2011年12月12日 決算特別委員会
花泉診療所民間移管問題に関する集中審査での知事に対する質疑大要
・有床診療所の運営が1年で破たんした問題について
【斉藤委員】
医療法人白光による有床診療所の運営は、実態的にはわずか1年で破たんしたことについて、知事は何が要因と考えているか。
【達増知事】
先ほど担当からも答弁があったが、医療法人において、訴訟リスク等を抱えて有床診療所を運営した場合、法人全体の運営が立ちいかなくなる可能性があると判断して、入院患者の受け入れを行わないこととしたということを医療局から報告を受けている。
【斉藤委員】
そんなことで有床診療所は破たんしない。常勤医師が不在になったから行き詰まったのではないか。知事はそう思わないか。
【達増知事】
医療法人側の説明について、先ほど説明した通りである。
【斉藤委員】
まともに知事は答えられない。入院患者がなぜいなくなったのか。訴訟リスクがあるからか。
【達増知事】
入院患者がいなくなったことについて、当該診療所の経営、特に入院に関する経緯については資料にある通りであるが、さらにそれについてうかがいたいことがあれば担当から説明させたい。
【医療局長】
昨年常勤医が着任してからは、入院患者も一日平均約13人ということで、地域の医療機関という形で定着しつつあったと認識しており、先般その常勤医が退職するということで、当時は一次的な入院患者の調整ということで入院患者を抑えていたと聞いている。
【斉藤委員】
そもそも、昨年の4月から常勤医はいなかった。7月末に常勤医が配置された。実質8月末で辞めている。今年の9月1日には別の医療機関に就職している。だから入院患者も追い出して、入院できなくなった。知事はこの事実、その通りではないか。
【医療局長】
具体には医療法人の中での入院患者の動きなので私から答弁させていただきたい。委員ご指摘の通り、外来も含めそうだが、一定の入院患者なり外来の患者が増える、一定数いるというのは、我々が日常病院にかかる場合もそうだが、ある程度医師との信頼関係というか、そういうものが患者数を一定確保するという要因であるとは考えている。
そういう意味では委員ご指摘の通り、医師がいろいろ変遷してきているというのは経営状況が影響を与えていると思っている。
【斉藤委員】
知事は、平成21年9月7日に、「大変素晴らしい方向に進んでいる」と民間移管を評価している。この評価でいいのか。
【達増知事】
ご指摘の記者会見における発言だが、地元の皆さんの理解も得ながら、医療局という自治体病院の仕組みだけでやっていくよりも、手厚い地域医療の体制を構築できるということで、「大変素晴らしい方向に進んでいると思う」と発言したものである。その方向性が素晴らしいものであるということについては、民間委託というものの可能性としては今後もあるものだと考えている。
【斉藤委員】
医療法人白光に任せたから行き詰まって失敗したのである。その結果についてどう受け止めているか。
【達増知事】
今般の事態についての所見だが、そもそも旧花泉地域診療センターについては、当直業務等により医師の負担が大きくなっていることから、岩手県立病院等の新しい経営計画に基づいて平成21年4月から休床として外来を中心とした診療を行うこととしたものだが、入院ベットが必要であるという地域の強い意向に沿って、地元一関市の意見も聞きながら、民間事業者のノウハウに期待して移管を進めたものであり、この診療所においては、昨年7月に常勤医師が着任した以降は、入院患者が徐々に増加して、地域の入院施設として定着しつつあったものと認識したところだが、今般運営する医療法人から、現状のまま有床診療所として運営することは難しいとの意向が示された。
県としては、一関市とも協議した結果、民間移管前の医療局による無床診療所に戻すことにして、そのために必要な準備を進めることとしたいと考えている。
・医療法人の事業計画について
【斉藤委員】
あなたが「大変素晴らしい方向に進んでいる」という医療法人白光による有床診療所が破たんした。なぜ破たんしたか、最初から根拠がなかった。私はずっとそのことを指摘してきた。
医療法人白光が提出した事業計画、とりわけ医師確保について、資料の33ページで、ヒアリングで出した医師9月1 日、事業計画が議会にかかったとき、全部違っている。公募をして、5人の医師を確保したと。住民懇談会でも年齢まで紹介した。誰も残っていない。事業計画が最初からごまかしだった。成功するわけがない。
この医師の経過のところで、医師確保した話はまったく根拠がなかった、デタラメだったと認めるか。
【達増知事】
医師がどのように確保されていたのかは表の通りだが、さらに詳しい質問があるのであれば担当から答弁させたい。
【斉藤委員】
知事は答えられない。事業計画の中で、一番大事なのは医師確保である。そこだけ確認したい。
【医療局長】
委員ご指摘の通り、診療所経営においては医師確保は最重要だと認識している。
【斉藤委員】
公募のときどういう条件だったか。虚偽の報告があった場合には、この申請は止めにするとなっている。最初の公募申請の医師確保は虚偽の報告ではないか。私はこのときの9月議会でそのことを指摘した。1ヶ月後に県議会で議論したときには、この4名の医師はいなかった。
民間移管が強行される昨年4月、3月25日に常勤医師を2名確保したと言ったがそれも嘘だった。常勤Dというのは、体調不良により診療できず、一日も一人も診療できていなかった。去年の契約を結んだときの直前の計画も嘘だった。嘘に嘘を重ねた事業計画ではないのか。
【医療局長】
資料の33ページにある通り、ヒアリング段階等からドクターが変わっているということだが、8月の事業計画提出時点においては、氏名や履歴等を詳しく把握していなかったわけだが、時間の経過の中で、医療法人の中でドクターの条件が合わなかったりなどいろいろあったのではないかと推測しており、いずれ最終的に3月に確認した上で事業者の決定をしたということである。
【斉藤委員】
事業計画で一番大事なのは医師確保だと。その医師確保はまったく根拠がなかった。だったらこの事業計画はまったく根拠を失う。
私は、そのときの審査表を持っているが、一関市にもお願いして、この医療法人白光の事業計画は妥当かと。何を評価しているかというと、医師:常勤2名・非常勤3名の確保を見込み、医師確保の見通しが明るいから認めた。一番大事な中身が嘘だった。だったらこれは採用されてはならなかった。
第二ラウンド、去年民間移管を実施するときも、一週間前の事業計画、医師確保はウソだった。こんな医療法人だから行き詰まった。辞めた常勤医師から聞いたが、「あの親子でやっているうちはダメ」だと。あの医療法人ではいけないと。こうやって頑張ってきた常勤医師が辞めた。医療局長、あなたは辞めた常勤医師から理由を聞いているのではないか。この事業計画の一番大事なところでごまかし、虚偽があったことを認めるか。
【医療局長】
なかなかドクターの確保は県立病院でも困難であり、民間の医療機関においてもいろいろ折衝した中でドクターの確保が条件が折り合わず変わるとかそういうことはあり得るものだと思う。
【斉藤委員】
あり得るものではなく、そればかりだった。医師確保の見通しがあるからこの事業計画は認められた。それが真っ赤なウソだったら、認めてはならないものをあなた方は認めてきた。ある意味では共犯である。県がチェックすべきものをしないで、それを認めて地域住民をごまかしてきた。そうとしか言えない。事業計画の一番大事なところ、チェックすべきところ、あなた方は分かっていて一緒にごまかされ、住民をごまかしてきた。そういうことにならないか。
【達増知事】
事態の説明については先ほど担当の者が説明している通りで、そしてこの花泉地域を含め両磐医療圏の中で、県民が必要な医療をきちんと受けることができるようにということで医療局の新しい経営計画があり、また地元の強い意向を踏まえて、地元の皆さんと協力しての民間力の活用ということがあり、そういったことに対して、きちんと対応していくことが重要と考える。
【斉藤委員】
地域住民の皆さんが地域のベットを守ってほしいと、当然の要求である。しかしあなた方は、地域住民の当然の願いを逆手にとって、いかがわしい医療法人に、ずさんな事業計画を出した医療法人を認めてやらせた。そのことを具体的に指摘しておきたい。
・医療法人と県医療局との接触について
【斉藤委員】
新聞にも出たが、平成21年1月28日の岩手日報の報道で、「医療法人が移管名乗り」。この平成21年1月28日というのは、県が無床化計画を出して、全県で大問題になっていたときである。無床化反対の運動が起きていたときに、無床化反対どころか、民間移管に手をあげた。そしてこの年の3月6日に、有床診療所を運営する定款を変えた。異常な経過である。私の調査では、この2月、この会長はある事業者に、「民間移管は私のところでやることになった」と言っている。とんでもない話である。先ほど審議の中で、「4月以降の民間有床診療所の運営はこれからの準備では困難だ」という医療局長の重要な答弁があった。これが常識である。しかし無床化を強行して、2、3ヶ月で民間移管の方向を決め、公募期間はたった25日間(7月30日〜8月25日)だった。たった25日間で有床診療所に手を上げられる医療法人はあるか。あり得ない。最初から医療法人白光を前提にしてこの民間移管は進められたのではないか。
【医療局長】
21年の1月の報道だが、その前の年の12月定例会において、そういった民間移管を含めたような答弁を行っており、そういったものが新聞等でも報道されているので、そういった動きが民間医療機関の中にあるというのは特段あってはならないことではないと思う。
3月に社員総会において開設等の内部的な意思決定を行っているということについても、当該法人の方向性というか、そういうやり方でやるということは準備行為としてあり得ることだと思う。
公募期間等の関係だが、先ほど委員の質問の中で、4月からについては民間移管公募の形というのはなかなか困難だという答弁をさせていただいた。それは、残り3ヶ月ぐらいの間で公募してやると、実際に応募する、応募を検討する医療法人についてもそれなりの準備期間というのが通常あろうかと思うので、そういった形で期間的なところを見た場合には、今回の事例についてはなかなか難しいという趣旨で答弁させていただいた。
【斉藤委員】
25日間の公募期間で手を上げられる医療法人というのはない。あり得ない話である。あなた方は、地域住民が今まで通り入院ベットが欲しいという当然の要求を逆手にとって、信頼性のない医療法人白光を前提にした民間移管を進めた。事業計画もデタラメだった。これは癒着がなければできない。以前にも求めたが、医療局と医療法人役員との接触・会談、なぜ今日示されないのか。いつから何度接触しているのか。
【医療局長】
医療法人との接触だが、平成21年1月28日に報道がなされて以降、何度か接触をしている。
【斉藤委員】
いつからあったか具体的に聞いている。
【医療局長】
21年2月16日に、磐井病院で会議があった際に法人に立ち寄り、橋本理事と医療局長が面談し、その後何度かお会いしている。
【斉藤委員】
6月8日から8月21日まで、医療法人白光の紹介で診療センター所長候補者が花泉地域診療センターで勤務した。これは花泉地域診療センターの医師はまったく知らなかった。必要でもなかった。まだ公募がされていない、決まってもいないときに、所長の予定候補者をわざわざ試運転させている。これが癒着ではないとしたら何なのか。
【医療局長】
21年6月8日だが、医療法人からの紹介により花泉地域診療センターに臨時医務嘱託1名を採用している。
【斉藤委員】
医療法人白光の紹介で、公募する前に、決まる前に採用している。そのときに花泉地域診療センターは永井先生だった。永井先生は知らなかった。そして必要ないと言っている。内科医が当時2人いた。無床なため3人目はいらないと。しかしこの採用した医師は使い物にならなかった。そして返上した。その返上した医師がシルバーヘルスの管理者になり、ここでもトラブルがありすぐ辞めた。これが経過である。癒着である。最初から医療法人白光にやってもらうという、そういう形で医療法人白光しか手を挙げられないような公募をやったのではないか。
【医療局長】
医師の採用については、2人いるから十分だとかいうことはなく、現に今ある住田地域診療センター、紫波地域診療センターでも3名ほどの常勤医で診療にあたらせていただいている。したがい、花泉地域診療センターについても同様に常勤医2名いたが、それで十分だということではなく、紹介があって、そういった勤務するドクターとの条件があえばそういった採用はやっていくという風なことである。
退職した事由については、個人の話なので申しかねるが、その後については委員ご指摘のような勤務をされたとは聞いているが、それは退職後の当該ドクターの身の振り方という選択だと理解している。
【斉藤委員】
まさに癒着だったと。1月28日に新聞報道されて、医療法人白光はだいたいその前の12月にそういう方向を決めていたと。決めていたにはそれなりの根拠がある。それなりの誘導があった。新聞報道では、「地元の県議がそういう甘い話をたくさん持ってきた」と。私は当事者からも聞いているが、県から言われて始まったと。手を挙げろということで手を挙げたと。この公募の経過というのはきわめて重大で、県や医療局がそれなりに民間医療法人に話をしていないとこの話は進まない。そこで知事が12月にも医療法人会長宛に電話したのではないかと何回か取り上げてきた。その疑惑は徹底して解明されなくてはならない。そういうことはなかったか。
【達増知事】
そもそも平成20年のうちに民営化の議論が行われ、その趣旨が新聞でも報道されていたということであり、また公募が決まって実施された以降の手続きについては、累次説明している通り適切に行われたものであり、そういったプロセスを歪めるような接触等はない。
【斉藤委員】
新聞報道では、地元の県議がかなり前からそういう話を持ってきたと。かなり前だと。これは議会でも誘導質問があったわけだが、地元では知事も県議も一体で取り組んできたと言われている。地元県議と知事というのはそういう協議があったのか、なかったのか。
【達増知事】
公募に至る過程、公募の中、その後のプロセスにおいてご指摘のような接触はない。
【斉藤委員】
9月にある政党の議員団が視察に来て、いろいろな指摘を受けたと。どこの政党の議員団か。
【医療局長】
法人からは、日本共産党の北海道の道議団だと聞いている。そちらが視察に見えられて、中の体制などを見て、こういう体制だと医療事故があったときにはいろいろ問題が起こるといった形での指摘なり、そういった話をいただいたと聞いている。
【斉藤委員】
この問題は、癒着がなければこんな異常な民間移管が進むわけがない。そういう意味では、権限をもった徹底した調査を県議会もやらなくてはいけない。医療法人も呼んで、ここで追及しないと本当の真相は明らかにならない。
・県の責任で有床診療所で運営を
【斉藤委員】
私は、地域住民に対する約束は、有床診療所である。民間移管で破たんしたと言っても、この地域住民への責任が県が責任をもってやるべきである。無床診療所に戻すというのではなく、県が責任をもって契約した民間が破たんしたのだから、有床診療所で運営すべきではないか。有床診療所を福祉一体で確立できるまで県が責任をもって運営すべきである。
さらに、30人の入所者に絶対に迷惑をかけてはならない。そういう解決を図るべきだと思うがいかがか。
【達増知事】
県民が必要とする医療をきちんと受けることができるようにするため、県にも責任がある。
県としては、二次保健医療圏ごとに、その中で高度な医療を提供する機関、また患者に身近に接する機関、医療連携をきちんとし、そして介護など福祉の関係の領域と医療がしっかり協力しながら進めていくとしていく。
【医療局長】
県立での有床診療所化については、旧花泉地域診療センターは危機的な医師不足の中で、限られた医療資源のもとで良質な医療を提供するということで病床を休床するということで至ったわけで、こうした状況については現在も変わらないものと認識している。
12月9日に地元一関市と協議した際にも、我々の考え方を伝え、一関市からは、一旦医療局による無床診療所に戻していただくように要望するといった形での話もいただいているので、まずはこの方向で進めさせていただきたい。