2011年10月24日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑大要


・地域医療の確保―被災した県立病院の再建について

【斉藤委員】
 知事は、被災した県立高田病院・大槌病院・山田病院について、「被災した県立病院の再建を基本としつつ、地元市町の復興計画や地域医療再生に向けた二次保健医療圏での議論、県の次期保健医療計画の考え方を踏まえながら、立地場所や規模、機能等について検討していく」「高田病院の仮設診療施設に入院機能を整備する」と答弁がありました。県立病院の再建に大きく前進した答弁と受け止めたいが、地元市町と地域住民の病院の早期再建への強い希望、復興計画の策定にとっても病院の再建を明確に示すべきだと思うがいかがか。

【達増知事】
 現在復興計画を策定中の地元市町と協議するとともに、多くの民間医療機関等が被災している現状を鑑み、地域医療の再生に向けた二次保健医療圏の議論を進めるほか、県の次期保健医療計画の考え方も踏まえながら検討していく。

【斉藤委員】
 初めて「県立病院の再建を基本としつつ」と述べたが、これはどういう意味か。

【達増知事】
 直さなければいけないのは直さなければいけないわけで、ただ、元あった場所に元の通りつくるわけにはいかないと。そこで今市町と関係者と一緒に相談しているということである。

【斉藤委員】
 病院として再建されると。市町が復興計画に位置付けたら、それを後押しするということでいいか。

【達増知事】
 地域医療を再生していかなければならないというのは喫緊の課題であるので、市町と協力しながらしっかり取り組んでいく。

【斉藤委員】
 こういう答弁がある。「規模・機能を検討する」と。この機能の中には診療所化ということはないのですね?

【達増知事】
 地域医療を再生していくというのは、機能も再生しなければいけないということである。

【斉藤委員】
 病院として再建されるということでいいですね。
 陸前高田市も大槌町も山田町も、再建計画の中心的柱に位置付けて、切望しているので、仮設診療所は2〜3年である。ですのでそういう方向にもっていっていただきたい。


・花泉診療所の民間移管について

【斉藤委員】
 昨年4月から強行されたが、残念ながら私が指摘した通りの異常な事態、常勤医師不在、入院患者不在となってしまった。常勤医師が辞職を申し出た次期、不在となった時期はいつからか。9月10月の入院患者はどうなっているか。

【達増知事】
 常勤医師から9月30日付で退職願があり、その後、10月3日から休暇を取得していたが、10月16日付で退職した旨、10月19日に法人から医療局に報告があったものと聞いている。
 入院については、9月は一日平均2人の入院患者数で、10月9日に入院患者1名が退院した以降は、入院患者がいない状態になっていると医療局から聞いている。

【斉藤委員】
 9月は所長である医師は出勤していなかったと聞いているが確認しているか。

【達増知事】
 先ほど述べた通り、常勤医師は9月30日付で退職願を出し、その後10月3日から休暇を取得していたが、10月16日付で退職したという旨を聞いている。

【斉藤委員】
 ちゃんと調べていただきたい。辞職願を最初に出したのは7月26日付である。9月はほとんど出勤していない。そういうときに、わずか2名だが入院患者がいたと。きわめて異常な事態ではないか。

【達増知事】
 ご指摘はご意見として承る。

【斉藤委員】
 施設貸与の契約条件はどうなっているか。

【達増知事】
 施設の賃貸借契約では、賃貸借契約の用途を「有床診療所」として使用することとしている。

【斉藤委員】
 2条でもう1つあるのだが、「10年以上有床診療所として使用すること」と。10年どころか1年ちょっとで破たんした。
 県も県民も3度裏切られた。一度は、一昨年民間移管するとき、事業計画を偽った。あのときは医師2名非常勤3名を確保していると。これは真っ赤なウソだった。
 昨年4月に民間移管に強行するときに、3月29日に常勤医師2名を確保した。それを前提にこの契約が結ばれている。これも真っ赤なウソだった。
 そして今また常勤医師が不在となった。3回もだまされているのではないか。

【達増知事】
 契約は契約であり、約束は守られなければならないので、医療局からもその旨を伝えていると聞いており、約束が守られることを私としても期待している。

【斉藤委員】
 3回も裏切られ、医療法人白光の信頼性が問われているのではないか。

【達増知事】
 ご意見はご意見として承るし、医療局としても、約束が守られるよう要請しているということで、一日も早くそれが全うされることを望んでいる。

【斉藤委員】
 知事は、一昨年の9月7日、定例記者会見で、「医療局という自治体病院の仕組みだけでやっていくよりも、手厚い地域医療の体制を構築できるということで大変素晴らしい方向に進んでいる」と。この発言はいかがか。

【達増知事】
 民間力を活用し、そして当初の医療局の計画の中では、無床化というものから有床化される仕組みができたので、それが守られるように医療局で働きかけているということであり、私もそれが実現するよう強く期待している。

【斉藤委員】
 質問に答えていただきたい。「大変素晴らしい方向に動いている」というのは真っ赤なウソだったのではないか。

【達増知事】
 先ほども述べたように、そうでなければ入院がまったくできない体制でスタートするところが入院できる体制になったというのはいい方向だと思う。

【斉藤委員】
 3回もだまされた。本当に信頼性のない医療法人に任せた県の責任も重大だと思うがいかがか。

【達増知事】
 ご意見はご意見として承りたい。


・住宅ローンの二重債務解消について

【斉藤委員】
 私的整理のガイドラインに基づく相談件数とその処理・解消はどうなっているか。

【達増知事】
 住宅ローンについて、私的整理のガイドラインの運営委員会に対する相談件数は、これまで1188件、専門家の紹介件数が131件、債務整理開始の申し出件数が25件でこのうち岩手県は9件となっている。
 
【斉藤委員】
 住宅ローンの債務は県内で500億円と言われている。県が利子補給をすることはいいことだが、しかし債務が解消されなければ新築もできない。そういう点では、住宅ローンも事業者の場合と同じように債務の凍結、買い上げの仕組みが必要ではないか。

【達増知事】
 私的整理のガイドラインによる債務整理以外の行政としての補助としては、新規および既存のローンに対する利子補給補助を行うとしたところである。

【斉藤委員】
 質問に答えていないのではないか。私は、債務の凍結や買い上げのような制度が必要ではないかと聞いている。

【達増知事】
 債務の凍結等については、ガイドライン運営委員会において、債務整理に関する金融機関との協議が行われるものと考えている。

【斉藤委員】
 それは、私的整理のガイドラインにかからなくても債務の凍結はできるのか。

【達増知事】
 お答えしたのは、私的整理のガイドライン運営委員会において、債務整理に関する金融機関との協議が行われるケースについてである。

【斉藤委員】
 この改善は県だけでは無理なので、きちんとした制度を強く求めて実現していただきたい。


・TPP交渉への参加問題について

【斉藤委員】
 知事はなぜ明確に反対といえないのか。

【達増知事】
 知事として明確に反対と言うべきというご意見というのであればご意見として承りたい。
 明確に反対と言えないのはなぜかということだが、聞きようによってはそれなりのことを言っているという風に理解できると思う。

【斉藤委員】
 TPPが岩手の農林漁業に与える影響を具体的にどう把握しているか。

【達増知事】
 昨年度、農水省が、関税を撤廃して生産量の減少等にたいし何らの対策も講じないとの前提で行った試算方法を参考に、本県農林水産業に与える影響額試算すると、農林水産業全体の生産額は1682億円減少するとの結果となる。
 農林水産業は、食料の安定供給はもとより、その生産活動を通じて、国土・自然環境の保全や伝統文化等の保存・継承など、多面的な機能を発揮しているので、そうした影響もある。

【斉藤委員】
 岩手の農林漁業が壊滅するのではないか。

【達増知事】
 いま申し上げた答弁に関して、そのような表現をすべきというご意見であれば、それはそれで承っておきたい。

【斉藤委員】
 意見を述べたのではない。質問している。
 農業だけで1469億円の減少、岩手県の生産額の60%が減少したら農業が成り立たないのではないか。

【達増知事】
 農業が成り立たないとか壊滅的とか、それなりの思いをもってそういう表現をされているのだと思うが、私からの答弁は先ほどの通りである。

【斉藤委員】
 本当に意味不明な答弁である。
 TPPの参加と食料自給率の向上は絶対に両立しないと思うがいかがか。

【達増知事】
 昨年度、農林水産省が公表した食料自給率の試算は承知しているが、関税撤廃がどのような効果を有するのか、協定の内容そのものに関する根本的な検討・議論が行われるべきと考えており、国において十分な検討・議論が行われていない現時点においては判断は困難と考えている。

【斉藤委員】
 岩手県の農林水産部が農業で1469億円、漁業で191億円(約50%)生産額が減少すると。これでどうして食料自給率が向上するのか。

【達増知事】
 委員が両立できないというご意見を主張したくて、それについてイエスかノーか聞かれても、委員の思いとして両立できないというような言葉を使われていると思うので、私の答弁としては、先ほどの条件のもとでは判断は困難ということである。

【斉藤委員】
 これで判断困難というのはとんでもないことである。
 いま日本の食料自給率は40%、輸入自由化を進めてここまで落ちた。穀物自給率は20%である。さらに関税撤廃したら下がるのは当たり前ではないか。

【達増知事】
 さまざまな前提のとり方により、いろいろ違った結果が導かれるのだと思うが、委員の御懸念についてはよく分かる気持ちである。

【斉藤委員】
 岩手の農林水産業がかかっている。
 東日本大震災津波の復旧・復興に取り組んでいるが、復興に逆行するのではないか。

【達増知事】
 協定への参加については、地域の声も反映した国民の合意が得られるまで、しっかりと議論を重ね慎重に検討することが必要と考えており、とりわけ東日本大震災津波により大きな被害を受けた本県農林水産業等の復旧・復興は、地域の社会経済の再生に直接つながるものであることから、そのさまたげとならないよう、より慎重に対応していくことが必要と考えている。

【斉藤委員】
 漁業についても、TPPでは漁業補助金の規制がアメリカから提案されている。こんなことをしたら、船も確保できず養殖施設も整備できない。これがTPPである。復興どころではない。
 こういう状況に対して、被災県の知事がはっきり明確に態度を示すべきではないか。

【達増知事】
 ご意見はご意見として承るが、TPPと復旧・復興との関係については、先ほど申し上げたように、今回の大震災がなくてもこのTPPへの参加については慎重に検討することが必要なわけだが、この東日本大震災津波の復旧・復興という中で、より慎重に対応していくことが必要と考えている。

【斉藤委員】
 TPPというのは、関税原則撤廃である。非関税障壁もなくすと。アメリカ型の貿易と投資の自由化、アメリカ型の経済を押し付けるものである。
 TPPの中身を知事はどう認識しているか。

【達増知事】
 現在行われているTPP協定に関わる協議は、ニュージーランド・シンガポール・チリ・ブルネイの4カ国による貿易協定に、新たにアメリカをはじめ5カ国が加わるべく協定の締結に向けた協議を行っているということで、その協議が結果として内容が決まるものと理解している。

【斉藤委員】
 TPPというのは原則が決まっている。交渉して原則が決まるのではない。だから大問題になる。そういう認識は知事はないのか。

【達増知事】
 私の認識は先ほど述べた通り、いまニュージーランド・シンガポール・チリ・ブルネイの4カ国による貿易協定があり、そこにアメリカをはじめ5カ国が加わり協議を行い、その内容を決めると認識している。

【斉藤委員】
 とんでもないことである。4カ国のルールは決まっているし、枠組みが決まっている。っだから問題にしている。FTA・EPAとは違う。担当部局からそういう説明はされていないのか。

【達増知事】
 さまざま調べた上で先ほどの答弁を申し上げている。

【斉藤委員】
 恐るべき認識である。
 知事は、「必要に応じて国に提言する」と言っているが、11月12、13日からAPECが始まる。その前に決断するというのだから、今態度を明確にして提言しなかったら間に合わないのではないか。

【達増知事】
 国への提言については、まず8月3日農林水産省に対して、本県として、TPP交渉について慎重に検討されたい旨の要望をしたところであり、全国知事会においては去る19日に、国民的合意の上判断されたい旨の緊急要請を行った。今後、北海道東北知事会としても同様に提言を行うことを検討しており、本県においても、同知事会と気を一にした提言を行いたいと考えている。

【斉藤委員】
 岩手の農林漁業、復興の死活に関わる問題である。緊急問題である。体を張って阻止すると。そういう姿勢を県民の代表である知事が示すべきだと思うがいかがか。

【達増知事】
 非常に熱血な質問をしかと受け止めさせていただく。


・東京電力福島原発事故への対応について

【斉藤委員】
 地上地点を含めた徹底した放射能汚染の測定と除染の対策を県自身が行うべきではないか。

【達増知事】
 測定・除染対策は、原因者である東電が自ら行うべきものであり、放射能問題全般について責任を負う国がきちんと履行されるよう必要な措置を講じていくことが基本と考えている。
 しかしながら、県民の安全・安心を確保するため、やむを得ず被害者側に立つ県および市町村が連携して、県民に協力を呼びかけながら放射性物質の測定や除染等に取り組んでいるところである。
 県は、市町村が行う学校等における放射線量の測定や除染等について、大衆施設の利用の実情に基づく市町村の判断等を踏まえ、助成対象とするとともに、技術的な支援もおこなっている。また、県管轄のところについて、県自ら測定・除染等を行っている。

【斉藤委員】
 一関市が20日の発表で、地上地点で138施設測定したと。92施設で1マイクロシーベルトを超えたと。489カ所である。4ヶ所は10マイクロシーベルト以上で測定できなかったと。地上地点の調査を徹底してやってこそ、本当に子どもたちの安全が守られるのではないかと思うがいかがか。

【達増知事】
 一関市と相談しながらしっかり対応していきたい。

【斉藤委員】
 県も、県立高校などの測定をしている。だから、県自身も地上地点の調査をすべきと。

【達増知事】
 私からは、一生涯の追加的被ばく量100ミリシーベルトを1つの目安とし、そうならないためにも毎年の1年間の追加被ばく量を1ミリシーベルトを超えないようにしようという観点から、東電・国が動かない以上、まず自治体が動こうということで対応しているところであるので、その線に沿って対応していきたい。

【斉藤委員】
 県としても地上地点の測定をやるのか、やらないのか。

【達増知事】
 知事、あるいは放射能問題対策本部の長としては、先ほどいったような、要は一人一人の健康の問題であるので、一人一人が100ミリシーベルトの生涯追加被ばく量年間1ミリシーベルトを受けないようにするために何をすべきかということを、ケースバイケースできちんと見極めて対応すべきということをお約束したい。

【斉藤委員】
 本会議でも知事は、「市町村に準じて県はやる」と答えているがどういうことか。

【総務部長】
 本会議の答弁は私の答弁で、先ほど知事から述べられたように、施設の利用の実情に基づく市町村の判断を踏まえ、そういう施設の利用状況に応じて測定・除染を行うということを述べたので、県の施設については、そういった施設の利用状況を踏まえて対応していくということである。

【斉藤委員】
 原発事故がなければ生じることのなかった損害については全て補償すると。これを大原則にした全面賠償を求めるべきだと思うが、先日東電の副社長も来たと思うが、この全面賠償の取り組みはどうなっているか。

【達増知事】
 基本的に、原発事故との因果関係が成り立つものについては、原因者である東電が幅広く賠償責任を負うべきものと考えている。
 原発事故により放出された放射性物質は、広範囲かつ多岐にわたる影響を及ぼしており、被害者である県民が回避することは著しく困難であり、被害者には過失が認められない。被害が長期間にわたること等の特殊な事情もある。
 引き続き、原因者である東電に対して損害賠償にあたり、これらの事情に最大限配慮するよう強く求めるとともに、市町村や関係団体と連携して因果関係の説明に努め、十分な賠償が得られるよう取り組んでいく。

【斉藤委員】
 請求に対して、毎月返還されるべきだと思うが、東電の対応はどうだったか。

【達増知事】
 そもそも、7ヶ月経ってようやく副社長が謝罪に来るということで、本当であれば、原因者であるので、自分のところから出た放射性物質というものがどこまで、どの程度広がっているのか、除染すべきであれば除染するといったことを東電自ら行うべきだということを訴えたところだが、そういったことを踏まえ賠償についてはしっかり対応するといった趣旨であったので、まず少なくとも賠償についてはしっかりやってもらわなければならないというやりとりをした。

【斉藤委員】
 毎月賠償させるというのがポイントだと思うが、この点ではいかがか。

【達増知事】
 ご意見はご意見として検討させていただきたい。

【斉藤委員】
 原発事故がもたらしたもの、教訓をどう知事は受け止めているか。

【達増知事】
 今回の原発事故は、広範囲に深刻な放射線被害をもたらし、国民の原子力の安全性に対する信頼は大きくゆらぎ、原子力政策を含む我が国のエネルギー政策全体が見直しを余儀なくされているものと認識している。
 一方、県としては、これまでも地域特性を生かした再生可能エネルギーの積極的な導入に取り組んできているので、今回の事故を踏まえて、一層その積極的な推進に取り組んでいく必要があると認識している。

【斉藤委員】
 原発事故の悲惨さ深刻さから見たら、原発と国民は共存できないと。原発からの撤退を求めるべきだと思うがいかがか。

【達増知事】
 今回の原発事故の深刻さ、なぜこういうことになったのかという経緯の部分についてはまだまだ検証が必要だと思っており、その検証結果を含め幅広い国民の議論に基づいて、国としての原発政策について適切に判断されるべきと考える。

【斉藤委員】
 再生エネルギーの岩手県の実績・全国順位はどうなっているか。
 
【達増知事】
 平成22年度末の種別ごとの発電出力ベースでは、水力27万5000キロワットで全国4位、地熱10万4000キロワットで2位、風力6万7000キロワット4位、太陽光35000キロワット33位となっている。
 再生可能エネルギー全体での全国順位は、明確な統計データがないが、千葉大学の研究室などが熱利用も含めた一定の条件で試算した結果によると、平成21年の実績で全国第11位であるとされている。