2011年12月9日 商工文教委員会
雇用対策、中小企業対策に関する質疑(大要)


・雇用創出対策について

【斉藤委員】
 注目すべき事業が、事業復興型雇用創出事業で予算が15億円ということになっているが、この事業の中身をまず示していただきたい。

【雇用対策課長】
 この事業は、これまでの基金事業だと、いわゆる事業者に対する人件費補助を委託事業に対してするような形だったが、今般の事業は、被災地で事業所そのものが被災してなくなっているということで、ハードと人件費とセットで支援しなければいけないという考え方で作られた事業であるので、具体的には、厚労省以外の国または県含めて、施設だとか設備のハード補助や融資等を行った事業者に対して新しく機械や工場ができたと。それで新たに従業員を雇ったりというような場合に対して人件費を向こう3年間にわたり最大で225万円の目安として助成しようというものである。

【斉藤委員】
 今回の予算は15億円と。3年間でどういう額になるのか。そしてこれは、5000人×1000という話もされているが、どういう目標を見込んでいるのか。
 大変重要な事業なのだが、遡及しないと言われている。国の3次補正がこんなに遅れて、すでに再建した企業がたくさんある。宮古の場合だったら被災企業の6割再建している。もし遡及しなかったら、国の補正が遅れたために、いち早く再建した人たちはこの事業の対象にならないと言ったら大変重大な問題ではないか。

【雇用対策課長】
 向こう3年間の見込みだが、国の内示では総額で500億円の基金事業としてきている。うち350億円が事業復興型事業と生涯現役型を合わせたものとなっている。それぞれの事業の配分については、当初予算において今検討中だが、だいたい一人当たり225万円の単価で試算すると、3年間でおそらく10000人から15000人程度雇用が見込まれるのではないか。今回は、1250人分を措置している。
 遡及については、我々も、制度の概要が示された時点から、すでに復旧事業を始めている事業者がいるということで、国に対しては要望してきたところ。先日知事が、12月5日に同様のことを要望しており、そういったことで国に対して制度の改善を要望している。

【斉藤委員】
 今回、基金事業の具体化で、被災住宅再建事業、宅地改修事業などは遡及する。薬局の改修も遡及する。大震災対策は基本的には遡及して対応している。なぜこれだけ遡及対応にならないのか。遡及して当然ではないか。もし、現段階で国の制度で遡及しないということであれば、国の復興基金を使って、県の復興基金を使って独自にでも遡及すると。後で国が追随したらそれは財源振り分けすればいいわけなので、事業のバランスからいっても、これだけは遡及しないということにはならないのではないか。

【雇用対策課長】
 いま国に対してそういった形で意見を申し上げているので、その状況などを見ていきたい。ただ、いろいろ沿岸の事業者にお聞きしている中では、すでに復旧が一部始まっているところがあり、たしかにすでに雇った人はいるが、それは100%ではなく全体の2割3割程度と。これからまだ多数いるということから見ると、そういった制度ができること自体が非常に歓迎しているという話もいただいているので、そういったことも踏まえて検討していきたい。

【斉藤委員】
 ぜひ国への要望、国会でも議論されているので。県がさまざまな震災復旧の対策については遡及してやっている。医療でも住宅でも。これは当然である。雇用だけが、遅れた3次補正を理由にこれからしか対応しないというのは通用しない。3次補正が遅すぎたので、8ヶ月経過してから補正を立てて、それからしか適用しないのはまさに復興に逆行したやり方になるので、是非県の基金の活用も含めて。スピードがいま大事である。後からというのは間に合わないこともあるので。いち早く無理をして再建している。余裕があるわけではない。早く再建したところにも、きちんと同じような支援が行くようにすべきである。

【商工労働観光部長】
 グループ補助金については、3月の発災までさかのぼっている。ですので、雇用対策課長の言われた通り、国に要望しているので、そのように制度が改善されるように努めていきたい。

【斉藤委員】
 ぜひ前向きにやっていただきたい。国の姿勢が変わればいいが、変わらなかったということでアンバランスが起きないように、県としての知恵も発揮していただきたい。
 3つの事業が、3次補正の具体化として提案された。3次補正を直ちに今回の補正に組み込んだという商工労働観光部の姿勢は評価したい。災害緊急雇用事業推進費というものの中身も示していただきたい。
 それから、生涯現役全員参加、これは先ほども議論になったが、これはほとんど、ふるさと雇用再生事業と同じと見ていいのか、事実上その継続と見ていいのか。何か新しい特徴なり条件があるものなのか。ふるさと雇用の正確な実績を示していただきたい。緊急雇用対策事業の実績も示していただきたい。

【雇用対策課長】
 災害緊急雇用事業推進費だが、これは4月の臨時議会において、緊急雇用創出事業の一部として、県が民間に対して委託する分として20億円の全体枠の予算をいただいているところであり、その分の追加として今回、雇用保険の受給期間が沿岸で延長されていたものが今後1月2月に切れるだろうということで、それに対応した事業として今回の補正を提案している。
 生涯現役のふるさと雇用との関係だが、事実上ふるさとと同じようなスキームの事業であるという話は聞いている。ただ、生涯現役の方は高齢者、全員参加というのは例えば女性だとか障害者というような方にもできるだけ雇用の場を提供してほしいというような考え方はある。
 ふるさと雇用の実績だが、今年度の雇用実績は843名、年度当初での目安が726名の雇用見込みだったので、それをクリアしているということである。
 緊急雇用創出事業については、これは震災対応分も含めて9735人という状況である。

【斉藤委員】
 ふるさと雇用の実績で843人というのは、基本的には3年間継続が前提なので増えない数だと思う。延べとしては3倍だが、同じ人が2年目3年目も雇用が継続されるという数ですね。
 雇用保険の延長も1月で切れるという新たな事態も迎えるので、本当に知恵を出して雇用対策をやっていただきたい。


・中小企業対策について

【斉藤委員】
 沿岸被災地の最大の要望は、事業を再建して元の仕事に戻りたいというのが圧倒的に強い。そういう意味でいけば、事業再建をどれだけ早くスピード感を持って行うのかというのが第一義的な課題になっているのではないか。その点で、4分の3のグループ補助、これは3次の見通しを含めてどうなっているか。
 県が今回補正予算に出している修繕費補助、これも20億円規模の事業費になったが、以前聞いた時には要望で17億円あった。現時点で要望がどのぐらいあって、今度の補正で基本的には要望に応えられるのかどうか。
 仮設店舗もやっと整備・オープンしつつあるという状況だが、これも申請数、契約数、建設中、オープンした数を示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 グループ補助の関係だが、3次の公募については、10月19日から11月8日まで公募を行った。現在審査中だが、応募の状況は46グル―プ387社から応募があった。希望の金額としては365億円である。いずれ、これらを審査し、今月の下旬ごろになると思うが、正式な確定になると思う。
 修繕費補助だが、市町村でこの事業を受付している件数が512件で、これは市町村で要項等を制定し、それに合わせて申請されたものであるので、これをすべて網羅する形で今回の場合は補正を組ませていただいた。
 仮設店舗・工場の関係だが、11月末現在で、エントリー数ということでは220件。うち市町村との基本契約を結んでいるものが143カ所である。現在建設中のものが48カ所であり、完成したものが54カ所である。日々数が増えているが、そういった状況である。

【斉藤委員】
 グループ補助は、一次二次で11グループ145社、三次は300億円9月議会で補正になった。しかし300億円のうち100億円程度は3分の1に圧縮した分を4分の3に戻すというので使われるのではないか。そうすると第三次は実質200億円弱ということになるのではないか。岩手県が絞り込んで申請したグループ数、事業者数はどうなるか。この300億円では対応しきれないのではないか。
 修繕費補助は512件の申請だと。私はリアルに聞いているのだが17億円の申請があったと。だから基本的には申請には応えられると受け止めていいのか。
 仮設店舗については、220件のエントリーで、契約が143、完成が54で半分もいっていない。9ヶ月が経過してテンポが遅いと事業者もやきもきしている。220件の今後の契約の見通し、建設中のものは年内にどこまでいくのか。

【経営支援課総括課長】
 グループ補助だが、申請件数は16グループということで現在審査中であるので、その中から選定することになる。国では、次年度に向けても概算要求しているようであるので、今回対象にならなかったものについては来年度に向けて対応していきたい。
 修繕費補助については、512件で20億2881万円となっている。うち半分を県が補助するのでその分を今回要求した。
 仮設店舗の関係だが、今年中に完成の見込みが20ヶ所と聞いている。いずれ機構の方でも、現地で要望が高いということはよく認識しているので、早急に整備されるようにしたい。

【斉藤委員】
 グループ補助は一番期待の大きい中小企業に対する支援策である。残念ながら少しずつ予算が追加され、最初から一気に予算をやればスピードも早かったと思う。3次でやっと300億円が追加で出されたと。しかし3次に対する申請が46グループ387社である。おそらく今国に申請しているのが19グループぐらいだと思う。そうすると、半分ぐらいの企業しか対象にならないのではないか。この点でも不公平感が出てくる。同じ被災を受けて、グループ補助を受けられる企業とそうでない企業。受けられないまま年を越すというのは残念な事態である。
 当初予算となったら、来年度である。これも復興基金の活用も考えて後からの財源の振り分けがあるとしても、やはり年内に必要な手立てをとる必要があるのではないか。再建を希望するすべての事業者にきちんと手当する必要があるのではないかと思うがいかがか。

【経営支援課総括課長】
 グループ補助については、大変要望が多いということで承知しているが、いずれ国の方に現地の情報を伝えながら事業についてより多く配分できるようにと思っている。
 あわせて、県の方でさまざまな制度融資も創設しているので、そういったことも事業者の皆さんが総合的に利用していただきながら早期の復旧に取り組んでいただけるようにと思っている。

【斉藤委員】
 制度融資の活用とグループ補助とは全然違う。一定程度の企業はグループ補助の対象になったと。しかし最後まで対象にならなかった事業所を残していいのかと。再建を希望するすべての事業者を対象にして、復興をスピードアップすると。それが雇用の確保につながるという点で、国の遅れが一番の問題だが、今回の3次補正で1兆2000億円の復興基金が出ている。新たにまた復興基金の積立になる。そういうことも含めて、県がいち早く対応すべきではないか。ぜひ再建を希望するすべての事業者を、9ヶ月経った段階で、年を越さない形で県が支援策を示す必要があるのではないか。
 グループ補助について、せっかく補助が決まったのに補助金が届かない、遅いと。しかしかなり改善されて、概算払いや一定の額が決まれば事前払いも可能だと。国会でもそういう答弁があったが、そういう補助金の速やかな支払い、現状をどう改善されているのか。

【商工労働観光部長】
 支払の件だが、前金払いができるになったので、資金的にはまず良いだろうと。それから、金融機関には、グループ補助金が送られるような企業に関しては資金繰りも十分融通してあげてくれという要請もしている。
 それから、グループ補助金だけがクローズアップされており、実は企業というのは、企業の数だけ事情がある。したがい、真に補助金が必要なのか、融資が必要なのか、あるいは経営相談のような地道なコンサルが必要なのか、それぞれ個別に相談していかなければならないと思っている。まず、相談体制をきちんと敷いているというのがまず第一前提、ですから、商工会議所や市町村、振興局、本庁でも窓口を作っており、それぞれの企業の事情をよく聞いた上で、何が一番いいのかという相談に応じるようにしている。企業の方々には、低利の融資制度もつくっており、今の時点で一番使いやすいものを使ってくれという相談体制をとっている。その選択の中でいろいろなものを選んでいただいて、自分の中で何が一番いいのかというような形で進めていきたい。

【斉藤委員】
 今の部長答弁に関わって、相談体制の強化はその通りである。
 二重ローンの相談センターもつくられた。そして第1号の陸前高田の老舗の和菓子屋が債権の買い取りということも決まり喜んでいるが、その後のニュースがない。どれだけの相談件数があって、どれだけの再建買い取りの対象になって、いまどこまでいっているのか。
 そして、国の再生機構というのも法案ができて、4次補正で対応するとなっているが、これは年明けになってしまう。リース物件なども対象にするという話だが、やはり最大限今の復興機構で対応していただきたいと思っている。この復興機構の取り組みを示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 11月末現在の状況だが、相談件数は370件だが重複しているものもあるので実際の件数としては162件である。うち、5割ほどが従業員20人以下の企業である。相談内容は、9割が債権の買い取りを希望しているということで、1割が各種の制度の照会だった。そういった状況だが、この中から債権の買い取りをした場合、事業再生計画などを作成することになる。その作成や、債権調査を行う必要があるので、そういった段階を経て最終的には相談センターの方から機構に債権の買い取りを申請するということになる。
 国の再生機構だが、来年の3月ころを目途に株式会社を立ち上げられるということだが、いずれ先日国の説明会があった際には、現在ある復興相談センターと窓口は一元化するような形で考えているということである。