2012年3月15日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・防災集団移転促進事業について

【斉藤委員】
 被災市町村における防災集団移転促進事業の計画はいくつあるか。
 この間交付金決定した状況はどうなっているか。

【まちづくり課長】
 7市町村67地区で事業導入を検討している。
 うち、復興交付金の第1回交付可能額通知では、7市町村37地区の計画が採択され、事業費として64億7592万円の配分となっている。

【斉藤委員】
 防災集団移転促進事業は、今度の復興の重要な手法だと思う。ただ、ハードルが高いというか条件が厳しい。1つは、住民合意をどうつくるか。もう1つは、建築規制がかかるので、そこの活用をどうするのか。ここがセットでないと上手くいかない。
 この事業を進めるにあたっては、徹底した住民の協議と合意づくりを大前提にして、ここには専門家も配置をして、どういう自分たちの集落をつくるのかと、こういう合意を踏まえた移転事業を進めていただきたい。

【都市計画課総括課長】
 現在、各被災市町村においては、地域ごとの具体的な町づくり計画に入っているところであり、被災した住民のさまざまな意見を聞きながら合意形成を図るということが重要だと認識している。
 これまで市町村の復興計画の策定については、国が直轄調査により、各被災市町村に町づくりの専門家やコンサルタントを配置し支援したところであり、それとはまた別に各市町村でも独自に専門家の協力を得て取り組んできた。さらに新年度からは、直轄調査が終わるので、この支援に変わり、各市町村が復興交付金事業の都市防災総合推進事業等を活用することにより、専門家の支援を受けて計画づくりや住民合意を進めることが可能となっている。
 また県においては、これとは別に、地域で地域NPO等の町づくり組織に対して復興・町づくり・景観等の検討をする場合に、専門家をアドバイザーとして派遣する復興町づくり推進事業というものを当初予算に計上している。これらを活用しながら、住民が主体となった町づくりを支援していきたい。

【斉藤委員】
 事業を進める上で、集落とコミュニティの維持を大原則にすべきだと。自力で自宅を再建できる人と災害復興公営住宅を希望する人がいると思う。そういう意味でいけば、大きさはいろいろあると思うが、持ち家と災害公営住宅をセットの集団移転事業というのをしっかり位置付けて、自力再建できない人も一緒に移転できるとすべきである。あわせて、そういう場合には特に高齢世帯が多いわけで、戸建てとか長屋形式とか集落に合った多様な復興公営住宅をセットにすべきだと思うがいかがか。

【建築住宅課総括課長】
 防災集団移転促進事業については、現在地域の実情に応じて各被災市町村において検討が進められているが、集落やコミュニティを維持していくためには、自宅を再建する被災者と公営住宅に入居する被災者が同じ地区に居住することができるように計画することも有効なものと考えている。
 すでに、釜石市の地区では、公営住宅を含めた高台移転について、地区の合意形成が行われているところである。集団移転が行われる地区における災害復興公営住宅の建設については、市町村とよく連携し建設計画の検討をしていきたい。
 防災集団移転促進事業の地区における復興公営住宅の建設だが、集落の維持・再生を図りながら、地域の実情に応じた計画づくりを行っていくことが必要と考えている。今後、地元住民の意向にも配慮するとともに、戸建てや長屋形式という話も出たが、地域のニーズを踏まえた住戸形式などについて市町村と十分連携しながら計画の検討をしていきたい。

【斉藤委員】
 大きなネックが土地の評価・買取である。野田村がかなり先駆的に、浸水前の価格の9割と聞いているが、そういう形で移転地の用地を確保できると。
 これは岩手県の土地評価の優先してやった事業ではないかと思うが、この野田の取り組みをどのように受け止め、いま岩手県が土地価格調査士に委託してやっている状況も含めて示していただきたい。

【県土整備企画室管理課長】
 野田村においては、村独自で県内の不動産鑑定士に依頼をしたところであり、この鑑定結果については2月25・26日に説明会を開催したところである。この説明会において、被災前に比べおおむね2割から3割程度価格が減少しているということを住民に説明したと聞いている。
 県においては、現在岩手県不動産鑑定士協会に、今月末を納期として一括鑑定を依頼しているところだが、市町村から早急に提示してほしいというような以来があった規定については、優先して調査・鑑定をお願いしている。その中で、野田村に対しては3月1日に鑑定評価、早期の提示を求められた時点について、鑑定評価を示したところである。この価格だが、審査前の土地価格に比べ、おおむね1割から3割程度減少している。


・土地区画整理事業の計画と交付金内示の状況について

【斉藤委員】
 土地区画整理事業の被災市町村での計画、内示状況について。さらに土地区画整理事業になると、市街地形成がかかってくるので、被災地の市街地形成との関わりでどのように位置づけられているのか。

【都市計画課総括課長】
 被災地における土地区画整理事業の計画と交付金の配分状況だが、現在7市町村24地区において区画整理事業の実施について検討している。そのうち、今回復興交付金の第1回交付可能額通知があったが、それが6市町村18地区で30億6300万円の配分があった。
 被災地における市街地形成の取り組みだが、各被災市町村においては、復興計画が昨年末までに策定されており、現在地域ごとの具体的な町づくり計画の策定を進めている。この中で、陸前高田市では、去る2月8日に被災市街地復興推進地域と、その地域の中に区画整理事業の都市計画決定、これは2地域だが定められている。この他の市町村においても、それぞれの復興計画に沿って、復興にかかる都市計画の決定や変更について具体的な検討に入っているところであり、住民の意向把握と合意形成を図りながら順次手続きが進められるものと考えている。県としては、こういった市町村の取り組み、市町村と密接に情報交換し復興町づくりにかかる事業計画策定や都市計画決定等の手続きが円滑に進むよう支援していきたい。

【斉藤委員】
 防災集団移転促進事業も土地区画整理事業も、普通なら5年6年かかってやるような事業である。この時点というのは、地域住民自身の協議と合意形成を大事にして、そして専門家の派遣も行って進めていただきたい。


・防潮堤の被害状況と復旧について

【斉藤委員】
 防潮堤の災害査定の状況はどうなっているか。その復旧の見通しはどうか。
 防潮堤の高さを、残念ながら県が押し付けた形になった。本来防潮堤の高さも、町づくりと一体のものである。住民の協議・合意を通じて防潮堤の高さも決めるべきではないか。すでに一部の地域では、高台移転するので元の高さでいいということもあり、それも受けている。その点で、今後の協議の進め方を含めて示していただきたい。

【河川課総括課長】
 国による防潮堤の災害査定は、12月23日までに終了しており、水管理国道保全局、いわゆる河川局の海岸では、37カ所約695億円、港湾局所管海岸では28ヶ所の約275億円、計65ヶ所約970億円の決定を受けた。現在、測量設計や国との協議を進めているところで、早期復旧に向けて用地取得が完了したところから順次工事に着手することとしている。この工期としては5年程度で完了を目指すということで考えている。
 住民の合意形成についてだが、防潮堤の高さについては、昨年10月までに最大高さとして県から公表した。防潮堤の高さについて、市町村の要請に応じ、山田町などにおいては復興計画の説明会において、県から防潮堤の高さの説明を行っている。また、市町村が復興計画の町づくりの中においても同様の説明を行っていると聞いている。また、防潮堤の高さは、最大値を示したものであり、今後県では市町村が進める復興町づくり計画との調整を図りながら、数十年から百数十年の頻度の津波に対する安全度が町づくりにおいて確保される場合には、地域の意向や実情に即して防潮堤の高さを下げることも検討していきたいと考えている。

【斉藤委員】
 防潮堤の高さについては、地域住民の中にもいろんな意見がある。陸前高田でやった本音で語ろう県議会でも、もっと高くという意見もあれば、低くしてほしいという意見もある。本当にこれは、海との共生、景観、観光、いろんな分野で検討すべき課題である。奥尻も高い堤防を造ったが観光客が激減し漁業も衰退したというケースもある。そういう意味で、この防潮堤の高さというのは、安全はもちろんだが、その地域の復興・再建と結びついているので、しっかり住民合意を進めながら取り組んでいく課題である。


・宮古市閉伊川への水門建設問題について

【斉藤委員】
 宮古市長に対して、いつどういう説明をして、どういう回答を市長からいただいたか。

【河川課総括課長】
9月13日:宮古市幹部職員へ防潮堤計画高の説明をおこなった
9月14日:防潮堤計画高を説明。
10月18日:宮古市長以下幹部の皆さんに防潮堤あるいは水門案について説明。
12月2日:宮古市長以下幹部職員との協議。水門案と堤防案による最大クラスの津波に対する浸水範囲を提示。協議の結果としては、市としては「津波のエネルギーは水門で抑えるより河川に逃がす方法が望ましい」という考えから、防潮堤方式を選択することを頭に置いているという話をされる。
12月14日:宮古市以下幹部職員との協議。宮古市の要望を踏まえたシミュレーションを再度提示し、修正防潮堤案と水門案による浸水範囲を市に提示。
12月16日:宮古市長から県土整備部長へ「水門案で市としてはお願いしたい」という話があった。県としては水門案で決定した。

【斉藤委員】
 9月13日・14日、10月18日、12月2日、12月14日と、この間市長は一貫して堤防方式と述べている。あなた方の圧力を感じたのか、それが災害査定に間に合わないということで、暗闇の2日間があり、12月16日に方針が変わる。それまでは市議会も市長も一緒になり、堤防かさ上げで復興計画を進めていた。なぜこれだけ議論になるかというと、市長も議会も市民も「堤防かさ上げ」で閉伊川に津波のエネルギーを逃すという方法が一番良いという形で進めていたのが、最後の2日間で方針が転換されたということで市民が驚いている。
 皆さんが説明会で説明した資料を見ているが、今度の安全施設の基準というのは、百数十年に1回の津波に対応するということではないか。だとしたら堤防かさ上げで十分対応できるということではないか。なぜ無理やり今回のような津波を想定して、その場合にはシミュレーションはしたが、水門でなければならないということになるのか。無理なことを求めている。今回並の最大波を想定すれば水門の方がいいというのは発想が違うのではないか。

【河川課総括課長】
 防潮堤を管理している県とすると、発生頻度の大きい津波を対象として施設計画・設計をすればいいということになる。ただ、各市町村においては、町づくりをセットで考えるので、今回の3月11日の発災時の浸水範囲、これも念頭に置きながら町づくりを考えるということになる。
 県とすると、市町村の町づくりの担当の方から、たしかに発生頻度の大きい津波については今の防潮堤や従前の高さでも大丈夫だろうが、発生頻度の小さな3.11程度の津波が来た場合には、町づくりとして、人が住むところとするわけにはいかないという要望があった。そのような観点から、発生頻度の小さい津波を対象としてシミュレーションの提示をさせていただき、その中で宮古市等が判断されたと考えている。

【斉藤委員】
 水門方式には、検討されていないいろんな問題があった。
 1つは、津軽石川の水門の検証である。この水門で逆に被害が広がったのではないかと住民は指摘している。この検証もなしにまた閉伊川に水門だと。
 2つには、閉伊川は水量が大きい。これを水門で閉鎖した場合6時間しかもたない。内水被害がもたらされる。大きな被害があったときにどうするのか。それであなた方は慌てて、「全閉方式ではない。途中開ける方式だ」と言いだした。それは本当か。
 それから、高架道路も突然出てきた。また漁船もいま係留している。漁船の係留しているときに水門を造った場合どうするのか。そういう検討をして水門案を出したのか。

【河川課総括課長】
 津軽石川水門については、金浜地区、高浜地区の地域の皆さんからそういう指摘があった。それについては、宮古市議会の全員協議会、宮古市民の皆さんへの説明の中で影響度について説明している。
 水門の全閉方式だが、だいたい閉伊川は通常時で約10トンから15トン程度の流量である。津波防災技術専門委員会の中でも、市と委員の方からも指摘があったが、洪水でないときには可能な限り水門を閉鎖する操作をしないような手法を考えるべきと。そういう意味からも、洪水でない場合には、平常水位から50〜100センチ程度まで水門を下げておくということが操作員の安全にもつながるという意味からこのような手法を考えている。
 漁船を通せる航路になっているので、漁船については、水門の一部を船が通れるような構造にすると、これはすでに概略設計の段階では織り込んでいる。
 高架橋については、水門を管理するにあたって管理橋は必要だと考えている。これについては、宮古市では内々には何とか市でも有効活用できないかという話はされているが、これもさまざまな検討をして、宮古市や地域住民の皆さんの意見を参考にしながら検討していきたい。

【斉藤委員】
 今回並の津波があれば、防潮堤自身が破壊されると。防潮堤自身が破壊されないという前提だったら対策はとれないと思う。そういうときこそ、津波のエネルギーを大きな許容量のある閉伊川に流すというのは極めて合理的な形でコンクリートの擁壁で津波のエネルギーを遮るという発想だけでは本当の安全は守れない。
 あなた方は、宮古大橋もそれで流されると言ったそうだが本当か。宮古市長はそれを強調し、水門を決めたとのことだがそういうことを言ったのか。宮古大橋が壊れるのだったら宮古市内すべてやられてしまう。そういう意味でいくと、安全の考え方というのは、防潮堤を破壊されることを考えてやらなかったらままならない。

【県土整備部長】
 やはり津波のエネルギーを川で往なすという考え方は当然あると思う。閉伊川の場合は、チリ地震津波対策で造った高さが5.25、これが今回の津波で10.4mになる。この高さになると、宮古大橋の桁にぶつかるということがあり、結局宮古大橋を上げなければならない。その背後にある市道・JRを全部上げないと10.4にはならない。それでそこからどうしても漏れてしまう、藤原小学校の方、南町の方に。そういうことがあり、そこがやはり一番市長が苦渋の判断だったと私も思う。それがなければ、当然のごとく堤防のかさ上げでいければ、経済的にも有利ではある。ですから、今の閉伊川の状況が、横断交差―国道45号・市道の橋・JRがあり、それをどうしようもなくてそういう選択をしているということだが、「宮古大橋が落ちる」という話は県からは一切していない。

【斉藤委員】
 そういうことで市長が最後の2日間で態度をなぜ変えたのか。そこに何があったのか。これは大事な問題である。
 百数十年に1回の基準になっている最大高さの防潮堤である。十分に防潮堤のかさ上げで対応できるというのが今度の安全の考え方の基本である。


・大船渡市の湾口防波堤について

【斉藤委員】
 第一波で破壊された。この検証結果はどうなっているか。大船渡の津波高は10.4mになっている。実際には、第二波・三波で大きな津波が来たわけで、津波の高さについてはほとんど効果はなかったのではないか。
 それから水質保全対策検討会で漁協の方々も含めて水質汚染問題にどう対応するかという議論がされている。この間、湾口防によりどのように湾内の水質が悪化してきたか。この協議会ではどのような議論がされているのか。

【港湾課総括課長】
 従前の施設は、津波高さ6mの昭和チリ地震津波を対象として防潮堤の高さ3mまで津波の高さを低減する計画で整備された。東日本大震災津波では、防波堤の高さを大幅に上回る津波が来襲したため、防波堤を境に大きく生じた勢いによりケーソンが港内側に押されて倒壊したと考えている。
 湾口防波堤については、当時のビデオ映像から、第一波が押し寄せ倒壊に至るまでも一定時間機能していたことが分かっており、これにより市街地への第一波の到達時間や推移の上昇を遅延・減少させる効果があったものと推測している。
 また、東日本大震災津波での浸水高を湾口防波堤の復旧の有無で比較すると、湾口防波堤を復旧しない場合のシミュレーションでは最大11.1mとなるのに対し、津波の浸水痕跡では9.5mであったことから、約1.6mの低減となることが確認されている。
 水質の問題だが、大船渡湾は元々湾が奥深く入りくんだ地形のほか、湾口防波堤により閉鎖性海域となっていることから、水質悪化が懸念され、水質保全のための対策が課題となっていたものである。湾内の海水は、富栄養化の傾向にあり、カキには表層で藻類の植物生産の増大などが起きていた。また有機物の指標であるCODの値が大きく硫化物の発生も認められており、最近の20年間はほぼ横ばいの状態にあった、富栄養化の傾向は継続していたという状況である。現在、水質保全対策検討会において湾口防波堤の形状を含めて、水質対策について検討している。

【斉藤委員】
 第一波で破壊されたということは、ほとんど津波を遅らせる効果がなかった。堤防があっても、高田松原だってかなり抵抗した。
 それからこの会議の資料では10.5mと津波の高さが出ているので、この検証は徹底して行われて、もっとも効果的な安全対策は何かということを県とすべきである。


・簗川ダム・津付ダム建設事業について

【斉藤委員】
 簗川ダム事業について、ダム本体工事はどういう中身・額の予算になっているか。
 津付ダムは、津波災害を受けて、ダム本体を見直すとなっている。国に検証を求めていない。そこをはっきりしないで、平成33年までにできるという答弁をしてはいけない。この経過はもっと正確に、見直すということで本体は休止ではないか。
 付け替え道路は途中で中断するわけにはいかないので今回も予算が出ているが、付け替え道路関係の事業費はどれだけ残っているのか。
 簗川ダム事業は付け替え道路がだいたいできた段階で、本来見直すと。せめて凍結して事業費や人材技術者を復興事業にまわすべきである。
 来年度は5億円以上の事業が106件提案される。もうすでに設計技術者もいない、職人もいないとなっている中で、106件もこういう事業が提案される。不要不急の事業は見直して、そういう手立てをとるべきではないか。

【河川開発課長】
 簗川ダムについては、今年度の事業内容としては、付け替え国道・県道の工事や環境調査などの継続調査、本体の実設計ということで9000万円ほど計上している。
 津付ダムについては、付け替え国道の残事業費は、付け替え道路397号の全体事業費約37億円に対して、平成23年度までに約38億円を執行しており、平成24年度以降35億円となっている。東日本大震災津波の被害を受けての状況だが、陸前高田市街地が大きな被害を受けたということで、ダム検証時点の社会状況と大きく変化したということで、陸前高田市の復興にかかる事業の具体的な計画、今後出されると思うが、それを踏まえて気仙川の治水対策について再検討するということで進めている。
【県土整備部長】
 簗川ダムだが、昨年一昨年と、内陸部でもだいぶ頻繁に洪水被害が発生している。簗川流域については、盛岡近郊では簗川だけが現況の治水安全度10分の1という形になっているので、必要性があると判断しているので、粛々と事業を進めていきたい。