2011年11月1日 決算特別委員会
農林水産部(農業部分)に対する質疑大要


・農業生産額の推移について

【斉藤委員】
 農業予算を減らしてきたというのは、農業県・食糧県を標榜する上ではきわめて問題だと思うがいかがか。

【農林水産部長】
 生産額については、委員ご指摘のあったような要因を背景としての減少だと考えている。
 予算額の減少については、公共事業費の減少が非常に大きいと。ただ生産基盤の整備がそれだけ進捗が遅れているということにつながっていると考えるが、今後に向けて農地整備等の公共事業予算の確保もできる限りのことをしながら確保して、今後の農業の振興を図っていきたい。

【斉藤委員】
 公共事業を増やしすぎたという問題はあると思う。それを差し引いても、農業予算というのは激減をしたと。これでは農業を立て直そうにも立て直せない。


・TPPの問題について

【斉藤委員】
 知事が10月28日に緊急提言書を提出した。どこに提出したかというと、民主党岩手県連に行った。だから新聞記事も小さいものだった。
 岩手県の農業の死活にかかわる重大問題で、知事の行動がこんなことでいいのか。北海道の知事も鹿児島も政府に直接足を運んでやっている。あまりにもお粗末ではないかと思うが、相談してやったのか。

【農林水産部長】
 10月28日の緊急提言については、政府に対して提言するときのルールに則り実施したものである。

【斉藤委員】
 民主党県連に知事が足を運んで、それがルールか。なぜ政府に行かないのか。こんな重大な問題を、県議会で喧々諤々議論し意見書もあげた。そういうときに、11月12・13日のAPECで決めようというときに、知事が政府に足を運んで総理大臣や官房長官になぜ会わないのか。こんなお粗末な対応は本当に弱腰ではないか。こんなことでアピールできるか。

【農林水産部長】
 今回の知事の提言書の提出だが、全国知事会が提出した、北東知事会が提出した、重ねて知事が自ら提言書を提出したということであり、十分アピールしているのだと理解している。

【斉藤委員】
 緊急提言書をもらったが、宛名が書いていない。私がいただのが間違っていたのか。知事が、こういうときこそ、何をさておいても政府に足を運んで直訴するぐらいのそういうことではないとこの問題は打開できない。
 やはり危機意識が欠けているのではないかと思うので立ち入って聞きたい。TPPは関税撤廃が原則である。農林水産部もその影響調査は行った。コメは95%596億円減少すると。岩手県の米生産費、対アメリカの輸出額はどうなっているか。

【水田農業課長】
 コメの岩手県の生産費は、直近の平成21年で申し上げると、60キロあたりで14219円となっている。
 外国産米の輸入価格は、今年度23年度のミニマムアクセス米の入札結果は、アメリカ・タイ・オーストラリアの3カ国が落札の実績があり、落札価格は税込みで1トンあたり約63000〜80000円程度となっており、60キロあたりに換算すると3800円〜4800円となる。

【斉藤委員】
 14219円に対して、外国産が3800〜4800円だと。これで岩手の農業が守られるのか。
 牛肉・ブロイラーについても聞くが、岩手県の試算では、牛肉は61%120億円減少すると。乳牛は100%214億円である。岩手の畜産が壊滅である。畜産は産出額の6割を占めると。本当に原則関税撤廃になったら、岩手の農業は柱も何もなくなるのではないか。

【農林水産部長】
 ご指摘のあった生産額の減少については、農水省の試算に基づき、100%関税が撤廃され、何らの国内施策が講じられなかった場合の計算として算出されていると。それを岩手に当てはめて試算した結果であり、いま参加の可否、交易条件、国内対策が何ら明らかにされていない段階での評価は控えさせていただきたい。

【斉藤委員】
 決まってから何を言ってもだめである。今許せないのだと。
 これは農業だけではなく、製造業の第一は出荷額は食料品である。食料品出荷額の主な中身は分かるか。

【流通課総括課長】
 正確な形での食料品の製造出荷額の推移が、21年のものが確定数値かどうか自信がないが、平成21年で3582億円となっている。

【斉藤委員】
 その中身を聞いたのだが、食料品は3594億円で、製造業出荷額の第1位である。その中身は、第1位が畜産食料品製造業で1610億円、第2位が水産食料品製造業で740億円、第3位がパン・菓子製造業―。いわば農業だけでなく、岩手の農林水産物を原料にした畜産加工や水産食料品、これがその中身である。まさに岩手の食料品出荷額の大半を占める影響がきわめて大きいのではないか。そういう試算はしていないか。

【農林水産企画室企画課長】
 農林水産部においては、先に昨年の11月に示した通り、農林水産物にかかる影響額については試算しているが、それ以外のものについては、国では多面的機能への影響だとか出しているが、国の試算方法が明らかになっていないもので、それとしては直接の農林水産物への影響についてのみ試算しているところである。

【斉藤委員】
 これは農業が壊滅するだけではなく、岩手の製造業の第1位である食料品製造業、地域経済に重大な打撃を与える。
 先ほど食料品出荷額の主な中身が畜産食料品であり水産食料品だと。この原料は県内からどのぐらい供給されているか。

【農林水産企画室企画課長】
 我々としては承知していない。

【斉藤委員】
 畜産の中ではブロイラーがかなりを占める。本当にブロイラーもダメになるし牛肉もダメになる。そういう意味では、しっかり影響を把握してやるべきである。
 知事の提言書は、「慎重に対処すること」である。反対がまだ打ち出せていない。3月の予算委員会でも同じ答弁だった。半年過ぎても慎重にと、直前のこの段階ではっきりこういうTPPには反対だと主張すべきである。半年経って同じようなことをやっているようでは県民に危機感が伝わらない。


・放射能汚染対策と全面賠償について

【斉藤委員】
 放射能汚染の実態を簡潔に、そして今の時点で損害額はどのように出ているのか、調査率はどのぐらいか。

【担い手対策課長】
 放射能汚染の実態だが、本県では牧草について国の暫定許容値を強化した放射能物質が検出されて、現在のところ一関市・遠野市・陸前高田市・平泉町の4市町8エリアで牧草の利用自粛がかかっている。
 損害額は、損害賠償対策岩手県協議会が今まで請求した額として紹介させていただくと、10月末までに東電に請求した分として、牧草の利用自粛に関わる損害が約5600万円、肉牛の下落や出荷制限にかかる損害が約9億6000万円、稲わらの代替飼料確保に要した経費として約160万円、牛肉の検査に要した費用として2400万円、計10億4300万円となっている。調査率については、どの程度まで広がりを見せているかが不明であるので、現時点ではお答えできない。

【斉藤委員】
 例えば、肉牛の9億6000万円というのが一番高いが、肉牛については出荷停止分と飼料分、飼料分はどのぐらいの被害率か分からないか。

【農政担当技監】
 被害額の積算として、販売したときの代金の風評被害にともなう下落分に加え、飼育期間の延長にともなうかかり増し経費、これはエサ代だが、具体的に数字は1ヶ月で約2万円のエサ代がかかるととらえている。

【斉藤委員】
 東電が知事にも議長のところにも来たようだが、この時点で賠償は3ヶ月に1回だと。私は農家の被害というのは毎月経費・生活費がかかるので、これは毎月賠償させるということが必要だと思うが、東電の副社長とのやりとり、東電の現段階での対応はどうなっているか。

【担い手対策課長】
 賠償金の支払い期間だが、当初東電は3ヶ月ごとに清算して支払うという予定だったが、毎月払うような形で前倒しで支払いが始まっている。11月末に請求した分については、12月の中頃には支払いできるだろうと。10月末の分については農家の手元に届くようにと。それからもう一度年内の請求があるが、11月11日までに請求した分については、年内に支払いたいという意向を示している。

【斉藤委員】
 年内までは見えたようだが、これはきちんと毎月賠償させるということでしっかりやっていただきたい。
 それで、牛肉もそうだが、80万円で事実上買い上げて60万円で売れば農家が20万円返還する。そして農家がその分を賠償請求すると。こういう二度手間をしないで、例えば畜産協会にそれを委託しているのだったら、畜産協会が協議会でまとめるのだったら、売った証明書で差額をみると。賠償金額を超えなければ農家に戻らないというやり方は見直すべきではないか。

【畜産課総括課長】
 今回の放射性物質問題の原因者は東電であるという大原則があるので、それに基づき東電に損害賠償を請求するというのが原則である。事業主体をどこにするかという話は、損害賠償の協議会が畜産物の実質買い上げ事業の事業者にはなれないということもあり、逆に畜産協会が損害賠償の請求をするということも想定していないので、今のようなスキームになる。
 結果として、畜産協会が数字を持っているので、それと損害賠償との協議会と連携してやれば、スムーズにいくと考えている。

【斉藤委員】
 例えば、黒毛なら黒毛で80万円で買い上げると、これは県の制度でも国の制度でも。しかし60万円で売れば20万円を畜産協会に返すと。こんな面倒なことをやらずに、畜産協会が事務手続きを代行すればいいだけの話だけではないか。そうなっていないのか。

【畜産課総括課長】
 例えば、80万円先に生産者に交付金としてお渡しすると。それで60万円で売れた場合は、60万円と、東電に損害賠償をした後下ろしていただくというスキームになっているので、先に20万円払うということではない。

【斉藤委員】
 ちょっとよく分からないが、損害賠償した後に20万円を畜産協会に戻すのか。

【畜産課総括課長】
 80万円を畜産協会から生産者に交付する。生産者は市場で例えば60万円で売れたとすると、そのときに返してもいいですし、東電から20万円から賠償請求して、返ってきたときにあわせて返してもいいというスキームになっている。

【斉藤委員】
 賠償額が入ってから返してもいいと。売った後に返すということでもいいと理解していいか。事実上、賠償されたあと戻すと。

【畜産課総括課長】
 国の要項でも、販売時もしくは損害賠償を受けたときに返還するとなっている。

【斉藤委員】
 販売時ということを聞いていたので、それは賠償時でもいいということですね。それは県の事業も国の事業も同じだと。