2012年2月27日 2月定例県議会本会議
一般質問(大要)


【斉藤議員】
 私は、日本共産党を代表して、達増知事に質問します。東日本大震災津波から1年近くが経ちました。2月24日現在、死者4670人、行方不明者1310人、合わせて5980人となる戦後最大の大災害となりました。改めて犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに被災者の皆さんに心からお見舞い申し上げます。

1.東日本大震災津波の救援復興の課題について

被災者のいのちとくらしを守る緊急課題について

 大震災津波からの救援復興の課題は、県政の最大の課題です。第一に、被災者のいのちとくらしを守る緊急課題について質問します。
 津波で助かった命を再び犠牲にしては絶対になりません。必要なあらゆる対策を講じるべきです。
@昨年6月から12月までの震災関連の自殺は17人となっていますが、孤独死の事例はないという答弁がありましたが、被災地での高齢者のうち独居者の変死は80人に及んでいるのではないでしょうか。自殺・孤独死を防止する対策を含め示していただきたい。
A仮設住宅はもとより、民間住宅の借り上げなどみなし仮設住宅、在宅被災者、県内、県外への避難者の全体をどう把握しているでしょうか。すべての被災者に対する支援は行き届いているでしょうか。
B被災者の医療費、介護保険料・利用料の減免措置が行われています。9月末まで継続されると聞いていますが、新たな負担を含めその中身はどうなっているでしょうか。もし、9月末で減免が切られてしまうと必要な医療が受けられない、介護施設から仮設住宅に出ていかなければならない事態も考えられます。減免措置の継続を強く求めるべきと考えますがどう対応しているでしょうか。
C仮設住宅の風呂の追いだき機能の設置は切実な課題です。断熱カーテンの設置とともに国に要望し、県としても独自に設置すべきではないでしょうか。
D厳しい寒さの中で暖房費がかさんでいます。2月補正予算で被災地の低所得者・非課税世帯の一部に限った福祉灯油、1世帯5000円の補助、半額補助で総額2659万円余が示されました。約1万世帯が対象となりますが、せめてすべての非課税世帯の低所得者を対象にすべきではないでしょうか。被災地から盛岡市に約500世帯、1100人余がみなし仮設住宅などで生活していますが、こうした被災者も対象となるのでしょうか。
E障害者や介護が必要な高齢者が住める仮設住宅への改修が必要ではないでしょうか。仮設住宅の整備は今年度までとされていますが、必要な改修・整備は今後とも実施すべきではないでしょうか。

【達増知事】
 被災者の自殺および孤独死について。本県の震災関係の自殺者は、内閣府の公表によれば、昨年6月から12月までで17人となっており、その対策として、これまで心のケアチームによる活動を中心に行ってきたところであるが、今後は心のケアセンターを核とする中長期的な心のケア体制を構築し、自殺の防止に努めていく。また、いわゆる孤独死については、本県の仮設住宅においては、そのような事例はないものと承知しているが、被災者の孤立を防ぐため、民生委員や生活支援相談員による安否確認や見守り、被災者の相談に応じた保健医療や福祉サービスへの橋渡し等のほか、仮設住宅におけるサロン活動などの取り組みを行っているところである。
 避難者の実態把握と支援の現状について。被災者の実態は2月17日現在、応急仮設住宅入居者は31145人、民間賃貸住宅・公営住宅等のみなし仮設住宅入居者は11478人となっている。また、自宅で暮らす被災者は11336人、内陸の親戚宅で暮らす被災者は2890人、県外へ移った被災者は1660人となっている。
 被災者の支援については、生活支援相談員などが被災者を巡回訪問し、引き続き実態把握に努めるとともに、生活相談・見守りなどを行っている。県としても、被災者相談支援センターを沿岸4地区に設置し、常時相談に対応している。また、県外に避難している被災者に対しては、避難元市町村からの情報提供のほか、避難先の県とも連携した相談会などを実施している。今後とも市町村など関係機関との情報共有を進め、連携を促進しながら被災者に対する支援の充実を図っていく。
 被災者の医療費、介護保険料・利用料の減免措置について。発災以降、医療費の窓口負担、介護保険料や利用料に加え、入院患者や施設入所者の食費・居住費が減免されてきた。避難所生活との均衡等を図る観点から講じられた食費・居住費等の減免措置は本年2月で終了となるが、医療費の窓口負担、介護保険料および利用料については、9月まで継続されると聞いている。県としては、被災地の復興状況等を踏まえ、医療費の窓口負担、保険料等の減免措置の継続等、必要な措置を国に求めていく。
 福祉灯油についてだが、今般の大震災津波により甚大な被害を受け、財政事情がきわめて厳しい中で、灯油購入費等を助成しようとする沿岸部の市町村が相当数に上っていることから、これらの市町村に対して補助を実施しようとするものである。補助事業の対象世帯については、過去に実施した事業をもとに、特に支援が必要とされる高齢者世帯等の市町村民税非課税世帯や生活保護世帯を補助の対象としているところである。内陸部のみなし仮設住宅で生活する被災者については、実施主体である沿岸部の市町村が助成対象とした場合には県の補助についても対象とする考えである。

【県土整備部長】
 仮設住宅についてだが、県では、完成後においても要請に応じて必要な居住環境の改善を進めてきた。
 風呂の追い焚き機能については、災害救助法の適用とされておらず、多額の改修費用が必要となるので、設置は予定していない。給湯器の温度設定等の調整での対応をお願いしている。また、カーテンについては、各住戸に厚手のカーテンを設置しており、一定程度の断熱効果があるものと考えているのでご理解いただきたい。
 障害者や介護が必要な高齢者の方への対応については、要望に応じて手すりやスロープの追加設置を行ってきたが、さらに市町村や広域振興局の福祉部局が窓口になり、障害者などの個別の事情に対応して必要な改修工事を行っている。仮設住宅の追加工事は、おおむね今年度中に終了するが、必要な改善については、来年度においても対応していく。

仕事の確保と被災事業者の再建について

【斉藤議員】
 第二に、仕事の確保と被災事業者の再建の課題です。大震災で12万人が失業したとされていますが、岩手の場合の失業者と再就職の実態はどうなっているでしょうか。1月から失業保険が切れ始めています。家族の生活を支える安定した仕事と収入の確保は待ったなしです。具体的な対策を講じるべきですがどうなっているでしょうか。
 同時に、被災した中小企業・事業者の早期の再建は雇用の確保にとっても、地域経済の再建にとっても緊急の課題です。事業者の再建と雇用確保の状況はどうなっているでしょうか。グループ補助は大きな役割を果たしていますが、申請事業者・事業費に対してどれだけの実績となっているでしょうか。希望するすべての事業者に適用できるように拡充すべきではないでしょうか。事業復興型雇用創出事業の今年度末の実績見込みはどうか。11月20日以前に早く再建した事業者にも適用となるように改善をはかるべきではないでしょうか。
 県は、全壊・流出した店舗に最大300万円、工場・宿泊業の再建に対しては最大2000万円の補助を実施する事業を示しました。大いに評価するものですが、全壊・流出した場合の再建は、現在地での一部改修と違って新たな用地の確保や土地のかさ上げなどが必要となり、単年度ではなく数年の規模の事業とすべきではないでしょうか。
 二重ローン対策の新たな制度として岩手産業復興機構が昨年11月に設置されました。3月には東日本大震災事業者再生支援機構も設置される予定です。ところが、産業復興機構への債権買取要請等を行う岩手県産業復興相談センターの相談件数が1月27日までに216社、債権の買取はわずか2件にとどまっています。活用されていない課題は何でしょうか。

【達増知事】
 失業者と再就職の実態と対策等について。県では、震災による失業者は、有効求職者ベースでとらえると13000人増加したと推測している。その後、復興需要や緊急雇用創出事業等による雇用創出の取り組みにより、12月末では約7000人減少したものととらえている。求職者からは、長期かつ安定的な雇用の場の拡大が望まれていることから、今後は産業振興と雇用の創出を一体として支援する「事業復興型雇用創出事業」にも取り組んでいく。
 被災事業者の再建状況については、沿岸の商工団体の調査によると、仮設事業所の操業も含め、会員事業所の約6割強が事業を再開しており、引き続きグループ補助金や個別企業への助成で再建を支援していく。
 グループ補助金の実績については、現在30グループ295社436億円を交付決定している。申請状況については、三次にわたる公募を行ったため、同一の事業者が複数回申請している場合もあり、重複を除くと事業者申請額の7割強をカバーしている。グループ補助金については、今後も必要が額について引き続き要望していく。
 事業復興型雇用創出事業についてだが、今年度の雇用創出数は1250人と見込んでいる。事業の遡及適用については、県としても3月11日の震災後に雇用したものすべてを対象とするよう昨年来国に対して強く申し入れをしてきたところである。
 中小企業被災資産復旧事業費補助について。この補助金は平成23年度および24年度限りとして措置したものだが、被害が甚大であった地域では、土地利用の調整などに時間を要することが見込まれることから、今後地域の復興状況を勘案しながら柔軟に対応を検討していきたい。
 債権の買い取り状況だが、岩手産業復興機構による債権買取は、被災事業者の相談窓口を担う岩手県産業復興相談センターと連携し、両者が一体となって進めている。1月末において産業復興機構による債権買取が2社、産業復興相談センターの支援による返済猶予が1社にとどまっているが、現在相談センターにおいては、約30社について金融機関との調整や再生計画の作成支援など事業者の財務改善を図る作業に鋭意取り組んでおり、今後買い取りが進むものと考えている。

漁業・水産業の復興について

【斉藤議員】
 第三に、漁業・水産業の復興の課題です。最大の課題は船の確保です。今年度6800隻確保の目標に対して1月末で3012隻と聞いていますが、改善策はどうなっているでしょうか。ワカメの収穫が始まりますが、養殖施設はどこまで整備されたでしょうか。漁港・荷揚げ岸壁の改修工事が遅れ、船も係留できない状況です。漁港・荷揚げ岸壁の改修工事の状況はどうなっているでしょうか。サケのふ化放流・アワビ・ウニの種苗確保の見通しはどうなっているでしょうか。水産加工業の再開の状況は具体的にどこまで回復しているでしょうか。

【農林水産部長】
 漁船の確保については、造船メーカーの供給力増強を国に要望しているほか、被災した県内の造船所の復旧についても支援しており、引き続き早期確保が図られるよう努めていく。
 養殖施設の整備は、ワカメ・コンブ養殖を中心に、約11000台の整備を進めており、1月末現在で9300台余の整備が完了している。
 漁港・荷揚げ岸壁の改修については、全漁港で荷揚げ作業が可能となっているが、潮位の高低に左右されず荷揚げ作業な漁港は全体の約3割まで復旧している。また、漁港については、全漁港が荒天時を除き、漁船の係留が可能となっているが、引き続き防波堤等の復旧整備を進めていく。
 サケふ化場については、今年度は、18ふ化場で稚魚の生産を行い、この春に約2億9000万尾の稚魚が放流される見通しであり、またウニ種苗は、平成24年に100万個、アワビ種苗は25年に約20万個を放流できる見通しである。
 水産加工業の再開状況は、沿岸地域に立地している156事業所を調査したところ、被害を受けた事業所は138事業所で、うち昨年12月末までに64事業所が事業を再開している。

住宅の確保対策について

【斉藤議員】
 第四に、住宅の確保は被災者の最も切実な課題です。今回、住宅の新築・購入に100万円の補助、さらにバリアフリー、県産材の活用で最大130万円の補助が示されました。これは被災者を励ましています。陸前高田市では、自力で高台移転する場合、水道管の敷き設費として最大200万円の補助を行うとしています。被災者生活再建支援金の拡充を国に求めつつ、さらなる支援策を講じるべきではないでしょうか。時期が経つにつれて災害公営住宅への希望が増加しています。災害公営住宅については、希望者が全員入居できるようにすべきですがいかがでしょうか。住宅が確保されるまで、仮設住宅もみなし仮設住宅も入居期間が延長されるべきですが、県としてどう対応しているでしょうか。

【県土整備部長】
 災害公営住宅についてだが、被災者に対するアンケート結果や市町村の意向を踏まえ、県内で4000戸〜5000戸程度の被災者向けの公営住宅を供給する方針としている。災害公営住宅は、県と市町村において整備するが、今後市町村と連携しながら希望される方ができる限り入居できるよう建設を進めていく。
【復興局廣田理事】
 被災者生活再建支援金の拡充等についてだが、現行では、基礎支援金・督さん支援金の合計で300万円の支給であり、住宅再建には不十分であることから、国に対し繰り返しその増額を要望しているところである。現時点ではその増額が難しいことから、今般県独自の支援策として持ち家再建を支援する被災者住宅再建支援事業を提案しているところである。この他、平成24年度当初予算において、利子補給やバリアフリー等の補助などを盛り込んでいるところであり、これらの事業により被災者の持ち家による住宅再建を支援していきたい。
 仮設住宅の入居期間の延長について。建設した仮設住宅については、建築基準法による存続期間の1年ごとの延長が可能となったことから、国と協議しながら延長を求めていくこととしている。一方、民間賃貸住宅の許容期間は2年間とされているが、平成23年10月6日には厚労相、平成24年1月10日には野田内閣総理大臣宛に延長を要望したところだが、国からは、応急仮設住宅の提供期間は原則として2年以内だが、必要があればその期間の延長をすることを考えているとの回答しかいただいていないところである。県としては、3月早々にも改めて国に対して要望することとしており、今後ともその実現に向け強く要望していきたい。

JR大船渡線、山田線の早期復旧について

【斉藤議員】
 第五に、JR大船渡線、山田線の早期の復旧の問題です。すでに被災自治体では、JRの復旧の復興計画を決めています。JR大船渡線、山田線の復旧は市街地の再生の柱であり、通院・通学・通勤など交通の確保とともに観光の生命線とも言うべきものです。三陸鉄道と結んでこそ、鉄路の効果を発揮します。ところが、JR東日本は早期復旧の方針を示さず、岩手県や沿岸市町村の復興計画と要望に背を向けて、高速輸送バス・BRTへの転換を示唆していることは重大な問題です。JR東日本は、2011年3月期末決算では経常利益が2545億円、内部留保は2兆3499億円に及んでいます。岩手、宮城、福島のJRの復旧事業費は約1000億円と言われており、十分な利益と体力があるJRの姿勢は問題です。民主党政権もかさ上げやルート変更の負担分について地元自治体の負担とならないよう支援すべきであります。JRと国に対して知事を先頭に、地元国会議員の力も総動員して、強力に、繰り返し働きかけるべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 県としては、沿線市町の意向を踏まえ、また三陸鉄道と繋がることで、さまざまな面で相乗効果が発揮されることから、鉄道の早期復旧が必要であると考えている。復旧にかかる費用負担は、第一義的にはJR東日本が負うべきものと考えるが、まちづくりに合わせたルート変更やかさ上げなどの費用については、JR東日本は国に対し財政支援を求めており、県としてもこれらの費用が自治体の負担となることがないよう、国に対し財政支援を求めていく必要があると考えている。
 このため、昨年末に宮城県・福島県と被災3県合同で国にたいし、鉄道の早期復旧に向けた財政支援の要望を行ったところであり、また先日沿線市町とともにJR東日本にたいし鉄道の早期復旧を国に対しJR東日本への財政支援等の要望をそれぞれ行ったところである。
 今後も沿線市町等と連携しながら、JR東日本や国にたいし引き続き協力に要望していく。

被災した県立病院の早期再建について

【斉藤議員】
 第六に、被災した県立病院の早期再建の問題です。県立高田病院の仮設診療所に41床の入院病床が整備されたことは大いに評価したいと思います。すでに高田病院も山田病院も1日当たりの外来患者数は255人、110人で震災前の数を超えています。仮設診療所は2〜3年程度と言われていますから、今から病院の再建めざして取り組んでも2〜3年はかかります。高田、大槌、山田、大東の各県立病院の再建をめざし、関係市町村と協力して優先的に用地を確保し、病院の再建に取り組むべきではないでしょうか。

【達増知事】
 被災した沿岸部の3市町においては、現在具体的な土地利用計画について検討しているところであり、また各第二次保健医療圏においては、保健所を中心に医療再生に向けた医療関係者等による専門的な検討を始めたところである。
 県としては、地域医療提供体制の再構築に向け、平成24年度中には具体的な方向性を確立する必要があると考えており、被災した県立病院についても、圏域における議論や次期保健医療計画の検討状況を踏まえ、地元市町とも十分に意見交換を行いながら検討を進めていく。
 また大東病院については、先般両磐保健医療圏の地域医療を守る懇談会等において、一定程度の病床が必要であるなどの意見が出されたところであり、今後こうした意見も踏まえ、平成24年度前半を目途に整備に向けた取り組みを進めていく。

大船渡市の湾口防波堤と宮古市の水門問題について

【斉藤議員】
 第七に、大船渡市の湾口防波堤と宮古市の水門の問題です。大船渡湾の湾口防波堤は、県警ヘリの映像で、津波の第1波で、わずか数分で破壊されました。さらに大きな第2波、第3波の津波には全く無力だったのではないでしょうか。これまでの湾内の水質の悪化も漁民の切実な課題となっており、徹底した検証を行い、地域住民の協議を踏まえて再検討すべき課題ではないでしょうか。
 宮古湾の閉伊川河口への水門設置問題も、県が宮古市議会と地域住民への説明も納得もなしに一方的に決めたことは大問題です。水門設置によって新たな浸水地域となる住民が増えるのではないでしょうか。水門に高架道路を整備する目的と事業費はどうなっているでしょうか。閉伊川河口付近は今回の津波でも大きな被害がなく、川幅も水量もあり、多くの漁船も係留しています。地域住民・宮古市議会との協議と合意を踏まえ総合的に検討すべき問題ではないでしょうか。

【達増知事】
 大船渡港の湾口防波堤だが、ビデオ映像では倒壊まで一定時間機能したことが分かっており、また今回の湾央における津波の痕跡が9.5mであったのに対し、湾口防波堤が被災した現状におけるシミュレーションによる浸水高は11.1mであり、1.6mの低減効果があったとされている。また、国では設計以上の高さの津波に対しても減災効果を発揮する粘り強い構造を採用するとともに、現在有識者や漁業関係者等による検討会を開催し、湾内の水質環境の保全への配慮を検討している。
 閉伊川河口水門についてだが、閉伊川河口付近の市中心部においては、今回の津波により176棟の家屋が全壊するなど大きな被害を受けており、津波対策が必要であると認識している。河口部における津波対策には、水門方式と堤防方式があり、社会的な影響、経済性、まちづくりの観点等について宮古市と協議しながら総合的に検討し、水門方式に決定した。宮古市の要請に応じて、宮古市議会や住民への説明を行ったところだが、今後とも宮古市と連携して地域の理解を得られるよう努めていく。
【県土整備部長】
 閉伊川河口水門の高架道路についてだが、水門管理橋を拡幅して通行できないかという要望を宮古市からいただいているが、その整備については今後市とともに調整・検討していくこととしている。
 また、事業費については、166億円と算定している。


2.東京電力福島第一原発事故による放射能汚染問題について
 
汚染の実態について
 
【斉藤議員】
 放射能汚染問題は、岩手県内においても深刻な影響と不安を広げています。第一に、汚染の実態について質問します。県と市町村による放射線量の測定で、毎時1マイクロシーベルトを超えて除染した学校、保育園・幼稚園、公園等は何市町村何カ所となっているでしょうか。汚染された稲わら、牧草の実態とその後の処理はどうなっているでしょうか。原木生シイタケ、ほだ木の放射性物質の濃度と処理はどうなっているでしょうか。

【農林水産部長】
 汚染された稲わら等の実態と処理についてだが、稲わらについては18市町村で約600トンが保管されていたが、焼却や埋却等の処分も行われ、現在の保管数量は13市町村で約470トンである。
 牧草については、1月末現在で6市町で約7800トンが保管されており、焼却処理も進められているが、今般の飼料の暫定許容値の見直しにより、増加も見込まれるので、処分が進むよう関係市町村と連携し取り組んでいく。
 原木シイタケ、ほだ木の放射性物質の濃度と処理について。原木シイタケについては、干しシイタケは9検体を乾燥した状態で測定した結果、5検体が暫定許容値を超過したため、3市1町で生産されたものについて出荷自粛と自主回収を要請している。また、生シイタケは、これまで16検体を測定実施したが、いずれも暫定許容値を下回っている。ほだ木については、これまで調査した23検体のうち4検体が指標値を超過したことから、指標値超過のほだ木は使用しないよう生産者に要請しており、このほだ木はいずれも8000ベクレルを下回っているので、一般廃棄物として処理される。
【環境生活部長】
 学校等の除染を実施した市町村数について。毎時1マイクロシーベルト以上の個所は、県内12市町村の学校等が251施設、公園等の不特定多数が利用する施設が417施設であり、これらの除染はすべて終了したとの報告を受けている。また、県立学校についても、毎時1マイクロシーベルト以上の個所があった県南10校の除染作業をすでに終了している。来年度も引き続き子どもの生活圏を中心に除染を進めていく。

食品の安全、学校給食の検査体制について

【斉藤議員】
 第二に、食品の安全基準が4月から見直されます。これまでの測定で新基準に照らして規制値を超えるものがあるのではないでしょうか。学校給食の検査機器の設置と検査体制はどうなっているでしょうか。

【農林水産部長】
 これまでの測定で新基準値を超過した県産農林水産物について。これまで県産農林水産物の放射性物質の測定値が100ベクレルを超過した例のある品目は、牛肉・原木シイタケ・ブリおよびウグイ等の一部の川魚である。
【教育長】
 学校給食の検査機器の設置と検査体制について。県では、自校で調理を行っている11校の県立学校について、3月末までに検査機器を設置できるよう発注したところであり、平成24年4月からの検査開始に向け検査体制の整備を図っている。
 また、市町村への補助については、すでに購入したものについても対象にしているところだが、この補助分も含めて一関市など7市町において13台が設置済みであり、今後検査機器を整備し、検査を計画している盛岡市など17市町村では4月以降の検査実施を目途に計30台を発注済み、あるいは3月までに発注する予定となっている。

農産物への全面的な賠償について

【斉藤議員】
 第三に、農産物についてはこれまでに47億8000万円の損害賠償請求がなされていますが、支払いは19億2000万円にとどまっています。全面的な賠償を毎月行うよう求めるべきですが、どう取り組まれているでしょうか。

【農林水産部長】
 JA等で構成される損害賠償対策岩手県協議会にアドバイザーとして参画し、助言や市町村・関係団体との連絡調整を行うとともに、東京電力および国に対し、賠償金が早期かつ確実に支払われるよう強く要請を行ってきたところであり、引き続きこうした取り組みを続けていく。

子どもの健康調査について

【斉藤議員】
 第四に、子どもたちの健康が一番心配されます。県が行った子どもの健康調査にどれだけの応募があったのでしょうか。結果次第ではさらなる健康調査が必要と考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 この調査は、主に県南地域の15歳以下の小児132人を対象に実施しているところだが、この調査に対しては、5市町合わせて3300人余の応募があったと聞いている。この測定結果については、岩手県放射線内部被曝健康影響調査有識者会議において評価を実施した上で、3月上旬を目途に結果を公表する予定であり、さらなる健康調査については、この有識者会議において、測定結果を踏まえた調査の継続実施や追加検査の必要性等についてもご意見をうかがう予定としているので、これらを踏まえて検討していく。

自然エネルギー、再生エネルギーの本格導入について

【斉藤議員】
 第五に、東京電力福島第一原発事故がもたらした甚大な被害と影響について、知事はどう受け止めているでしょうか。福島県では16万人が避難を強いられ、6万人余が県外で避難生活をしています。岩手県内にも600人余が福島から避難しています。
 安全神話は完全に崩壊しました。世界有数の地震国・津波国である日本で原発推進政策は根本的に見直し、原発からの撤退を求めるべきではないでしょうか。そうしてこそ、自然エネルギー・再生可能エネルギーの本格的な導入を進めることができるのではないでしょうか。再生可能エネルギーの導入に当たっては、地産地消、地域主体の開発を進めるべきです。そのための思い切った支援策が必要と考えますが、その中身を示していただきたい。

【達増知事】
 原発事故は、広範囲に深刻な放射能汚染をもたらし、国民の安全性への信頼を大きく揺るがしたものと認識している。今後の原発のあり方については、国において事故の検証をしっかり行い、幅広い国民の議論に基づき適切に判断されるべきものと考える。
 再生可能エネルギーについては、基金を活用し、防災拠点への導入を支援するほか、新たな低利融資制度を創設し、資金力の乏しい県内企業が大規模発電事業等に参入しやすいよう環境整備を進める。


3.福祉と防災のまちづくりめざして

子どもの医療費無料化の拡充について

【斉藤議員】
 東日本大震災津波の教訓を踏まえて、「福祉と防災の町づくり」を進めることが必要です。県民のいのちとくらしを守るあたたかい県政こそ、災害にも強い県政です。県民の切実な課題に絞って質問します。
 第一に、子どもの医療費の無料化を小学校卒業まで拡充する問題です。大震災津波の被害を受けた時だからこそ、未来を担う子どもたちのいのちと健康を守る医療費の無料化を拡充すべきではないでしょうか。福島県では、県独自に18歳までの医療費無料化を実施しようとしています。隣の秋田県でも小学校卒業までの医療費助成を決めました。岩手県で、現行の助成制度をせめて小学校卒業まで実施するのに必要な財源は約4億円程度ではないでしょうか。すでに県内でも10町村が中学校卒業まで、8市町村が小学校卒業までに拡充しています。さらに来年度は、被災地の陸前高田市でも大槌町でも拡充しようとしています。また、窓口負担無料の現物給付にすべきであります。全国で償還払いとしているのはわずか11道県です。東北では岩手県だけであります。安心して子どもたちが必要な医療を受けられるように、子どもを大切にする県政への転換を今こそ進めるべきではないでしょうか。

【達増知事】
 現在の就学前までの対象を小学校卒業まで無料化を拡充するには、多額の県費負担が見込まれるところであり、近年の社会保障関係経費等の動向により、県予算における新たな政策的経費の確保は大変厳しい状況となっていることから、直ちに実施することは困難であると考えている。
 また現物給付とした場合、市町村の国民健康保険に対する国庫支出金が減額されることから、市町村等と協議した上で、償還払いとしているものである。県としては引き続き国に対してこの減額措置の撤廃を要望していく。

高すぎる国保税の引き下げと保険証の取り上げの中止について

【斉藤議員】
 第二に、高すぎる国保税の引き下げと保険証の取り上げを中止することです。一昨年度の国保税は、県平均で課税所得92万1千円に対し15万4千円、負担率16.72%となっています。国保税加入者の所得が減少しているのに、国保税が引き上げられています。滞納者とその率、財産の差し押さえを含め、この10年間の推移を示していただきたい。
 耐えがたい国保の値上げを抑えるために、各市町村が一般会計から繰り入れを行っていますが、その実態はどうなっているでしょうか。民主党政権は国保の広域化を進めようとしています。それは、各市町村が独自の繰り入れができないようにするということであります。県単位に国保の広域化をしても、国保の危機を打開することには絶対になりません。国保に対する国の負担を増やし、国保税の引き下げこそ実現すべきではないでしょうか。国保の広域化に反対すべきと考えますがいかがでしょうか。
 全日本民医連は2月20日、無保険など受診の遅れで1年間に67人が死亡したと発表しました。全国の医療機関で推計すれば5500人に及ぶ深刻な事態です。67人のうち42人(63%)が国保の滞納によって無保険、資格証明書や短期保険証となっている方でした。保険証の取り上げは医療の取り上げ、いのちの取り上げとなってしまいます。県内では2月1日現在、資格証明書の発行が515世帯、短期保険証の発行が11449世帯、うち未交付が1798世帯となっています。盛岡市は今年度から資格証明書、短期保険証の発行を基本的に中止しました。資格証明書の発行、短期保険証の発行は中止すべきではないでしょうか。

【達増知事】
 所得に対する国保税の負担割合は年々増加する状況にあるが、平成22年度の滞納世帯数は、33171世帯、滞納世帯数の割合は15.56%となっており、滞納世帯数および滞納世帯数の割合は過去5年間ほぼ横ばいの状況となっている。
 平成22年度の差し押さえ件数は3839件、差し押さえ金額は約11億1000万円となっており、差し押さえ件数および金額は過去5年間ほぼ横ばいの状況となっている。
 また各市町村からの一般会計からの法定外繰り入れの実態は、平成22年度8市町村、計9億6000万円余となっている。県としては、医療保険制度などの社会保障については、基本的に国が責任をもって行うべきものと考えており、国に対して、国の定率負担の引き上げなど一層の財政責任を果たすよう要請しているところである。
 国保の広域化についても、国の財政責任を明確にしながら十分な議論を尽くすよう、全国知事会等を通じて国に要請しているところである。
【保健福祉部長】
 資格証、短期保険証の発行は、市町村が滞納者と接触し、納付相談の機会を確保することを目的としているものであり、滞納者の生活実態など状況をきめ細かく把握した上で交付しているところである。
 盛岡市では、今年度短期保険証や資格証の発行を、納税相談に応じない者や悪質な滞納者へ交付することとし、個別訪問によりその実態を把握した上で実施したところ、発行数が減少したとうかがっている。
 県においては、市町村に対し、滞納者個々の実態を十分把握した上で、細やかな対応をするよう通知し、また会議等の場でもこの基本的な考え方に沿って適切に運用するよう要請している。

雇用対策―大企業は社会的責任を

【斉藤議員】
 第三に、雇用対策の課題です。大企業に社会的責任を果たさせることが重要です。県内最大の誘致企業である関東自動車は、小型ハイブリッド車アクアの生産でフル操業を行っています。ところが、正社員の数を増やしていません。使い捨ての期間工は900人、リーマンショックの時に切り捨てた派遣社員を新たに150人まで採用しています。正社員の採用を増やし、期間工を正社員に登用するよう強く求めるべきではないでしょうか。この間の実績を含め示していただきたい。
 リーマンショック後、50人以上の首切り、合理化を進めた企業と解雇者数はどうなっているでしょうか。

【商工労働観光部長】
 関東自動車岩手工場の正社員化の取り組みだが、平成18年度46人、19年度71人、20年度106人、21年度10人、22年度15人、計248人を期間工から正規へ登用しており、23年度も前向きに取り組むと聞いている。県としては、今まで正社員への登用について要請してきたところだが、引き続き機会をとらえて要請していく。
 また、リーマンショックのあった平成20年度以降に縮小・撤退した誘致企業数は17社。これにかかる従業員の削減数は3300人余となっている。

防災のまちづくり―避難対策、消防団員の増員について

【斉藤議員】
 第四に、大震災津波の教訓を踏まえ、防災の町づくりを進めることが重要です。津波対策で何よりも大事なことは避難であります。「釜石の奇跡」と評価されている学校での防災教育とその効果は全県でいかんなく発揮されました。その一方で5900人を超える犠牲者を出したことも事実です。群馬大学による釜石市の調査によれば、犠牲者のうち36.3%が自宅で被災したとなっています。大きな犠牲者を出したことについて県ではどのように検証しているでしょうか。私は2月7日に、陸前高田市の全壊、浸水した二つの保育園を訪問しました。「月2回避難訓練を行っている」「保育園の裏側に避難道を整備している」とのことでした。避難対策こそ最大の津波対策だと考えますが、避難道、避難場所、避難施設の整備こそ直ちに行うべきと考えますがいかがでしょうか。また、学校の体育館など避難場所に暖房設備と必要な資材と備蓄を行うべきと考えますがどう取り組まれているでしょうか。災害対策の中心部隊は消防職員であり、消防団員であります。基準人員から1061人も少ない消防職員の大幅な増員をはかるべきではないでしょうか。献身的に奮闘された消防団員の待遇と安全対策をどう検討されているでしょうか。

【達増知事】
 津波の検証についてだが、県では市町村および防災関係機関へのアンケートや現地調査などを通じて検証を実施してきたところである。この結果、多くの犠牲者を出した要因は、津波規模の過小評価、防潮堤等の効果を過信したことによる避難開始の遅れ等であると分析している。
 このため、県の地域防災計画においては、防潮堤の設置状況等の地域の実情を踏まえつつも、最大クラスの津波を想定し、避難を軸とした行動をとるよう打ち出すこととしている。
 今後は市町村との連携を強化しながら、迅速な避難の重要性を含めた住民の防災意識の徹底と高揚が図られるよう住民向けの啓発活動を積極的に展開していく。
【総務部長】
 避難路、避難場所等の整備と資材備蓄等について。これらの整備は市町村において進められるべきものだが、県においても地域防災計画に位置づけて、市町村に対して働きかけを強めている。そういったものだが、段階的に進めざるをえず、一定の時間を要することとなる。このため県としては、当面市町村に対して、避難経路の明示や避難場所の周知徹底を促すなど、ソフト面からの避難対策を進めていく。また発災直後は、道路の寸断や燃料の不足等により、避難所への物資供給が滞るなど、避難所の環境が整わなかった面もあった。これらに対応するため、地域防災計画に暖房器具等の整備や、食料等の分散備蓄を盛り込むことをしており、市町村に必要な対応を促していく。
 消防職員数については、国により整備指針が示されているものの、これを参照しつつ、消防団の体制や自主防災組織の活動状況、建造物の配置や構造など、地域のさまざまな要因を踏まえ、それぞれの市町村や組合において判断し配備している。県としては、このような市町村や組合の判断を受け止めつつ、消防力の充実強化に資するよう機会をとらえて必要な対策の実施を働き掛けていく。
 消防団員の待遇や安全対策の検討について。消防団員の待遇については、市町村に対して毎年度交付税措置の内容を踏まえ、報酬や手当の改善を促している。今後は、一般団員の階層における待遇の引き上げに着目して助言を行うなど、よりきめ細やかな対応にも努めていく。安全対策については、今回の災害対応を踏まえ、県の地域防災計画を見直しているところである。この見直し内容が市町村の地域防災計画に十分反映され、実際に消防団員の安全確保につなげていく必要がある。今後、市町村向けの説明会を開催するほか、直接市町村に赴き、働きかけるなど周知・浸透に努めていく。

子ども・教職員の心のケア、小中学校の統廃合計画、小中一貫校の問題について

【斉藤議員】
 第五に、子どもと教育の問題です。今回の大震災津波は、子どもと教育にとっても大きな、根本的な課題を提起しました。
 八重樫県教育委員長に質問します。
@被災地の学校では、この間の防災教育と避難訓練の成果が発揮され、「釜石の奇跡」とも紹介されています。私は「岩手の奇跡」と言ってもいいものだったと思います。一方で、子どもたちも教職員も家族を失い、住む家や仕事を失うなど深い傷を負っています。子どもたちや教職員に寄り添った「心のケア」の取り組みが求められています。実態をどう受け止め取り組まれるのでしょうか。
Aまた、被災地でこそ、行き届いた教育が求められています。先行して少人数学級を実施するとか、教員の大幅な配置を行うべきと考えますがいかがでしょうか。
B学校施設が大きな被害を受けたことから小中学校の統廃合計画も出されています。私は、あくまで地域住民の十分な協議と合意を大前提にすべきと思いますがいかがでしょうか。
C県内の一部に、小中一貫校の取り組みも見られます。これは全国で広がりつつある問題ですが、4・3・2体制のもとで、小学校5年生、6年生と中学校1年生を一つの教育課程として、小学校に教科担任制を持ちこむなど、中学校の競争主義的教育を小学校にまで持ち込むなど、これまでの小学校教育をゆがめかねない問題が指摘されているものです。小中一貫校の取り組みは慎重に検討し、見直すべきではないでしょうか。

【教育委員長】
 被災地の子どもたちは、大震災津波の恐ろしい体験に加え、1つの学校に複数の学校が同居するなどの学びの環境の変化や、仮設住宅に住むなどの生活環境の変化等により、大きなストレスを感じながら生活しているものと認識している。県では、発災前からのカウンセラーの配置に加え、昨年5月から6月にかけて、県外臨床心理士を沿岸部の学校に緊急的に派遣し、さらに9月からは震災対応の巡回型カウンセラーを沿岸部に5人常駐させるとともに、県立学校・公立幼稚園に県内3大学のチームによる支援を行っている。24年度においては、教職員に対する研修、巡回型カウンセラーの増員、心と体の健康観察の実施などにより、より手厚いサポート体制を構築し、一人一人の幼児・児童生徒の状況に応じたより一層きめ細かな対応に努めていく。また教職員の心のケアについては、自らも被災するなど、その影響を大きく受けている教職員も少なくないが、これまで児童生徒や地域住民のために大変頑張っていただいている。県では、発災以降、心と身体の巡回健康相談などの対策を講じてきたところだが、平成24年度においては、管理監督者メンタルヘルスセミナー、教職員の心のケア研修の継続開催のほか、メンタルヘルスチェックの対象を全教職員に拡大するなど対策を強化していきたいと考えている。また、学校に配置される臨床心理士等により、児童生徒の心のケアとあわせて、教職員のカウンセリングも行うなど、今後とも被災地等の教職員が心身とも健康で教育活動に専念できるよう、きめ細かな支援を継続し、教職員の心のケアの充実に努めていく。
 被災地における少人数学級の先行実施、教員の配置について。被災地における児童生徒の学習の遅れや心のケア等の教育支援のため、国へ加配を要望し、平成23年度は小中学校で201人の加配措置をした。被災地の学校では、児童生徒一人一人の状況が多岐にわたっているので、きめ細かな対応が必要であると考えている。したがい、来年度においても、学校の状況を把握し、必要な数の加配を国に対して申請しているところであり、継続的に教職員を加配できるよう努めていく。
 小中学校の統廃合について。被災地においては、それぞれの地域の実情や子どもたちの状況に応じて、設置者である市町村が必要な教育環境の整備や教育効果の向上等を目指し、どのような形で学校再建を行うかについて、地域住民の方々と鋭意協議を重ねているところであり、学校の復旧・復興に向け懸命の努力が行われているところである。県としては、今後各市町村の学校再建の方針のとりまとめを受けて、その取り組みや方策に応じた適切な支援に努めていきたい。
 小中一貫教育について。小中一貫教育は、子どもたちの成長に合わせた教育活動を9年間で系統的に展開していくための柔軟な教育課程・編成の1つとして各市町村が主体的に判断して進めているものである。本県のそれぞれの市町村教育委員会では、今回の震災を踏まえ、地域の状況に応じて子どもたちの様子を見ながら、もっともふさわしい教育のあり方を地域の方々と検討しているところであり、県教委としては、各市町村教育委員会の要請により、必要に応じて情報提供や助言などを行うなど適切に支援していきたいと考えている。

目標達成型の学校経営、競争教育の問題について

【斉藤議員】
 岩手の教育の最大の問題は、目標達成型の学校経営の名のもとに、教育に数値目標を導入し、PDCAサイクルで検証を繰り返す市場原理主義を導入していることです。教育の目標は、「子どもの成長と発達を支えること」です。子どもたち一人一人に寄り添った教育こそ求められているのではないでしょうか。そのための最大の保障は、少人数学級の実現であり、大幅な教員の増員による行き届いた教育を進めることです。しかし、実態は、小中学校の教員の場合、1日の勤務時間が10時間を超え、月42時間の残業が強いられています。一方で、肝心の授業の準備は1日1時間にも満たないという異常な状況です。県教委は教師の多忙化を解消する提言を出していますが、全く改善されていないのではないでしょうか。また、子どもたちは全国学力テスト、県のテスト、市町村教委のテストなどテストづけとなっており、最近では、テストの点数を引き上げることが学校の目標となり、過去問題のドリルも行われるようになっています。学校と教育の実態をどう認識されているでしょうか。これは、国連子どもの権利委員会が日本政府に対して3回にもわたる勧告で指摘された「高度の競争主義的な学校環境」そのものではないでしょうか。

【教育委員長】
 学校と教育の実態についての認識だが、本県の教育は、知識や技能を習得させるだけの学力形成にとどまるものではなく、社会人として必要な総合力を身につけさせること、すなわち知徳体を総合的に兼ね備えた、どんな困難に直面しても強くたくましく生きていく能力を育てる人間形成そのものを目標に取り組んでいるものである。その大きなものが、岩手型コミュニティスクールや教育振興運動の取り組みであり、不登校の出現率が全国で一番低いことや、今回の震災で見せてくれた学校や児童生徒の素晴らしい行動の数々にその成果が表れていると考えている。改めて本県には、しっかりした教育がなされてきたものと考えているところであり、決して国連子どもの権利委員会の勧告にあるような、過度に競争主義的な環境にはないと考えている。
 今後とも、岩手の自然や文化を愛し、知徳体の調和のとれた人間性豊かな岩手の子どもたちを育てていきたいと考えている。

少人数学級の拡充について

【斉藤議員】
 教育長に質問します。35人学級が来年度から中学校1年生で完全実施されることは評価したいと思います。さらに小学校全学年に早急に拡充すべきと考えますが、これまでの少人数学級の成果と全学年に広げるための教員増と経費を示していただきたい。

【教育長】
 少人数学級における成果については、実施校へのアンケート調査結果等から、学級集団のまとまりや人間関係の把握において効果が高いという回答を得ている。これに加え、中学校においては、中一ギャップの解消、不登校や問題行動の抑止が挙げられており、総じて、学級経営や生徒指導面において成果があると捉えている。
 少人数学級を小学校全学年に広げた場合の教員数と経費だが、平成24年度の児童生徒数の見込みで試算すると、183人の教員の増と約16億円の経費が必要になると考えている。


4.日本の進路、岩手の死活にかかわる消費税大増税・TPP問題について

消費税大増税計画への知事の姿勢、日本共産党の「提言」に対する知事の受け止めについて

【斉藤議員】
 野田内閣は2月17日、消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革大綱」を閣議決定しました。野田内閣の消費税大増税計画には3つの大問題があります。第一に、八ッ場ダムや東京外郭環状道路、1機99億円もするF35戦闘機の購入など、ムダづかいを続けたままの大増税だということです。第二に、年金の引き下げ、医療費・介護保険料の引き上げなど、社会保障切り捨てと一体の大増税だということです。第三に、日本経済をどん底に突き落とし、財政破たんも一層ひどくする大増税だということです。とくに、被災地の復興に逆行する大増税となります。消費税が10%になると岩手県民全体の負担増は1273億円となります。県民税・市町村民税の総額は766億円であり、1.7倍近い大増税であります。被災者に交付される義援金は約457億円であり、その2.8倍の大増税となります。被災地の中小企業は約6割強再建しましたが、消費購買力が落ち込んだ中で消費税が大増税となるなら、たちまち破たんに追い込まれかねないことになります。
 こうした一片の道理もない最悪の消費税大増税に被災地の知事として強く反対すべきと考えますが、知事はどう受け止めているでしょうか。
 日本共産党は2月7日、「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表しました。充実した提言で、各界にお届けしているところであります。徹底したムダと浪費の一掃、富裕層・大企業への応分の負担で、消費税増税抜きに社会保障の再生と充実をはかる財源を示した提言です。知事の感想を含めてお答えいただきたいと思います。

【達増知事】
 消費税のあり方を含め、これからの税制をどうするかについては、社会構造の変化を分析の上、現実の経済状況等を十分に踏まえ、国民的な議論を経て慎重に判断すべきものと考える。
 その際、被災地である岩手県としては、消費税により被災者の負担増加を招かないか、消費の減退により日本経済へマイナスの影響を与えないか、ひいては被災地の復興の妨げとならないかといった点を十分考慮すべきと考えている。
 日本共産党の提言については、社会保障制度とその財源については、現在国において社会保障・税一体改革として議論が行われていると承知している。議論にあたっては、特にも先の答弁で述べた通り、税制抜本改革の主要な項目である消費税のあり方について、復興の足かせとならないかといった点を十分考慮し、国会はもとより広く国民の間で活発な議論を経て慎重に判断すべきものと考える。

TPP参加問題に対する知事の姿勢について

【斉藤議員】
 TPPへの参加問題も、日本と岩手の農林水産業はもとより、地域経済の死活にかかわる大問題であります。2月7日に行われた日米協議で、日本政府は「すべての品目を自由化交渉の対象とする」「関税以外の21分野に対応する用意がある」と約束しました。これでは農水省や県の試算通りに農林水産業に壊滅的な大打撃となることは明らかです。アメリカは関税の撤廃だけでなく、漁業に対する補助金も認めないとしています。漁業・水産業の復興に逆行するものだといわなければなりません。知事として断固として反対を表明し、野田政権の売国的な暴走を止めるために行動を起こすべきではないでしょうか。

【達増知事】
 TPP協定については、農林水産分野をはじめとした国民生活のあらゆる分野、特にも大震災津波からの復興に向けた取り組みに大きな影響を与えることが予想されるにも関わらず、国民に対する情報提供が不十分であり、国民的議論が進んでいない状況の中で、国がTPP交渉への参加にかかる方針を表明し、参加に向けた事前協議を始めたことは問題があると思っている。国において、成長戦略上TPP協定をどう位置付けるのか、関税撤廃がどのような効果を有するのか、農林水産業をはじめとした必要な国内対応策をどう講じるのかなど、交渉に参加する前に行われるべき基本的な検討・議論が十分に行われていない現時点では、TPP交渉への参加には反対であると先の県議会でも申し上げた。
 県においては、大震災津波からの復興を見据え、国におけるTPP交渉の動向を注視しながら、関係部局が十分に連携し、各分野における本県社会経済の影響を的確に把握していくとともに、県民や関係者の意見が反映されるしっかりとした検討が進められるよう、必要に応じ国に対して提言等を行っていく。


5.大震災津波と警察の取り組み、サービス残業の根絶について

【斉藤議員】
 最後に、大震災津波と県警察本部の取り組みについて質問します。大震災津波の救援と遺体の捜索、交通の確保や安全対策などに全国の応援を受けながら取り組まれてきたことに心から敬意を表します。現在も津波から1年を前にして釜石市や大槌町などの被災地で集中的な遺体の捜索活動が行われています。県公安委員長に質問します。県警察のこれまでの取り組みをどのように把握し、認識しているでしょうか。これだけがんばっている警察官や県職員に対して、昨年12月県議会では、日本共産党だけの反対で賃金の引き下げという給与改定が行われました。私はせめて、警察官の残業については100%、残業手当が支給されるべきと考えます。昨年度の残業手当の支給実績、今年度の支給見込みはどうなっているでしょうか。時間単位を含め示していただきたい。また、公安委員長は、この間被災地の警察官の取り組みをどれだけ直接に訪問し、激励してきたでしょうか。
 警察本部長に質問します。着任したばかりですが、被災地を回られてきたでしょうか。被災地の状況と被災地で仕事に取り組む警察官への思いを示していただきたい。

【県公安委員長】
 公安委員会としては、発災直後からの適宜の報告や、定例会議において、被災地の被害状況や警察措置について報告を受けているほか、全委員がそれぞれ被災地を視察・激励する中で把握し、それを踏まえ組織をあげた被災者の救助活動や、被災者の不安を取り除く活動などについて意見を述べてきた。
 県内では、2月26日現在での死者数は4670名、行方不明者は1300名を超えるなど甚大な被害となり、また本県の警察官11名が職に殉じ、計19の警察施設が全壊するなどの厳しい状況の中で、県警察においては、全国警察の応援を得ながら、被災者の救出活動や行方不明者の捜索、安全安心を確保するための諸活動等、昼夜を分かたず適切に災害警備活動を行ってきたと認識している。
 警察職員の昨年度の超過勤務手当の支給実績だが、支給時間は職員一人当たり月平均19.8時間であり、超過勤務手当の決算額については14億5636万円余であるとの報告を受けている。また、今年度の支給見込みについては、必要額を予算に計上しているところであり、2月補正後の超過勤務手当予算額は18億4072万円余であるとの報告を受けている。
 被災地の警察官の取り組みをどれだけ訪問し激励してきたかということだが、大震災津波発生後、全委員で被災警備本部を視察・激励したほか、被災地における被災者の避難誘導および救出・救助、行方不明者の捜索、安全安心を確保するための諸活動等の災害警備活動を把握するため、3人の委員が延べ十数回にわたり被災地などを訪問し激励とねぎらいを行ってきた。また、当県の警察職員のみならず、被災地で活動している全国から派遣されていた警察官に対しても、直接激励とねぎらいを行ってきた。公安委員会としては、被災地はもとより、全ての地域においてより一層安全安心な地域社会の実現に向け、県民から大きな期待が高まっていると受け止めており、引き続き県警察を督励していく所存である。
【警察本部長】
 先日、大船渡、釜石、宮古の各警察署管内の被災地を視察し、被災の実態や警察活動の現状を確認してきた。
 警察署では、2月の緊急増員による特別出向の警察官が、管轄警察署員とともに被災地における警戒警邏活動、仮設住宅での被災者の方に対する巡回連絡や困りごと相談への対応などの活動に取り組んでいる状況について報告を受けた。また、行方不明者の捜索も継続して行っており、この1年、県警あるいは県警職員が警察官11名が職に殉じるなどの厳しい状況の中で全力で東日本大震災津波にかかる警察活動に取り組んできた状況を直に感じることができたところである。
 県警としては、今後とも被災者の皆様に寄り添い、期待と信頼に応えられる活動を継続していきたいと考えている。


≪再質問≫

・被災者のいのちと暮らしを守る緊急課題について

【斉藤議員】
 答弁では、震災の関連自殺が17人と。これは6月以降の話である。その以前を含めたらもっと多い数になると思う。また、孤独死については定義がないので、孤独死はいないという答弁に終始しているが、誰にも看とられずに孤立して死亡した場合は基本的には孤独死なんだと思う。いわば死に至る過程が看とられていないことが問題である。看とられていれば病院に行ったりいろんな手立てがある。結局そういう手立てがなく、私は指摘したが、警察の調査で、変死扱いされている高齢者の孤独死が80人沿岸で起きている。これは軽視できない事態である。長期間放置されたか、されていないかということを問題にするより、一人たりともそういう孤立した死者を出してはならないと。そういう意味で、見方を変えて解釈するのではなくて、犠牲者を一人も出さないということで是非手立てをとっていただきたい。
 当然この間被災者生活支援の相談員を187人配置したとか、北上市や遠野市が独自に被災地でそういう支援員を配置しているとか象徴している。それなりに努力をしていると思う。しかし結果としてこういう状況になっているということをシビアに見て対応する必要があるのではないか。
 仮設住宅の方々と懇談して言われるのが、自治会長さんなどが「一人暮らしの高齢者が誰か市町村から情報提供がない」と。これは個人情報の問題もあるが、そういう情報というのはきちんと仮設の自治会長にも民生委員にもお知らせすると。また、みなし仮設の問題では、市町村も分からない。県はみなし仮設の民間住宅の借り上げの方々に対して情報提供していいかという調査をしたと思うが、どれだけの方々が情報提供に同意したか。そういう情報は市町村から現場の仮設や現場の方々にどのように徹底されているか。
 
【保健福祉部長】
 孤独死については、定義をどのようにするかということはともかくとして、議員がご指摘のように、本来お一人で亡くなるような状態、そういうことを避けると。そのためには例えば生活支援相談員が入って、ハイリスクの方の健康的なケアだとか、いろんな状況を把握し、それを医療機関につなげていったり、あるいは危ないときには周りの方がフォローするということが何よりも肝要だと考えている。そういうことにおいて対策を本県においても講じていくということで、注力したいと考えている。
 孤独死の定義を「長期間放置するような状態である」ということに今回したのは、今いろんな場で問題になっているのは、一人知られずに亡くなると、それが放置されていると、それがコミュニティの崩壊の要因から生じているという問題意識から、孤独死ということについてそういう定義をさせていただいたところであり、それにこだわって施策を展開すると、そこに焦点を当てるということだけではなくて、それ以前の問題から幅広く対応していきたいと考えている。
【廣田復興局理事】
 みなし仮設住宅入居者の情報の市町村への提供だが、民間賃貸住宅に入居している被災者の住所情報と世帯主の氏名・住所は、県で一元的に管理していることから、県から入居者にそうした情報を市町村に提供することについて意向確認し、同意を得られたそういった情報を市町村に提供したところである。
 2月22日現在その件数は、入居者に対して照会した件数が3384件のうち2662世帯が照会していいということで市町村に提供している。


・県立病院の早期再建に向けた取り組みについて

【斉藤議員】
 知事は、9月県議会で、「被災した病院の再建を基本としつつ地元市町の復興計画や地域医療再生に向けた二次保健医療圏での議論、県の次期保健医療計画の考えを踏まえながら立地場所や規模・機能について検討していく」と述べた。大前提が「被災した病院の再建」である。この答弁は大変被災地を励ました。そしてこの知事答弁により県立高田病院に入院病床が41床整備されてすでに活用されている。私も2月7日に石木院長に会ってきた。高田病院では、病院の再建に向けた用地の確保も市と協力して目途がついたと。今から県立病院の再建をやろうとすれば、土地の確保、設計、建設だけで2〜3年かかる。そういう意味では、病院の再建を基本にして、関係市町と早く用地を確保すると。だいたい庁舎の場合は目途がつき、学校の用地も目途がついた。いま被災地の中心的な施設で決まっていないのは病院である。ぜひ県立病院の再建に向けて早く用地を確保して、そして早く足を踏み出すようにしていただきたい。
 大東病院については一定の病床が必要だという方向が出され歓迎したいと思う。一定の病床というのは、病院の再建と受け止めていいのか。

【達増知事】
 用地についてもできるだけ早く市町村と協力をしながら、早急な地域医療体制の回復に努めていきたい。
 大東病院についても、具体的なところを早急に医療局において詰めていくということなので、その通りにしてほしいと思う。


・消費税増税―税と社会保障の一体改革について

【斉藤議員】
 知事としては歯切れの悪い答弁だったのではないかと。定例記者会見などではもっと反対と言っていたと思うが。そもそも私は3つの問題を指摘した。ムダ使いをしながら増税と。社会保障を切り捨てながら増税と。97年の橋本内閣のときに、景気良かった、所得が増えていたときにやったら経済も財政も落ち込んで14兆円税収が減った。いま国民の所得はもっと減っている。景気ももっと悪い。こういう中で消費税増税、13.5兆円である。医療費の値上げその他で全部で20兆円の負担増になる。被災地はもとより、日本の全体の暮らし・経済・財政をだめにしてしまうのではないか。
 民主党の公約にも反するので、改めて税と社会保障の一体改革には地方から声を上げて食い止める必要があるのではないか。ましてや被災地の場合には復興に逆行する、水を差す。そういう意味でもはっきりと反対を表明すべきではないかと思うがいかがか。

【達増知事】
 「復興の妨げにならないこと」ということを被災県の知事としては強く訴えていかなければならないと思っている。被災地の負担、ひいては日本経済を失速させないという点において、復興最優先で進めていただきたい、進めなければならないと考える。


・資格証、短期保険証発行の問題について

【斉藤議員】
 そもそも一人当たりの国保税の調停額を課税所得と対峙すると、平成11年度は64万4千円の所得だった。国保税73610円だった。平成21年度は49万9千円の所得で83600円である。所得は減っているのに国保税は逆に増えている。だから滞納が増える。そういうときに保険証を取り上げる、短期保険証を発行するが相談に来なければ未交付。これは異常な事態だと思う。
 盛岡市の担当者に「資格証・短期保険証を止めてどうか」と。そしたら「何も変化はない。困ったことはない」と。逆に一人一人の滞納者の状況を把握して対応できていると。滞納したら保険証を取り上げるという社会保障の精神に反するようなやり方は許してはならない。県都の盛岡がやったので。そして通知にも「悪質な滞納者に限る」と。これは厚労省の通じである。そのことを徹底したら資格証・短期保険証の発行状況というのは改善されるべきではないかと思うがいかがか。

【保健福祉部長】
 かなり厳密に個別訪問等を通して実態を把握し、悪質なケースについて資格証や短期保険証を交付しているということであり、これは県が市町村に指導している、きちんと市町村で個々の状態を十分把握した上で必要な方については、そういう措置をするような形で、今後も十分指導していきたい。


・目標達成型の学校経営、競争教育について

【斉藤議員】
 岩手の教育の最大の問題は、目標達成型の学校経営で、学校教育に市場原理を導入する、PDCAサイクルと。1年ごとの目標で2ヶ月毎に検証している。学校教育の目標は指摘したように、子どもたちの成長を発達を支援することではないか。学校の目標が先にあって検証する。どういう目標が掲げられているか―。学力テストの県平均を超えるというのがほとんどの学校の目標である。だから今までやらなかった過去問題までやっている。全国学力テスト、県のテスト、市町村のテスト、テストづけになっているのが実態ではないか。これが世界的には異常なのである。
 そして一方で先生方はどうなっているか。毎日10時間、2時間以上の残業で授業の準備は逆に1時間もない。教員の多忙化の解消の提言を出したにも関わらず、これこそ検証すべきである。やはり岩手の教育は逆立ちしているのではないか。子どもを中心にして、教育の成果というのは半年1年で改善されるものではない。本当に一人一人に寄り添って、寄り添えるような教員の状況を作っていくことが必要ではないか。

【教育委員長】
 テストづけになっているというご指摘があったが、テストの本来の目的は何かというと、もしも現場が過熱して誤った使い方をしていれば是正しなければならないと思う。子どもたちのつまづきの状況を調べると。あるいは教師の指導法はどうだったかというのが我々のやっているテスト、国のテストである。ですから、国も順位は出さないと言っているわけだが、どこかで出していると。出してはいけないと私は思っている。私は、1点の2点の違いで人間の価値は決まらないと常々言っている。算数がだめでも走るのが得意な子もいるのではないかと。そういう良いところを見つけて評価し激励するのが教員の役目だと。もしもどこかの学校で、県の平均のよりも上にいこうとする目標を立てたとすれば、これはおかしい話である。全てが平均より上にいくということはないわけで。しかしとりあえずは、県の平均を目指そうということを子どもたちに下ろすときには必要かもしれないが、あくまでも学校間競争とか個人競争をするために我々はやっているのではなく、そういう使い方はいけないと言っている。もしそれを歪んで使っているとすれば、それは使っている方が悪い、我々の指導も悪いと思うが、ですから上げるために過去の問題をやってどんな力がつくのか、そうでなくても学校でつけた力が今回の震災の結果に表れたと。算数が不得意な子でもお年寄りを大事にするとかボランティアをするという力を発揮すると。これがまさに本当の学力ではないかと私はとらえている。
【教育長】
 目標達成型は、あくまでも地域と一緒に子どもたちを育てるということでやっている。地域に、それぞれ今年学校が何をやろうかということを示して、地域の方々・父兄の方々一緒に育てるという考え方でやらせていただいている。
 教員の多忙化については、今年度実態調査を行おうと思ったが、震災を受けて、学校に負担をかけられないということで中止した。さらに負担を軽減できるように方式を見直しているので、来年度詳細な実態調査を行いたいと思っている。


≪再々質問≫

・税と社会保障の一体改革について

【斉藤議員】
 私は3つの問題点を指摘した。ムダ使いをしながらの大増税、社会保障を切り捨てながらの大増税、そして財政も経済もダメにする、復興にも逆行すると。復興に逆行するということは知事も強い意識を持っているようだが、さらに民主党にも公約にも違反するのではないか。
 この問題提起についての知事のお答えを聞かせていただきたい。

【達増知事】
 国政の最大の課題は復興であるべきだし、客観的に見ても、復興に違いないと思っており、一に復興二に復興、三四がなくて五に復興ということを記者会見でも言っていると思う。
 岩手において、岩手の復興は内陸沿岸1つになって、岩手全体の復興でなければならないと言っているように、日本の復興、東日本大震災からの復興というのは日本全体の復興でなければならないので、関西や西日本も含めて日本全体の復興でなければならない。その日本全体の復興ということをきちんと進めていけば、日本の経済の力も高まり、そして財政の健全化も可能になり、そういう中で社会保障についてもきちんとした体制をつくっていくことができると思っている。そういう趣旨のことは、去年の国の復興構想会議でも述べてきたし、最近でも述べ、これからも述べていきたい。


・災害関連死、義援金を理由とした生活保護の廃止について

【斉藤議員】
 震災関連死の状況はどうなっているか。
 義援金を理由とした生活保護の廃止件数はどうなっているか。実は、義援金・災害弔慰金・生活支援金というのは、住民税の場合でも国保税の場合でも収入に入れない。これは生活保護だけ収入認定して廃止するということはあってはならない。国の政策としても整合性がないと思うが、実態を含めて示していただきたい。

【保健福祉部長】
 災害関連死について。これは、直接的な災害による死亡のほか、例えば避難所で亡くなったりした場合に災害弔慰金の支給に関する法律により、災害関連死として認定されれば災害弔慰金が支給されるというものである。市町村が基本的には判断することになるが、独自で判断したところは2市町で29件、県で市町村の委託を受け委員会を3回開催し認定した件数が98件ということで、合わせて127件と承知している。
 生活保護の義援金が収入認定されたことによる廃止だが、手元に数字がなく、考え方だけ申し上げることでご容赦いただきたいが、義援金については、単に収入として入ってきたらそれを認定して廃止するということではなくて、その自立更生のための計画をきちんと作成していただくという手続きをとっていただくことで行っている。その計画を審査して、それを認定する場合において、その市町村ごとにばらつきが出てくる可能性もあるので、それぞれのケースについて県の方に報告をいただき、確認をした上で、そういう計画が妥当かどうかチェックをさせていただいている。そういう形で、義援金が今後のその方の自立更生に資するような形で、そういうことをサポートするような形に活かされるような形で制度設計されているところであり、運用しているところである。


・二重ローン対策について

【斉藤議員】
 相談件数も債権の買い取りも少ない。宮古市に行ったときに、「最初の説明会で、3年間黒字で震災で赤字になった企業が対象」という話を聞いた。みんな対象にならないと。いま県内の中小企業の75%が赤字である。3年間黒字なんて企業はほとんどない。こういう説明は撤回されたのか。この二重ローンの対象企業はどういうものなのか改めてお聞きしたい。きちんとした説明なしに、せっかくいい制度なのに、知事は二重ローンの解消を生命線だとも言った。私もそう思う。画期的な制度だが活かされていない。そのためには何が問題なのか、私は相談体制の強化も必要だと思うがいかがか。

【商工労働観光部長】
 200社の相談があったうち、100社についてはセンターの窓口で対応し、買い取りに至らない対応ということで、解決している。残りの100社が買い取りの対象で、実際買い取りを行ったのは2社、そして鋭意作業を進めているのは30社、これは県の4分の3の補助金だとか2月補正や当初予定している県単補助の採択が進んでくると資金繰りが見えてくるので、ぐっと採択するスピードが上がってくると思うし、我々はセンターや機構の方に、買い取りについては鋭意やってほしいというお願いをしているところである。
 なお、冒頭照会のあった基準については聞いていないところであるので、決してそのような対応はしていないと思うので確認させていただきたい。


・関東自動車の正社員化の取り組みについて

【斉藤議員】
 この間期間工から248人が正社員になっていると。しかしここ2〜3年は減っている。一時は106人を正社員化したが、その後は一気に減ってしまった。いま900人である。私は現場の労働者から相談を受けているが、7年8年期間工で働いている、半年更新だと。これだけの熟練工をなぜこういう景気のいいときになぜ正社員にしないのか。これは人材の確保といっても企業にとって損失ではないのか。
 12万台もアクアの注文が殺到してフル生産している中でこそこの問題の解決、県内の高校生を大量に採用することなどが必要ではないか。

【商工労働観光部長】
 20年度は年間106名正規に転換したが、この年は逆にリーマンショックがあった年で、21年22年が減ったのはやむを得ないことだと思う。
 ただ今非常に好調なので、いずれ機会あるごとに関東自動車に対しては正社員化をお願いするということを言っている。これは引き続きお願いし、アクアが売れれば正社員化も進むので、ぜひ皆さんもお買い上げいただきたいと思っている。


・目標達成型の学校経営、教員の多忙化について

【斉藤議員】
 実は市町村では学校別ランク全て出されている。下位になった校長先生が青くなってそういう目標を決めているのが実態である。ぜひ調べていただきたい。テストづけというのはそういう実態である。だから過去問題もやると。全国学力テストにときに、それはやらないとなっていたが今は違う。
 一人一人の成長・発達を支援するところからかけ離れていることを私は指摘したし、いまだに答弁がないのは教員の多忙化である。一人一人に寄り添うべき先生の状況をなぜこんなひどい状況から改善されないのか。

【教育委員長】
 先ほど申し上げたが、テストの本来の趣旨は、子どものつまずきの実態を把握する、教師の指導法がどうだったかを把握する、それを次の指導に活かす、子どもたちにも目標を持たせてもっと頑張るという意欲にもつながるということをご理解いただきたいと思う。もしも学校の順位だけで窮々とするような実態があるとすればそれは是正しなければならないと思うし、そのためにやるのではないということなので、それはきちんと調べたり正しい使い方をするように指導していきたい。
【教育長】
 教員の多忙化については、通知を出しているが、それがどう現場で行われているか検証しなければならないということで実態調査を行おうとしたが、震災があり今年度は中止せざるをえなかった。したがい、調査方法をより簡略化して来年度実施し、それぞれの実態に応じた対応をとっていきたい。


≪再々々質問≫

・宮古市の水門、大船渡市の湾口防波堤の問題について

【斉藤議員】
 この問題は宮古市も市議会も堤防で対応するという計画だった。それが年末突然水門になった。そのために、新たに浸水区域が増えて、浸水する住民が増えた。それを示していただきたい。事業費といったのは、高架道路などというものが突然出てきた。高架道路はなぜ出てきたのか。その事業費はいくらか。そういう市の方向と全く違ったことが県で決定をされると。住民の合意がつくられない、これは慎重にやるべきである。
 大船渡の湾口防波堤は、第一波で破壊された。大きかった第二波第三波には全く無力だったのではないか。この間の水質悪化の問題も含めて、これも住民自身がしっかり協議し合意を踏まえて対応すべきではないか。

【県土整備部長】
 水門の関係だが、堤防方式か、水門方式かということは、最初には水門方式の方が良いということで、我々考えて市と協議していた。ただ、堤防方式の方がどうしても津軽石川水門の状況を見たときに、そういう意見もあって、市と調整をずっと進めてきたところである。それで、堤防方式になると、どうしても閉伊川の河口周辺で、通常の数十年〜百数十年程度のレベルの津波は全て守れる。ただし、最大波が来たときに、堤防方式だと上流側に全て流れ込むので、上流側で氾濫すると。つまり、新たなところで氾濫するという違った状況が生じるということからして、これではなかなか説明がつかないということで、市と協議のうえ水門方式ということにした。どれぐらい増えるかということだが、閉伊川の河口域に限れば、浸水面積としては、水門案は21.8ヘクタール、堤防案で34.1ヘクタールで、水門案の方が少ない浸水面積にはなる。ただし、堤防案とは違ったところ―鍬ヶ崎とか藤原の一部等について若干広がるという懸念が市民からされたということである。高架道路については、あくまでも市の方から、「水門ができるのであれば、そこに管理用の道路を造らなければいけないのだが、その道路を拡幅なりして道路にできないか」という要望をいただいていると。これは、今後の話であり、事業費はなかなか分からないと言わざるをえない。
 湾口防波堤だが、あるビデオ映像からいくと、3時11分に湾口から津波が侵入したことが分かっている。3時13分に湾口防波堤を越波し始めた。3時19分に灯台が無くなった。よって、考え方だが、多くは8分、それから6分間は越流の白波が立っているので、効果はあったと判断している。


・義援金により生活保護が廃止となった人数について

【斉藤議員】
 保健福祉部長、197人もいる。