2012年3月15日 予算特別委員会
農林水産部(水産・林業部門)に対する質疑(大要)


・漁船の確保状況について

【斉藤委員】
 漁船の確保状況は目標に対してどこまでいっているのか。年度末までどこまでいくのか。さらに来年度の予算措置の中身を示していただきたい。

【漁業調整課長】
 漁船の確保だが、今年度は6800隻程度の確保で事業を進めている。2月末現在で3327隻となっており、年度内には3400〜3500隻程度を確保する見通しとなっている。
 来年度については210隻程度を確保することで進めていきたい。予算措置だが、共同利用漁船等復旧支援対策事業として、11億円ほど予算措置している。

【斉藤委員】
 今年度6800隻の予算措置をして、3月末には3400〜3500と。そして残った分210隻は来年度になると。さらに来年度の予算は11億円だが、この隻数は465隻である。
 水産審議会の資料と一昨日開かれた総合企画専門委員会の資料を見て驚いたが、3年間の計画で漁船の確保は6152隻になっている。6800隻確保すると今年度決めていながら、なぜ平成25年までに目標が6152隻になるのか。そして今年度は395億円余予算措置して6800隻確保するとして頑張った。来年度はたった11億円。13000隻以上被災して、この程度だったら漁業は復興しないのではないか。

【漁業調整課長】
 復興計画に定めた3年間で6100ほどの整備計画については、計画を作る段階において、被災した漁協等に聞き取りしたところ、およそまだ船の復旧見通しが立たない状況だったので、県としては被災した船のおよそ半分程度をまずは目途として確保していこうという考えで進めた。その後6月補正で予算措置させていただき、9月についても追加措置させていただき、各漁協や漁業者からの要望を踏まえて、現在の6800隻程度の規模としている。
 来年度の予算については、210隻程度の確保ということで進めると当初始める予定としているが、現在までのところ3月末までに約3500隻程度の確保にとどまる予定なので、まずは6800隻に対する不足分を繰越予算だが24年度に早急に確保に努め、その過不足を当初予算で補てんしながら、あとは国の来年度予算の追加補正もにらみながら船の確保に努めていきたい。

【斉藤委員】
 当初予算で6800隻確保すると、厳密には6893隻である。ところが平成25年までの目標は6152隻だと。これだったら漁船の確保やる気がないという計画になっている。なぜこういう今年度予算より少ないような漁船確保の計画になるのか。一昨日の総合企画専門委員会の資料、2月に開かれた水産審議会の資料で、なぜこんな後ろ向きな計画になるのか。
 それから、来年度の予算は210隻分だと。たったそれだけか。総合企画専門委員会の資料を見ると、来年度の計画値は465隻である。この違いは何か。

【漁業調整課長】
 来年度の予算上は210隻となっている。
 23年度に補正予算で積み上げたものだが、6800隻程度を確保するという目標にしているが、実際の運用の中で漁船の確保隻数は、漁業者の要望に基づいて実施しているので、6800隻そのものを現物として確保するという計画と、実績の違いはあるが、目標値としてその隻数の確保に努めていこうという考えである。
 復興計画における数値の修正だが、農林水産部だけでなく、復興局とも相談しながら、来年度に向けて修正などあったならば、それを確認しながら進めたい。

【斉藤委員】
 漁船の確保が被災のたった半分でいいのか。今年度予算措置したよりも、復興計画では少ない漁船の確保計画になっている。これは重大な矛盾である。養殖施設もそうだが、せめて被災した8割程度まで回復する、3年がかりぐらいの計画でやらなかったら漁業のレベルが半分にしかならない。総合計画の目標は直ちに変えるべきである。そして漁船の確保目標は被災の半分ではなく、せめて8割くらいまでは3年程度で戻すということが必要ではないか。

【農林水産部長】
 漁船の復旧の目標だが、先ほど課長が説明した通り、計画策定時点ではそういう設定をさせていただいたが、復旧は次々状況が変わっており、予算上は各漁協が必要とする数を確保していくという姿勢で臨んでいる。それぞれ時点が違ってしまったことから計画と予算上の数字に相互をきたしているという状況と理解していただきたい。ただ、計画上の数値をどうするかについては、漁船の目標だけを変更するために、復興計画全体について変更するということはなかなか難しいことと思うが、課長が申し上げた通り、その復興計画の取り扱いをどうするかということについては、担当部局と協議していく。
 あくまでも目標というもの、予算上の措置というのは、各漁協が必要とする数値をもとに予算編成をしているので、漁協が必要とするものを満たすように予算確保に努めていきたい。

【斉藤委員】
 総合企画専門委員会の資料では、6800隻というのは、補助金交付契約隻数で出ている。そして24年度はさらに465隻、25年度も465隻になっている。あなた方は矛盾を感じながらこういうことをやっている。予算措置したより計画が小さいというのは見直すべきだし、6800隻+465隻、これは少ないと思うが、せめてこのぐらいの予算措置をしなかったらいけないと思うし、いま一人で3隻4隻漁船を今まで持っていてやってきた漁民が1隻に3人4人乗ってやっている。収入も何分の1である。半分だけ3年間で確保して、あとは自前で船を購入するというのは無理である。養殖施設については8割程度回復するという目標になっている。漁船もそういう規模で、漁船の確保は最大の水産業再生のカギだと思うが、そういう目標でやっていただきたい。


・養殖施設の整備について

【斉藤委員】
 養殖施設の整備は目標に対して今年度どこまできているのか。来年度はどこまで整備する予定か。

【漁業調整課長】
 今年度約11000台を目標に整備しており、年度内に9割10000台程度を確保する見通しである。
 来年度については、当初予算で約15億円ほど措置しており、この分については、かえる養殖を中心に約4000台の整備を見込んでいる。

【斉藤委員】
 養殖施設の整備は、被害数に対して整備目標はいくらになっているか。どこまで回復する計画か。

【漁業調整課長】
 被害数約26000台ほど被災しており、8割程度を復旧する見通しとしている。
 現在23年度当初予算で11000台程度の整備を進めており、これが整備されるとなると約4割程度が年度内に確保される見通しになっている。

【斉藤委員】
 養殖施設は8割復旧の目標なので、漁船もそのぐらいの目標で見直して補正でも措置するということを求めていきたい。
 ワカメはすでに早獲りから収穫が始まっているが、3年4年かかるカキ・ホタテ・ホヤについての養殖施設の整備・再建状況はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 カキ・ホタテ・ホヤの関係だが、今年度11000台規模の整備を進める中で、カキが3100台、ホタテが1200台程度で整備しているところである。
 来年度については、先ほど4000台程度の整備ということで申し上げたが、これについては関係漁協と相談しながらどういう種目で整備するかをこれから新年度予算で振り分けを考えていきたい。

【斉藤委員】
 カキ・ホタテ・ホヤについては、すぐに収穫の見込みができないものだが、がんばる養殖漁業も新たに導入されたが、この取り組み状況はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 国の直轄事業で外郭団体が進めている「がんばる養殖漁業」だが、県内の24漁協のうち、19漁協と協議中である。年度内の「がんばる養殖漁業」の再開については、1漁協か2漁協というところで調整しているところだが、4月以降随時事業を実施する漁協が出てくるものと考えている。

【斉藤委員】
 かなり使える制度もあるので、ぜひ周知徹底して、当面収入の道を断たれている漁民が多いので、万全の手立てをとっていただきたい。


・水産業共同利用施設、水産加工業の再建状況と来年度の見込みについて

【斉藤委員】
 水産業共同利用施設、水産加工業の再建状況と来年度の見込みについて示していただきたい。

【漁業調整課長】
 水産業共同利用施設の整備だが、フォークリフトなど機械の整備や施設の修繕・新設整備など、約1200件ほどの事業を進めている。来年度については、それぞれの事業の計画を見極めながら、当初予算では約40億円の事業費で施設の修繕や機器整備・新設整備を支援していきたい。
 水産加工業だが、沿岸に立地している156事業所を調査したところでは、被害を受けた事業所は138事業所となっている。うち、昨年の12月末までに64の事業所が再開している。来年度についても、引き続き水産加工組合の機器整備や施設の整備も含めて、商工労働観光部とも連携しながら水産加工業の再建を支援していきたい。

【斉藤委員】
 生産・流通・加工は一体なので、ぜひ取り組みを強めていただきたい。
 がんばる漁業復興支援事業の漁船の取り組みはどうなっているか。

【漁業調整課長】
 がんばる養殖漁業と合わせて、漁船漁業者向けのがんばる漁業の取り組み状況だが、現在事業の内容の周知について、各漁協に説明会を系統団体と一緒にやっているところである。
 この制度設計については、なかなか漁船漁業者が個人事業者ということで、グループで操業したりするということの要件もあるので、現在関係者に周知しながら、この事業の対象となるように説明して進めている。


・秋サケ漁の状況、サケ資源の公平配分等について

【斉藤委員】
 秋サケ漁の実績、回帰率の大幅な減少、ふ化場の再建状況、放流状況について示していただきたい。
 秋サケ漁については大幅な減少なっているが、秋サケシンポジウムなども先日開催されている。秋サケへの回帰率の大幅な減少は、現時点でどういう要因が指摘をされているのか。

【水産担当技監】
 本県のサケの来遊量は、平成8年度の7万3千トンをピークに急減し、2万トンから3万トン台で推移してきたところである。22年度には19000トン、23年度には8700トンと大きく減少した。
 県では、不漁原因の解明に向け調査しているが、今年度回帰の主流群となる4年魚および5年魚の回帰尾数が低調であったことから、この原因としては、これらのサケが稚魚として放流された年の春は例年に比べ沿岸の冷水が早く北上し、生産に不利な温暖な環境になったことが可能など考えているが、まだ明確な原因把握には至っていない。サケの来遊量は、ふ化してから稚魚期までの原因も大きく影響すると考えられることから、今後も国の研究機関や関係大学等と連携しながら、ふ化場での飼育管理の指導や耳石温度標識を利用した放流稚魚から回帰真魚までの追跡調査、沿岸環境調査等を継続し、不漁原因の解明に取り組んでいきたい。
 ふ化場の再建については、本年1月には18ふ化場で稚魚生産を再開しており、今春には2億9000万尾を放流できる見込みである。今後も国の3次補正を活用し、ふ化場施設の本格復旧や稚魚放流など支援していきたい。
 秋サケシンポジウムでの話だが、ここでは、北海道大学の教授は、レジウムシフトという海洋の大きな変動で水温や温暖化ということも言われているが、たまたま今は冷水が接岸して逆に困っていることもあり一律に言えない状況ではあるが、大きな目で見れば、そういう生体、環境が影響があるのではないかということを言われており、また本県の水産技術センターでの研究では、稚魚として河川から放流した後、北上するまでの間に水温環境が変わって稚魚にとって不利な状況もあるのではないかということである。今後は大学や水産研究所と一緒になり解明していきたいと思っている。

【斉藤委員】
 秋サケの不漁は、震災とダブルショックというぐらいの深刻な事態だと。漁獲高を見ると46億2500万円。岩手の漁業の大きな柱で、震災の影響というよりは、違った要因が大きいと感じているので、ぜひこの問題については徹底して研究解明しつつ、しかし必要な手立てを打っていただきたい。ふ化放流で2億9000万尾まで確保したというのは評価したい。
 サケ資源の公平配分で、定置漁業の許可業者の状況について、許可業者の中で、漁協の定置をどのぐらい占めているのか。生産組合の定置はどれだけか。うち事実上個人の定置はどうなっているか。

【水産担当技監】
 定置漁業権は、漁業法に基づく手続きを経て免許されているもので、現在大型定置網87件が免許されている。内訳は、漁協が36件、生産組合が8件、漁業会社が7件、個人漁業者が4件、これら団体・個人の組み合わせによる共有が32件で、個人漁業者であっても定置を営むことができるようになっている。

【斉藤委員】
 こういうサケ資源の厳しい中で、サケ資源の公平配分は鋭く問われている。特に山田湾が典型的で、約半分は個人の定置、漁協の組合長自身が定置を持っていると。これが今厳しい漁業経営の中で、漁民の大きな不満の背景にある。山田湾において、生産組合、事実上個人の定置というべき、また組合長自身が定置をやっていたという状況はどうなっているか。

【水産担当技監】
 漁協の組合長自身が、生産組合の構成員に含まれている漁場は2漁場になっている。

【斉藤委員】
 前・元組合長を含めればどうなるか。

【水産担当技監】
 船越湾漁協の話だと思うが、そこは佐々木漁業生産組合というところが実施しているので、前の組合長が交代しており、その組合長が引き続き佐々木漁業生産組合の方も管理をしていると思っている。

【斉藤委員】
 かなり前に県漁連の会長をやった方も、今は亡くなったが、その関係者が2つ3つ定置を持っていると。こういう岩手県も税金を投入してやっている中で、サケ資源が公平配分されて、漁民の経営と暮らしに結び付くような改善が求められているのではないか。
 また、巻き網船による混獲の状況をどうとらえているか。巻き網船がかなりサケを混獲しているのではないか。雑魚で別の市場に出しているのではないかという指摘があるが、状況を把握しているか。

【水産担当技監】
 巻き網船による混獲については、北部太平洋巻き網漁業の漁獲統計では、サバ・イワシ・カツオが主要魚種となっており、サケの混獲は統計上示されておらず把握できない状況にある。

【斉藤委員】
 サケ等は禁止されているから出てこない。北部太平洋海区巻き網漁業の資料を見ると「その他」というのがある。平成20年は10267トン20億6400万円、かなりの額が「その他」の水揚げになっている。これは混獲だと思うが。この禁止されている巻き網がサケを獲っている実態もきちんと把握して、これは大臣の許可漁業だが、こういうこともきちんと規制していく必要があると思うがいかがか。

【漁業調整課長】
 北部太平洋巻き網漁業の漁獲統計にある「その他」だが、詳しい魚種の内容については明らかではないが、近年の状況を見ると、ブリ類が大半と考えている。この漁業については、大臣許可漁業なので国の管理下にあり、あとは国との協議によるものと考えている。


・漁港の再建状況について

【斉藤委員】
 かなりの事業費が今年度も来年度も投入されているが、どこまで再建・整備されるか。

【漁港漁村課総括課長】
 漁港の再建状況だが、これまで舶地・航路のがれき等の撤去や防波堤・岸壁等の応急工事を実施してきており、全漁港で荷揚げや漁船の係留が一定程度可能となっている。また、潮位の高低にかかわらず荷揚げ作業が可能な漁港数は、3割まで復旧してきている。
 来年度も引き続き市町村や漁協など、関係機関・団体等と十分協議しながら岸壁や物揚げ場の復旧を推進していきたい。
 24年度末には、荷揚げが可能な漁港数を全体の5割まで引き上げるということを目標に復旧に努めていきたい。それと合わせて、漁港舶地の専用道を確保するための防波堤の復旧を推進するなど今後とも漁港の早期復旧に努めていきたい。


・漁業集落防災機能強化事業について

【斉藤委員】
 かなりの数で取り組まれようとしているが、事実上の集団移転なども入ると思うが、取り組み状況はどうなっているか。

【漁港漁村課総括課長】
 これまで県は事業主体である市町村に対して、事業の要件等に関する情報提供や防災集団移転促進事業といった類似した他の事業との調整および国への申請手続き等に関する助言などの支援を行ってきた。
 引き続き市町村と緊密に連絡し、事業が円滑に進むよう支援していきたい。
 なお、3月2日に国から内示された漁業集落防災機能強化事業の一次配分は、45億円余となっており、要望のあった沿岸9市町村の24個所に配分されている。被災した漁業集落の地盤のかさ上げや集落移転、上下水道の整備などを行う予定としている。


・森林・林業再生プランの取り組み状況について

【斉藤委員】
 森林・林業再生プランの取り組み状況について示していただきたい。

【林務担当技監】
 このプランは、我が国の森林林業政策を、それまでの森林の造成から木材の利用、持続的な森林経営等を大きく転換し、10年後の木材自給率を50%以上を目指すというものである。
 県としてもこのプランを推進するため、平成24年度予算において、森林経営プランの作成や人材育成などによる森林経営の確立に約に7000万円、集約化による森林整備や林内路網の整備、鋼製の林業機械の導入支援による経営の低コスト化に約12億9000万円、木材加工施設整備の支援による木材産業の活性化に約9億8000万円などの予算を措置したところである。
 全国第2位の本県の豊かな森林資源を生かして、森林林業再生プランを一層推進していきたいと考えている。