2011年10月19日 商工文教委員会
二重ローン問題等に関する質疑(大要)


・二重ローン問題の解消、岩手県産業復興機構について

【斉藤委員】
 復興の最大の課題だと、知事も部長も言っている。この岩手県産業復興機構が、文字通り被災企業の期待に応えられるものなのかどうか。制度ができたことは一歩評価するが、問題は、再建を希望するすべての事業者が対象になるかどうかである。選別と切り捨てであってはならない。ここに二重ローン問題解消の試金石があると思っている。
 復興相談センターの中身だが、37人の専門家の派遣を受けて、10月7日設置された。これは、金融機関、全国銀行協会、外部団体、外部支援機構から37人と。この内訳はどうなっているか。そして、被災地の商工会議所・商工会に事務所を設置すると。商工会にはアドバイザーを配置すると。これは37人以外に配置されることになるのか。どういう人が配置されるのか。

【経営支援課総括課長】
 配置の陣容だが、中小企業診断士、税理士が6名、監査法人から1名、県内金融機関から12名、県外の金融機関、これは全国銀行協会等を通じて派遣をいただいている方が17名といった方で構成されている。
 また、沿岸地への配置は、基本的には商工会議所・商工会のほうでこれらの職員が出向いて受付をすると。また一方で、すでに経営相談等を受け付けており、場所的なスペースとして、相談状況を見極めながら、今後そういった対応を以来してくるということで、現在のところ、経営指導員で対応しているところもある。

【斉藤委員】
 37人中29人が金融機関からと。ここに大きな問題がある。10月19日付の新聞報道で、「地方銀行の幹部は、『政府がつくる産業復興機構は、銀行も出資しているため優良な企業向けしか持ち込めない』」と。
 県内商工会議所や行政の担当者にも聞いてきたが、どういう話になっているかというと、今度の復興機構はあまり期待を持てないと。本当に困っている人たちは対象にならないという受け止めである。そういう意味では、本当に大震災前に頑張って経営してきた企業・事業者が基本的には全て対象になるということでないと、再建可能な優良な企業だけ対象にするのだったら、機構をつくらなくても優良な企業はやっていける。銀行が融資できる範囲での機構であってはならないと思うがいかがか。

【経営支援課総括課長】
 被災前の状況ということもあるが、まず資産、借り入れにより資産が形成されて、それが津波により被災するということで、バランスが崩れているということで二重ローンの話が出てきたわけだが、その経営状況についても、1年間というだけになると、なかなかその時点での経営状況とかリーマンショック等もあるので、3年とか5年とかある程度のスパンで経営状況を見て、その上で判断していくということで考えているので、再建の意欲があって、数年の間で経営状況が黒字になっているというところを対象にしたい。

【斉藤委員】
 数年の間で黒字だというが、頑張って赤字でも銀行の借金を返している企業はたくさんある。黒字の企業しか救済しなかったら大変なことである。
 この前提問題として、岩手県の事業者の債権はどのぐらいあるのか。今回この機構が対象にしている債権額はいくらか。全国的には、被災企業の借金は3割が返済で、これが5500億円だと言われている。

【経営支援課総括課長】
 金融機関で、企業・個人を含め2000億円程度と言われているので、うち法人関係は7割くらいではないかと考えている。
 ただ、そのうちから、再建の意欲がある方々がどのぐらい残るかということがあるかと思うが、いずれこれから機構を立ち上げて、相談センターで買い取りの整理をしていきながら、その中での買い取りということである。
 相談センターはいろんな対応をしていきたいと思っている。単なる買い取りだけではなく、再建のための計画づくりとか、場合によっては融資の相談もできるかと思うので、そういった中での対応の1つの方法として、債権の買い取りということである。
 買い取り額ということだが、当面とりあえず国と地方で合わせて100億円程度ということで出発していくが、いずれその都度出資していくという方法をとっているので、買い取り額については、今後の実際に機構が動いていく中で対応していくものと考えている。

【斉藤委員】
 債権は約1400億円から1500億円ということになると思う。そして当面買い取り額はたった100億円だと。これは500億円ぐらいが想定されているが結局今の機構はそこ止まりである。だから、そういう点でいけば、そういう500億円程度を前提にしているから、優良な企業に限定せざるをえないということになるのではないか。
 3年黒字だとか、債務超過していないとか、これは絶対基準にしていけないと思うが確認したい。本当に一部の優良な企業しか対象にならなくなってしまう。

【経営支援課総括課長】
 債権の500億円というのは、国と地方での合意の中では当面ということになっている。いずれ買い取り額については、実際に動かしてみないと分からないので、お答えしかねる。
 3年5年という話をしたが、実は浮き沈みがあるということを前提にしている話なので、平均してということでご理解いただきたい。
【商工労働観光部長】
 債権の2000億円というのは、県内3行の沿岸被災地域への貸し出し総額である。ですので、すべてこれが焦げ付いているということではない。ですが、うちどれぐらいが焦げ付きそうなのか、返済が厳しいのかということについては、各金融機関の機密事項であるので、我々はここから先は推計に頼るしかない。
 2000億円というのは、住宅ローンと企業に対する貸し出しを合わせている部分で、ここの割合も実は推計に頼るしかない。昨日もそういう答弁であった。ですから、6割から7割が企業向けであろうという話をした。1200億円から1400億円の辺りではないかという風に推計し、ここが企業向けではないかと。そしてこれが全て焦げ付いているわけではない。したがい、銀行の判断により、返済可能かどうか仕訳できているので、例えば、いわゆる最大1200億円がすべて買い取り対象かという判断はできない。したがい、被害率からみても、例えば7割ぐらいの企業が被害を受けたとすると、最大1400億円でも1000億円程度の被害率。ただこの場合も、返せる企業、もう1つは、借金だけ見ているが、企業の資産は我々は分からない。自己資本を持っており返済可能という企業はいくらもあるので、この1000億円もずっと圧縮されるだろうというのが見込みである。それがいくらかというのは、推計の推計なので、オープンにしても何の意味もないので、買い取りの中でやっていくしかない。ですので、当面500億円というのはそんなに悪い数字ではないのではないかとも見ている。もう1つは、銀行は一番いいところを優先してとなるので、この本当の機構の肝というのは、銀行が明らかに優良だと判断した以外のものをどうやって救うかというのが、まさにこの機構の役割であるので、これは委員ご質問の趣旨の通り一生懸命やっていくということでご理解いただきたい。

【斉藤委員】
 今までこういう制度がなかったので、こういう制度がつくられて岩手がそのために頑張ったというのは評価している。
 ただ、評価の大事な試金石は、今度の大震災というのは、個別の企業がやられたわけではない。面的にやられている。面的に中小業者を再建するということが今度の課題である。だから、再建を希望するすべての事業者を基本的には対象にすべきと言っている。ただ、構成にしても、想定の額からいっても、最初から限定されている。これは国会でも議論があって、3県で2000億円だった。自公案も2兆円にすべきだというのが参議院で法案が通っている。いまその調整がなされて、数千億円規模の買い取りをしようという合意が大体なされた。これは今のものよりは対象が広がると。優良な企業だけでなく救済しようと。そういう意味でいけば、いま議論されているものの方が幅広く対象になるのではないかと思うが、これは臨時国会にかけて11月中には通そうと。これは民自公で合意されてると。こうなると、また新しい制度が導入されるのかと。2つの制度で取り組むということになるのか、一本化されるのか。

【商工企画室企画課長】
 今朝の朝日新聞にも報道されているが、自公を中心とした法案だが、仮に2つの機構ができた場合には、私が知っている情報の中では、今の産業復興機構はそのまま使っていくと。そしていろいろご指摘もある中で、この復興機構が使える事業者というのは基本的には再建を中心としていく、そこが骨になっているので、今回法案が仮に通って、新たに機構ができることになると、今度は対象者を分けていこうというのが基本的な考えとしてある。具体的には、零細事業者であったり、農林水産事業者であったり、本来どちらかというと、中小基盤整備機構が出資するということから、本来のところであれば、企業向けの復興機構というのが基本スタンスということがあったと思うが、それが今のところ一本化していこうという流れの中で、幅広く相談センターの中でいろんな再建支援を行っていこうというのが産業復興機構である。ですから、新たに仮に別な機構ができた場合には、対象を振り分けていくという形になると思う。

【斉藤委員】
 なかなか複雑になってくると思う。相談センターというのは機能としては大変大事だと思う。構成は金融機関に多数派形成されているので、本当に被災企業の立場に立って相談して再建計画をつくるという点では問題だと思うが。この相談センターが個々の企業の再建計画・資金計画を立ててつなぐと。これはストレートに金融機関とやるよりは実践的だと思う。
 だから、新しい国の機構ができる場合でも、こういう相談センターとセットでないと機能しないと思うが、それぞれに相談センターをつくるのはまったく二重となってしまう。だから、相談センターは相談センターで、振り分けは2つあるかもしれないが。このようになるのか、ならないのか。
 幅広く、本当に被災企業の立場に立って対応するということが活かされることが大事だと思うがいかがか。

【経営支援課総括課長】
 その辺りの具体的な運営形態等については、まだ知り得ていない。今後調整されるべき課題だと考えている。

【斉藤委員】
 業者の受け止め、市町村の受け止め、商工会議所の受け止め、率直にいって今の機構については「あまり期待できない」と。そして、行政の説明も「すべてが対象になるのではない、借金が棒引きされるわけではない」というトーンである。そういう意味でいくと、本当に被災企業の立場に立って、今度の大震災の特徴は、面的に被害を受けているのだから、面的に再建するという立場に立つべきではないか。
 例えば、頑張って金融機関に借金を返済している企業は、基本的には対象にするぐらいのことでないと、本当の再建機構にならないと思うがいかがか。

【商工企画室企画課長】
 買い取りの部分の額について調整に時間がかかったと部長からも答弁があったが、その際、いろんな議論の中で、金融機関を交えた協議会等をつくってきているが、やはり金融機関にとっても自らが被災者である、一方でお客様の預金をお預かりしたものを融資しているということから、金融機関だけで棒引きのようなことはなかなか困難ということも意見交換の中で出されている。その中で、地域の金融機関として、最大限できるというようなところが買い取り額の調整ということで、これについては、一律こういった方向ということではなく、一件一件の査定・調整の中で、金融機関同士が協議しながら債権者調整が進められていくものと考えている。

【斉藤委員】
 この間の経過は先ほど部長が述べたが、国が渋って復興機構の立ち上がりが遅くなったのは事実である。しかし今3党合意の中で、政府の姿勢が若干変わったというのがもう1つの到達点で、いち早く再建できるところは再建させながら、さらに幅広く救済の対象にしようという方向も今作られつつあるので、本当に被災企業の立場に立ってやっていただきたい。
 雇用の問題にしても、ポイントは産業の再生である。地元の企業が再建しなかったら、本当の意味で地域に根付いた雇用は作られない。新規事業などというのは、こういう状況の中では簡単にいかないので、今まで頑張ってきた企業が再建すると。ある意味でいけば、雇用保険をもらいながらじっと我慢しているのは、自分が働いていた企業が早く再建させたいという思いでもある。このスピードがいま問われているので、ぜひ今の機構についても、現場の不安に応えるような積極的な対応、さらには新たな機構が出たら、本当にすべての再建を希望するすべての事業者を対象にした取り組みにしていただきたい。


・工業技術センターの施設整備費補助について

【斉藤委員】
 放射能対策で、ゲルマニウム半導体検査器を導入すると。これは工業技術センターの場合、どういう役割・機能をもつのか。

【科学ものづくり振興課総括課長】
 工業技術センターについては、現在も工業製品を中心に測定しているが、今後、食品関係等々対象になったと考えており、現在でも食品関係に関わる液状のものだとか、土壌、廃液、さまざまな相談が入ってきている。こういったものにしっかり対応していきたい。

【斉藤委員】
 いま食品関係でも、産直などは1件1件でやっている。例えば、農民連でやっている全国産直は、1件の検査料が5000円だと聞いているが、工業技術センターがやる場合には、検査委託にも応えるのか、その場合はどういう料金になるのか。

【科学ものづくり振興課総括課長】
 県全体として、環境保健センターが持っている機器と工業技術センターが持っている機器で測定している。環境保健センターが持っている機器は、県民の安全と安心を特に最重点に対応するということで、一次産品あるいは学校等の関係等を対象にするということで役割分担しており、工業技術センターの方は、工業製品や食品加工品といった役割分担をもっている。
 手数料は、工業技術センターは、当面無料で行っている。県でも、環境保健センターでは、それに準じた対応と理解している。

【斉藤委員】
 無料で対応するのはいいことだが、工業技術センターの場合には、行政と違って事業としてやれるのだから、それなりに対応できるのだと思う。相手も事業者なので。そして検査証も出すと。工業技術センターというのは、そのために独法化したということもあるわけなので、本当に低価格で事業者のそういう要請には大いに応えていただきたい。


・商工業者の被害状況・被害額について

【斉藤委員】
 36億円余増額補正され300億円の融資と。
 岩手県の今回の大震災における商工業者の被害状況・被害額について、6月の時点で県は1600億円余の被害だと。しかしその後更新されていない。これは粗い推計で、やはり商工業対策を考えるときに、被害状況を正確につかむということが前提だと思う。
 宮古市が最近全体の被害額を算定したが、その中にはきちんと中小商工業の被害というのも出しているが、やはり7ヶ月も経過したら、中小商工業者の被害状況をリアルにつかんで、つかめばやはりどういう手立てが必要かというのがさらに分かるので、そういう点が現段階でどう把握されているのか。推計も含めて示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 被害額については、商工団体などで会員の被害状況のアンケート調査をしているようだが、その集計がまだ固まっていない、すべて把握できていないということもある。そういったことで、集計途上と聞いている。
 我々としては、推計ではあるが、1661億円という推計値をもとに、これまで対応してきた。

【斉藤委員】
 被害の事業者数などはどうか。額も、調査率がいくらとか出すので、そういう数字はないのか。

【経営支援課総括課長】
 被災企業については、商工団体の推計値をもとに、沿岸の事業者がだいたい13000のうち3000ほどが被害を受けたのではないかと考えている。
【商工労働観光部長】
 知事答弁でもあったが、13000の沿岸地域の商工業者、そのだいたい2割程度が休止・廃止の状況があると。これは各商工会議所・商工会の数字を積み上げたものである。どれぐらいの企業が被害を受けたかという割合だが、だいたい推計で7400程度の業者が被害を受けており、55.6%の被災業者があったと受け止めている。したがい、3000程度の休廃止、4000程度が再開という推計である。

【斉藤委員】
 今のは会員の数だと思うので、ほとんど把握していると思う。連絡がとれない不明を含めて把握していると。商工会議所・商工会は正確につかんでいる。そういうところを正確につかみ、被害額の想定もできるだけ実態をよくつかんで、被害を受けた業者が何を求めているかというのが一層鮮明になってくるので、そういう点で被害状況の把握をさらに制度を高めてやって、本当に業者が求めている対策を機敏に講じて、一日も早く再建すると。業者の場合再建しないと収入が入ってこない。遅れれば遅れるほど再建の可能性が低くなるということになるので。