2011年10月5日 東日本大震災津波復興特別委員会
防潮堤の高さ等に対する質疑大要
・防潮堤の高さについて
【斉藤委員】
最初の特別委員会ということで、総論、全体の説明を受けたが、進捗状況の報告になると、中身が無味乾燥で、実際に大変な被害を受けて大変な困難な状況がある中で、具体的に何がどう改善しているのか。そういう中身が分かる報告にしていただきたい。これから復興に取り組むときに、こんな事業着手では、着手しているのは当たり前の話で、していなかったら大変である。そういう意味でいけばこういう報告では分からない。
1つは安全の確保について。県政調査会の際に、防潮堤の高さについて報告があった。これはそれなりの専門的な検討を踏まえて、それぞれの市町村と調整した結果だが、残念ながら住民の議論がない。防潮堤の高さというのは、まちづくりに直結するだけに、一定の根拠をもって、提案はするが、住民の間で大いに議論されるべき問題だと思う。もう市町村と調整して結論的な提起の仕方は正しくないのではないか。
そしてもう1つ、多重防災型のまちづくりというのが最大の原則である。その際、今回の大震災というのは1000年に一回とか数百年に一回の津波である。こういう大震災津波からは、命を守るという考え方である。そして百数十年に一回程度の津波については財産・住宅も守るという考え方だが、全体として地元では、今度の大震災からどう住宅を守れるのかという思いが強い。そうすると、多重防災型のまちづくりという原則と、実際に今市町村が考えようとしている考え方とギャップがあるのではないか。これは、津波浸水域をどれだけ活用できるかに関わる問題なので、冷静な議論というのが必要だと思うが、安全の確保の問題では一番重要な、それだけに慎重で冷静な住民の間での議論というのが必要だと思うが、県の考え方、市町村の受け止めについて、津波浸水域の活用をどう考えているかをお聞きしたい。
【河川課総括課長】
県政調査会で内容については説明があったが、岩手県津波防災技術専門委員会を開催し、技術的なことについては専門家の皆さんにさまざまご議論いただいた。また、その中には、まちづくりの専門家の方にも入っていただき、土地利用の面、あるいは市町村の復興関係の皆さんにも入っていただき、高さについての議論や土地利用の件を踏まえ、防潮堤の高さを公表してきた。
ただ、委員ご指摘の住民意見ということになると、必ずしも発災から1ヶ月2ヶ月というのは、とてもそういう状況にはなかったというところだが、県としては高さを決めるにあたっては、可能な限り地元自治体からの意見交換をしながら、可能な限り地元意見として反映してきたと考えている。
【平井理事兼復興局副局長】
津波浸水域の活用だが、多重防災型まちづくりの考え方としては、今回の津波で浸水した、例えば住宅地を住宅地として使わずに農地だとか公園にしあまり集わない、住まない土地利用をするという意思決定がなされる可能性があると考えている。いずれにしても、それは市町村主体のまちづくりの中で、住民合意をしっかりととった上で、進めていくべきものと考えており、そのための技術的な助言は県として惜しまないでやっていきたい。
【斉藤委員】
この間県政調査会で公表されて、市町村でこれが公表されて市民の議論にはまだなっていない。あの時点で公表されたというのが公表の最初だと言っていいと思う。そういう意味でいくと、防潮堤の高さでシミュレーションがなされている。今度の大震災規模の場合はどこまで浸水するか。しかし今度の大震災津波というのは、ある意味でいけば命を守るという前提なので、このシミュレーションだけではなく、これまで百数十年という規模での津波の場合にはどういう浸水域なのかという二重のシミュレーションが必要で、浸水域の活用といった場合には、百数十年に一回という規模でそういうこともきちんと示す必要があるのではないか。私が聞く限りでは、大震災津波で、今度の防潮堤でどこまで浸水するかというのが大きな基準になっているような気がするが、そういう二重三重のシミュレーションというのはやっているのか。
そして、津波浸水域はそういう防潮堤の高さでここまで活用できるということを県はきちんと説明しているのか。
【河川課総括課長】
シミュレーションだが、発生頻度の高い津波に対して防潮堤を考えるというところが国から示されたところであるので、例えば陸前高田の場合は公表値が12.5mという数値を示していただいた。その場合に、例えば3月11日の津波が来た場合には、どのような浸水域になるかという風な範囲も合わせて地元の市役所には示させていただいている。
【斉藤委員】
そうすると、百数十年に一回程度の津波には防潮堤では基本的には防げるという設定だと。そうすると、多重防災型のまちづくりといった場合には、基本的には浸水域もかなり活用できるとなるのではないか。建築規制は必要なくなるということになるのではないか。そこの考え方を確認したい。
【平井理事兼復興局副局長】
百数十年に一回程度の津波が防潮堤でカットされるということだが、今回の津波も含めてそれを超える津波というのも想定しなければいけないというのが基本的な考え方である。したがい、防潮堤の内側、街の側でも浸水域を想定しなくてはいけないと。そのうち深いところについては何らかの土地利用の制限が必要になる場合があると考えている。
【斉藤委員】
おそらくそういう津波浸水域をどう活用するかはこれ自身が、それぞれの市町村の住民合意に基づいて設定されるべきと思う。
・湾港防波堤の検証について
【斉藤委員】
防潮堤に関わって今日の新聞で驚いたのは、釜石と大船渡の湾港防波堤を再建するという話になっている。湾港防波堤は、釜石で30年間1200億円をかけて造ったばかりの防波堤があれだけ破壊されたというときに、もっと慎重な検証をすべきではないか。
県政調査会で簡単な資料をいただいたが、これはあくまでもシミュレーションである。津波の被害が実際にあるわけなので、実証もできるはずである。本当にシミュレーションのように効果を発揮したのかどうかというのは検証すべきである。具体的には、第何波で防波堤は破壊されたのか。第一波で破壊されたとしたら第二波の方が大きかったのだから、津波の速度は遅れたかもしれないがほとんど津波の被害規模というのは変わらなかったのではないか。湾港防波堤というのは、いつ、どういう形で破壊されたのか。本当にどういう形で効果を発揮したのか、しなかったのか。釜石で1200億円なので、大船渡で再建するとしても数百億円かかる。こういう湾港防波堤については、時間をかけてやる必要があるのではないか。釜石湾港防波堤については、あそこに湾港防波堤があるために、両石だとかそっちの方に防波堤で遮られた波が行くと。そういうシミュレーションも事前にあったと。だからプラスマイナスがある。そういうこともしっかり湾港防波堤の場合には検証すべきだと思うが、県自身も国任せにしないで検証に加わるべきだと思うがいかがか。
【県土整備企画室企画課長】
湾港防波堤の大震災津波に対する津波防災施設としての役割の評価について、中間とりまとめの段階では、まず1つは、防波堤により津波高を低減したと。それから港内の水位の上昇を遅延させて避難時間を確保した。3つ目には、流速を弱め破壊力を低減させる効果があったということで評価がなされている。
具体的には、今年3月に、独立行政法人港湾空港技術研究所が釜石港の湾港防波堤についてシミュレーションにより検証しているが、湾央で津波高を約4割、流速を約5割低減させるとともに、津波の第一波が防波堤を越えるまでの時間については、防波堤がない場合と比較して6分間遅延したとされている。そういうことも受けて、国では湾港防波堤について釜石港および大船渡港については、5年以内の復旧ということで整備を進めるということで取り組んでいる。
【斉藤委員】
津波の第何波で湾港防波堤は破壊されたのか。これはきわめて重要な問題である。釜石は1200億円かけた湾港防波堤である。津波を防ぐというのは、湾港防波堤もあるし防潮堤もある。そういう意味でいくと、これだけお金をかけた、これは岩手県独自のやり方である。それがこういう被害を受けたときに、もっと皆さんも含めて県民も分かる検証をしないと費用対効果も含めて、簡単に言えないと思うが、第何波でやられたのか。大船渡は形もなくなっているのではないか。
【河川課総括課長】
湾港防波堤の破壊メカニズムについては、概略的な報告はなされているが、いま高さをどうするのか、復旧方法をどうするのかという最終的な詰めを行っている。それの調整を県とやっているので、第何波というのもその時点で明確になると考えている。
【斉藤委員】
ぜひ全貌を明らかにして、それなりの専門的な検証はされていると思うが、どれだけ本当の効果があったのか。
大船渡の場合は、今まで閉鎖型だったので、湾がそれで汚染されたと。浚渫の問題がずっとあって、少なくない漁民の方には、湾港防波堤はいらないという声も強くある。そういう地域住民の声も踏まえて、時間をかけて再建の方向を決めるべきではないか。
・仮設住宅の居住環境について
【斉藤委員】
厚労省が応急仮設住宅の居住環境アンケート結果を発表して新聞報道もされた。その資料をいただいたが、例えば、住環境改善の状況を見ると、風除室の設置は岩手県で28.9%、段差の解消は1.2%となっている。きわめて仮設住宅の生活環境が劣悪だと調査結果では出ているが、この調査結果を踏まえて、仮設住宅はこれから冬場を迎える。生活環境改善というのはどう検討されているのか。すでに盛岡ではファンヒーターを民間住宅を借り上げるところには設置するとか、遠野ではコタツもすでに配備されているとか一定の取り組みをされているところはあるが、そういうことも含めた、今度のアンケートを踏まえた対応はどう検討しているか。
【復興局生活再建課総括課長】
厚労省の調査については、8月1日現在での調査ということだが、それを受けて厚労省からは9月28日付で、仮設住宅の冬場対策等の促進についての通知が行われてきている。
これまでの取り組みだが、壁・天井・床下への断熱材等の追加整備・補強については9月までに完了ということである。窓の二重サッシ化、二層ガラス化についても9月完了ということで取り組んできている。玄関先の風除室の整備については、引き戸タイプについては、10月までに完了する予定であり、ドアタイプについても今後検討していきたい。
暖房器具の関係だが、NGO等の皆様方から仮設住宅への暖房器具の提供がだいぶ進んできている。現段階で提供を承っているのは、9市町村の仮設住宅であり、例えば反射式ストーブについては、洋野町・野田村・田野畑村・岩泉町・宮古市・山田町に提供いただいており、石油ファンヒーターについては大槌町から、コタツについては遠野市、ペレットストーブについては住田町という風にうかがっている。その他の久慈市・釜石市・大船渡市・陸前高田市における暖房機器の提供については、県も入りNGOの皆様方と調整している。
【斉藤委員】
断熱材や二重サッシは9月中に完了と。風除室については、ドアタイプも検討すると。ドアタイプはできないという話になっていたが、ドアタイプができないというわけにはいかない。これから雪が降って、雪が直接入口に吹き付けるようでは耐えられない。このドアタイプはきちんとやるということで受け止めていいのか。
暖房器具については、NGOの支援というのがあったが、これは本当にもうストーブやコタツが必要な時期である。これも基本的にNGOの支援で対応できるのか。できないところはどうするのか。今回の調査結果は緻密で、調査だけはしているので、この調査が生きるようなきめ細かな対策を求めたいと思うがいかがか。
【県土整備企画室企画課長】
ドアタイプの整備だが、引き戸方式については風除室で対応しているが、ドアタイプのものについては、ある程度機密性や断熱性があるため、他の工事を優先したところである。今回の厚労省の方針を受けて、全戸実施する方針としており、追加分について11月完了を想定している。
【斉藤委員】
調査そのものはかなりきめ細かなものなので、こういうところに調査を生かした対策をしていただきたい。
交通手段がないという切実な課題もあるので、雇用対策等も含めて、コミュニティバスやいろんなことを含めた冬場の対応を要望し、命に関わる課題なので、是非万全の対策をしていただきたい。