2012年3月21日 2月定例県議会・最終本会議
2012年度岩手県予算に対する反対討論
私は、日本共産党を代表して、議案第1号、2012年度岩手県一般会計予算など3議案に反対の討論を行います。
2012年度岩手県一般会計予算に反対する理由は、被災者の深刻な実態と被災地の復興の遅れからみて、極めて不十分な予算にとどまっていることです。その根底には、政府の取り組みが、あまりにも遅く、その規模も小さいうえに、しばりが多すぎるという問題があります。
東日本大震災津波から1年余が経過しました。3月19日現在、死者・行方不明者5908人となる戦後最大の大災害となりました。大震災津波の救援・復興は県政最大の課題です。とりわけ被災者のいのちとくらしを守り、仕事の確保と事業者・産業の再建をはかることは最も緊急で重要な課題となっています。
来年度岩手県予算は震災対応分の4651億円余を含む1兆1183億円余という戦後最大規模の予算となりました。この中には、被災した住宅の新築・購入への100万円の新たな補助や事業所の再建に300万円の補助を行うなど積極的な施策もあることを評価するものであります。
しかしながら、被災者のおかれている状況は極めて深刻です。昨年6月から12月の間だけで震災関連の自殺者が17人に及び、これまでに仮設住宅での孤独死も5人、被災地で誰にもみとられずに亡くなった高齢者は80人に及んでいます。震災関連死も160人に及んでいます。要介護認定高齢者が1000人以上、34.8%も増加しています。
私は、第一に、「津波で助かった命、1人たりとも犠牲にしてはいけない」―この立場に立って、被災者一人一人に寄り添い、いのちとくらしを守るあらゆる対策を講じるよう強く求めるものであります。義援金等を理由に生活保護を打ち切られた世帯が197世帯に及んでいます。あまりにも冷たい仕打ちというべきものであり、見直しを強く求めます。
第二に、仕事の確保と事業所・産業の再建の取り組みも不十分と言わなければなりません。
4月までに雇用保険が切れる失業者が1213人に及びます。すでに雇用保険が切れても仕事が見つからない人が162人、これから切られる人が836人もいます。グループ補助金や仮設店舗などの取り組みで事業の再建が進みつつありますが、再建された事業者は63.5%にとどまり、その中身も3〜4割程度にとどまっています。廃業・休業が1260事業所に及んでいます。仮設店舗の取り組みも329件の申請に対し、事業開始が194件、完成が124件にとどまっています。二重ローン解消の仕組みとして岩手県産業復興機構がつくられたものの、2月末までの相談件数が240社、債権の買い取りが2件、リスケ1件、調整中が30件にとどまっていることも重大です。
被災者が安定した仕事が確保できる雇用対策、何よりも再建を希望するすべての事業者がいち早く再建できるように、グループ補助の早期決定と拡充をはかるべきであります。県独自の被災事業者への補助制度の積極的な活用をはかるべきです。二重ローンの解消にあたっては、3年間で債権の買い取りがわずか50件と言う復興実施計画を見直し、産業の再建のかなめをなす位置づけで取り組むべきであります。
第三に、漁業・水産業の復興の取り組みです。今年度は6800隻の漁船確保をめざす補正予算が計上されたことは重要なことでした。しかし、交付決定隻数は5392隻、漁船の確保数は2月末で3327隻にとどまりました。ところが、復興実施計画では3年間の漁船の確保隻数が6152隻となっています。来年度予算では215隻の確保にとどまっています。漁業再建の柱となる漁船の確保はせめて流出した13000隻余の8割以上とすべきではないでしょうか。
第四に、住宅の確保と災害復興公営住宅の問題です。住宅の新築・購入に100万円、バリアフリーと県産材の活用でさらに130万円の補助が導入されますが、被災者生活再建支援金の300万円を加えても、二重ローンを抱えて新たな住宅の確保は容易ではありません。災害復興公営住宅は1戸当たり2000万円の経費がかかります。住宅確保への支援を強化してこそ被災者の願いにこたえ、経費の節減にもなるのではないでしょうか。また、災害公営住宅の建設にあたっては、希望者全員が入居できること。戸建てや木造建築など高齢者世帯と地域にふさわしい多様な住宅となるよう強く求めます。
第五に、被災した県立高田、大槌、山田の各病院の本格的な再建の予算が示されなかったことです。県立高田病院や山田病院の仮設診療所では、すでに震災前の患者を超える外来患者が来ています。高田病院では新たな用地の確保のめどがついたとのことです。3月16日に示された地域医療再生臨時特例交付金の中には、被災した高田、大槌、山田の各県立病院の再建整備の75億円も含まれています。これから再建整備にかかっても3年以上はかかる事業です。県立病院の再建は被災地のまちづくりの中心をなす課題です。一刻も早く用地確保と病院の再建に取り組むべきであります。
第六に、復興の進め方の問題です。被災者の生活と生業の再建を最優先に、地域住民の協議と合意を貫いて復興の取り組みを進めるべきであります。
ところが、宮古市閉伊川河口への水門の建設問題では、市と市議会の計画と地域住民の意向に反した進め方となったことは問題です。防潮堤の高さや湾口防波堤の再建についても地域住民の協議もなく上から決められています。安全の確保も津波だけでなく総合的に検討されるべきであり、海との共生、漁業の振興との関係についても十分な検討が求められる問題です。
防災集団移転事業、土地区画整理事業、漁業集落防災機能強化事業も100を超える地域で進められようとしています。専門家の派遣を行い地域住民の徹底した協議と合意の確保に丁寧に取り組むべきであります。
復興事業にあたっては、何よりも被災者の生活と生業の再生を最優先に、優先順位を明らかにして復興に取り組むべきであります。
第七に、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の被害が県内でも広がっていることは重大です。東京電力と国の無責任な対応に最大の問題がありますが、県の対応も後手後手に終始してきました。徹底した放射線量の調査と除染、食品の安全検査、全面的な毎月の損害賠償の実現など積極的な対応を強く求めます。
県政全体の問題としては、大震災津波の教訓を踏まえて、福祉と防災の県政に転換をはかるべきであります。県民の福祉とくらしを大切にする県政こそ、災害にも強い県政となります。
子どもの医療費の助成を小学校卒業まで拡充することは、切実な課題です。すでに18市町村が小学校・中学校卒業まで実施しており、来年度は遠野市、大槌町、葛巻町が中学校卒業まで、陸前高田市、北上市も小学校3年生まで拡充する予定です。福島県は18歳以下、秋田県は小学校卒業までの医療費助成に取り組むとしています。岩手県も実施に取り組むべきです。
高すぎる国保税の引き下げに取り組み、資格証明書・短期保険証など保険証の取り上げを直ちに中止すべきです。(特養ホームの待機者の解消に取り組み、介護保険料の値上げを抑えるべきです。「保険あって介護なし」というべき介護保険制度の抜本的な改善を求めるべきです。)
不要不急の簗川ダム建設事業は凍結し、財源も人材も復興事業に振り向けるべきであります。
議案第13号は、2012年度岩手県立病院等事業会計予算であります。医療関係者が大震災津波の被害を自ら受けながらも献身的に被災者のいのちを守り、地域医療の確保に取り組まれたことに心から敬意を表するものです。
しかしながら、すでにのべたように、被災した県立病院の再建は来年度予算には示されませんでした。医師不足とともに看護師不足も深刻です。7対1看護体制の導入で有給休暇も取れず、月に9日夜勤など長時間勤務が強いられ、年度途中で退職する看護師も少なくありません。民間移管を強行した花泉診療所の破たんについて、医療局の責任は重大であり、徹底して経過とその責任を明らかにすべきであります。
議案第31号は、岩手県県税条例の一部を改正するものです。その中身は、大震災津波の復興財源として、県民税・市町村民税にそれぞれ一律に500円、合計1000円を加算・増税するものであります。大企業には法人税を減税し国民には増税を押し付けるものであり、反対するものです。
以上申し上げ反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。