2012年3月12日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・義援金を理由にした生活保護の廃止について
【斉藤委員】
義援金を理由にした生活保護の廃止について実態をお聞きしたい。
【地域福祉課総括課長】
平成24年1月31日現在で生活保護が廃止された世帯は197世帯が報告されている。内訳は、義援金等を受給することを契機に自立し、保護辞退の申し入れのあった13世帯、義援金等の収入から自立更生に当たる額を差し引きその超える額を収入として認定し廃止となった184世帯である。
保護の実施機関においては、義援金等が被災者である被保護者の長期的な生活設計や生活基盤の確保にも十分配慮した自立更生計画の策定について支援し、係数診断会議などで保護の要否を組織的に検討するとともに、保護廃止決定を行う場合にも、再び保護申請が必要な場合に相談や支援を行うよう助言している。こうした取り扱いについては、逐一県にも書面で報告をいただいて審査している。
【斉藤委員】
一般の国民・県民の場合は、義援金も災害弔慰金も被災者生活再建支援法に基づく支援金も非課税である。収入に認定しない。なぜ生活保護世帯だけ収入に認定せず差別的扱いを受けるのか。義援金だけでなく、災害弔慰金とか被災者生活再建支援金も収入と見ているのか。
【地域福祉課総括課長】
国民健康保険、所得税等の関係だが、生活保護制度においては、法律上利用しうる資産、能力、その他あらゆる物を活用することを前提としており、義援金等の収入については、自立更生に充てられる費用以外は収入として認定する取り扱いとされている。
義援金等の性格は、災害により損害を受けたことにより受け取る金銭だが、その全額が被災者の方の心身の苦痛を慰謝するものだけではなく、災害により失われた生活基盤の回復という生活保護の意味合いが大きいと考えられることによるものというのが国の解釈である。
国民健康保険における保険料の徴収や、所得税の賦課徴収の取り扱いとは考え方が異なるものであると受け止めている。
災害弔慰金の支給に関する法律、被災者生活再建支援法による取り扱いについても同様である。
【斉藤委員】
これは本当に差別的取り扱いだと思う。一般の国民・県民は、義援金も災害弔慰金も生活再建支援金も非課税、収入にみない。生活保護世帯だけは、自立更生以外は全部収入認定して、結果的には197世帯生活保護が廃止されると。国の政策としても整合性がないのではないか。
生活保護世帯であっても、こういう災害の時に得られる一時的なものである。だから一般の国民・県民の場合には収入に認定しないと。厳しい国税庁でさえもそう言っている。
いま厚労省はそういう通知をしているかもしれないが、国に改善を求めるべきではないか。
【保健福祉部長】
生活保護制度における義援金の取り扱い、性格付けについては、国の考え方に基づき、その性格が災害により損害を受けたことにより受け取る金銭なのだが、全額が被災者の心身の苦痛を慰謝するものだけではなく、災害により失われた生活の基盤の回復という生活保護の意味合いが大きいという考え方から自立更生に充てられる費用以外は収入として認定する扱いになっているということであり、この取り扱いについて従っている。
【斉藤委員】
従うだけでなくて、一般県民とこういう差別的な取り扱いはいかがなものかと。そういう見直しを求めるべきではないか。
生活保護の取り扱いについても、二重の規定がある。社会的な義援金というのは、収入にみないと言いながら、災害についての収入については自立更生部分を除いて見ると。厚労省の社会援護局の通知でも、本来見なくてもいいと読み取れる項目もある。これは憲法25条の生存権、これで生活保護は作られている。災害の時に全国民から寄せられた義援金まで収入認定するということは憲法の精神にも反するのではないか。いまはそれに従っているかもしれないが、憲法の精神からいっても、生活保護者には義援金がわたっても、きちんと一般県民と同じように扱われないのは差別的扱いではないか。
【保健福祉部長】
生活保護については、最後のよりどころとしての制度になっている。今回の収入について、必要な金額については自立更生に充てられるべきものということで収入認定から外されている取り扱いになっており、そういう形ですでに今回の震災の中でその運用をしている。それにあたっては、本当にそれが自立更生に充てられるものかどうかということも、それぞれのケースごとに実施機関から報告を受けながら指導しており、現段階において国にそれを今要望するということについては、直ちにはそういう形では考えていない。
【斉藤委員】
国にも見直しを求めないと、きわめて残念である。
義援金等による廃止は、1月19件、12月19件、11月26件と毎月ある。義援金はすぐに入っていると思うが、なぜ毎月廃止件数が出てくるのか。
それから、自立更生でどのぐらい充てられているのか。どういう形で廃止されているのか。
【地域福祉課総括課長】
廃止件数が1月もそういうケースがあるということについては、各実施機関について、生活の世帯の個々の実情に応じて自立更生計画をしっかり確定して、今後の要否について判断しているということから時間を要しているケースがあるということである。
自立更生計画に認められる金額だが、個々のケースにより異なるが、少ない方で10万円程度、多い方で300万円近くというケースになっている。
【斉藤委員】
少ない人は10万円程度しか見られないと。だとしたらとんでもないことである。
【地域福祉課総括課長】
社会福祉施設等に入っているケースについては、比較的自立更生に充てられる額が少なくしか出されないというケースがある。
【斉藤委員】
そしたら全国民の善意を国が没収しているということになる。これは健康で文化的な生活を営む権利を明記した憲法に反する。国民の善意をたった10万円しか認めないと。こんな冷たい制度でいいのか。
【地域福祉課総括課長】
一番低い額で10万円程度と述べたが、大半については、包括的な設定ということで50万円ほど自立更生に充てられる額を基本的なベースとして、その上にさらに具体的な経費について上乗せするような形で認めているので、そのようなことでご理解いただきたい。
【斉藤委員】
生活保護というのは困窮対策ではない。憲法25条で、どの国民であっても健康で文化的な生活を営む権利ということでなっている。ましてや全国民の善意をそういう形で没収すべきでない。本当に県政の冷たい姿を見た思いである。
・孤独死の問題について
【斉藤委員】
質問すると、孤独死の定義を述べて、孤独死はないと。しかし今マスコミでも、3県で18人が孤独死、岩手は5人だと。この5人というのは、仮設で一人暮らしで看取られずに亡くなった方で、きわめて限定された数である。マスコミでも「孤独死あり」となっている。岩手県が「長期間看取られずに亡くなっていた」という恣意的な定義などせずに、看取られずに亡くなっているような状況は等しく孤独死として、一人たりともそういう犠牲者を出さないという対策をとるべきではないかと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
孤独死という定義をどうとるかというのがまず入り口のところであるわけだが、仮設団地で一人で亡くなった方、これは警察の方からのデータを引用して一般質問の中で答弁させていただいたところで、5人おられると、これはその通りである。それは亡くなってから半日以内が2人、半日から1日以内が2人、1日から2日以内が1人と。
いわゆる我々の方で「孤独死」と定義さしあげたのは、明確な定義というのがなく、いま厚労省の中で定義づけているのは、「孤立死」というのが厚労省の報告書の中である。これは、亡くなってから長期間誰にも発見されずに放置されているような状況、こういう方が非常に問題になっており、そういう意味で定義づけをすれば該当がないという意味合いでお答えしている。
いろんな報道の中でも、「孤独死」という言い方について、委員ご指摘のような形で、一人で見守られずに亡くなったという方について報道される場合と、それからそういう言葉を使わずに、仮設団地で一人で亡くなられた数が何人だという風に使われている場合とさまざまである。基本的には、お一人で亡くなられる状態が避けられることが一番良いと思っている。ですから、孤独死の定義がどうかよりも、例えば亡くなられるような危機的な状況のときに、周りの方が気づけるようなフォローをしていくことが大事だと思っている。例えば、緊急通報通信だとか具合が悪いときに隣に合図を出したりとか毎日行き来して状況を把握するなり、そういう対策をきちんとやりながら一人で亡くなるような状態がないように、復興局とも連携しながら努めていきたい。これはこの場でお約束したい。
【斉藤委員】
ぜひそういう立場でやっていただきたい。
警察の資料で、仮設に限らず沿岸で65歳以上の高齢者で一人暮らしで看取られずに亡くなったのはこの1年間で80人もいる。これは実態を調べれば孤独死の可能性がある。そういう事態になっているので、ぜひ対策をとっていただきたい。
岩手県は生活支援相談員を188人配置している。そして見守りの活動もやっている。これは評価するが、訪問して、そういう方々をどれだけ把握して、さまざまな諸機関と連携してやられているのか。
【地域福祉課総括課長】
現在県内の市町村社会福祉協議会に198人の生活支援相談員について、見守りやサロン活動ということで、被災者の個々の世帯の状況を把握しながら活動しているところである。これらの世帯の状況を把握し、現在生活支援シート、いわゆる被災者カルテという形で、個々の世帯の状況を把握し、これをさらに電子化するという形で、行政とも一体となった見守り活動を展開していきたいと考えている。
【斉藤委員】
せっかく良い活動をやっているので、北上や遠野や盛岡なども独自に仮設住宅にそういう支援の配置もやっているので、情報を共有して、機能的な手立てが取られるようにしていただきたい。
・子どもの医療費助成の拡充について
【斉藤委員】
一般質問でも取り上げたが、経費が多額にかかるからできないという答弁だった。私の把握では、中学校卒業まで医療費助成しているのが、10市町村、小学校卒業までやっているのがさらに8市町村ある。来年度は、北上市:小3まで、遠野市:中卒まで、陸前高田市:小3まで、葛巻町:中卒まで、大槌町:中卒まで―と。深刻な被害を受けた大槌町や陸前高田市でも拡充すると。いわば、大震災のときだからこそ子どもを大切にしたいと。これがさらに拡充されようとしている。ここまで広がった子どもの医療費助成の取り組みを県としても支援すべきではないか。
【健康国保課総括課長】
現在、就学前までの対象を小学校卒業まで無料化を拡充するためには、多額の県費負担が見込まれる。粗い試算だが約4億2000万円、中学校卒業まで拡充した場合には約6億3000万円の県費を要する。
近年の社会保障関係経費等の増により、県予算における新たな政策的経費の確保は大変厳しい状況となっていることから、直ちに実施することは困難だと考えている。
【斉藤委員】
福島県は18歳まで、約90億円かかるが実施すると。特別措置法ということもあるが。秋田県も小学校卒業まで実施する。やっていない方が少ない。
県費の4億円が大きいか小さいかというのは大いに議論のあるところで、子どもの安全安心を考えたら大きな額ではない。こういう大震災のときこそ子どもを大事にした県政を進めようではないかと。今どこでもそういう動きになっている。だから陸前高田市や大槌など一番被災の大きいところでも、子どもの医療費を優先してやろうというのが今の動きである。部長、ぜひ検討すべきではないか。
県都盛岡市に聞いたら、岩手県がやると言ったら私たちはすぐにやると。岩手県の出方を見ている。ぜひ緊急の検討課題にしていただきたいと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
子どもの医療費助成の拡充については、基本的な考え方については、非常に政策的な経費、財源の確保が難しいということで課長が答弁した通りだが、なお、市町村の動きや全国の動き等も把握しながら、動向を見守っていきたい。
【斉藤委員】
残念ながら慎重な答弁だった。
全国の動向も、就学前までというのが最低基準になっている。さらに小学校・中学校に県レベルでも拡充しているし、県内の市町村は多数派が小学校・中学校卒業までやっているので、県内の動向をしっかり踏まえて早急な検討と具体化をお願いしたい。
・後期高齢者医療制度について
【斉藤委員】
残念ながら廃止を公約した民主党の公約が果たされていない。
岩手県の広域連合が保険料を据え置いたのは良かった。大震災の時だからこそ2年間は保険料の値上げは据え置いたと。どういう形で保険料を据え置いたのか。医療費の推移はどうだったか。
一方で、滞納者について、短期保険証が発行されているが、その状況はどうなっているか。そして滞納者に対して財産差し押さえまでやられている。この実態も含めて示していただきたい。
【健康国保課総括課長】
後期高齢者医療広域連合において、平成24年25年の保険料を据え置いた経過だが、広域連合から聞いたところ、東日本大震災津波からの復興に向けた現在の社会情勢下において、目前の被保険者の負担増を回避する必要があると考えたことによるものと聞いている。
医療費の推移だが、平成20年度は11ヶ月分で約1107億円、21年度は約1259億円、22年度は約1308億円となっており年々増加している。
滞納者の状況だが、平成24年2月1日現在で、全県で滞納者は約877名、短期被保険者証の発行数は307件となっている。この方々については、各市町村のほうで、こういう方々と接触をもちながら、いろいろな相談に応じながら保険料の納付を働きかけているところである。
【斉藤委員】
滞納者の差し押さえは67人629万円である。後期高齢者医療制度というのは、年金天引きである。天引きされていない低所得者からこのように財産差し押さえしていると。本当に冷たいやり方である。ぜひ改善を求めたい。
・療育センターの整備と医大の移転計画について
【斉藤委員】
小児科救急医療体制の整備、周産期医療体制の整備は、救急医療体制とセットで検討するという答弁が議会であった。こういう風になったら、岩手医大移転跡地の用地か建設課ということになると思うがいかがか。
それから、岩手医大の附属病院の移転計画は、本当に計画通り進むのか。もしその計画が進まなかったら、今から用地の取得の事業費まで入れるというのは時期尚早だと思うがいかがか。
【障がい保健福祉課総括課長】
新しい療育センターの整備の予定地だが、現在入所している児童が30名ほどいるが、その生活や医療等の確保といったことを重視しなければならない。あるいは外来診療も毎日やられている状況なので、そうした現在の施設機能を維持しつつ、整備する必要があるということで、県有地内での建て替えは困難であると判断している。新たに移転用地を確保する必要があるわけだが、新たな療育センターについては、非常に高度な医療ケアを要する子どもたちの受け入れ機能を拡充するということであるので、高度な医療機能を有する岩手医大附属病院と十分な連携が図られ、かつ医療スタッフの確保が将来的にも容易となる場所であるということが重要な視点だと考えている。したがい、医大附属病院との連携、医療スタッフの確保といった視点を十分踏まえつつ、県内関係機関の有識者の方々からご意見をいただきながら、平成24年度において策定する整備基本計画の検討を通じて選定していくということにしている。現在は、面積だとか具体的な場所は未定である。
【保健福祉部副部長】
医大附属病院の移転計画だが、現段階で平成29年度末の竣工予定となっており、我々としては、そういった構想、進捗状況等詳細をうかがいながら調整を図っていきたい。
【斉藤委員】
療育センターを移転・拡充することは大賛成である。そして岩手医大との連携も強化するというのは、医師確保上でも大変大事なことだと思うが、今の現在地というのは、長年にわたり療育センターを支えてきた、福祉のゾーンとして地域の方々は大変愛着をもっている。跡地利用もよく考えていただきたい。
岩手医大の移転問題だが、560億円かかると。そして国や県からの補助金なども経費の中に検討されている。さらに、病院を拡充すると106人医師を増やさなくてはいけない。医師を増やすことはいいが、逆に医師を増やさなければいけないからまた県立病院から引き上げるということがあってはならない。この岩手医大の移転計画というのは、いろんな意味で県政・県立病院・地域医療に大きな影響を与えるので、慎重に、どちらもうまくいくようにやっていただきたい。
【保健福祉部長】
療育センターの整備、岩手医大の移転については、連動しながらトータルとして、医大の移転計画の中できちんと位置づけを明確にしながら進めていくと聞いており、我々もそういう形で調整を図っていきたい。
内丸の跡地についても、一定の診療機能が同地区に残るという構想はあるが、どのような機能になるかなど詳細については今後決定されると聞いている。