2012年3月6日 予算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)
・大震災津波の被害総額と各分野の被害額、救援復興の各分野の予算執行状況について
【斉藤委員】
大震災津波の被害総額と各分野の被害額、救援復興の各分野の予算執行状況を示していただきたい。
【総合防災室長】
東日本大震災にかかる被害額だが、先に復興計画において一定の額を示していたところだが、その後農林水産関係、公共土木関係の被害額が変更・確定しているので、その後の状況において申し上げたい。商工業関係は1661億円、農林水産業関係は6633億円余、公共土木関係で2479億円余、教育施設被害として334億円余、その他公園等の関係で19億円余、総額で1兆1126億円余の被害額となっている。
【予算調製課総括課長】
県としての復興にかかる予算化の状況だが、平成22年度の補正から平成24年度の当初予算までの累計で申し上げると、復興対応分として1兆2649億円の予算措置をしている。
復興計画にかかる安全・暮らし・生業の3区分ごとに申し上げると、安全の分野で3138億円、うちがれき処理等の防災のまちづくりが2283億円である。暮らしの分野では2314億円、うち仮設住宅等生活再建の支援で1701億円となっている。生業の分野で4628億円、うち水産業振興の部分で2571億円である。
【斉藤委員】
今回の東日本大震災津波の全国的な被害想定はどうなっているか。うち岩手県分はどうなっているか。
国の復興予算、今まで議論して20兆円とか19兆円と言われているが、どうなっているか。
【総合防災室長】
国の全体の被害額という数字については押さえていない。
【予算調製課総括課長】
国の補正予算にかかる震災関係分の予算だが、4次補正までされているが、18兆8687億円と把握している。内訳として主なものは、災害廃棄物の処理事業費で1兆821億円、災害対応の公共事業関係費で2兆7806億円、災害関連の融資関係経費で1兆4333億円、地方交付税が3兆2388億円措置されている。
【斉藤委員】
なぜ聞いたかというと、国全体の被害総額で復興予算が決まる。岩手県の場合だと、ストックを含めて被害が約4兆円という試算があった。おそらくそれは全国レベルで出ている話だと思うので、4県合計だと16兆3730億円、全国でいくと20兆円。これには原発が入っていないので。だいたいそういう被害総額で復興予算が決まって、その枠内でさまざまな事業がされるというので聞いた。
国の補正予算は18兆8600億円ということで、その被害想定そのものが正確にされないと、復興予算の規模が小さくされてしまうのではないか。そういう意味でいけば、これ自身を正確にして、本当に復興に必要な予算を獲得するということは大事な課題である。同時に、この復興予算も今やっているのは、高速道路や防潮堤や湾口防などの公共事業にどんどん投入をされると。知事が「人間の復興でなくてはならない。被災者一人一人の復興でなくてはならない」と。こういうことでいったら、被災者の自立を助けることこそ最優先にすべきだと思うがいかがか。
【総務部長】
被害想定、実際被害が起っているので被害の推計、集計ということだが、なかなかこれは国全体でまとめていただかないと我々としても十分できかねるところがある。委員紹介の資料については、政策投資銀行から岩手県が4兆2000億円ということで出ており、我々も内訳等どうなるかという試算も試みたが、なかなかうまく数字があてつかないということがあり、これについては国における全体的な対応を待ちたいと思う。またその中で岩手県としても必要な動きがあれば、必要な資料や情報は出していきたい。
また、復興の予算措置、予算の内容だが、さまざまな復興の予算については、復興計画も踏まえ、いろんなさまざまな被災者・被災地の課題がある。これについて、出来る限り応じるという方向で、いろんな予算措置・財政措置、これは国だと思うし、またそれを受けて本県もということになり、また本県はそれをさらに知事のリーダーシップのもと意識的に行ってきたつもりであり、被災者に寄り添った施策なりについては盛り込めているのではないかと考えている。
【斉藤委員】
復興予算全体、その進め方、例えば20兆円規模でこの事業をするときに、いま急ぐべきは被災者の自立である。暮らしを守り事業を再建させて被災地で生活できると。逆にいくと、公共事業というのはある意味でいけば時間をかけてやるべきである。それが逆に地元の仕事を増やす。岩手県の復興の取り組みも、急ぐべきは急ぐが、やはりそういうバランスを考えて進めていただきたい。
・大震災津波対応の検証報告書について
【斉藤委員】
立派な検証をしたと思っている。じっくり読ませていただいた。
特に、避難行動の問題で、避難行動を考えるときに、気象庁の警報はどのように出されたのか。そして津波はいつの時点で第一波大二波が到達したのか。
【防災危機管理監】
岩手県に地震発生から3分後に津波警報が出された。予想される津波の高さは3mだった。以降、15時14分には6m、15時30分には10m以上と二度にわたり修正された。しかし発災から40分後の15時26分には、宮古市に設置された気象庁の観測施設において8.5m以上の津波が観測されていた。
【斉藤委員】
この気象庁の津波警報はきわめて重大だったと思う。最初は3m、15時14分には6m、15時30分には10m以上、15時26分に宮古は8.5m以上の津波が来ている。津波が来た後に10m以上という警報を出しても何の役にも立たない。ましてや直後に停電があり、6mの見直しも十分徹底されなかったと思う。この問題は国のレベルでどう検証されているか。
【総合防災室長】
津波警報については、現在気象庁において津波警報の発表基準と発表のタイミング等について、見直しがされている。具体的な審議の経過については答弁できかねるが、表現の仕方等について、住民が即座に避難できるような表現はどうあるべきか等々の現場的な発表の仕方について検討されていると理解している。
【斉藤委員】
最初の3mという警報が避難を遅らせた1つの要因になったと思うし、当事者から聞くと、リストラで十分な解析・分析の体制がなかったと聞く。こういう問題は、どれだけの体制を構築して、いざというときに正確な警報ができるということだと思うので、この問題が大きな避難行動に影響を与えたのではないか。釜石の資料を見ると、15時21分に9.3mの津波がもう来ている。
同時に、岩手県内では5900名を超える甚大な犠牲者を出した。こういう甚大な犠牲者を出した要因というのを徹底して検証して今後に活かすべきだと思うが、この甚大な犠牲者を出した要因・問題点・打開策はどう検証されているか。
【防災危機管理監】
多数の犠牲者を出した要因としては、津波規模の過小評価だったり防潮堤の効果等を過信したことによる避難開始の遅れであると分析している。
また、亡くなられた方の年代別の割合として、60歳以上の方の割合が高かったこと、そして避難支援にあたった消防団員の方、警察官等が多数犠牲になっていることから、高齢者・障害者等の要援護者の避難と支援のあり方に課題があったのではないかと認識している。
このために、迅速な避難の重要性を含めた住民の防災意識の徹底・高揚が図られるよう、住民向けの啓発活動を積極的に展開していくとともに、要援護者への情報伝達や避難誘導の的確な支援がえられるようしていきたい。
【斉藤委員】
陸前高田市や釜石市などで、専門家がさまざまな調査を行っている。釜石の場合は、群馬大学が約4000世帯のアンケートを回収し、36.3%が自宅で犠牲になったと。避難先で犠牲になったのが10.3%だった。特に釜石の場合は全体で931人犠牲になっているが、うち鵜住居地区が583人。陸前高田市の場合は、静岡大学の牛山教授が分析しているが、浸水区域で犠牲になった率は11.3%で女川町の次に陸前高田市が高かった。低地で人口密度が高いところで犠牲があったと。あくまで分析のデータしか出ていないが、こうした専門家の分析を踏まえて、そういう犠牲の実態を徹底して検証して生かしていただきたい。
そして決定的な問題は避難である。釜石の場合でも36.3%が自宅で犠牲になり、避難しなかった、できなかった問題だと思う。津波のときには迅速に避難するということが最大の教訓である。そのためには避難道・避難場所を真っ先に整備することが今回の教訓からやる必要があるのではないか。陸前高田市に行ったとき、被害を受けた保育所は、毎月避難訓練をやっている。保育園の裏に避難路を造っている。市役所の職員がさまざまな調査に同行すると、ラジオをかけっぱなしでやる。余震や津波警報が起きた場合にすぐ避難できるようにと。被災地というのはこういう形で、ただちに避難する、避難できる体制を今の段階でも最優先に考えて対応している。そういう避難場所・施設の整備こそ最大の教訓として進めるべきだと思うがいかがか。
【総合防災室長】
委員ご指摘の通り、津波災害については早期の避難がまさしく被害を少なくする、減災の第一歩だろうと考えている。そのため、県としてもそういった早期避難のための啓発等を今後とも進めていかなければならないと考えており、それを支援するためにも避難路等の整備は重要だと認識している。ただ、こういった避難路の整備については時間もかかり、今後の防災まちづくりの中でもそういった取り組みは十分なされていかなければならないものだと思っており、当面そういった早期の避難に向けた啓発に取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
釜石の奇跡と言われる釜石東中学校、鵜住居小学校の取り組みがあり、しかし同じ鵜住居地区で釜石は最大の犠牲者を出した。釜石の悲劇とも言われた。そういう素晴らしい防災教育・防災訓練があってその成果が出た一方で、甚大な悲劇も起きていることもしっかり見て取り組む必要がある。
それから避難場所の問題について、今までもそうだが、避難場所があまりにも貧困である。暖房はない、備蓄はない。小規模な地震のときにも、避難の規模が小さいのは、ああいうところに行っても生活できないということがある。避難場所の整備を今度こそしっかりやるべきだと思うがいかがか。
【総合防災室長】
その点についても、今回の検証や地域防災計画の見直しの中で、避難場所における暖房器具や備蓄等について盛り込んでおり、これを踏まえ市町村の会議等において、市町村の地域防災計画の策定、避難計画の策定等に活かしていただくよう話していきたい。
【斉藤委員】
ぜひ再生可能エネルギーの公共施設への設備の事業もあるが、葛巻町は去年の段階で自家発電装置と蓄電池を設置した。そういうことこそしっかりやって、避難場所に行けばしっかり情報も得られる、温かい食事も出るぐらいのことにしなくてはいけない。
・消防団員の犠牲の問題について
【斉藤委員】
検証報告書の中にも消防団員の死者が117名で行方不明者が2名ということで、本当に消防団員の場合には、今度の津波の救援・避難行動で最前線に立った。しかしそれだけに犠牲が大きかった。この犠牲者の要因をどう把握しているか。
【防災消防課長】
今回の震災で亡くなられた消防団員の方の人的被害だが、消防団活動中に被災した消防団員については90名ということだった。その活動の内訳としては、水門閉鎖中が4名、避難誘導中が59名、救助・介助中が6名、避難広報中が3名、出動途上が17名などとなっている。
要因ということだが、県が行った災害対応にかかる検証の中では、やはり避難すべき手順が不明確だったことや、情報ツール・連絡手段がなかったことなどが挙げられている。
【斉藤委員】
昨日消防庁の検討会が開かれ中間報告が出て、消防団員の退避優先のルールを決めるべきだという中間報告も出されたようなので、本当にこういうルール化が必要だと思う。
それで消防団活動の途中で犠牲になったのが90人と。そうすると公務災害認定は90人ということになるか。そしてこういう方々には賞じゅつ金は支給されているのか。
【防災消防課長】
消防団活動中に亡くなった90名の方は全て公務災害適用ということである。それに加え、県・国・市町村とそれぞれ賞じゅつ金が決定されている。
・消費税増税と復興増税の県政・県民への影響について
【斉藤委員】
消費税が10%に増税された場合の県民の負担はどうなるか。そして今度の議案には復興増税の住民税値上げの議案が出されているが、どれだけの県民の負担が提起されているか。
先ほど税務課長は重大な答弁をしたが、消費税増税は県民を苦しめる大変なものだと思う。「効率性がいい」というのはとんでもない話である。法人事業税対象の事業者数と率、赤字の法人事業者はどのぐらいあるのか。
【税務課総括課長】
消費税の増税だが、現在国において検討されているところで、詳細な試算等は出来ない段階だが、平成22年度の地方消費税の決算額116億5000万円から推計すると、税率が10%になった場合、消費税・地方消費税含めて1165億8000万円余、582億9000万円余の増と推計できる。
個人県民税にかかる均等割の引き上げだが、平成26年度から35年度までの10年間、税率を500円引き上げるということだが、この影響額は単年度で2億7245万7000円税収が増えると見込んでいる。
法人事業税についてだが、22年度の数字で事業税の申告義務のある法人21880社のうち、事業税が発生していない法人は14877社68%である。
【斉藤委員】
おそらく県分の負担増が582億円だと思う。市町村も含めると約その倍で1273億円となる。地方消費税清算後の額は255億円、その5倍ということになるとそういう額になると思う。
法人事業税で68%というのは、大企業を含めた数で、中小企業を含めると75%ぐらいになるのではないか。
【税務課総括課長】
事業税が発生していない中小法人だが、20132社のうち、14763社73.3%が事業税が発生していない法人である。
・放射性物質対策について
【斉藤委員】
県がこの間東電に対して、いつ、どういう対策と賠償を求めてきたか。
損害賠償の支払いが仮払いで昨年末に19億円、3ヶ月に1回という賠償だったら被災者の生活は成り立たない。毎月の支払いということを早く解決すべきだと思うがいかがか。
原発問題というのは、チェルノブイリに続く世界的な大災害である。この教訓を踏まえて地域防災計画の見直しにきちんと提起するというのは当然の話だと思う。盛岡で250キロ、女川原発も紙一重だった。女川原発で同じことが起きたら盛岡だって避難しなければならなかった。そういう事件が起きたということ、被害が現在進行形だということを考えたら、この問題をきちんと地域防災計画に位置付けるべきだと思うがいかがか。
【総合防災室長】
東電に対する損害賠償の請求の状況だが、農林水産物ということに関し、JAグループでつくっている協議会があるが、第一次が9月30日で2900万円ほど、第二次が10月31日で10億円余、第三次が11月15日11億7100万円余、第四次が1月31日で19億6400万円、第五次が2月24日6億1000万円、計47億8800万円という要求になっている。また、1月26日に県および市町村の損害賠償請求を県庁内において知事が直接東電に対して行ったところで、これは約1億円余ということになっている。
【総務部長】
原発災害の防災計画への位置づけだが、もしそういう災害が起こった場合、どういう情報伝達があるのか、その際避難しなくてはいけない場合に、どこにどのような形で避難するのか。そういったことについては、なかなか県だけの知見・対応だけではままならない面があるので、国の枠組みなりの議論が深まるのを見定めた上で、県として必要な対応を考えていきたい。そのような中で、防災計画の対応についても検討させていただきたい。