申し上げた通り、当該地方公共団体の被選挙権を有する者である必要があること、人格が高潔で教育・文化に関し知見を有するものであること、さらに一方で地教行法で欠格事項も定められており、破産者で復権を得ない者、禁固以上の刑に処された者、それぞれ地教行法と地方自治法で個別の規定があり、ただいま副知事が答弁申し上げたのは、それぞれ両方に基づいての教育委員として備えるべき、もしくは必要な条件を申し述べたところである。

【斉藤議員】
 厳密に聞くが、県の教育委員の選任基準については明文化されているのか。

【教育長】
 地教行法、地方自治法に定めているもの以上に、県において独自のそれを補完する、もしくは上回る基準を定めているということはない。

【斉藤議員】
 副知事が答弁するべきである。教育委員の人事は知事提案なので。基準は教育委員会ではなく知事のところになくてはいけない。私は、地方教育行政の組織および運営に関する法律の第4条に規定されている以外法的根拠はないと思う。
 それから、前回も聞いたが、プロセスについてこうなっている。「任命候補者の活動歴、年齢構成、性別、地域バランスを勘案して、教育委員としての活動意欲、教育委員会の意向等を総合的に勘案し知事が議会に提案する」と。教育委員会の意向というのは、毎回必ず聞かれるものか。

【宮舘副知事】
 その都度意向を確認している。

【斉藤議員】
 教育委員会の意向と違った場合があると思うが、どのように総合的に勘案されるのか。

【宮舘副知事】
 その場合は、知事から教育委員会に知事の意向も申し上げて調整をさせていただく場合もあると思う。

【斉藤議員】
 そうすると、教育委員会の意向に反して、それと違って知事が教育委員を任命するケースもあったと。これ自身は今回のケースということではないと思うが、慎重に扱われるべき問題だと指摘しておきたい。


・提案する教育委員について

【斉藤議員】
 この4年間の八重樫教育委員の役割を具体的に知事としてどのように評価して今回提案したのか。

【宮舘副知事】
 八重樫委員は、平成19年の10月に教育委員に就任して以来、長年にわたる教員としての経験をはじめ、県の教育委員会事務局職員、そして安代町教育長および八幡平市の教育委員会教育委員長など、教育行政に携わった経験で培われた知見をいかんなく発揮し、学力向上や競技力の向上、そして平泉の世界遺産登録をはじめとしたさまざまな県政の教育課題について、教育委員会議における広範な議論を深める上で常に主導的な役割を果たしてきたものと評価している。

【斉藤議員】
 経歴からいくと、あまりにも県の教育委員会に関わりすぎた経歴になっているのではないか。いわば、内輪の登用と言われても仕方ないのではないか。教育実践家としては、八重樫教育委員は素晴らしい実績・成果もある方だと思うが、教育委員の人事にあっては、教育委員会の出身者ということはどのように検討されたのか。

【宮舘副知事】
 ただ今申し上げたように、鋭意さまざまな教育課題に積極果敢に取り組んでいただき、学習定着度調査や教員の授業力の向上、児童・生徒の学力向上、各種団体の組織強化やスーパーキッズの発育育成事業といった協議スポーツの振興にも積極的に取り組んでいただいている。また、平泉の世界遺産登録は長年の県の課題だったが、この実現に向けてさまざまな調整をしていただいたということで、これらを高く評価し再任をお願いしたいということであるのでご理解いただきたい。

【斉藤議員】
 地方教育行政の組織および運営に関する法律の第4条では、委員というのは「人格が高潔で教育・学術および文化に関し識見を有する者のうちから任命する」となっている。
 今回の八重樫委員に関わらず、教育委員6名全体の構成としては、岩手県を代表するような人格が高潔で教育・学術および文化に関し識見を有する者というのはもっと広範にいるのではないか。教育委員全体の構成というのを、こういう第4条1項の精神で、全体の構成を考えるべきではないか。前回の教育委員人事の場合にもその指摘をしたが、それはどう受け止められているか。

【宮舘副知事】
 教育委員会は6人の委員で構成されており、菅野教育長を除く5人の委員の方々それぞれ、今お話あったような要件を備えている方と我々は認識している。

【斉藤議員】
 そこで認識が少し違っているので、県内にはさまざまな識見をもった方々が多数いると思うので、もっと視野を広げた人選というのもあるのではないかと指摘しておきたい。
 それから八重樫教育委員長について、実は今年の2月24日に一般質問で「国連子どもの権利委員会の日本政府に対する勧告について」質問したが、文科省べったりの答弁だった。これについてどのように認識しているか。

【教育長】
 答弁作成の経緯を若干申し上げさせていただくと、国連子どもの権利委員会の勧告については、我が国政府に対する勧告である。したがい、これに対しての我が国政府の見解というものも示されている。勧告そのものが政府に対する勧告なので、答弁にあたっては、まず政府の対応についてご報告申し上げた後、ただ一方でこの勧告の骨子である「過度に競争主義的な環境に教育を置いてはならない」ということについて、本県の教育においては、知徳体の調和のとれた人間をつくるということで、地域・家庭と一緒になった学校づくりを行っている。したがい、教育委員会の認識としては、本県の教育においては過度に競争主義的な環境にはないのではないかと考えているという教育委員会の見解を委員長を通じて申し上げさせていただいたところである。

【斉藤議員】
 国連子どもの権利委員会から3度にわたり同じ趣旨の勧告が出ている。いわば、日本の教育についてそういう指摘があったということをどのように本当に受け止めているか。

【教育長】
 国連からそのような勧告があったということについては事実として承知している。したがい、我々としては、岩手の教育にあたっては、過度の競争主義的な環境にならないようにこれからも努力していきたいと思っているし、また今回の震災津波にあたって、子どもたちが示してくれた思いやり、命を大事にする行動ということを考えると、本県の教育は子どもたちには少なくともそういった状況にはないと。そして我々としても、今回の震災津波を教訓として、岩手の復興教育を進めていく中で、他者とつながり他人の命を大切にする、自らの命を大切にするということを今後とも重視して教育に取り組んでいきたい。

【斉藤議員】
 教育長は国連子どもの権利委員会の勧告を受け止めていないということか。

【教育長】
 先ほど述べた通り、そういったことにならないように本県の教育について取り組んでいかなければならないと思っている。

【斉藤議員】
 東日本大震災津波が今岩手の教育にとっても最大の課題だが、八重樫氏は教育委員としては、この災害にどう対応され、どういう積極的な提案・活動をされたのか。

【教育長】
 東日本大震災津波発生直後から県教委にずっと詰めていた。また、これまで6回にわたり被災した全ての市町村教委・学校を訪問し、それぞれの教育委員会の方々と意見交換させていただいたり、それぞれの学校の校長や教職員を励ますという活動を続けており、そういった経験から、岩手の全体の復興にあたっては、とにかくまず子どもたちをという思いを自ら強く申されており、そういった観点に立って教育行政を委員長として指導していただいているものと考えている。