2012年3月7日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・仮設住宅の環境整備、コミュニティの問題について
【斉藤委員】
寒さも峠を越えた感じだが、水道管の凍結件数は何件あったのか。
寒さ対策では、ソフト対策も含めてどういう対策が講じられたのか。この寒さ対策の取り組みをどう評価しているか。
【生活再建課総括課長】
寒さ対策だが、応急仮設住宅については、断熱材の追加だとか隙間風防止シートの追加補強、窓の二重サッシ、玄関先の風除室の追加設置、畳の設置のほか暖房器具の追加設置を実施したところである。みなし仮設住宅については、災害救助法による暖房器具の設置ができないことから、NGO等の協力をいただき暖房器具の配布を行った。
水道管の凍結だが、水抜きを行ったにも関わらず凍結した水道管の件数は、3月5日現在で707件となっている。その原因としては、仮設住宅の床下が吹きさらしとなっており冷えやすい構造となっていること、早期完成を急いだため一部においては床下配管に十分な勾配がなかったことによるものであり、対策として床下周りをシートで囲う追加工事や配管状況の再点検を行い2月10日までに完了している。
【斉藤委員】
3月に入り暖かくなってくると、床下の目張りを取る。風通しを良くしないと夏場に蒸れるので。だから今度の教訓は、しかるべきときにしっかりまとめて対応していただきたい。
仮設住宅のコミュニティ対策で、仮設団地における集会所・談話室・空き室の活用を心配していたが、集会所は40、談話室は105、空き室活用が31と。あわせて176団地で55.2%、そうすると45%は何もないということになる。仮設住宅でのコミュニティというのは、被災者のいのちの砦で、再建の要である。ここで議論していくことが再建の力になっていくわけで、45%がないということについて、これからでも要望があれば談話室を作れるのか。ここの対策についてお聞きしたい。
【生活再建課総括課長】
例えば集会所の設置基準については、おおむね50戸以上の団地については設置できるという基準があったものだが、できるだけ多くの仮設住宅に設置したいということで、その分を住戸の建設にまわしているという状況である。そういう状況なので、基本的には運営上の工夫で対応いただきたいと考えている。
【斉藤委員】
45%に集会所・談話室がないと。例えばこの45%の中に空き室活用という可能性はないのか。そこを調べていただきたい。団地における集まる場所がないということは大変なことである。自治会もかなり作られそうだが、集まる場所がない。45%をどういう形で対応するのか、被災者の仮設団地のコミュニティを作る上では重要な問題だと思うがいかがか。
【生活再建課総括課長】
空き住戸の活用については、市町村に入退去の管理をお願いしているが、集会所としての活用についても、一定の戸数は新たに入居される被災者の分も確保する中で、ぜひ活用していただきたいということで話をさせていただいている。それぞれ市町村において空き住戸の戸数を勘案しながら、また自治会等の要望もいただきながら集会所としての転用が行われているということで、先ほど述べたのは、集会所がなくてそれを談話室として活用している団地ということだが、この他にも空き住戸はまだまだあるので、それぞれの団地と市町村で話をしていただき、活用できるものについては活用していただきたいと考えている。
【斉藤委員】
もう1つは、集会所・談話室の活用である。一定の時期までここを管理する人がいないというのでほとんど活用されていなかった。いま生活支援相談員なども配置されているので、配置状況、活動状況はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
全体的な活用状況については、ボランティア団体によるお茶会などの各種行事の開催や、子どもたちの学習スペース・遊び場などのほか、生活支援相談員によるコミュニティ再生支援の場として活用されている。
生活支援相談員の配置状況だが、1月31日現在で、県社協および16の市町村社協に188人が配置され、被災世帯への訪問等を通じて、安否確認や見守り、被災者の相談に応じた保健・医療や福祉サービスへの橋渡し等のほか、応急仮設住宅におけるサロン活動などの取り組みが行われている。
【斉藤委員】
仮設住宅の団地における自治会の確立状況だが、すでに226でつくられて、60の団地が地元の自治会に組み込まれていると。さらに28で準備中だと聞いている。あわせて314団地ということになるので、だいたい自治会は確立しているのかなと。この自治会への支援を強めて、仮設住宅のコミュニティの確立に取り組んでいただきたい。
我々も一貫して仮設住宅の訪問をしているが、いまだに温かい布団が欲しいなどさまざまな支援の要請がある。我々はいろいろ無料提供しているが、実はそういう集会所でやっても来れない一人暮らしのお年寄り、体の弱いお年寄りがいる。だからそういうところには必要な物資を届けないと届かない。そういう意味で、県とすれば支援物資の届けは終わったが、NPOなどさまざまなところと協力して、集会所でやっても取りに来れないような方々については、「お届け隊」のような形でぜひ取り組むように要望したい。
仮設住宅の共益費支援事業について、1億5360万円予算化された。共益費で仮設住宅は困っており、これは大変良い事業だと思う。これはどういうものが対象になるのか。そしてこれは何年かかかる事業なので、そういう見通しをもっていると思うので、中身を紹介していただきたい。
【生活再建課総括課長】
事業目的については、今回の震災に際して災害救助法に基づき建設した応急仮設住宅にかかる共益費を負担し、居住者の負担軽減を図るものである。
対象となる共益費については、集会所・談話室にかかる高熱水費、応急仮設住宅の団地にかかる浄化槽・受水槽の電気料、応急仮設住宅の団地内における街灯の電気料、その他共益費として市町村から相談いただいて県が認めた費用となっている。
【斉藤委員】
災害救助費で42億円余、説明では応急仮設住宅の供与等ということだが、これは仮設住宅の維持管理費か。それとも新たに提供するのか。
【生活再建課総括課長】
基本的には、民間賃貸住宅の家賃だとか、建設した仮設住宅におけるリース料や借地料等の経費である。
・水産加工業の再開状況、仮設店舗・工場の状況について
【斉藤委員】
水産加工業の再開状況、グループ支援の状況について。第4次で150億円予算化しているが、どういう中身で産業支援に取り組もうとしているか。
あわせて、仮設店舗・工場の設置状況、今後の見通しも含めて示していただきたい。
【産業再生課総括課長】
水産加工業の再開状況だが、工業統計の156事業所のうち、138事業所が被害を受けており、うち昨年12月末までに64事業所が再開している。
グループ補助の状況だが、現在30グループ295社436億円を交付している。また第4次の支援となる24年度については150億円の予算を措置しており、これまでと同様の形で再建を希望している方々を募集するような形で募り、審査会等を経て決定していくという取り組みになると思う。
仮設店舗・工場の状況だが、2月末現在で194カ所で事業を開始して、うち着工済みが160カ所、うち124カ所が完成している。仮設店舗・工場の要望については、まだ今後も要望があるようなので、中小企業基盤整備機構の方で整備するわけだが、県としても整備等の促進を要請していきたい。
【斉藤委員】
水産加工業の問題で心配しているのは、138事業所が被災して、12月末という古いデータだが64しか再開していない。おそらくグループ補助は決定されていて、再開途上いうのもあると思うが、いまグループ補助の対象になった295社は、うち水産加工業はどのぐらいか。おそらく64以上に再開に取り組んでいるのだと思うが、その辺りの見通しが分かれば示していただきたい。
【産業再生課総括課長】
水産加工業のグループ補助の対象になっている企業数は、グループごとに積み上げてみると、いま正確な数字はもっていないが100社を超えていたと思う。ただ、そのグループの中には、運輸業等も関連グループとして入っていたと思うので、その辺りの運輸業社などを除いて集計したものがないので、だいたいそのくらいの数だと思う。
それから、64事業所の再開にとどまっているということだが、グループ補助の2次3次の決定が11月や12月だったので、いま施設の復旧や工場の新設にとりかかっている業者が多いのではないかと想定しているので、今後再開する業者が増えてくると考えている。
【斉藤委員】
仮設店舗・工場で194地区で事業が開始されたと。エントリー数は329と聞いているが、事業開始された区画数、店舗数、完成数も含めて示していただきたい。
【産業再生課総括課長】
それぞれいくつか区画あるものを1と数えると、完成したのは124だが、そのうちの区画数としては722区画である。
・住宅確保対策について
【斉藤委員】
住宅の新築購入に100万円の補助が出され、大変歓迎されている。せめて岩手県単独で100万円と。さらに市町村が上乗せするということが必要だったのではないかと思う。浸水地の土地代金とも関わるが、どれだけの自己資金が必要と試算しているか。
【生活再建課総括課長】
被災世帯がおかれている状況は、家族構成や経済状況により異なり、新たに再建する住宅の大きさや建設にかける費用もさまざまだと考える。県としては、被災者の住宅再建の後押しとなるよう、既存の支援策も含めて、住宅取得に必要な経費の2分の1から3分の1程度の支援を基本として、持ち家再建の支援策を考えたところである。
県による支援のものとしては、被災者住宅再建支援事業により最大100万円を補助するとともに、県産材を活用した住宅の場合には最大40万円、バリアフリー対応の住宅の場合には最大90万円、資金の借り入れをした場合には利子補給で最大約135万円の補助を行う。これら県による支援のほか、国による被災者生活再建支援金の最大300万円を含めると、公的支援金として最大665万円の補助を受けることができる。
【斉藤委員】
岩手型復興住宅は1400万円といっているので、あと700〜800万円必要になる。なかなかまだハードルが高いと思う。さらなる支援策が必要である。
今回100万円の補助というのは、来年度どのぐらいの件数を見込んだものか。
【生活再建課総括課長】
来年度からの5年間ということで考えており、最大9500戸ということで、来年度分については2割分ということで措置している。
【斉藤委員】
災害公営住宅は県土整備部の所管なので、入居の形態について、ぜひ県土整備部と連携をとってほしいのだが、仮設住宅の多くは抽選入居になった。集落単位でやった地域もあるが、全体とすれば抽選で、結局仮設住宅の隣の人は知らない人が多かったと。復興公営住宅のときには、やはり最大限集落単位で、集落のコミュニティが維持されるような進め方をすべきである。そういう意味でいけば、どの地域にどれだけ災害公営住宅ができるかという全体像を、5年計画なり示せば、あそこに入れるという安心感が出る。そうしないと、一人暮らしや高齢者が優先されて、お年寄りだけの住宅ができてしまう。これは阪神大震災の最大の教訓である。それが分かっていながら仮設住宅はそうならなかった。この仮設住宅の取り組みの経験を、ぜひ復興公営住宅には生かしていただきたい。
・防災集団移転事業、漁業集落整備事業、区画整理事業について
【斉藤委員】
現時点で具体的にどれだけの計画になっているのか。今度の交付金で認められた分はいくらか。
そして、コミュニティを維持したまちづくりが決定的に重要だと思う。ある意味でいけば、ここは時間をかけて協議をする場をつくると。そこに必要な専門家も配置すると。例えば、防災集団移転事業の場合、一人でも欠けたらいけない。そして防災集団移転事業を決めた場合には、前の土地は使えないということになるので、それだけの規制がかかるわけだから、徹底した住民の合意が必要になってくる。その点について是非復興局でよく状況をつかんで対応すべきではないか。
【平井理事】
防災集団移転促進事業だが、1月31日に提出した第一次の復興交付金事業計画によると、防災集団移転促進事業は、沿岸12市町村中7市町村、漁業集落の地盤のかさ上げや生活基盤整備等が可能な漁業集落防災機能強化事業が9市町村、都市再生区画整理事業は6市町村でそれぞれ導入が予定されており、調査費を活用した事業計画の策定等が行われることとなっている。そのうち、今回の可能額の通知で認められた地区数については、集計に時間を要するので、時間をいただきたい。
コミュニティを維持したまちづくりを進めるための方策だが、防災集団移転事業等の際に、コミュニティを崩さずに新しいまちづくりを行うことは必要な視点と認識している。このことは、県の復興基本計画においても記載されているところである。現在、被災した市町村においては、各々の復興計画に等に基づいて、アンケートや懇談会などにより住民の意向を把握しながら、高台移転や土地区画整理を含むまちづくりのグランドデザインを行っている。その先にある街並みの設計等、具体的なまちづくりの計画にあたっては、コミュニティを維持することのほか、賑わいの創出、高齢者でも暮らしやすいまちづくりなど、配慮すべき事項がある。それらの諸点を考慮したまちづくりについては、市民との徹底した合意プロセスの中で専門家の知見を生かしていく作業が必要となる。沿岸市町村においては、各々の復興計画など策定時点から、県内外の大学教授等まちづくりの専門家が参画しており、今後の具体的なまちづくりのプロセスにおいても、それらの専門家の協力を得ていくべく、県としても市町村を支援していく。
【斉藤委員】
防災集団移転促進事業の計画は、現段階でいくつあるのか。都市再生区画整理事業の計画が現段階でどうなっているのか。漁業集落防災機能強化事業についても件数を示していただきたい。それで今回の交付金の結果を含めて示していただきたい。
それから、岩手農業共済新聞に岩手大学の廣田教授が論文を載せており大変感心した。この先生は、県の復興計画の専門技術委員にも名を連ねて地元をよく知っている方である。「地域コミュニティ主体の復興が実現しているのかといえば、現実は非常に心もとない状況にある。市町村による地区ごとの話し合いの場の設定と運営が必ずしも適切でない。本来丁寧な合意形成が必要である住宅移転問題に十分取り組めていない問題がある。全てが急ぎすぎで、もっと丁寧な説明と議論、合意形成のプロセスが必要。今のままでは理念や計画が置き去りにされ事業ありきの復興になりかねない」と指摘している。復興計画ができたが、それぞれの集落、町をどう再生するのかというのは、その人たちの徹底した協議と合意を通じて決められるべきものである。そのための機会、協議が十分行われていないのではないか。時間をかけるところはかけて、徹底した協議と合意を踏まえて、その人たちがどんな新しい町をつくろうとしているか。この理念・目標・夢がなかったら、市町村が決めたところに行った行かなかった、それだけになってしまう。今の局面が大変大事な局面だと思う。被災者の自立など急ぐところは急ぐ。しかしどういうまちづくりを進めるかというのは丁寧に時間をかけて進める必要があるのではないか。
【平井理事】
防災集団移転促進事業の地区数だが37地区である。土地区画整理事業は18地区、漁業集落防災機能強化事業は24地区となっている。
今回の可能額の通知でどれだけ落とされたかという関係については、後ほど資料で提供させていただきたい。
まちづくりに関して合意形成のプロセスを丁寧にという指摘については、その通りであり、現段階までは、市町村によっては、合意形成のプロセスをスキップしてきたわけではなく、やはり抱えている人口があり、その方たちを安全な場所に住んでいただけなければならないという、量的な関係を解決する必要があるので、非常に物量的な関係、浸水深がどのぐらいで、どこまでかさ上げして、その上に何ヘクタールの居住地をつくらなければいけないといった、即物的な計画を立てることは非常に合意形成が難しいし工学的にも難しい作業である。そうやって形成される町がどのぐらい血の通ったものになるかと、コミュニティが良いものになるかというのは、やはり今後の設計、コンセプトの形成というところにかかるところが大きいわけで、多くの市町村ではそういった思考をこれからやり始めるところではないかと思う。ご指摘の通り、そのプロセスを丁寧に行うべく専門家の力を借りること、住民合意の形成をしっかりやることには意を払っていきたい。