2011年10月18日 9月定例県議会・本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)


【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。東日本大震災津波の一日も早い復興を求め、知事ならびに関係部局長に質問します。
 大震災から7ヶ月が経ちました。復旧・復興の目標は、すべての被災者が安心してその地で住み続けられるようにすることです。ところが居住環境が劣悪で、仕事と収入がないために人々が住みなれた土地を離れざるを得ない被災者も生まれています。私はこの間、陸前高田市から宮古市まで6自治体を訪問して被災者や自治体当局、漁協、商工会議所、県立病院などの方々と懇談を行ってきました。
 今何よりも急がれるのは、安心できる住環境と仕事、収入の確保の道を提供することであるということを痛感しています。大震災の復旧・復興の諸課題について知事に質問します。


1.被災者の生活と生業の再建の問題について

・二重債務の解消は喫緊の課題

 地震、津波で店舗や工場などが全壊、流失、半壊などした被災事業者などが、これから新たな借金をして事業を再開しても震災前の借金が足かせになって再スタートできない―いわゆる二重債務の解消は喫緊の課題です。本県でも今月の3日、被災事業者などの相談を受ける「岩手県産業復興相談センター」が開設され、今月中にも被災事業者の既存債務の買取などを行う「岩手県産業復興機構」が設立される予定となっています。しかし、「産業復興相談センターで『再生可能と判断した事業者』についての支援である」と報道されています。選別と切捨てではなく、再生の意欲のあるすべての事業者の再生支援となるような制度と運用にすべきと考えますが知事の答弁を求めます。

【達増知事】
 10月7日に設立された産業復興相談センターにおいては、中小企業をはじめ農林漁業者等の幅広い事業者を対象に、二重債務の相談を受け付けることとしており、今後設立予定の産業復興機構では、震災以前は健全な経営を続けてきたにも関わらず、今回の大震災がもとでやむなく過大な債務を負って経営に支障をきたし、かつ再生意欲の高い事業者を支援するため、金融機関の新規融資により今後の再生が見込まれる場合の既存債務を買い取ることとしているところである。
 県としては、国や地元金融機関等との連携のもと立ち上がったこの制度が、適正に運用され、一人でも多くの事業者方々が救われるよう期待している。


・被災事業者への支援について

【高田議員】
 第二に、被災した事業者が再出発するための直接支援です。
 帝国データーバンクの調査では、沿岸部の市町村に本社がある1224社のうち537社(43.8%)が営業不能状態になっています。多くの漁業者も農業者も、再開には程遠い状態です。被災事業者への対策をしっかりやらなければ、廃業や失業者がうまれ、地域社会を復興する土台そのものが崩壊してしまうだけに、従来の枠を超えた個々の事業者への直接支援が課題となっています。国の中小企業等復旧・復興支援補助(グループ補助4分の3)は、被災した事業者からの希望が多く、岩手県は事業費の3分の1に圧縮して実施したのではないでしょうか。希望するすべての事業者に4分の3補助となるよう、国に対して大幅な拡充を要求すべきです。岩手県が事業化した中小企業被災者資産修繕事業は画期的な制度で、被災地からも「大英断だ」と歓迎されています。しかし、県は4月に事業化を具体化しながら、その徹底が遅れ、10月7日現在の補助金交付決定はわずか3自治体・85件・1億2800万円となっています。被災事業者が早期に事業再開できるよう次の2点の改善を求めるものです。
 第1に、100万円以上となっている修繕費補助の対象基準を引き下げること。第2に内陸の被災した事業者へも対応するよう改善すべきです。

【商工労働観光部長】
 被災資産修繕費補助だが、第一の補助対象基準については、限られた予算の中でできるだけ多くの効果をあげるため事業再開に要する費用がある程度大きい企業を対象とすることとし、現地からの被災の状況の聞き取りなどを踏まえて100万円以上と決めた。
 第二の補助対象市町村については、今般の津波災害の甚大さに鑑み、沿岸市町村に限定して実施するとしたものである。本事業の予算化については、他の県単事業を振り返るなど、できる限りの財源の確保に努めたところであるが、本事業に活用できる予算は限定されており、これ以上の要件の変更は難しいと考えており、現在の補助制度をできる限り有効に活用して企業再建に努めていきたい。


・雇用・失業対策について

【高田議員】
 次に、被災者、失業者の実情に応じた多面的な分野での雇用・失業対策が重要です。そのためにもまず、雇用関係の実態把握です。今回の大震災による企業倒産と失業者数、緊急雇用創出事業による再就職状況についてお伺いします。 
 緊急雇用創出事業は、低賃金で短期雇用が多く被災者のニーズにかみ合っていません。コミュニティーバスのきめ細かな運行、集会所への人的配置など被災地での復旧・復興事業を地元の雇用につなげる必要があります。少なくとも1年以上の雇用期間にするよう見直すべきです。
 被災地では、壊滅的な被害を受けた事業所が再開し、労働者を再雇用する動きが出ています。これは積極的なことであり、こうした企業への支援が必要です。しかし、被災者雇用開発助成金は、一旦解雇した従業員を再雇用した場合には助成の対象にはならず、国に改善を求めるべきです。また、県独自でもこうした企業に助成すべきです。

【商工労働観光部長】
 今回の大震災による企業倒産の状況は、民間信用調査会社によると、4月から9月までに震災関連で倒産した件数は21件とされている。
 失業者数については、震災の影響により被災3県で調査は行われていないが、目安としては、岩手労働局が発表している雇用保険受給資格決定者数であり、3月12日から9月25日までの沿岸地域の決定者数は11156件となっている。なお、緊急雇用対策基金を活用した震災対応事業での雇用者数は、10月7日時点では4523名となっている。
 緊急雇用創出事業の雇用期間についてだが、雇用期間については、震災後の国の実施要領が改正され、被災した事業者を雇用する場合は、複数回の更新が認められ、現在1年以上の雇用が可能となっている。
 被災者雇用開発助成金だが、被災企業等から再度雇用した従業員についても助成対象にしてほしいとの話があったことから、県としても国にたいし制度の見直しを要望してきた。現在国では、第三次補正において被災企業の雇用に対する助成措置を検討していると聞いていることから、その動向を今後注視していきたい。


・水産業の課題について

【高田議員】
 次に漁業・水産業についてです。
 今度の大震災津波で居住地域とともに生産基盤である漁船、漁港、養殖施設、冷蔵庫や水産加工場、流通施設などが一挙に奪われ、働く場が失われました。生産、加工、流通で水産業の再建を図る必要があります。
 漁港施設は、基礎的な生産手段である漁船の係留場所であると同時に、漁協が運営する産地市場などの水揚げ施設や製氷、冷蔵施設、加工施設などが立地する水産物流通や加工業の基点となる基礎的な施設です。本県では、111の漁港中108の漁港が甚大な影響を受けました。養殖業が主体の本県ではすべての漁港の再建は急務です。被害を受けた108の漁港の復旧状況と見通しはどうなっているでしょうか。
 また、水産関連施設とあわせて復旧が急がれます。大船渡では、製氷施設の復旧が遅れ、サンマの受け入れができない漁協が製氷施設の建設を急いでいます。水産加工施設の復旧状況をお示しください。
 漁船は、漁船漁業とともに養殖漁業や採貝藻漁業にとっても欠かすことのできない生産手段です。流失、損壊した漁船の被害状況と復旧の具体的な見通しはどうなっているでしょうか。

【農林水産部長】
 漁港の復旧状況と見通しだが、今般の災害発生後、航路・舶地に浮遊・堆積しているがれき等の撤去を86漁港で実施するとともに、魚市場のある大船渡や釜石漁港等においては、水産物の陸揚げに支障のないよう岸壁の嵩上げ等の応急工事を進めており、現在は被害を受けた108漁港が利用可能となっている。今後においては、県の復興計画に沿って順次防波堤や岸壁などの本格的な復旧工事に着手していく。
 漁協、水産加工組合等の所有する水産加工施設の復旧については、被災した施設の修繕や電気・機械設備などの器機類の整備、鮮度保持容器やフォークリフト等の特殊作業の整備に加え、現在魚市場や氷を供給する製氷・貯氷施設11カ所の復旧工事を進めており、うち3カ所が復旧・稼働している。また、主としてサケやワカメの加工を行う施設16ヶ所の復旧を盛漁期に間に合うよう整備を進めているところである。
 漁船の被害状況と復旧見通しについては、漁船の被害隻数は9月末現在で13000隻余となっており、震災前の漁船登録隻数の約9割に達している。漁船の確保については、共同利用漁船等復旧支援対策事業により復旧に取り組んでおり、今回の補正予算に盛り込んだものも合わせて約6800隻を整備することとしている。


・住宅再建への支援について

【高田議員】
 次に、仮設住宅の改善と住宅の確保対策にいて質問します。
 県が仮設住宅に入居している住民を対象にした実施したアンケートでは、「持ち家の新たな購入」と「自宅の現在地での回収・再建」をあわせた持ち家希望は57%と一番強い要求になっています。現行の被災者生活再建支援法では、全壊でも300万円の支援にとどまっており、これでは住まいの再建はなかなか進みません。限度額を500万円に引き上げることを国に求めるべきです。県としても住宅再建への補助をすべきと思いますが知事の答弁を求めます。
 今回の大震災での住宅被害は内陸部においても大きな被害となりました。一関市では全壊456棟、大規模半壊371棟、半壊779棟、一部損壊4149棟(合計5755棟)63億円の被害となり、3年前の岩手・宮城内陸地震の10倍となりました。大規模半壊以上は公的な住宅支援がありますが、半壊・一部損壊では公的支援がありません。一部損壊といっても、修繕に1000万円もかかるといわれ断念した被災者もいます。高齢者からは「生活で精一杯、銀行から融資受けても返せない」と修繕をしないで我慢して生活する被災者もいます。
 第1に、被災者生活再建支援法の支援対象を半壊・一部損壊にも拡大するよう国に求めるとともに県独自でも助成すべきです。
 一関市では、私道や二次被害の恐れのある宅地への独自の支援を行っていますが、復旧がなかなか進みません。私道や宅地の再建を促進するためにも県としても支援すべきです。
 第2に、復興公営住宅は希望するすべての被災者に提供できるようにすべきです。また、被災者や地域の要望を踏まえた建設計画にするべきです。その際、戸建てや長屋方式、一定期間経過した後に払い下げなど、コミュニティを重視し、地域の条件や被災者の実情にあった多様な公営住宅にすべきです。そして建設にあたっては、地元産材や地元業者を活用するなど公営住宅が地域経済の活性化に結びつくようにすべきだと考えますが、復興公営住宅についての考え方についてお聞きします。

【達増知事】
 現行の被災者生活再建支援法では、全壊の場合は、被災者生活再建支援金の上限が300万円となっているなど、被災者の住宅の再建にはより一層の支援が望ましいことから、機会あるごとに国に対して支援金額の拡充等を要望している。
 県では、復興計画や10月5日に策定した「岩手県住宅復興の基本方針」において、くらしの再建を図るため、被災した住宅の改修や再建を行う被災者に対する支援策を充実することとしており、住宅ローンの利子補給などの負担軽減策について現在準備を進めている。
【復興局理事】
 被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金の支給対象については、全壊または大規模半壊した世帯に対して支給されているところである。県としては、被災者に対する生活支援を充実することが必要と考えていることから、住宅半壊世帯も対象とするなど、支給範囲を拡大するよう機会あるごとに国に対して要望している。被災住宅や宅地等再建に対する支援については、これらが早期に復旧できるよう県としても国の動向を見極めながら、支援を行う場合の事業内容等について検討を進めている。
【県土整備部長】
 被災者向けの公営住宅については、被災者に対するアンケート結果を踏まえ、先日公表した岩手県住宅復興の基本方針において、4000戸から5000戸を確保するということにし供給計画を定めたところである。基本方針においては、被災者のニーズや地域性を踏まえ、コミュニティに配慮することとしており、建設にあたっては一部に木造住宅を取り入れるなど、多様な公営住宅の供給を行っていく。一定期間経過後の払い下げについても、国の制度の動向を踏まえ、検討していく。
 また構造材および内装材などにおける県産材の積極的な活用に努めるとともに、地元でできる工事は地元に発注するなど、被災した地域へのできる限りの配慮を行いながら建設に取り組んでいく。


・仮設住宅の生活環境の改善について

【高田議員】
 第三に、仮設住宅の生活環境の改善です。
 本格的な冬を迎えようとしており被災者の実態に即して生活環境の改善が必要です。暖房器具の設置や風呂の追い炊き機能など寒さ対策やバリアフリー化など入居者の強い要求となっています。厚生労働省は、10月7日付けで遅まきながら暖房器具の設置も災害救助法の国庫補助の対象になると通知しました。暖房器具がすべての世帯に今月中に設置できるよう速やかな対応を求めます。暖房器具の設置はどうなっているでしょうか。
 仮設住宅の居住環境アンケートでは、買い物の利便性について「悪い」「ひどく悪い」があわせて52%、病院については45%が「不便だ」と回答しています。ある仮設診療所の医師からは「今日検査してまた明日来てくださいとは言えない」と話されました。これから冬を迎えるだけに、安心して通院、買い物ができる足の確保対策に取り組むべきです。実態と具体的対策をお聞きします。

【復興局理事】
 これまで県内の仮設住宅13984戸のうち、約6300戸45%においてNGO等の支援により、希望する世帯に石油ストーブ・ファンヒーターなどの暖房器具が設置されてきたところである。今般23年10月7日付で、応急仮設住宅における暖房器具の設置に要する経費について、災害救助法による国庫負担の対象となると通知されたところである。県としてはこの通知を受けて直ちに、10月11日付の通知で、暖房機具の設置にかかる事務を各市町村に委任し、各市町村の気象等の地域状況やそれぞれの応急仮設住宅の個別の事情を勘案して、各市町村において対応していただくよう要請している。それぞれの市町村においては、地域の実情に応じた暖房器具をできるだけ早く設置していただきたいと考えている。
【政策地域部長】
 仮設住宅入居者のための交通確保だが、国が行った仮設住宅の居住環境等に関するアンケート結果において、通院や買い物の利便性について「悪い」「ひどく悪い」と回答している世帯の割合が高くなっていることについては、同アンケートにおいて、当該世帯の主な移動手段が自家用車となっていることを踏まえ、医療施設や商店などの施設が仮設住宅団地から離れた場所になり、加えて近隣にバス路線がなかったり、バス路線があっても運行回数が少ないことなどがその1つの要因となっているものと考えている。
 仮設住宅団地へのバス運行については、現在路線バスの運行に加え、市町村において無料バスや患者輸送バスの運行などを行っているところだが、沿岸市町村等からの聞き取りや現地調査の結果、バス停留所までの距離や道路の状態などの事情により、現在の路線では対応できない仮設住宅団地が一部あることについては、県においても把握している。
 現在、該当市町村において、バス路線の見直しや、新たな路線の必要性について検討しているところだが、合わせて仮設住宅団地と医療施設や商店などを結ぶ路線の実証運行などを行う国の調査事業を導入し、ニーズ調査を行いながら、仮設住宅の交通を確保していくことについても検討しているものと承知している。
 今後県としては、地域の実情を踏まえたきめ細やかな対応ができるよう市町村と一体となり、バス事業者への要請を行うとともに、調査事業の導入にあたっては、市町村・交通事業者・有識者・国・県で構成する支援組織を設置し、必要な助言を行うなど市町村の取り組みを支援していくこととしている。


2.被災した医療機関の再建問題について

・被災した民間医療機関の再建支援について

【高田議員】
 次に、被災した民間医療機関の再建支援についてです。
 今回の大震災で民間の病院・診療所が被災しました。被災状況と再建状況はどうなっているのでしょうか。公立か民間か個人の診療所か歯科を問わず、すべて公共的な社会的役割を果たしてきました。住民の身近にあった病院、かかりつけ医は一番必要です。それが民間だから、政策医療になっていないから再建の支援はしないという政府の方針は血も涙もないものであり国に強く改善を求めるべきです。内陸部でも公立、民間ともに被害がありました。岩手県は独自の支援策を打ち出されたことは評価しますが津波被害のみです。内陸部でも地震で被害を受けた医療機関も休業している状態であり支援の対象とすべきです。

【保健福祉部長】
 県内の民間医療機関では、医科・歯科全体で311カ所が被災し、うち83ヶ所が全壊または大規模半壊の被害を受けたが、10月1日現在では、約9割にあたる275カ所の医療機関が保険診療を再開している。特に沿岸部は、一次医療を担う診療所も、津波により地域全体で大きな被害を受けていることから、県としては、まずは沿岸被災地域の医療機関の復旧を優先する必要があると考えており、地域医療再生臨時特例交付金を活用した被災診療所機能回復事業は、沿岸地域を対象に支援を行うこととしている。内陸部においては、地震により全壊または大規模半壊となった医療機関が4ヶ所あるが、うち国庫補助の対象とならない医療機関は2ヶ所あることから、国にたいし歯科を含む民間医療機関の補助対象の拡大について、数次にわたり要望を行っている。


・県立大東病院について

【高田議員】
 第3に、県立大東病院についてです。
 建築後40年近く経過した大東病院は、3病棟のうち2病棟が使用不能状態になっています。現在1病棟に検査機器を移設し外来対応を行っています。しかし、県南のリハビリ機能と入院機能が失われたままとなっています。県医療局は「耐震診断の結果が出て今後の対応を検討する」と地元住民に説明してきましたが、大震災から7ヶ月、耐震診断の結果が出てから2ヶ月近く経とうとしているにもかかわらず住民に何の説明もされていません。地域住民からは「診療所になるのではないか」という不安の声も広がっており、再建の具体化を明らかにすべきです。今後の対応についてお伺いします。

【医療局長】
 被災後においては、まず安全な場所での外来診療機能の確保を図るため、病院建物の改修工事を行い、10月11日に本館部分から増築棟へ外来診療機能を移転したところである。また改修工事と並行し、本館部分の耐震補強工事が可能かどうか調査してきた。先般、補強工事は困難との調査結果が出たことから、本館部分については使用できない状況となっている。このため、入院については引き続き近隣の千厩病院をはじめ、磐井病院など、両磐保健医療圏内の医療機関と協力して対応していくが、今後については、二次保健医療圏の中で地域の意見をうかがいつつ、地元一関市や医療関係者等々協議しながら検討していきたいと考えている。


・花泉診療所について

【高田議員】
 次に、花泉診療所についてうかがいます。
 花泉診療所は、地域住民の充分な議論と合意のない中で診療所化・無床化され、昨年の4月からは県立病院としてはじめて民間移管になりました。しかし、民間移管がされた直後から常勤医師が実質不在のままスタートしました。昨年7月に配置された常勤医師は9月までに辞職願を提出し不在になっています。入院患者は転院を迫られるなど深刻な事態です。こうした経過を知事は把握していますか。こうした事態に陥った原因と責任はどこにあるのですか。県はどのような対応をしているのでしょうか。知事の明快な答弁を求めるものです。

【達増知事】
 常勤医師が診療所を運営する医療法人に退職の申し出をしており、診療所においては、新たな常勤医師との引き継ぎが終了するまでの間、一時的に新規の入院患者の受け入れを控える等の対応をしていることについて、医療局から報告を受けている。
 医療局においては、新たな常勤医師との引き継ぎがスムーズに行われ、新たな入院患者の受け入れが早期に行われるよう法人に対して要請していると聞いている。


3.大震災からの復興への希望を奪うTPPについて
 
【高田議員】
 野田内閣は、11月のAPEC首脳会議にむけてTPP交渉への参加を決定しようとしています。TPPは関税を原則撤廃し農産物の輸入を完全に自由化するもので、日本の農林水産業に壊滅的な打撃を与え、国民への安定的な食糧供給と食の安全を土台から壊します。昨年岩手県は、農業生産額が1469億円減少し、米の生産は95%も減少するとTPP参加の影響を試算しました。東日本大震災津波で大きな被害を受けた東北3県の農林水産業にとってはさらに事態は深刻です。日本有数の米どころ、三陸の主要産業であるわかめ、昆布、サケ、マスなど水産業にも甚大な被害が及びます。被災地の基幹産業である農林水産業への打撃は、被災者の生活と生業再建の基盤を壊し復興への希望さえも奪ってしまうのではないでしょうか。同時に「非関税障壁」の撤廃で食の安全、医療、官公需、公共事業の発注、金融、保険労働など国民の生活や安全を守るルールと監視体制、中小企業を支援する制度などが大きく崩れる危険が大問題になっています。
 知事は今議会で「国民の合意が得られるまでしっかりと議論を重ね慎重に検討することが必要」と繰り返しています。本日の本会議では、「時期尚早」と一歩踏み込んだ答弁も行いました。しかし、来月にも政府が参加を決めよう、結論を出そうというときに、知事として踏み込んだ態度を明らかにすべきです。
 県内では、JA、建設業協会、消費者団体、労働組合など幅広い団体がTPP反対で15万人の反対署名も集めています。
 知事として明確に反対を表明し、国に対しTPP交渉参加に反対するよう具体的行動をとるべきではないでしょうか。

【達増知事】
 国においては、先ごろTPP交渉への参加問題に関する関係閣僚会合を開催したとの報道があったところだが、この問題については、東北市長会が国にたいし慎重な対応を求める要望を行うことを決定するなど、地方から慎重な検討を求める意見が示されていると承知している。
 TPPについては、我が国が地域主導の自立的な成長を実現する上で、関税撤廃がどのような効果を有するか、農林水産業に携わる生産者を含めた現場や地域の立場を十分に踏まえ、協定の内容そのものに関する根本的な検討・議論が行われるべきものと考えている。また、協定への参加については、地域の声も反映した国民の合意が得られるまでしっかりと議論を重ね、慎重に検討をすることが必要と考えており、現時点では協議の場への参加は時期尚早と考えているが、国の検討状況等を注視しながら必要に応じて国に対する提言などを行っていく必要があるものと考えている。


4.災害に強いまちづくりについて

・小中学校の耐震化について

【高田議員】
 災害に強いまちづくりの課題を県政の土台にすることが大事であり、以下県民要望を踏まえいくつかの課題について質問します。
 第1に、避難所にもなっている小中学校の耐震化の問題です。
 今回の大震災で避難所である小中学校などが大きな被害を受けました。県内の小中学校の耐震化率は73%であり、484棟が耐震補強されていません。学校は一日の大半を過ごす施設であり一刻も早い耐震化が求められています。耐震化が遅れている原因、県としての対応策をお伺いします。

【教育長】
 各市町村においては、小中学校施設の耐震化を計画的に進めているところであり、平成27年度末までには、484棟中378棟が耐震化される見込みである。
 小中学校施設の耐震化が早期に完了しない理由としては、厳しい財政状況や今後の学校建設計画との調整が主な要因とされている。県としては、児童・生徒の学びの場である学校施設の耐震化を促進するため、毎年市町村教育委員会職員を対象とした研修会を開催しているとともに、さまざまな機会をとらえて市町村にたいし助言・要請を行っている。
 なお、国に対しては、市町村の厳しい財政状況を踏まえ、耐震化事業に対する国庫補助率の引き上げ等の財政支援措置を拡充するよう引き続き要望していく。


・住宅リフォーム助成事業について

【高田議員】
 第2に、住宅リフォーム助成事業です。
 景気悪化による新築住宅に対する購買意欲が減退しており、中小業者の仕事おこしと地域経済の波及効果につながるこの事業を実施する自治体が広がっています。特にもこの間の二度にわたる大きな地震を経験しているだけに、地震災害に強い住宅の建設と改修・修繕は住民の関心と要求です。「生業」と「くらし」を早急に再生することが岩手の復興の目指す目標であり、この事業の拡充は復興の大きな力になるものです。県内でも広がるこの事業を県として実施すれば、岩手県全体の経済波及効果は抜群です。すでに県議会でも実施を求める請願が採択されており、知事に決断を求めるものです。
 住宅リフォーム助成事業を実施している県内状況、事業費、補助金額など県内自治体の実績も示してください。

【達増知事】
 住宅リフォームは、住宅の質の向上や地域経済の活性化を図っていく上で重要なものと考えている。住宅リフォーム助成制度は、県内26市町村で実施されており、平成23年度の8月までの実績は、補助額約5億6000万円、対象事業費は約59億円となっている。
 震災後は、災害救助法に基づく住宅の応急修理制度の活用などにより、被災住宅の改修需要が相当増加していることから、リフォーム助成制度については、市町村における取り組み状況や震災需要の動向なども踏まえながら、引き続き具体的な制度設計を検討している。

・消防職員の充足率向上について

【高田議員】
 第3に、消防職員の充足率を高めることです。消防職員・消防団が今回の大震災で被災者の救助、救援に大きな役割を果たしました。しかし、職員の人員削減の中で県内の消防職員の充足率は66%、全国平均75.9%からしても大幅に少なく国の基準と比べても1000人不足しています。災害に強いまちづくりを進める中心的なマンパワーであるだけに充足率を高める計画的な増員に取り組むべきです。
 
【総務部長】
 災害に強いまちづくりは、常備消防における職員数や装備等の消防力のみならず、消防団の充実強化や自主防災組織の活性化、建造物の配置や構造など地域におけるさまざまな要因を考慮し、それぞれに応じた適切な方策を組み合わせることにより実現に近づくものと認識している。
 消防職員数については、このような地域のさまざまな要因を踏まえながら、それぞれの市町村や組合において判断し、条例を設け配備している。県としては、このような市町村や組合の判断を受け止めつつ、消防力の充実・強化に資するよう機会をとらえて不断の対策の推進を働きかけていきたいと考えている。

 
5.原発災害から子どもの健康と県民の命守る課題について

・放射能汚染対策について

【高田議員】
 東京電力福島原発事故による大量かつ広範囲に広がった放射能汚染から県民と子どもたちの健康命守ることは県政の緊急重要課題です。ところが岩手県の復興基本計画には原発災害問題が位置づけられていません。なぜ復興計画にまとまった原発事故からの放射能汚染対策が位置づけられなかったのでしょうか。
 放射能汚染は県内でも広がっており、市町村が独自に実施した調査では、一関市4施設(地上50cm)、奥州市19施設、盛岡市17施設で1マイクロシーベルトを超えており除染が行われています。県内の放射能汚染の測定と除染状況についてお伺いします。
 放射能による健康被害には、「これ以下の被爆なら安全」という「しきい値」は存在しないというのが科学的知見であり、「外部被爆も内部被爆も少なければ少ないほどよい」という大原則に立った対策が求められると思います。次の3点について対策を求めます。
 第1に徹底した放射線量の測定・調査を行うべきです。
 妊婦と子どもを守るために、保育園や幼稚園、学校はもとより通学路や公園など子どもの近づく場所で測定調査を行うこと。すでに市町村で実施している地上地点での放射線量を県も行い、毎時1マイクロシーベルトを超えたところは直ちに除染すべきです。
 第2に、一関市内の幼児と児童4人から微量の放射性セシウムが尿検査で検出されていたことが明らかになりました。内部被爆が明らかになったのは県内では初めてです。知事は、内部被爆の現状を把握する健康調査を行うことを明らかにしています。その具体的な内容、今後のスケジュールなどについてお聞きします。
 第3に食品の暫定基準値は国際的に見て高すぎます。厳しい基準値に見直し、厳格な検査体制をとることが必要です。これは消費者の不安を取り除くを上でも生産者への風評被害を押さえる上でも大切です。検査機器を最大限に確保するとともに、学校給食の食材の検査機器を導入すべきです。
 原発の安全神話を義務教育の場で学ばせてきた教育のあり方も見直すべきです。実態はどうなっているか。教育長にお聞きします。

【保健福祉部長】
 放射線にかかる健康調査の具体的な内容等について。ご指摘の通り、一関市内の子どもから検出された放射性セシウムのレベルはきわめて低い値であり、福島県における調査結果と合わせ考えると、一関市を含む岩手県では、子どもの健康に影響を及ぼすレベルにはないと認識している。しかし、県民に広がる不安を払しょくするため、子どもの尿中セシウムにかかるサンプリング調査の実施に向け、調査対象者・サンプル数・実施時期等の具体的な内容について現在市町村の意向や専門家の意見をいただきながら検討を進めている。このように、現時点では関係機関との調整段階にあり、直ちに内容・スケジュール等をお示しできる状況にはないが、今後こうした検討を踏まえ、調査方法等をしっかりと設計した上で、お示しさせていただきたい。
【総務部長】
 県内の放射能汚染の測定と除染状況についてだが、県内においても地表付近の放射線量が比較的高い値を示す地域があるなど、放射能による影響が広がっている状況を踏まえ、原発放射線影響対策の基本方針や放射線量等低減に向けた取り組み方針を策定し、放射線の影響を受けやすいとされる子どもの健康を重視する観点から、学校等の施設を中心に、放射線量の測定および毎時1マイクロシーベルト以上の個所の除染等の低減措置を推進することとしている。
 放射線量の測定および低減措置について市町村においては、これまで1022施設で測定を行い、27施設で局所的に高い値が測定されたため、26施設について除染を実施し、残る1施設についても除染を実施する予定である。また、県が管理する施設については、これまで75施設で放射線量の測定を実施し、うち12施設について局所的に高い値が測定されたため、これまで2施設について除染を実施し、残る10施設についても今後すみやかに除染を実施することとしている。
 今後も県民の安全安心を確保するため、放射線量の測定等の迅速な情報提供に努め、市町村と連携を図りながら放射線量の低減措置を積極的に推進していく考えである。
 放射線量の測定調査の徹底だが、先ほど答弁した通り、県においては、市町村と連携し、子どもの健康を守る観点から、学校等の放射線量を測定し、毎時1マイクロシーベルト以上の個所については速やかに低減措置を講じているところである。この放射線量の測定や低減措置については、市町村の意見を踏まえ、県民の不安を払しょくする観点から、地表からの高さに関わらず、対象として除染しており、県が管理する施設においてもこの方法に準じているところである。
【復興局理事】
 復興計画における放射能汚染対策の位置づけだが、原発の放射線の影響対策については、復興基本計画において、防災のまちづくりなど関係する分野の復興に向けた具体的取り組みとして、原発事故への対応を位置付けたところである。
 具体的には、防災のまちづくりの分野に、原発事故にともなう放射線量の測定など、監視体制の充実・強化および放射性物質にかかる健康不安の解消など安全対策の推進、また水産業・農林業・商工業および観光業の各分野に放射性物質にかかる安全対策等、風評被害を払拭するための取り組みの推進を位置付けている。これらの記述については、放射能汚染対策が各産業等の分野の取り組みと密接に関係していることから、各分野の施策と一体的に記載すべきものと判断したものである。
【教育長】
 学校給食の食材の検査機器の導入等についてだが、県では、県産食材の安全確保方針等に基づき、安全な県産食材の供給に向けた取り組みを実施しているところであり、これらの取り組み等により学校給食の安全性の確保に努めていく。また、一関市や奥州市においては、食材を検査するための機器の導入を検討していると聞いているが、このような地域の実情に応じて、市町村が実施する取り組みについても支援していきたいと考えている。
 原発に関する教育の実施だが、義務教育段階においては、中学校の理科で「エネルギー資源」について学習する際、水力・火力発電とともに、原子力発電についても学習している。県内で使用している教科書は、その利点のみを強調するものではなく、課題等にも記述されており、各校においては、教科書の内容に沿って指導していると承知している。


・補償問題について

【高田議員】
 次に被害者への補償問題です。
 県内においても稲わらや牧草の利用禁止、枝肉価格の暴落など風評被害も出ており、全面賠償問題も待ったなしの緊急課題です。
 まず知事に伺いたいのは、政府が8月に示した「原子力損害賠償紛争審査会」の「中間指針」をどう評価しているかです。賠償の目安となる「中間指針」では、出荷制限など政府の指示が出された区域で線引きし、この区域以外でも、もっぱら指定された品目の被害と間接被害だけという限定的な内容です。しかも「中間指針」に示されていない損害は立証責任を求める内容です。これは「中間指針」は、「事故に起因して実際に起きた被害のすべてが原子力損害としての賠償の対象になるものではない」とするなど全面賠償を否定しています。「原発事故がなければ生じることのなかった損害についてすべて賠償する」という大原則で東京電力と政府に見直しを求めるべきです。
 第二に、畜産農家守るため従来にない対応を行い、東電に全面賠償を求めるべきです。66歳の肥育農家からこんな訴えが寄せられました。「BSEのときに800万円の借金をした。あと6年で借金がゼロになる、ゼロになったら離農し苦労をかけた女房と楽しい老後を過ごしたいと思っていたが、また借金することになり俺は死ぬまで働かなければならない」と話されました。夢や希望を奪った原発事故、このままでは離農者が広がりかねません。畜産県岩手の農業が存亡の危機になっているという姿勢で従来にない対策を行うことが必要ではないでしょうか。
 稲わらや牧草の一時保管を含めた処理費用などの負担は農家に負担させないこと、一刻も早い処理を行うことを国・県の責任で進めるべきです。 
 畜産農家は出荷停止解除されても経営は深刻です。枝肉価格の暴落は明らかに風評被害であり、東京電力の賠償待ちにならず、県が立替払いをしてでも畜産農家を守るという姿勢が必要ではないでしょうか。

【達増知事】
 原発事故により、県民生活へのさまざまな分野で影響が生じており、基本的に原発事故との因果関係が成り立つものについては、幅広く原因者である東京電力が賠償責任を負うべきである。
 「原子力損害賠償紛争審査会」の「中間指針」は、原発事故が収束していない中で、東電が賠償すべき損害を類型化することにより、被害者と東電との間における損害賠償に関する円滑な話し合いと合意形成に資することを狙いとして策定されたものであり、中間指針で対象とされなかったものについても損害賠償の対象となりえるものと認識している。
 原発事故による県民生活における損害については、県において市町村や関係機関と連携し、きめ細かな把握に努め、十分な損害賠償が得られるように支援していく。また、東電に対しては、これらの損害の賠償を行うことを強く求めるとともに、国に対しては、十分かつ迅速な損害賠償が行われるよう必要な措置を講じることを要望していく。
【農林水産部長】
 畜産農家への支援について。牧草・稲わらの処理については、埋却・焼却などに要する経費について全額を助成することとしており、一時保管の取り組みについても対象とするよう検討している。
 また、東電からの賠償金が支払われるまでの資金繰り対策として、出荷遅延にともなうかかり増し経費や販売代金相当額、さらに通常の販売額との差額などについて支援し、畜産農家の負担軽減をするよう努めている。
 さらに原発事故により生じた損害は、原因者である東電が賠償すべきものであることから、県としては東電に対して賠償金を早期かつ確実に支払うよう強く申し入れているところである。


・原発に対する知事の基本姿勢について

【高田議員】
 原発撤退の必要性は何よりも福島の事故の現実が示しています。今回の事故によって放出された放射性物質は、広範囲に及び土壌、水道水、農産物、牧草などに被害をもたらしました。放射能は一度外部に放出されると抑える手段はまったく存在せず、被害は将来にわたって危害を及ぼし地域社会の存在さえ危うくします。だからこそ福島県の復興の理念には「原子力に依存しない・・安心・安全で持続的に発展可能な社会づくり」を強く押し出す提言を出しました。同時に現在の原発技術は、本質的には未完成で「死の灰」を原子炉に閉じ込めておく手段も「使用済み核燃料」も後始末する方法もまったくない未完成の原発を使い続けており、このような危険性をもつ原発を世界有数の地震・津波国に集中立地することは危険極まりないことです。東京電力福島原発の事故を直視するなら、まず、原発に依存する政策から撤退し原発ゼロを目指す政治決断こそ必要であり、それを政府に迫っていくことです。
 原発事故によってエネルギー政策が問われているときに、知事演述には一言も触れられていません。知事の原発に対する見解を伺います。

【達増知事】
 原発事故により安全性への信頼は大きく損なわれたと認識している。本県はこれまでも、地域特性を生かした再生可能エネルギーの積極的な導入に取り組んできており、再生可能エネルギーの導入を復興の核の1つとして位置づけ、一層の推進に取り組んでいく考えである。
 原子力を含む国のエネルギー政策の在り方については、原発事故の速やかな事態の収束と検証を行いつつ、検証結果を含めた幅広い国民の議論に基づき、国において適切に判断されるべきものと考えている。


・自然エネルギーの本格導入にむけた取り組みについて

【高田議員】
 今度のもうひとつの教訓は、浪費型社会の見直しとともに自然エネルギーの本格導入にむけた取り組みが重要になっていることです。
 環境省の委託調査では、日本の自然エネルギーの資源量は、太陽光、中小水力、地熱、風力だけでも20億キロワット以上と推定され、原発54基分の40倍、日本の発電設備の電力供給能力の約10倍もあります。岩手県の自然エネルギーの資源量はどのぐらい存在しているのでしょうか。
 電力自給率160%のまち葛巻町は、年間200件もの視察が訪れる自然エネルギーの先進地です。葛巻町の経験を全県に広げる条件が岩手に存在しており、再生可能な自然エネルギーの本格的な取り組みを行うよう求めます。
 
【環境生活部長】
 本県の再生可能エネルギーの資源量は、平成23年3月の環境省の再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査に関する委託報告書によると、洋上風力を除く発電分野の全資源量のうち、現在の技術水準で利用可能な量として、出力ベースで2027万キロワットと推定されている。平成10年3月に策定した「岩手県新エネルギービジョン」においては、地理的諸条件など導入可能性を踏まえた、より現実的な開発可能量として、55万3000キロワットを平成22年度末の導入目標に掲げ取り組んできたところである。現在、再生可能エネルギーを取り巻く環境の変化を踏まえて、新たな導入目標について調査・検討を行っている。
 今後国に対して、再生可能エネルギー特別措置法における適切な買い取り価格、機関の設定や、買い取り事務の履行、電力系統への接続のための支援を働きかけるなど、太陽光や風力・地熱等の多様な再生可能エネルギーの導入が図られるよう努めていく。


≪再質問≫

・二重ローン、住宅ローン問題について

【高田議員】
 被災3県で「産業支援機構」が設立されるのは初めてであり、その意味でも岩手の取り組みが注目されています。意欲のある事業者を幅広く支援することが、復興を進めていく上で不可欠の課題だと思う。
 産業復興機構が買い取る対象債権、これは「再生可能性がある」と判断された事業者への支援となっている。知事は「多くの方々が利用できるように期待する」という話だったが、「再生可能性がある」と判断された事業者となると、本当にこれは一部の事業者だけになってしまうのではないかという不安もある。私も被災地に行ったときに、一部の優良企業しか救えないのではないかという声も出された。この再生可能というのは何を指すのか。またどういう方々がこれを判断するのか。
 岩手県が返済猶予となっている債権額はいくらか。そして今度の産業支援機構の出資総額もうかがいたい。
 住宅ローンの債務問題だが、住宅ローンについては、私的整理だということで、今回は産業支援機構の中には含まれない対応になっている。岩手県の復興計画を見ると、住宅ローンについては、二重債務解消に向けた支援を「緊急的な取り組み」だと位置づけている。県として、住宅の二重ローン対策については、どのような対応をしようとしているのか。
 
【達増知事】
 事業者の二重ローン問題について。震災以前は健全な経営を続けてきたにも関わらず、大震災により過大な債務を負い、震災以前には一定の投資をして工場を建てる等々の経営をし、またそれもきちんと返済できると金融機関にも認められてお金を借りることができて、そして経営を行っていたのに大震災によって全く同じ借金をもう一度しなければ震災前と同じような事業ができない、これが二重ローン問題だと思うが、それであれば、今後の再生が見込まれるということは、かなりありうると。震災以前に健全な経営を行って、そのときの借金がきちんと金融機関に認められたようなところであれば、今後の再生というものも見込まれると考えており、一人でも多くの事業者の方々が救われるよう期待していると述べた。
 住宅ローンの二重ローンについては、住宅ローンの利子補給等の負担軽減策について現在準備を進めているところであり、やはり重要な問題であるので県としても対応していきたい。
【商工労働観光部長】
 今回の負債の総額だが、これはそれぞれの金融機関の積み上げになり、正確な数字というのはそれぞれの金融機関の秘密事項であるので、あくまで推計だが住宅ローンと今回の企業のローンと合わせて約2000億円程度と試算している。
 出資総額だが、これは今後500億円の規模で機構の基金をつくっていくということで進めている。


・稲わら・牧草等の処理について

【高田議員】
 部長の答弁では、一向に進んでいないと。部長からは、一時保管の対象を検討すると言われただけで、この間まったく稲わらや牧草の処理対策がまったく進んでいないということだと思う。
 県は8月下旬に、市町村による稲わらなどの全額補助を決めた。それから具体的にどれだけ進んでいるのか。市町村では、待ち切れずに国や県の対応が示されずに独自に処理対策を行っているところもある。一関市では、今日から牧草の試験焼却が始まった。稲わらについては、コンクリートのたたき台を作りロールで巻いて屋根つき保管すると。堆肥処理についても独自の対策をやるということを打ち出した。これにかかる経費は2億円をはるかに超える金額だと聞いている。こういったものは、県が率先して対策を打ち出すべきだと思う。これに先行してやっている自治体にはどういう支援をしていくのか。

【農林水産部長】
 議員がお話になった一関市の処理方法については承知していないが、市町村の処理に対する助成という形をとっているので、市町村ごとに具体的な処理方法を調整して進めるということで対応している。ただし、稲わら・牧草についても、高濃度のものについて国がまだ具体的な処理方法を示していない部分があるので、それについては国が処理方法を示し次第対応するという方法をとらざるを得ないという状況は答弁で申し上げた通りである。


・出荷遅延牛の対策について

【高田議員】
 県がこの間実施してきた出荷遅延牛の買い上げ制度、肉用牛肥育経営緊急支援補助事業の実績はどうなっているか。
 農家に話を聞くと、この制度の支援策をこえた対策をやってほしいと。現在の買い上げ制度というのは、出荷した場合に、売れた金額と支援金との差額を農家が返済するという仕組みになっていると聞いた。その差額については、農家が賠償請求を東電にしなければならないということになっている。農家は被害者である。賠償請求をやらせるのではなく、ある程度の出荷適齢期を過ぎたら県が買い上げをして、県が東電に対して被害の賠償を全面的に求めるという対応が必要だと思う。そしてこれが今畜産農家の中での切実な要求となっている。こういう対応をする考えはないか。

【農林水産部長】
 実績について、8月25日基準で支援した県単事業分については4億8600万円余、9月1日以降の基準日については国の事業を導入しているが1億700万円余の実績である。
 出荷遅延支援金について、販売時であるが、販売価格等の差額については、東電への賠償請求という形になる。販売価格分については、支援金については返還していただくという仕組みになっているが、県としてはこの支援方法で肥育農家を支援していきたい。


・被災した県立病院について

【高田議員】
 定例会の中で知事は、再建を基本に対応していくという前向きな答弁を行った。しかし県立大槌・山田病院の再建問題については、二次医療圏の中での議論を行っていく必要があり、県の次期保健医療計画の考え方を踏まえながら進めていくと答弁した。しかし、  仮設は2年から3年で、今から準備しないと間に合わないのではないか。そして被災地の復興計画にも影響が出てくる。被災地では今復興計画をつくっている。どこに県立病院ができるのか、どういう規模の病院をつくるのかということを率先して県が打ち出していかなければ、復興計画も前に進まないということが言えるのではないか。そういう点でも、一日も早く計画を示すべきだと思うがいかがか。

【達増知事】
 元あったところに元の通りに建てるわけにはいかないだろうということで、地元の復興計画も参考にしながら、県と立地場所や規模・機能等について検討していくということであり、それぞれの町の復興計画も近々にできてくるわけなので、急いで検討作業が進んでいくよう医療局でも対応するものと理解している。


・花泉診療所の体制について

【高田議員】
 知事は、現在の常勤医師が退職を申し出ており、新しい常勤医師が来るまでスムーズが引き継ぎができるようにという話をされた。この事態の深刻さがわかっていないのではないかと思う。いま実際常勤医師はいるが勤務していない。そして入院がやられていない。これは所長も名前だけ、入院も転院をお願いしているという状況である。花泉診療所が今診療所になっていない。この事実を知事は認めるのか。

【達増知事】
 現在、当該常勤医師が退職の申し出をしているが、医療法人側としては退職扱いにはしていないという中で、入院患者については受け入れを控えており入院患者がいない状態になっているということは承知している。
 これは、入院ということができるような診療所として約束しているわけであり、その約束がきちんと履行されることを医療局から法人に対して要請しているということであり、これがいつまでもこういう状態であってはならないと考えている。
 新たな入院患者の受け入れが早期に行われるよう医療局において法人に対して要請しているということで、法人側が早くこれに応えることを強く期待するものである。


・県立大東病院について

【高田議員】
 医療局長の答弁では、関係者との協議を重ねながら結論を出していくということだった。実は9月の一関市議会では、県立大東病院の早期改築を求める意見書が全会一致で可決されたということを医療局長はご存じか。この意見書を見ると、大震災から7ヶ月以上も経っているにもかかわらず、何らいっこうにこの問題が具体化されていないことは異常だという表現になっている。
 耐震診断の結果が出たのはいつなのか。そしてその後どういう対応を医療局は行ってきたのか。

【医療局長】
 一関市議会の9月22日付の意見書は頂戴している。「震災後6ヶ月を経過した今日においても具体的な計画がない状況が続くことは異常である」といった趣旨で、先ほど議員ご質問の中で触れた文言が入っている。
 我々医療局は、大東病院について何もしないできたわけではなく、本館も含めて診療機能が使えない状況だったので、まずは外来分を安全なところで何とか確保しようということでこれまで外来機能の工事をやってきた。おかげさまで10月11日に移転できたということである。
 それから、耐震化工事ができるかできないかということについて並行して調査してきた。8月末にその結果が出た。
 今後については、二次保健医療圏の中で、地元一関市の意見等も踏まえながら協議させていただきたい。


・知事のTPPへの対応について

【高田議員】
 知事はTPPについて「時期尚早」だと一歩踏み込んで答弁した。しかし、岩手の抱える課題を考えるときに、時期尚早ではなくて、反対を表明して具体的に行動にとりかかる時期だと思う。知事は復興増税については、被災地の皆さんへの負担になって経済のマイナスを考えると復興増税というのはやるべきではないという答弁をした。私も同感である。しかし今度のTPPについても被災地に対するものすごい影響が出てくるのではないか。そして、昨年民主党政権が決定した2020年度までに食糧自給率を50%に上げるという農村基本計画にも反するものであり、両立できないと思う。この点についてうかがいたい。
 
【達増知事】
 昨日議場で取り上げられた国の増税とか復興財源の調達の方法についてもそうだが、国の政策に対して県としてさまざま申し入れする場合には、きちんと県の担当の職員の力も借りて署名を作成し、私でなければ私の代理の者がきちんと国の担当と会って、きちんと説明しながら要請をしていくということになるので、先ほど答弁した通り、必要に応じて国に対して提言などを行っていく必要があるものと考えているので、検討状況等を注視しながら対応できるようにしていきたい。


≪再々質問≫

・二重ローン対策について

【高田議員】
 返済猶予になっている債権額は2000億円と。そして出資総額は500億円と。この数字を見ても明らかなように、本当に意欲のある、ぜひ再建したいという思いをもつ事業者に支援を行うような規模にならないのではないかと思う。
 被災地を訪問しても、一部の優良企業だけが支援されるのではないか、金融機関の支援ではないかということを言われる。そういう機構になりかねないのではないかという心配がある。その点についてどのように考えているか。

【商工労働観光部長】
 先ほど2000億円の話をしたときに、住宅ローンと合わせてと申し上げた。ですので、この分で純粋に住宅ローンを除いた部分については推計でしか分からない。おそらく6割から7割程度が実際の事業者が借りている部分ではないかと思量している。
 500億円については、当面500億円と申し上げ、買い取りの進捗状況によっては増額もあるので、いずれ500億円で終わりということではない。状況に応じて今後変わってくるものと考えている。


・放射能汚染対策について

【高田議員】
 処理の仕方については、国は何もしていないから大変だという話だったが、国が対応策を示していない中でも、畜産農家の窮状を考えると何とかしなければならないという思いで、当該自治体では独自の処理対策を行っている。そういう意味では、8月にこの処理対策の補正予算の専決処分を行ったが、2ヶ月以上経っても進展せず、やきもきして市町村はそういう対応をしている。もっと県も市町村任せにせず、県が率先対応して、国や東電に対してこの問題でも賠償請求していくという視点が必要ではないか。

【農林水産部長】
 稲わら・牧草の処理だが、汚染されているもののうち、汚染程度が低いものについては処分方法が国から示されているが、濃度が高いものについては国から処理方法が示されていないということで、汚染濃度の低いものについては処理したいということで、それぞれの地域事情もあるので市町村ごとに処理方法を決めていただくということである。具体的な処理の場所についても、県が勝手に指定することはできないと承知しており、市町村でよく検討して決定していただくという意味で、市町村の取り組みに対して助成するという方法をとっている。個々の市町村とは、具体的な処理方法について、逐次相談させていただいているので、たしかに8月の補正で認めていただいた事業が進んでいないという意味では、大変遅れているという意味で申し訳ないと考えているが、なかなか自分のところに埋設することを快く受け止めていただけない場合もあるので、そういった意味でこの処理が難しい、進展しないという状況になっている。


・出荷遅延牛への対応について

【高田議員】
 現在の制度というのは、75万円〜80万円に金額を設定して、そして出荷遅延牛を出荷した場合、例えば60万円で売った場合は、残りの15万円を農家が返済しなければならない。それについては農家が東電に賠償請求しなければならないというスキームになっている。本当に農家はいま大変で意欲をなくしている。そういうときに賠償請求などという作業は大変である。だから、80万円なら80万円に設定して、適齢期を過ぎたら県が買い上げ、そして東電に対して全面的な賠償を求めるということが必要ではないか。適齢期を過ぎると、餌の対応や飼育に本当に神経を注ぐ。こういう農家の状況を考えたときに、いまのスキームではまずいのではないか。

【農林水産部長】
 JAや出荷団体等の支援ということも考え、そこの中で事務処理についてはお手伝いさせていただいていくということを考えたいと思うので、仕組みとしては現行の仕組みで対応させていただきたいと考えている。


≪再々々質問≫

・花泉診療所について

【高田議員】
 医療法人に期待すると知事は述べたが、現在所長が退職願を出しているが、職場にいない。入院もさせていない。これは契約違反ではないか。

【達増知事】
 約束を守ってもらわなければならないというのはその通りであるので、そこは医療局からきちんと申し入れをしていると。
 契約違反という言葉を法律上どういう意味合いで使われたかということに応じて、答え方も変わってくると思うが、直ちにすべて契約が解除されてしまう、今すぐ出ていけという事態にはないと理解している。