2011年10月31日 決算特別委員会
教育委員会に対する高田一郎議員の質疑大要
・学校の復旧状況について
【高田委員】
今回の大震災で全壊や一部損壊などたくさんあったと思うが、この建設・再建の見通しについて具体的にお聞きしたい。
また県立高校についても、県立高田高校の復旧の見通しについて、どういうスケジュールになっているかお聞きしたい。
【学校施設課長】
市町村立学校については、設置者である各市町村において、応急仮設校舎の整備や本格復旧に向けた検討などを行っている。
県立学校については、高田高校と宮古工業高校が被災しているが、宮古工業高校については復旧工事が完了し、8月29日から自校で授業を再開した。高田高校の復旧・整備については、県の復興計画の復興実施計画にも位置付けているところであるが、市のまちづくり方針等も踏まえ整備の方向付けをしたいと考えており、現在事務的に調整を進めているところである。地元の方からは、一日でも早く再建してほしいという声があり、県教委としても早期に再建が図られるように、関係の方々とも十分連携を図りながら全力を尽くしてまいる考えである。
小中学校の再建に向けた取り組みだが、市町村立学校については、現在検討を進めているというところだが、まず応急仮設校舎の整備を進めているということで、大槌町については仮設校舎に移っており、現在釜石市において整備中と聞いている。また岩泉町については、今後整備予定と聞いており、今後具体的にどう学校を再建していくかということで、各市町村のまちづくり計画等も踏まえながら検討していくと承知している。
【高田委員】
県立高校では、高田高校が再開の見通しが立っていないというところだが、市のまちづくり計画との関係とかさまざまなクリアしなければならない課題がたくさんあるというのは承知しているが、現地の方々にお聞きすると、せめて新しい校舎で卒業したいと一日も早い復旧を願っている。そういった被災地の皆さんの願いに応えられるようなスケジュールになっているかどうか。
学校の再建問題では、当初は、政府の原形復旧でないと認めないとか、あるいは全壊した建物のがれき処理を支援の対象にしないとかという方向になっていたが、全国からの国がしっかりやるべきという声が広がる中で、重い腰をあげて対応するようになったわけである。そういう点では、早期復旧に向けて、条件も広がっていくように思うが、再建する上での財政的な支援はどうなっているか。地元はどのぐらいの負担になるのか。
【学校施設課長】
高田高校の再建スケジュールだが、現在土地について、どの場所に整備するかということがまず第一にあり、その後に設計だとか建築等という形で進んでいくわけだが、時期については場所が決まらないとその先に進めないということがある。整備スケジュールの関係で建築の部分について述べると、今回の9月議会でも議決をいただいたが、盛岡商業高校の建物だと建築で2年かかっている。そういったことでいろんな準備を進めていくが、今の在校生が新しい校舎で卒業するというスケジュールはなかなか厳しいのではないかと思っている。
復旧等にあたっての財政支援だが、新築移転等についても災害復旧事業ということで認められると、これは文科省との個別協議が必要になってくるが、認められるということがあり、いずれそういった国庫補助制度を使いながら復旧工事を進めていく必要があると思っている。この財政支援の内容だが、災害復旧事業ということで該当すると、補助率は3分の2ということになっている。残り3分の1が地方負担となるが、その95%が交付税措置されるということになっているので、市町村の学校施設の再建に向けては、こういった国庫補助事業制度等も活用しながら、早期に復旧整備が図られるように県としても進めていきたい。
【高田委員】
被災した沿岸自治体は、財政基盤が非常に脆弱であるので、やはり地元自治体は最小限の負担となるよう、極力ゼロに近いような形で復旧ができるよう引き続き国にも求めていただきたい。
学校の再建については、生徒の減少や市町村の復興計画などいろんな課題もあるが、一日も早い学校の再建を行っていただきたい。
・就学援助について
【高田委員】
被災された児童・生徒が、教育費や生活費の心配なく学校生活を送れるということは、学校の施設整備と合わせて大変大きな課題である。
この間、第一次補正で、経済的に厳しい児童・生徒に対して、臨時の就学支援制度が行われてきた。しかし、これは臨時的な支援であり、あくまでも年内ということが言われている。これは被災地の父母、学校関係者からも継続を望む声が出ている。これに対して県当局はどのような対応をしようとしているか。
就学援助制度は、現在の就学援助制度は、交付税措置により何年か前から自治体における支給内容に大幅に差が出ている。被災された児童・生徒が、教育費や生活費に心配ないような制度になっているか、実態を含めてお聞きしたい。
【学校施設課長】
就学援助に対する国の特例措置等の延長の関係だが、県としては、今回の大震災津波被害が非常に甚大であるということで、多くの児童・生徒が被災している状況を踏まえ、国の被災児童・生徒就学支援等臨時特例交付金の事業の継続延長を要望してきたところである。国においては、第三次補正予算案において、平成24年度から26年度までの3カ年になるが、延長にともなう所要額が計上されていると承知している。
また、県の6月補正で措置したところだが、被災児童・生徒就学援助事業費補助の関係について、被災した児童・生徒の就学の機会均等、あるいは経済的理由により就学ができなくなるということがあってはならないということで、県で予算措置をしたわけだが、この対象人数だが、予算ベースで5093人に対し約7億3800万円の予算を措置しているところである。これについては、国の特例交付金を活用して予算措置し、国からは10分の10のお金がくるということで、必要十分な予算になっている。
【高田委員】
1年限りの対応ということで県が国に向けて引き続きの支援をいただくと。
被災地では、仕事の確保や失業者が増えて、将来どうやっていっていいか分からないという状況があり、まだまだ解決しなければならない課題がたくさんあるので、引き続き国に対して支援の拡充・充実を求めていただきたい。
・学校施設の耐震化について
【高田委員】
一般質問でも取り上げたが、高校については100%の目標に向けて具体的に取り組んでおり、そういう方向になっているということだった。
小中学校については、27年度末までの耐震化については、484棟のうち378棟が27年度までに耐震化されるという答弁だった。残る106棟はどうするのかということになる。これまでは、統合が具体的に決まったとか進めている学校については、やむを得ない面があるが、それを除く学校については、ここ3年とか4年とか目標を決めて耐震化を図るべきではないか。財政的な問題もあると思うが、国の耐震化に対する支援策を強めていくということが根本にあるが、やはり県としても3年以内にやるような特別な手立て・対策が必要ではないか。国の支援策の拡充を待ってから対応ということでいいのか。
【学校施設課長】
耐震化については、平成27年度までのできるだけ早い時期に耐震化を完了することを目指すということで、文科省のほうでその目標を示しているところであるので、市町村に対してはさらに耐震化を促進するように働きかけていきたい。
この耐震化にあたっては、国においても補助制度があるわけだが、補助率のかさ上げだとか予算措置等もなされるように国に対して強く働きかけをしていきたい。
県の手立てだが、まずは国の補助制度等を活用して進めていただければと思う。
【高田委員】
今回の大震災を振り返ってみて、今県政にとって必要なのは、いうまでもなく被災地の救援復興であり、何よりも大震災を経験して災害に強いまちづくりだと思う。そのときに、子どもたちが1日の大半を過ごす学校、災害時に避難所になる学校の耐震化というのは待ったなしの課題である。国も目標を示しながら財政的な支援がいま一つだというのは問題だと思う。しかしここを待っていては前に進まないと。問題は、統合の問題と財政的な問題だと。そうであるならば、市町村に対して指導を助言するということにとどまらないで、踏み込んだ支援策が必要ではないかと思うがいかがか。
【学校施設課長】
国においては補正予算等で措置しているという状況もあり、来年度当初予算でも前倒しで実施というような情報もあるが、いずれそういった形で財政的な部分については、国の補正等も活用させていただく中で耐震化を早急に進めていくことが非常に大事だと思う。
県としても、各市町村では耐震化を進めるにあたってのいろんな事情があろうかと思うので、きめ細かく把握した上で個別の状況に応じたお願いをしていくということも必要だろうと考えている。
【高田委員】
ぜひそういう方向で頑張って取り組んでいただきたい。
・教職員の定数増員、少人数学級について
【高田委員】
被災地では、学校の再建や教育費の負担軽減とともに、子どものケアの問題、生活の心配などさまざまな課題がある中で、教職員の増員を求める声も出ている。教職員自身も被災者であるので、さまざまな形で苦労されていると思う。そういう点では、この間さまざまな被災地の学校に対する職員の増員などに取り組んでいることも承知しているが、今の教員の定数の増員のあり方ではまだ不十分ではないかと思うがいかがか。
少人数学級の問題については、22年度の少人数学級の調査結果を拝見したが、県教委もこの少人数学級の効果は大きな成果が出ていると認めているが、これはさらに引き上げると、小学校3年4年まで引き上げるということを考えていくべきではないかと思うがいかがか。
【小中学校人事課長】
教職員定数の増員についてだが、子どもたちの心のケア等を含めて、生徒指導上の課題等については、国の加配措置(児童・生徒支援)や県で行っているすこやかサポート・学校生活サポート等を配置しながら、一人一人の状況に応じたきめ細かな指導をしているところである。また東日本大震災津波による甚大な被害を受けた沿岸部の学校を中心として、子どもたちの心のケアや学習の遅れ等に対応するために、国から震災加配措置により201人を増員し対応しているところである。今後についても、継続されるように、震災加配については、子どもたちの状況、学校の状況を把握しながら国に要望していきたい。
少人数学級については、委員お話しの通り成果があがっている。今年度、小学校1・2年生に国の制度として35人以下学級が実施されたわけだが、その定数措置については、少人数加配から振り替えられたところで、今回も小学校2年生へ35人以下学級を実施するための定数改善に向けて、文科省では国に概算要求しているところだが、この定数措置がどのように行われていくのか、国の予算編成状況や定数改善計画の方向を踏まえながら慎重に検討していきたい。
【高田委員】
少人数学級だが、先ほど教育長から財政的な問題がありなかなか限界だということだった。しかし文科省の動きを見ると、新年度については2年生まで拡大するという概算要求になっていることで、これまで国は1年生、岩手県はそれに上乗せした形で2年生と。来年国がそういう形で2年生まで拡大するとなると、さらに新たな財政負担というのはなくなるわけで、3年生に引き上げるなどの条件があるのではないかと思うがいかがか。
【小中学校人事課長】
小学校2年生の35人以下学級については、今年度同様に大幅な定数改善がなされない場合もあるということが予想されるので、この動向を注視しながら考えていきたい。
小学校3年生の拡充となると、小学校3年生4年生の接続・連続を考えると、次年度の拡充も踏まえなければいけないので、国の定数改善計画の状況を十分に見ながら岩手の少人数教育の在り方について検討していきたい。
【高田委員】
文科省の動きもあり、それほど財政負担にならないで対応できると思う。ただ、県教委としては、少人数学級に対する調査でも、大きな効果があるということを市町村教委も学校関係者も共通した声になっている。ですから県教委としては、財政的な問題ということで、知事部局の方向に向くのではなくて、現場の方々の声に応えて、子どもたちの成長という立場で取り組んでいくべきだと思うがいかがか。
また、やはり国に対する要求というのも大事である。この間政府は8年間で小中学校で35人学級、小学校では1・2年生を30人以下にするということを8年計画で作った。ところが、財源問題を理由に今回1年生のみになったということで、やはり計画はあるのだが、さまざまな理由を挙げてできないということで、こういった国の対応も正して要求していくことが大事だと思うがいかがか。
【教育長】
子どもたちにより良い教育環境を整えるというのが私たちの最大の務めである。したがい、こういった義務教育においては、基本となる制度については、国においてしっかり措置していただくべきだろうと思っており、35人以下学級についても、現場から一定の効果があるという評価をいただいているので、そういった点が一刻も早く実現できるよう、あらゆる機会を通じて国に訴えていきたい。
小学校1・2年生、中学校1年生で実施している少人数学級については、国の加配措置を活用しながらやってきたと。今回、国において小学校1年生に35人以下学級を導入したわけだが、加配措置を振り替える形で実施されたので、したがい今後国の定数改善計画等の動向をしっかり見極める必要がある。
・放射能対策について
【高田委員】
市町村については地上地点で測定しているが、県の施設については必ずしもそうではないと。市町村と同じような対応をぜひしていただきたい。
先ほど予備調査をしているということだったが、県の施設においては地表面を測定して、局所的に高いところについては50cm・1mで調査し、そして基準値を超えたところは除染対象とすると。この局所的に高いところの調査というのはどういうのを指すのか。
【スポーツ健康課総括課長】
例えば、校舎があったとして、校舎の周りを線量計を持ってぐるっと歩き、針の振れが出るので、その針の振れを確認したところにマークを置き、再度そこの高い位置で線量を図るという方法である。
【高田委員】
そうすると、地表面を測定するということか。
【スポーツ健康課総括課長】
地表面の線量は反動させる。線量計の針の動きで確認しており、例えば、そこの線量を図るとすれば、30秒なり何秒を何回か繰り返して正確な線量を出すものであるので、それについては50cmの高さ、1mの高さで測り、国の基準に合わせて除染が必要な場所であるのかどうかを判定するということである。
【高田委員】
国の基準に合わせた対応をするのではなくて、現在県内市町村でやっている調査、除染に合わせるということが必要ではないか。同じ県内に住んでいて、県の施設と市町村の対応が食い違っているということは行政不信が出てくるのではないか。
【スポーツ健康課総括課長】
現在、除染の目安として示されている数値については、国から示されている1メートルあるいは50センチで1マイクロシーベルト毎時というものしかない。
例えば、1センチ5センチで何マイクロシーベルト毎時が出たときに、除染しなさいという知見は我々は持ちあわせていないので、国の指標で統一して運用させていただいている。
【斉藤委員】
放射線測定の問題で総括質疑でも取り上げたが、岩手県の方針は変わっている。利用状況に応じて県も対応するというのが今の方針である。市町村は、盛岡も奥州も地上5センチ。一関は1センチであった。1センチでやったら1マイクロシーベルトを超えたのは91施設480カ所である。圧倒的にホットスポットが増えたのである。
県立学校、特別支援学校、利用状況からいったら、市町村と同じようにやるべきではないか。それが総務部長が答弁した中身ではないか。県が関わる教育施設は、地上地点の測定はやらないのか。利用状況に応じてというのはどういうことか。
【教育長】
測定の実態および現在の教育委員会の除染の考え方は先ほど課長から申し上げた通りである。
我々としては、県立学校の子どもたちに一刻も早く安心してもらえる状況を作り出すことが大事だと思っており、現在行っている測定と除染、県南部の40校について完了し、これから県北にうつっていく。県北部についても一刻も早く完了するように努め、ただこれは、一通り測定・除染が終わっても、これで終わりということではない。引き続き今後も落ち葉等の対策もあるので、今後継続して全ての県立学校において測定を行い、必要があれば除染措置するなど、継続した取り組みをやっていきたいと思っており、そういった継続した取り組みを行うことにより、生徒や父兄の方々に安心をもってもらうことが喫緊の課題ではないかと思っている。
【斉藤委員】
利用状況に応じて、県も市町村に準じてやるというのが総務部長の答弁だった。いま二重基準になっている。市町村は地上地点でやって除染の対象にしている。50センチ1メートルを図るときに地上地点も測ったのかどうか。地上地点も測った上で50センチ1メートルを公表して除染の対象にしているのか。
市町村は地上地点で県がそうではないという二重基準では県民の理解は得られないと思う。同じ基準でやるべきではないか。県の方が遅れている。
【教育長】
やはり継続した取り組みをしっかりやって、今回もこれで終わりということではないので、そういった取り組みをやることにより、生徒や父兄の方々に安心をもってもらうことが大事だと思っている。
市町村において、実態に応じて5センチで測定し除染の対象にしたり、10センチでしたりと対応している市町村があることは承知している。一方でそういったことに対して、県で一定の支援を行うこととしているが、そこを逆にそういった場合には支援をしないということの方が逆に県と市町村の関係で問題であろうと思うので支援することとしており、そういった意味では、市町村の実態に応じて極力市町村と一緒になって県民の方々の安心を守っていくという県としての姿勢を示しえたものではないかと思っている。
【スポーツ健康課総括課長】
局所的に放射線量が高い地点の絞り込みをするために地表面を測っているが、これについては、3秒測って振れるというレベルかどうかを確認して、それを上に上げて10秒で測るということをしているので、高いところで振れているという状況は確認できるが、その数値が正確かどうかということについては公表できるものではないと認識している。
【斉藤委員】
結局、今の段階だと総務部長は市町村に準じてやると言ったが、県教委はやらないと。
3秒だけやったというのはやったことにならない。せっかく市町村がそういう形でやっているときに、もう7ヶ月過ぎているときに、これから継続的にやるという悠長な対応だから県民の理解を得られない。
【教育長】
やはり50センチ1メートルのところでの測定値を、一定の測定方法に基づき測ってそこを除染の対象にしているというのが現状であるので、今後国の知見等も変わってくると思う。残念ながら我々の方で国の知見が誤っているという科学的根拠を持ちあわせているわけではないので、したがいそういった統一的な国の基準に基づいて必要があれば見直す等、県民の方々に安心していただくような取り組みを今後ともしっかりやっていく。