2012年3月6日 予算特別委員会
高田一郎県議の知事に対する総括質疑(大要)
・被災自治体の国保運営について
【高田委員】
被災市町村において、収入減などにより、国保の運営に大変な支障をきたしている。
陸前高田市からは、「今年度は国保の歳入不足が補填されたが来年度の方向性が示されていない」と。大槌町では「給水人口が減っても事業をやらなければならない」という率直な訴えがされた。県としてどう実態を把握し対策を講じているか。
【達増知事】
国保会計への歳入不足への対応だが、沿岸12市町村における平成23年度の国保税収入の調停額は、約49億9000万円となっており、平成22年度と比較し約17億4000万円の減となっている。
国においては、市町村が被災者に対する国保税の減免措置を行った場合に、国民健康保険災害臨時特例補助金、国民健康保険特別調整交付金により財政支援を行い、沿岸12市町村に対して約18億3000万円が補てんされる見込みである。しかし国の財政支援は、平成24年9月までの措置であり、県としては、市町村の国保財政が安定的に運営できるよう国に対し財政支援の継続を要望していく。
【高田委員】
歳入不足に対する国からの財政支援が18億円と。これは大変な金額だと思う。新年度の国保の運営というのは、前年度の所得に対する賦課なので、9月までの財政支援ならば大変な問題が発生してくる。2月9日の通達では、10月以降の財政支援は考えていないという重大な通達になっている。被災自治体と協力に連携しながら国に対し強く求めていってほしい。
【達増知事】
県としても市町村の国保財政が安定的に運営できるように、国に対して財政支援の継続を要望していきたい。
【高田委員】
強く要請していただきたい。
・みなし仮設住宅の課題、災害復興住宅について
【高田委員】
2年で終了するということに対して、被災者から大変不安の声が広がっている。
現時点で国の対応・考え方はどうなっているか。
【達増知事】
民間賃貸住宅の借り上げによる仮設住宅の供与期間については2年間とされているので、これまで県としては国に対し延長を要望してきた。
国からは、必要があればその期間の延長をすることを考える旨の回答をいただいているところだが、引き続き厚労省に対し強く要望していきたい。
【高田委員】
この間知事も2度にわたり国に要望したということだが、この段階にきてまだ方向性が示されていないということは大問題である。
来年の夏ごろには仮設住宅の設置から2年になるわけだが、この時点で災害復興住宅はどの程度の建設を見込んでいるか。
それから、仮設住宅の1戸あたりの建設費用、撤去費用も含めてどのぐらいの予算になっているのか。
【上野副知事】
災害公営住宅の建設見込みだが、今年度は750戸、来年度は1000戸の建設に着手することとしており予算を計上している。すでに釜石の2団地160戸、大槌の1団地35戸で設計に着手しており、これらの団地は来年度前半に建設工事に着工する計画としている。
仮設住宅完成からおおむね2年後となる来年8月には、来年度着手分までの1750戸と、市町村の建設する住宅約750戸、計2500戸が着工する見込みとしている。うち800戸程度の住宅がその時点までに完成すると見込んでいる。
仮設住宅1戸あたりの撤去費も含めた費用だが、設置費用については、工事や撤去費用を含めて平均で600万円程度となっている。
【高田委員】
およそ800戸と。
昨日は集団移転、高台移転の問題が議論されたが、高台移転に3年もかかるという話もされた。こういう状況の中で2年で終わってしまうということは大変な問題が起きてくると思う。
撤去費用を含めて600万円と。600万円と仮定した場合、みなし仮設住宅でみると、8年〜9年分の家賃に匹敵する金額になる。これは期限を延長しても、大幅な経費節減になると思うがいかがか。
【復興局廣田理事】
仮設住宅とみなし仮設住宅の経費の比較だが、応急仮設住宅の1戸あたりの金額は約600万円、一方民間賃貸住宅については、毎年の家賃等が約73万円、入退去時における一時的な経費は平均で約23万円となっており、機械的に計算すれば応急仮設住宅の建設費用は民間賃貸住宅の借上げ費用の約8年分となる。
【高田委員】
8年分ぐらいに匹敵する家賃になっているので、わずか2年で出ていくということは問題だと思うし、それだけでも経費節減になっているので、この問題も含めて、そして2年後にみなし仮設住宅から退去ということになると、大変な大きな問題があるということを具体的に政府に迫っていく必要があると思う。
さらに、県営住宅については、県の判断で対応できると思う。国に対して要求していくときに、岩手県としては県営住宅は再延長したいと、そういうことを考えているから是非国としても対応してほしいという具体的な要求を示していくことが大事ではないか。
【上野副知事】
県営住宅の入居期間の延長だが、現在は76世帯の被災者の方々が一時使用という形で県営住宅に入っている。県営住宅の一時使用の期間については、みなし仮設住宅の期間と合わせて2年間としている。一時使用の期間がもし終了するということになると、県営住宅の入居状況を満たす被災者の方々については、被災者の方々の生活状況に合わせて本来の入居者に切り替えるなどの対応を行っていきたい。
【高田委員】
この問題は岩手県だけの問題ではなく、宮城県では仮設住宅以上にみなし仮設住宅が多いという状況もある。被災県と協力し知事を先頭に2年で退去するということにならないよう、強く働きかけていただきたい。
・介護保険制度について
【高田委員】
新年度から第5期の介護保険制度が始まるわけだが、第5期の最大の問題は保険料の大幅な引き上げだと思う。介護保険料は月額が5000円が限界だと言われているが、新年度から始まる第5期の介護保険料について、5000円を超える自治体はどのぐらいか。
そして現在の滞納状況を示していただきたい。
【千葉副知事】
第5期の介護保険の現状だが、現在各保険者において最終的な保険料設定を行っているが、現段階において各保険者から報告されている金額は、県平均月額で4851円となっており、5000円を超える見込みの自治体は7自治体となっている。なお、第5期の介護保険料については、第4期と比較し大幅な上昇が見込まれたことから、昨年6月の法改正で24年度に限り介護保険税制安定化基金の一部を取り崩すことが可能とされたところであり、取り崩し額については、基金の拠出者である市町村・県・国に返還し、市町村分については第5期の介護保険料の上昇緩和に充てることとされている。本県においては、県分9億5500万円余であるが、これについても、保険料の上昇緩和のため市町村に上乗せ交付することとしており、24年度当初予算案に計上している。
滞納状況だが、22年度は東日本大震災の影響により2保険者のデータがまだ確認できない状況だが、第1号被保険者数34万567人に対し、滞納者数は3091人、滞納率は0.9%となっている。
【高田委員】
5000円を超える自治体が7自治体と。しかし5000円に近い自治体も多数ある。負担の限界を超えるような保険料だと思うが、知事はどのような認識か。
【千葉副知事】
いわゆる5000円の壁という話だが、たしかに手元の資料を見ると4000円台の後半になっており、非常に金額的には高くなっている状況にあると認識している。
【高田委員】
一年間に限って安定化基金を取り崩して上昇抑制をできるとなっているが、県は40億円の基金があるが28億円の基金しか取り崩していない。これが妥当な対応だったのか。
【千葉副知事】
いずれ第5期以降の基金の使途等も踏まえて今回の取り崩し額を決定したものと考えている。
この負担の問題は非常に大きくなっているのは県も認識しており、国に対してはこの制度全体での広域負担割合の拡大などさまざまな要望を行っているところである。
【高田委員】
盛岡市の場合を見ると、第1期の保険料は3031円、今回は5245円と1.7倍になっている。ところが第1号被保険者の所得というのは、当時128万4000円だったものが今回は100万円をきっている。高すぎて限界を超えるというような負担になっている。
こういう高い保険料の負担を高齢者に求めて、きちんとサービスが受けられるのかということが問題である。要介護者の利用状況、利用限度額に対する利用額はどうなっているか。そして心配しているのは、今回の災害により要介護者が沿岸地域を中心に増えているのではないかと思う。高齢者の状態が悪化しているのではないかということも心配されている。これをどう県として実態を把握しているか。
【千葉副知事】
介護高齢者の実態だが、平成23年4月から12月までの間に、新規に要介護認定を受けた65歳以上の高齢者は、県全体で16460人であり、前年同期間と比較し1558人10.5%の増となっている。うち、沿岸市町村の同期間の新規認定者数は4286人で、前年同期比で1107人34.8%増となっており、県全体を大幅に上回る増加率となっている。沿岸市町村で新規認定者数が増加している要因だが、地域包括支援センターなど被災地の市町村から聞いているところでは、仮設住宅に居住している高齢者の方はもとより、自宅で生活している高齢者についても、被災後の環境の変化に伴う外出機会の減少などにより、例えば歩行が困難になるなど、いわゆる生活不活発病の高齢者が増加する傾向にあると聞いており、こういう状況が新たな要介護者の増加につながっているものと推測している。
【高田委員】
被災自治体では要介護者が増えていると。人口が全体として減っている中での事態である。しかも高い保険料を負担させておいて、今の状態の中でサービスが後退してはならない。そういう視点で介護保険制度を進めていくべきだと思うがいかがか。
【千葉副知事】
いずれ県としては、今後も被災市町村とも連携を図りながら、例えば市町村が実施する介護予防事業に加え、介護予防教室の開催、あるいは高齢者健康生活便利手帳の配布など、いわゆる介護予防関連事業を重点的に実施するとともに、被災地の実情によりながら高齢者の生活機能低下や生活不活発病の防止に対する取り組みを支援していく必要があるものと考えている。
【高田委員】
今回の介護保険制度の報酬見直しで、施設から在宅へと言いながら、在宅のサービスの中身も大幅に見直しをされる。
高い保険料を払って施設に入所できないことがあってはならないと思う。被災された地域では、特養が全壊するなど大きな被害も受けているが、現時点での特養の待機者の実態はどうなっているか。第5期でどのぐらいの基盤整備が進むのか。
【千葉副知事】
特養ホームの直近の入所待機者だが、23年7月末時点で6183人、うち在宅は2203人、その中でも、特に市町村が早期に入所が必要と判断した方は1253人となっている。当該待機者の方々については、今年度整備されている特養ホームのうち、941床が調査以降8月以降順次開設されているので、相当程度対応が可能ではないかと考えている。
第5期の特養等の整備計画数だが、現段階において平成24年度から26年度までの間の各保険者で見込んでいる特養ホームの整備計画数は、広域型が約400床、地域密着型が約400、計800床程度となっている。
【高田委員】
第5期については、早期入所が必要な方々が全て入所できるという計画なのか。
【千葉副知事】
これまで県としては、早期に入所が必要と判断された在宅の待機者について、中心的に施設整備を図ってきており、第4期中はご案内の通りだが、計画で定めていた611床に加え、上乗せ前倒し整備で528床ということで、計1139床の整備を図ったところである。したがい、当該待機者が一定程度減少するということを期待しているところだが、ただ今回震災の影響により、要介護高齢者の増加等も懸念されたところであり、いずれ今後待機者については十分注意を払いながら計画について盛り込むようにしていきたい。
【高田委員】
在宅待機者が2203人で、早期に入所が必要な方々が1253人、今の説明では、必ずしもこの第5期で早期に入所が必要な方々がすべて入所できない数字になっている。
医療保険ではさまざまな課題があるが、国保税を払えば病院に行けば断られることは基本的にはない。ところが介護保険の場合は、まじめに保険料を払っても必要なサービスが受けられない、入所できないという制度的欠陥があると思う。これに対して知事はどう考えているか。
【達増知事】
地域の中でのお互いの助け合いということと、あとは国全体の中で介護サービスを国民誰でも受けられるようにという、それが組み合わさって今の制度になっていると思うが、特に財政力・経済・産業の状況等厳しい地域にとっては辛い内容の制度だと思っており、そういったところを今までも国に対して制度の見直しを求めてきているところだが、さらにそこは力を入れて制度の見直しを求めていきたい。
【高田委員】
もともと制度に欠陥があった上に、東日本大震災の影響でさらに問題が大きくなってきたと思う。
この介護保険制度が安心して利用できるような制度になるように、引き続き県としても最大限の取り組みを求めたい。
・放射能から農業を守る課題について
【高田委員】
シイタケ汚染問題が本会議等でも議論になった。産地の自治体や生産者から、県の対応に対して厳しい批判の声が出ている。県の対応に問題はなかったか。あるいは農家や自治体から放射線検査の要望があったにも関わらず遅くなってしまったと思うが、なぜこのようになったのか。
【達増知事】
県では、生シイタケについて検査を行い、結果はすべて暫定規制値以下だったが、干しシイタケの検査について、国に対して「接触する状態の水戻しが妥当」という意見を伝えていたが、国からは11月に「当面の間乾燥状態で」という取り扱いの提示があった。一方で昨年末、国の審議会は4月以降の検査方法は「生または水戻し」という案が取りまとめられたところであり、県としても国および関係団体との調整に時間を要したものである。一方その間、2月初旬に他県において本県産の干しシイタケを乾燥状態で検査するという事例があったので、産地としての信用保持等の観点から、当面の間の検査方法等国から提示があった乾燥状態での検査を実施したという経緯である。
県としては、国から本県が農林水産物の検査計画の策定を求められた昨年8月以来、市町村・関係団体等との打ち合わせや生産者懇談会等の場を通じて情報提供や情報共有に努めてきたが、引き続き関係市町村や団体との連携を図りながら放射性物質対策にあたっていく。
【高田委員】
この間のシイタケ問題への対応については問題なかったと認識しているのか。
【達増知事】
干しシイタケを乾燥状態で検査した結果、1キロあたり500ベクレルという数値を上回ったわけだが、それを本来国が正式に定めた4月以降の検査方法で「水戻し」してやっていれば、それは暫定基準は超えないような数値だったわけである。したがい、岩手の干しシイタケが本来あるべき検査のやり方をしていれば暫定基準値を超えていなかった物に対して、いち早く県が乾燥状態で検査すれば暫定基準を超えているということを周知すべきだったかといえば、そこはやはり産地としての適切な評価としては、国が4月から正規のやり方としている水戻しということを県がずっと主張していたことについては、産地県としては必要な措置だったと考えている。
【高田委員】
産地の自治体や生産者からは、昨年の5月から検査すべきだとずっと主張してきたと聞いている。しかし県は、国の対応が示されていないということで、ずっと検査を渋ってきた。今回のほだ木の検査についても、国の基準が示されていないから県はやらないと。こういうのがずっと続いている。やはり国の対応待ちというところに問題がある。やはり産地を守るという立場に立って対応していくと。専門家の協力もいただいて調査し、国に先駆けて対応するということをしないとどんどん遅くなる。賠償も遅れてしまう。農家の皆さんも意欲をなくしてしまう。知事はいつも現場に答えがあるということを言っているが、国の基準待ち・対応待ちにならず、産地を守るという立場に立ち、震災対応もそうだが、そういう姿勢で対応すべきだったのではないか。
【上野副知事】
産地を守るという立場での対応だが、これまで東電への損害賠償請求の取り組みの支援や、国に対し原木の新たな使用値の早期提示や、新規ほだ木造成への支援などの対策を講じるよう要請してきた。対策の具体化には、国の具体化を踏まえる必要があるものも含まれているが、県としては出来る限りの対応をしながら再生産が可能となり産地が守られるような考え方で取り組んでいきたい。
【高田委員】
産地を守るということだが、農家は今ほだ木の更新は「自己負担をしてまでやれない」と。あるいは「売れないと分かっているのに作れない」と。農家がどんどん撤退していくという状況が私の地域でも生まれている。生産から収穫までの間、収入を補償するという政策が本当に必要だと思うがいかがか。
【上野副知事】
原発事故に起因し失われた収入の補償については、原因者である東電が賠償すべきものと考えており、損害が早期かつ確実に賠償されるようJAなど損害賠償対策協議会と連携しながら取り組んでいる。
また、県では、関係団体と損害賠償に対する考え方などの検討を進めているが、引き続き国や東電に要請しながら、状況に応じて速やかに対応できるよう準備を進め、失われた収入が早期に賠償されるよう取り組んでいく。
【高田委員】
東電に対する賠償の考え方だが、3ヶ月に1回補償すると。あるいは賠償金については収入扱いされるというさまざまな課題がある。知事は東電に対してどういう視点に立って賠償請求していくのか。
【達増知事】
東電への損害賠償請求に関する考え方だが、東電の損害賠償請求に対する支払時期についてはルール化されておらず、また損害に見合う支払いになっていない。東電には、賠償請求に対して早期かつ確実に支払うようこれまでも強く要請してきているところだが、今後も同様の視点で臨んでいきたい。
【高田委員】
東電は加害者意識がない。東電に対して強く求めることが大事だと思う。
知事はこの間東電に行ったか。行っていないとしたら知事が先頭に立って全面賠償を求める行動をすべきだと思うがいかがか。
【達増知事】
県として適切に対応していきたい。