2011年10月26日 決算特別委員会
復興局に対する質疑大要


・被災者の状況と対策について

【斉藤委員】
 仮設住宅、在宅被災者、みなし仮設住宅、県内の親類・知人への避難、県内・県外への避難者、被災者全体がどういうところにどういう形で生活しているか。

【生活再建課総括課長】
 仮設住宅については、13099戸31575人が入居している。
 自宅で暮らす被災者については、沿岸市町村から把握している範囲では約12000人と報告を受けているところだが、一部市町村では在宅被災者の状況の把握がなされていないところである。
 民間賃貸住宅・公営住宅等のみなし仮設住宅については、4464戸12039名が入居している。
 内陸市町村の親類宅等へ移った被災者については2714名、県外へ移った被災者については1593名となっている。


・集会所・談話室の設置について

【斉藤委員】
 仮設住宅が毎日ニュースにも出て、ここも大変切実だが、仮設住宅だけではなく、被災者全体を視野に入れて対策を強めることが必要だと。
 仮設の問題だが、集会所・談話室の設置状況を本会議で聞いた。319団地のうち174で設置されていると。これは半分ちょっとで、仮設住宅のコミュニティの確立にとって集会所・談話室の設置が必要だと思う。空き仮設住宅もあると思うが、これをすべての団地に設置するという方向で取り組むべきと思うが具体的にはどうか。
 そして集会所・談話室は、実際に活用されているのかどうか。どのぐらい活用されているのか。

【生活再建課総括課長】
 集会所・談話室の活用状況だが、ボランティア団体によるお茶会等の各種行事の開催だとか、子どもたちの学習スペース・遊び場などのほか、生活支援相談員によるコミュニティ再生支援の場としても活用されている。
 全体的な調査はないが、我々と岩手連携復興センターの共同により、今年の8月から9月にかけて、5市町で仮設住宅の入所者へのインタビューを実施した。その中で利用状況についても聞いた。その時点では、集会所の利用状況については市町村により差があり、高いところでは69%の団地で利用されていたが、低いところでは7%しか使われていないというところもあった。地域コミュニティの活性化・組織化と合わせて、この活用促進が課題になっていると考えている。
 集会所・談話室については、9月補正において10団地の追加工事を議決いただいている。この間、支援の申し入れをいただいているNGOの協力をいただき、陸前高田市・釜石市において集会所・談話室の追加工事を進めている。

【斉藤委員】
 集会所・談話室の活用で差があると。当初、市町村や社協がここを管理するということがあったが、いま集会所・談話室は、本当は地元の仮設住宅の団地自治会が運営すれば一番いい。この管理運営はどうなっているか。管理運営の費用はどこが負担することになっているのか。自治会の設立状況はどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 集会所・談話室の管理についてだが、仮設住宅の管理については市町村に委任しており、市町村で直接管理しているところもあれば、自治会等にお願いしているところもあると聞いている。
 自治会の設立状況だが、県内にある319団地のうち186団地で自治会が組織されている。また127団地で自治会設立に向けた準備が進められており、組織済みの団地と合わせると313団地で自治会の組織化が進められている。
 費用負担については、市町村で対応をお願いしたいということで、市町村の負担のところもあれば自治会と住民の皆さんにお願いしているところもある。

【斉藤委員】
 これからの準備を含めると313団地で100%に近いと。この自治会の確立が大変大事で、日常的に活用するためには、自治会に管理を委ねると。同時に被災者なわけであり、被災者に維持管理費を押し付けるようなことがあってはならない。このこともよく見て柔軟に対応していただきたい。
 先ほど回答がなかったのだが、今度の補正で若干の集会所・談話室の設置が組まれたが、かなり多数の団地が未設置である。コミュニティの確立という点で、その保障がない。
 仮設住宅の空き住宅の活用状況はどうなっているか。それを活用する余地はないのか。引き続き全ての仮設住宅に集会所・談話室の設置を追及していくべきだと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 仮設住宅の空き住宅の活用については、知事から厚労相に要望をして、兼用が認められている。その中で、国の通知として、集会所施設としての活用についても認められている。個別の数については承知していないが、市町村においては国の通知も受けて集会所としての活用だとか、入居者の多人数家庭世帯のさらなる部屋の貸し出しだとか、派遣職員の宿泊施設等という形での活用をしていただいている。

【斉藤委員】
 ぜひ空き住宅の活用もあとで把握してほしい。
 5人6人で2部屋で生活している世帯もあるので、そういう方々に対して空き住宅を貸すのは当然のこと。遠くから戻ってくるというケースもあるので、空き住宅がその後どのように活用されているかというのは後でお知らせいただきたい。そしてそれを含めて未設置の団地に集会所・談話室を設置していくと。そうしないと集まる場所がない、コミュニティを確立する保障がない。2年3年以上仮設住宅は続くと思うので、これからの1つのコミュニティになるわけで、しっかり取り組んでいただきたい。


・暖房器具の設置について

【斉藤委員】
 みなし仮設住宅は対象になっていない。そして在宅被災者、在宅被災者といっても、全壊や大規模半壊で生活している方々が結構いる。本当にある意味でいけば仮設住宅よりも大変な状況で生活している。ところが、ここには全く支援の手が届いていない。こういう声が寄せられているが、みなし仮設住宅や在宅の被災者に対しても暖房器具の設置やその他の支援も行われるべきと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 みなし仮設住宅や在宅被災者の方に対する暖房器具については、救助費の対象になっていないということである。そういう状況の中で、NPOのご協力をいただき、みなし仮設住宅への暖房器具の設置について現在協議を進めている。財源の問題もあり、そういう中で県も一緒になり、1つのところに重ならないようにということだとか、そういうものを含めて現在調整を進めている。

【斉藤委員】
 是非みなし仮設住宅と合わせて在宅被災者に、ここに今の段階では目を向けていただきたい。
 陸前高田市や大船渡市や大槌町は未調査だが、12207人在宅がいると。これはいろいろな体があるが、残念ながら保健車も廻ってこない、物資も届かない。そして本当に孤立していると。仮設住宅も条件が悪いが、いわば被災者なので、修理をしながら本当に大変なところでやっているので、在宅被災者への支援も是非一緒に検討していただけないか。

【生活再建課総括課長】
 暖房器具の設置に限った話だと、財源の問題もありなかなか厳しいという状況である。

【斉藤委員】
 財源の問題はあると思う。提起したのは、在宅被災者の実態を把握する必要があるのではないかと。同じ被災者なので、全壊とか大規模半壊の中で生活している方々も多い。そういう意味では、財産を一度なくした中でも自宅を改修しながら、また改修したと言えないような状況の中でも生活している人たちが少なくないので、そのことを指摘した。暖房器具の設置だけではなく、被災者の生活再建という点で、実態の把握、それに対しても仮設住宅と同じような支援が求められているのではないかと思うが、これへの対応を強めていただきたいと思うがいかがか。

【廣田復興局理事兼副局長】
 在宅被災者の現状の把握については、市町村によりまだ温度差がある。陸前高田市や大槌では十分に把握されていない状況にあるので、その辺は市町村と一緒になりしっかり把握していく必要がある。
 その後のケアについても、徐々に保健師や生活支援相談員などにより訪問がスタートしているので、それも合わせてきめ細かい支援をしていきたい。

【斉藤委員】
 陸前高田市や大槌町では、全世帯の訪問調査もやられた。陸前高田市などはもっとも被害の状況が深刻なところだが、訪問調査で示された特徴・課題をどう把握しているか。

【廣田復興局理事兼副局長】
 手元に数字はないが、いずれ現状が十分に地元の役場も把握されていないので、全戸調査の数字も見ながらしっかりと支援していきたい。

【斉藤委員】
 暖房器具の設置で、市町村に委託したと。先ほどの答弁で、コタツを配備しているところ、ファンヒーターを配備しているところ、あとは入居者の要望に応じていろいろ配備していると。この季節なので、かなりの程度自前で確保したということもあり、厚労省の通知では、3つ指摘している。ファンヒーター、ストーブ、コタツ、ホットカーペット。3点買っている人はいないと思う。コタツを買った人には、ホットカーペットやストーブを支給するとか、そこは是非柔軟に対応すべきだと思うが、そのようになっているのか。

【生活再建課総括課長】
 具体の対応については、市町村において地域の状況を踏まえて対応いただくということである。ということで、スピード感の問題もあるし、地域の商店街の活性化ということで地元の復興にするということで対応している。


・義援金の支給状況、被災者生活支援金、災害弔慰金の支給状況について

【斉藤委員】
 義援金の支給状況、被災者生活支援金、災害弔慰金は現段階でどこまで支給されているか。
 義援金については、宮古市や山田町で事業者に対しても支給し、山田の場合には、町に寄せられた義援金で一律20万円を配分している。事業者というのは、店を流されても何の補償もないと。漁業者の場合もそうだが、義援金が幅広く被災者に届く手立てが必要だと思うが、県としてそれはできないのか。市町村がどこまでそれを広げてやっているか。

【生活再建課総括課長】
 義援金の支給状況だが、国と県の義援金の第一次配分については、4月20日から各市町村に配分しているが、10月21日現在、29789件133億2791万円を申請者に支給し、支給率は件数ベースで89.3%となっている。第二次配分については、6月28日から各市町村に配分し、29764件255億91万5千円を支給し、支給率は89.3%となっている。
 被災者生活再建支援金については、10月21日現在で190億882万円を支給し、支給率は件数ベースで94.3%となっている。
 災害弔慰金については、10月20日現在で4443件132億5500万円を支給率は68.9%である。
 市町村での事業者や在宅被災者等への義援金の支給については、県内8市町村において、市町村に直接寄せられた義援金を事業者に支給している。
 県の義援金の支給対象の拡大については、現在の県の配分委員会において協議させていただいているが、国の義援金配分割合決定委員会で決定された死亡または行方不明、住家の全壊または半壊を支給対象とし、事業者への配分をしないとしており困難だと考えている。


・安全なまちづくり、防潮堤・湾港防波堤について

【斉藤委員】
 湾港防波堤の破壊の状況、津波に対する効果の分析、費用対効果の検証が必要だと思うが、残念ながらおそらく県にも、県民にも詳しい状況が報告されていない。
 10月12日に、静岡市で行われた日本地震学会では、海洋研究開発機構などの研究チームが、岩手県釜石市を例に、「防波堤があってもなくても津波の高さに差はなかった」という研究報告をしている。湾港防波堤については、釜石の場合には30年1200億円をかけて出来たばかりの湾港防波堤が本当に大きな破壊を受けた。これが本当に効果があったのかどうか。徹底した検証が必要だと思うし、大船渡の湾港防波堤は土台以外全面的に破壊された。大船渡の場合は、漁民の方々から湾港防波堤は見直すべきだという声も強い。湾港防波堤の検証というのは、きちんと県も責任をもってやるべきだと思うがいかがか。

【復興局平井理事兼副局長】
 湾港防波堤の破壊の状況についての認識をまとめて答弁したいが、東日本大震災の津波にともない、釜石港の湾港防波堤においては、北堤990メートルの全域にわたりケーソンの傾斜や倒壊が見られる。南堤670メートルは、そのうち半数のケーソンが倒壊し水没するなどの被害を受けたところである。
 大船渡港の湾港防波堤については、約530メートルの全延長のうち、ケーソン部分が港の内側に転倒するなどの被害が出ている。
 なお、湾港防波堤の被災のメカニズムについては、概略的な報告がなされているが、現在、独立行政法人港湾空港技術研究所において、詳細な検証を行っていると聞いている。
 津波に対する効果の分析、費用対効果についてだが、国交省では現在、交通政策審議会の港湾分科会において、港湾における総合的な津波対策のあり方について検討を行っており、その中で、東日本大震災における被害状況と津波防災施設の役割の評価について検証が行われているところである。その中間とりまとめの段階では、防波堤には、津波高を低減する効果、港内の水位上昇を遅延させて避難時間を確保する効果、流速を弱め破壊力を低減させる効果があると報告されている。具体的には、今年3月に、港湾空港技術研究所が釜石港の湾港防波堤について、シミュレーションにより検証した結果、湾央での津波高を約4割低減させるとともに、津波の第一波が防潮堤を越えるまでの時間については、防波堤がない場合と比較し6分間遅延したとされている。費用対効果の検証を国において実施するかどうかは定かではないが、以上の検証結果を踏まえ県としても湾港防波堤が人命や財産の被害の減少に大きな役割を果たしたものであると評価している。

【斉藤委員】
 日経新聞の10月13日付で、海洋開発研究機構などの研究チームがシミュレーションしたら、防波堤で差がなかったと。これは試算の仕方で大きく異なるということも報告している。残念ながら報告そのものがホームページに出ていないので手に入れていないが、湾港防波堤を造った国交省だけの調査では本格的な検証にならないと思う。ましてや岩手県の場合、先ほど言ったように30年かけて1200億円、完成したばかりの釜石の湾港防波堤がほとんど破壊された。そしてそれも第一波でどのぐらい破壊されたのか、第二波にどう対応したのか全然分からない。第二波の方が大きかった。第一波でやられていたら第二波への効果はなかったのではないか。これもかなりシビアな問題である。防波堤があればそれなりの効果があるのは事実である。しかし湾港防波堤が防潮堤を低く設定している。これはセットである。湾港防波堤がなかったら高い防潮堤で守ると。二重に設定して本当に効果があったのかということも含めて、この問題は地域住民が納得するようにやるべきである。
 大船渡の場合は、湾内が汚染されて、漁業にも影響を与えたと。浚渫ということがずっと問題になってきた。だから大船渡湾の漁民は再湾港防波堤の再建を市長が国に要請するときに、一緒に行くのを理事会にまでかけて断った。決して今の段階で住民合意がある問題ではないので、海洋研究機構などの分析なども含めて客観的に我々にもしっかり示して検証すべきではないか。湾港防波堤の再建ありきという前提状態にないと思うがいかがか。

【復興局平井理事兼副局長】
 湾港防波堤の評価については、先ほど述べた通り、人命や財産の被害低減に大きな役割を果たしたという認識で、その再建を国に要請している次第である。
 詳しい効果については、交通政策審議会の中で検証がなされている次第である。この検証結果を待ちたい。
 海洋研究開発機構の日本地震学会での研究発表についても、当方もホームページにそれがあったということは承知しているが、内容は承知していないので今後情報収集に努めていきたい。

【斉藤委員】
 まだ検証中なのに効果があったと。まったく効果がなかったとは言わないが、破壊されたとしても湾港防波堤があったのだからそれなりの効果はあったと思う。ただ、津波の第一波第二波でどれだけ破壊されたかで効果は全然違ってくる。そういったことは全然明らかになっていない。ましてや検証中だというのに効果があったから湾港防波堤の再建だというのはあまりにも根拠がないのではないか。
 中央防災会議も専門調査会の報告を出し、岩手県もそれを受けて防潮堤の高さの設定もされている。中央防災会議や専門調査会の報告を読むと、「今回のような最大規模の津波に対しては人命を守る」と。そして「百数十年に一回程度のいわば繰り返される津波については人命も財産も守るということを基本にした」方向が出されている。防潮堤の高さとまちづくりは一体だが、防潮堤の高さとまちづくりのあり方というのも住民の議論を通じて、本来決めていく問題ではないか。例えば沿岸でも、「海が見えないことが不安だ」と。堤防を越えたときには遅いということもある。陸前高田市の場合、高田病院は海から1キロだったが1分かかっていない。役場までも3分かかっていない。そういう意味では、シミュレーションの結果を我々にも示して、住民に防潮堤の高さをこのぐらいにすればこういう効果がある、ないということを示して議論すべきではないか。

【復興局平井理事兼副局長】
 防潮堤をはじめとした津波防災施設の規模については、委員ご指摘の通り百数十年に一度程度の頻度で起こりうる津波に対応できる高さとすると。こういうことを復興計画でも方針を示し、中央防災会議の専門調査会でも同様の考え方が述べられている。
 その考え方を基にした防潮堤の高さ等については市町村に提示させていただき、それで最大クラスの津波に対する浸水域がどのようになるのかということを丁寧に説明させていただき、それでまちづくりの中で高台移転だとか嵩上げといったことをどのように展開していくのかということについて、いろいろと相談に乗りながら市町村のまちづくり計画の策定を支援している次第である。

【斉藤委員】
 県が設定した防潮堤の高さで今回の大震災規模の津波がきた場合にはどこまで浸水するかシミュレーションしていると思うが、これは地元ではそういうことを明らかにして議論している。我々にもそれを明らかにしてほしいと言っている。そのことを確認したい。

【復興局平井理事兼副局長】
 これはまちづくりの計画に非常に重要な影響を与えると。しかも浸水をしてしまう区域の土地所有者あるいは今でも住んでいらっしゃる方々にとっては非常に重要な問題であるので、まず市町村に示してしっかりとした計画を作っていただくことがまずは先決の問題だと考えている。
 できる限りの情報開示については今後とも考えていきたい。