2011年11月1日 決算特別委員会
農林水産部(林業・水産部分)に対する質疑大要
・林業の生産額と決算額について
【斉藤委員】
林業の生産額と決算額の推移について示していただきたい。
1960年代に、真っ先に輸入自由化の洗礼を受けているが、輸入自由化の県内林業に対する影響はどうだったのか。
【林業振興課総括課長】
本県の林業産出額の推移だが、昭和55年の419億円をピークに、平成21年には195億円と大幅に減少している。このうち産出額の大部分を占める木材生産額で見ると、同じく昭和55年の365億円から平成21年には129億円と約4割まで落ち込んできている。これは、木材価格の下落とその影響を受けた木材生産量の減少が主な要因と考えている。
自由化の県内林業への影響だが、昭和39(1964)年に丸太の関税が撤廃されて以来、すでに40年以上が経過しており、この間経済・社会環境も大きく変化しており、この影響を具体的に算出することは困難である。
【農林水産企画室企画課長】
林業関係の決算額の推移だが、平成22年度は、169億3200万円余となっており、平成5年の119億8000万円余に比べ、49億5200万円余増えている。
一方、10年前の平成2年は295億6100万円余と比べると、126億2800万円余減少しており、42%ほどの減少となっている。
【斉藤委員】
昭和55年の419億円から平成21年は195億円と。まさにこれが自由化の影響である。自由化の影響が分からないという答弁をしてはいけない。丸太の価格が3分の1に下がった。そして、当時の自給率は80%ぐらい、いまは26%ぐらいだと思うがいかがか。
【林務担当技監】
自給率は委員お話しのあった26%だと認識している。
昭和39年、完全自由化の前の自給率は、はっきりした数字は記憶しておらず、ただ、委員ご指摘の通り、8割程度だと記憶している。
【斉藤委員】
TPPを考えるときに、林業というのは60年代に自由化されて、これが1つの実証だと思う。自給率が約8割から26%に、丸太の価格は3分の1に下がりほとんど変わっていない。さらにTPPで関税を撤廃するとしたら、いま林業を盛り上げようとしているときに、政府の政策でも木材自給率を50%と掲げている。これに全く逆行するやり方ではないのか。
この林業の分野でTPPの与える影響を部長にお聞きしたい。
【農林水産部長】
交渉参加の可否、交易条件、国内対策等が明らかになっていないので、影響額を推し量ることは困難である。
【斉藤委員】
政府の答弁よりひどい。TPPに参加しようというときに、対策が示されていないことが異常である。示されていなかったら、その中で判断するしかない。そういうTPPに断固として反対と部長が言えなかったら、どうやって岩手の林業を守るのか。今いろんな議論がされているが、これでTPPに参加したら、この議論がまったくムダになる。そういう問題である。そういう意味で、林業の分野というのは真っ先に自由化された、洗礼を受けた、そこに今の困難の最大の原因があると思う。
・県産材の供給量、間伐実施面積について
【斉藤委員】
県産材の供給量、間伐実施面積の推移・課題はどうなっているか。そして林業再生プランに基づく県の取り組みはどうなっているか。
【林務担当技監】
県産材供給量は、平成18年度以降おおむね120万立方メートル前後で推移している。平成22年の供給量は126万立方メートルとなっている。間伐実施面積については、平成18年度から21年度までは、年間約12000ヘクタールで推移してきていたが、平成22年度は、年末年始の豪雪や東日本大震災津波の影響等により、9107ヘクタールと減少したところである。ここ数年横ばいで推移している県産材供給量と間伐実施面積を伸ばすためには、いかに低コストで間伐を進めるかが課題だと考えている。このため、間伐対象森林を集約化し、機会による効率的な間伐を実施できる担い手の育成に取り組むとともに、林内路網の整備、高性能林業機械の導入をさらに促進していきたいと考えている。
森林林業再生プランの取り組みだが、森林林業再生プランは、我が国の森林林業政策を、森林の造成から木材の利用、持続的な森林経営等を大きく転換するもので、10年後に国産材自給率50%以上を目指すものである。このプランは、森林資源が豊富な本県にとって追い風になるものである。1つには、低コスト間伐技術の普及・習得支援など、地域の森林経営を担っていく経営体を育成、2つに、林内路網の整備や機械化など効率的で安定的な林業経営基盤づくり、3つに、合板工場等加工施設整備への支援など、県内木材産業の活性化といったものに重点的に取り組んでいる。こういった取り組みは、本県沿岸地域の復興にも大きく寄与するものと考えている。
【斉藤委員】
森林林業再生プランで、国として木材自給率50%を目指すと。しかし全く反対のことをやろうとしているので、この行方は大変微妙だが、やはり岩手県が先頭に立って森林林業再生プランの取り組みを進める必要がある。
関連して、いま復旧・復興の関わりで、合板工場がかなり被災した。そのために現地から木材を供給できないという状況になっているが、合板工場の被災と再建の見通しを示していただきたい。
【林業振興課総括課長】
沿岸地域に立地する合板工場、製材加工施設等では、津波による建物の損壊や加工施設の流出など甚大な被害を受け、操業停止を余儀なくされた事業体が多くある。このため、県としては、国の一次補正を活用し、木材供給等緊急対策事業として6月補正を措置し、現在この事業を活用しながら合板工場や製材工場の早期復旧・復興を支援している。
さらに、被災した工場に対して、原木等を供給していた事業体に対して、流通コスト支援として緊急の運搬コスト等の支援を行っている。
この一次補正を活用して、宮古地域においては3事業体が復旧に着手し稼働しているところが多くある。
・木質バイオマスエネルギーの取り組みについて
【斉藤委員】
木質バイオマスの取り組みについては、たくさんの方から議論があった。3月につくった「いわて木質バイオマスエネルギー利用拡大プラン〜緑のエネルギー量日本一に向けて〜」と、スローガン、副題はいいが、中身はいまいちである。今までの延長線上ではないのか。ペレットストーブにしても、ペレットボイラー・チップボイラーにしても、岩手県がかなり先遅れて取り組んだというところがある。先駆けたが息切れしている。定着するところまでいかず補助金もやめてしまった。例えば、ペレットストーブでいえば、一般家庭に普及するような研究開発と普及までやらないとダメだと思う。一般家庭から見ると、大きすぎるし高すぎる。今度、住田の仮設住宅に町が小型のペレットストーブを配備した。仮設用のペレットストーブである。それをどこで作ったかというと新潟である。坂本龍一さんの関係があるようだが、そういうことができるのなら、一般家庭用にも使えるものが開発できるのではないか。そういうところまで徹底してやってこそ日本一になると思う。
私はこの間2回葛巻町に行ってきたが、葛巻町が頑張っているが、まだペレットボイラーにしてもバイオマス発電にしても採算がとれるところまでいっていない。それでもはやり日本一の先頭をきってやっている。例えば、自然エネルギーの補助金というのは、太陽光からバイオマスからハイブリットからエコキュートまで、新エネルギーに関わるものは全て補助を出している。ペレットストーブには上限10万円まで出している。そのぐらいのことを、研究開発から普及・定着まで取り組む必要があるのではないかと思うが、そういうところまでやる実績、今後の課題についてお聞きしたい。
【林業振興課総括課長】
本県では、平成10年度からバイオマス利用に取り組み、先駆けて進めている。
これまで、岩手型のペレットストーブの開発と家庭や事業所への普及、県営屋内温水プールなど、公共施設への木質燃料の率先導入、養鶏施設など産業分野への利用拡大に取り組んできた。
この結果、ペレットストーブが平成22年度まで1394台、ペレットボイラーが52台、チップボイラーが20台という導入実績となっている。
今後については、産業分野での利用拡大とそれに対する木質燃料の安定供給などを重点課題に、被災地の復興にもつながる木質バイオマスの利用促進に取り組んでいく。
【斉藤委員】
残念ながら日本一を目指すという意気込みがまだ感じられないが、やはり日本一を目指すというのなら、それだけの積極的な目標・計画、それを裏付けるような補助金も含めた取り組みがなかったら、葛巻町であれだけやっているので、逆に岩手県がそういう取り組みをやったら全国から注目されて、さらに大きな波及効果が出るのだと思う。葛巻町は、年間200〜300団体視察が来ている。これを岩手県規模でやったらそういう大きな効果を発揮できるのではないか。
・漁業分野の生産額と決算額の推移について
【斉藤委員】
漁業分野の生産額と決算額の推移について示していただきたい。
【水産振興課総括課長】
生産額の推移を単年度で比較すると、どうしても年変動が大きいので、直近の5年とそれ以前の5年ごとの平均値で比較した。直近の平成17年から21年までの5カ年平均で見た海面漁業養殖業生産額は、約420億円であり、その前の平成12年から16年までの5カ年平均との比較ではほとんど変化は見られないが、さらに前の平成7年から11年までの5カ年平均との比較では約100億円2割ほど減少している。
【農林水産企画室企画課長】
水産関係の決算額は、平成22年度は53億5300万円余となっている。一方5年前の平成17年は90億400万円余となっており、36億5100万円余減少している。10年前の平成12年度の決算額を見ると、213億6000万円余となっており、160億700万円余減少しており、その減少率は74%ほどとなっている。
【斉藤委員】
漁業の産出額は、400億円前後でこの10年間推移していると。比較的検討していると思うが、一方で水産業予算が10年前の213億円から53億円に74%も減ったと。これは減らしすぎではないか。水産業を守ろうという姿勢が見えない。なぜこれだけ減ったのか。
【農林水産企画室企画課長】
公共事業費を見ると、平成14年当時114億円ほどあったものが22年度は26億円ほどに減っており、これが大きい原因ではないかと思っている。
【斉藤委員】
これは農業と違って、水産業の公共事業というのは漁港の整備なので、簡単にムダ使いとは言えない。そして、114億円だったのが26億円と激減している。
今回は大震災で復旧予算はついているが、今までの流れからいったら本当に水産業を振興させる姿勢にかけたのではないか。
・船の確保、養殖施設の整備について
【斉藤委員】
船の確保はどこまでいったか。
養殖施設の整備はどこまできているか。
定置はどこまで取り組めるようになったのか。
【水産振興課総括課長】
漁船の確保については、共同利用漁船等普及支援対策事業により、今回の補正予算に盛り込んだものも合わせて、約6800隻を整備することとしており、9月末現在の新規登録隻数は1123隻となっている。
養殖施設の整備については、来年の春には収穫が可能となるワカメ・コンブ養殖を中心に、約11000台の整備を進めており、今年度中に被災前の約4割の復旧を目指している。
サケ定置網漁の状況は、これまでに70ヶ統が稼働したところであり、今年度中に被災前の約6割の普及を目指しているが、10月20日現在の秋サケの沿岸漁獲量は605トンと、対前年比で約7割となっており、沿岸漁獲金額2億9000万円で、対前年比約9割となっている。
【斉藤委員】
船の確保が1123隻だと。養殖の整備も、アンカーが届かないとか垂下ロープが届かないとか、漁民は今頑張ろうとしている。この見通しはどうか。例えば年内までにどこまでいきそうなのか。船については、メーカーの製造能力もあるが、そんなことを言っていたら予算が消化できない。
【漁業調整課長】
漁船の復旧については、現在国にも申し入れしており、国の方では、全国の大手メーカー4社に働きかけて、なるべく早く復旧できるようにお願いしているところである。
養殖施設については、今年度の予算の中で、震災前の約4割の規模の養殖施設の事業を進めているところであり、特にもワカメ・コンブなど収入が早く確保できる海藻類の養殖を優先的に取り組むことで、各漁協と相談しながら進めているところである。
【斉藤委員】
予算化もされて大規模なものになっているので、これがきちんと遂行されるように、現場に届くようにしっかりやっていただきたい。
・サケの刺し網漁について
【斉藤委員】
サケの刺し網漁を求める漁民の声も出ているが、サケの刺し網漁に関わる課題、どういう手続きが求められるのか。
2月24日に知事もこうした漁民の要請を受けている。知事はどういう立場で対応したのか。
【漁業調整課長】
刺し網漁法だが、陸上でいえば霞網みたいなものであり、魚の通り道に農奴的に機動的に施設することで、漁獲効率の高い漁具となっている。そのため、サケの資源保護上の観点から、現在サケを漁獲の対象とはしていない。また、刺し網により、他の漁業との間で操業海域や漁具が錯綜する場面もあるので、漁業調整上の観点からも現在サケの漁獲は認めていない。
なお、刺し網の漁獲に対する手続きだが、まず要望される方々も含めて、漁協の中で地域の中でしっかり議論していただきたいということである。これはサケの資源の管理、利用配分、他の漁業との調整、こういった方向性でしっかり議論した上で合意形成が図られる見通しが立った場合には、県としてもその状況を把握してサケの漁獲について検討を始める土台ができると考えている。
【水産振興課総括課長】
2月24日に漁業者から要望があったわけだが、漁業者の要望は、県と県漁連と彼らの代表との懇談を希望しており、その中には、資源の管理を適切にとか組織の改革をなどといった彼らの思いが4項目あり、それらについて検討することは、いろんな調整をする上でいいと感じたからではないかと思っている。
【斉藤委員】
この問題については、さまざまな課題があると。同時に、知事が直接漁民の要望も受けているということも重大な中身で、漁民の間で大いに議論されて解決されることを期待したい。
・漁港の復旧状況について
【斉藤委員】
111の漁港のうち108漁港が震災で被害を受けた。岩手県が、すべての漁港を復旧させて漁村を守るという方向で取り組んでいることは評価したい。
岩手における漁港の果たしている役割・位置づけ、復旧状況について示していただきたい。
【漁港漁村課総括課長】
漁港の復旧状況は、これまで漁港の舶地・航路に堆積・浮遊していたがれきの撤去、防波堤臨港道路などの応急工事を実施し、被害を受けた108漁港で漁船の利用が可能になっている。
岩手の漁港の位置づけ・役割だが、岩手の漁港というのは、ある意味町と同じような役割を果たしているというものである。漁港は、単に水揚げをするという機能だけでなく、リアス式海岸という特徴の中にあり、用地が少ないところである。漁港の用地の中でいろんなことをやっている。地域の祭りだとか消防演習、散歩コースだったり、内陸の方が魚釣りに来たり、そういう多面的な機能を持っているのが漁港である。それがリアス式海岸のそれぞれの入り江の中に漁業の集落があって、そこに漁港があり生業として成り立っている。それで、沿岸地域には、12市町村あるわけだが、約30万人ぐらいの方々が住んでおり、それで海を守っていただいていると考えている。漁業者の方はもちろん、漁業者の方々が、前浜で養殖をやることにより、海の環境をきれいに保っているということなので、私とすれば沿岸の方々に非常に感謝を申し上げて、岩手県の107キロのきれいな海を守っていただいていると。それは111の漁港で生業をやっているからだと思っているので、その108漁港は全て直したいと考えている。