2012年4月17日 商工文教委員会
雇用対策、中小企業対策に対する質疑(大要)
・雇用対策について
【斉藤委員】
新年度を迎え、3.11の大震災津波から1年1ヶ月余と。この状況の中で、被災者の暮らしと雇用を守ることがもっとも切実な課題となっている。
1月からすでに雇用保険切れが始まっており、おそらく4月末までに1200名を超える方々が切れるのではないか。この実態と再就職の状況はどうなっているか。
新規高卒者の就職状況についてだが、先日大船渡のハローワークに行ってきたが、大船渡は、病気の1人を除いて100%就職と。そして管内も、あの震災の中で前年より多い求人を確保して管内も100%と。かなり頑張ったという感じを受けるが、直近で新規高卒者に未内定者がいるか現状を示していただきたい。
【雇用対策課長】
雇用保険について、労働局から発表されている3月16日現在の状況だが、90日間の特別延長の受給中の方は682名、受給が終了した方は就職した方も含めて699名という状況。今後も新たに受給を開始される方も出てくるものと考えている。そうした方々に対する就職への対策だが、第一には、就職に対する相談、就職支援を丁寧に行っていくということということで、幸い現在有効求人倍率は高い数値を示しているので、まずは就職支援を丁寧に行いマッチングを図っていくと。それで、就職につながらなかった場合の対策としても、緊急雇用創出事業によるつなぎ雇用の創出、それから24年度本格的に展開される事業復興型雇用創出事業により、安定雇用に結び付けていくという形で対応していきたい。
高卒者の就職状況だが、2月末で内定率96.5%ということで、過去10年では同時期でもっとも高い数値を示している。県内就職希望者の内定率も94.7%となっている。
【斉藤委員】
雇用保険切れが699人と。厚労省の雇用政策課長のレポートでは、2月17日までに3510人給付が終了したと。その時点で就職が決まっているのが921人26.2%と。このすでに給付が切れた699人の就職状況が分かれば示していただきたい。
高卒も内定率は高いが、未内定者がいるということである。未内定者が何人で、ハローワークやジョブカフェに登録してやられているのか。4月5月が勝負である。その取り組みをリアルに示していただきたい。
【雇用対策課長】
延長給付終了699人中就職された方は306名となっている。
高卒の未内定者だが、県内全体で2月末で116名である。3月に若干改善されたと思われ、4月以降についても地域ジョブカフェだとか就職支援について対応していきたい。
【斉藤委員】
今後の雇用対策でもっとも重要な課題、活用できる制度として、事業復興型雇用創出事業がある。これは県としても全体で15000人常勤の雇用を確保すると。予算額も100億円を超える。1つは、昨年度から先行して岩手は取り組んだが、23年度の実績はどうなっているか。そして23年度は、岩手はグループ補助を受けた企業を対象にということで分かりやすくやったが、これは本来そういう条件がついているわけではないので、やはり15000人という雇用確保は大変な規模である。かなり大胆に取り組まないと、予算化はしたが進まなかったということになりはしないか。24年度これをどのように進めるのか。市町村での取り組みはどのようになるのか。
【雇用対策課長】
23年度の実績だが、助成決定が29事業所、雇用者数は144名となっている。
24年度における対象事業および活用した補助金等の拡大についてだが、23年度はグループ補助金を受けた事業所ということでスタートし、24年度はこれを拡大することにしている。この拡大の考え方については、すでに厚労省からも対象補助金として26事業が追加で通知がきており、これも含め、また県単、市町村単独事業についても、いくつかの基準を設けて拡大を図っていきたい。その拡大の考え方は、例えば、県でいうと、復興実施計画に位置付けられている事業を対象に加えるとか、市町村でも独自に同様の事業を実施しているものもある。そういったものを取り込んで、対象事業を拡大し、幅広く事業主に対して助成を適用していきたい。市町村との連携だが、助成決定の対象として、市町村が補助または融資する事業を受けている事業所も対象になるので、市町村から「こういう事業を予算化した」という提案を受けながら、それを新たに次々追加するなどして、市町村と対事業者との周知、相談対応で連携することはもちろんだが、対象事業の拡大という点でも、市町村と相互に連絡をとりながら努力していきたい。
【斉藤委員】
平成23年度先行してやったが、目標は1250人の雇用、6億円の助成金というのが目標だった。それに対して144人にとどまった。良い制度は早く具体化徹底することが重要である。結局、国や県の補助金・融資を受けた事業が対象だという風に今までの説明はそうなっている。それでもかなりの規模があると思うが、なぜ29事業所144人にとどまったのか。そして24年度は対象を拡大するということを述べたが、具体的に復興計画に位置付けられた事業ならいいということであれば、事業の再建は最大の課題なので、すべての事業所の再建というのは復興計画に位置付けられると。再建を規模する事業所は基本的には商店を含めて対象になると理解されるのではないかと思うがいかがか。
【雇用対策課長】
23年度はグループ補助のみ実施したということで、そういうことも要因で対象事業者・雇用者が少なかったと考えている。いずれこれについては、24年度どこまで拡大するかについては方針を定めているので、これをさっそく広く周知しながら、来週市町村と振興局等の担当者会議も予定しており、そこでの説明、あるいは事業者への周知を図りながらこれを拡大していきたい。
補助金とはあれ、ものづくりの部分にかなり重点的に組まれているが、商店やサービス業の部分についても何らかの行政の関与、関与の仕方には経営指導や経営相談という形もあると思うが、そういう形も含めて対象に加えていきたい。
【斉藤委員】
事業復興型全体で300億円、15000人の雇用確保と。これが行われたら本当に復興の力になる。事業所の復興の力、雇用確保の力になる。対象の条件を緩和した、広げたということなら早く文書で示して、みんなが対象になると。担当者会議も早くやって、事業者にも早くお知らせする、説明会をするということをやっていただきたい。
・中小企業の再建について
【斉藤委員】
事業所の再建状況・実態把握で、復興局が被災事業者のアンケート調査を行って、73%が再建という結果を出したが、この調査結果はきわめて不十分だと思う。というのは、すべての被災事業者から回答をもらっていない。今まで被災した事業所というのは、商工会議所・商工会の加入会員だけで7755事業所のうち4240事業所が被災したとなっている。ところが、復興局のアンケートは2000ちょっとしか回答されていない。そのうちの73%再開といっても実態がかけ離れているのではないか。こういう調査というのはもっと正確にやらなければならない。事業所の再開状況を正確にどのように把握しているか。
【経営支援課総括課長】
商工団体が2月に調査したものでは委員が述べたものだが、復旧しているものは63%程度ということである。この調査については、定期的に商工団体に照会しながら実態を把握していきたい。
復興局の調査については、商工団体の事業所に対してある程度抽出して、それに対してのアンケート調査であり、調査の段階ですでに廃業がはっきりしている事業所については調査の対象外としたと聞いているので、相違が出ているかと思う。このアンケートについては、復興にあたって事業所がどういった課題があるか、復興の状況がどのように進んでいるかということを把握するための調査ということで、調査の趣旨が違っていたということでご理解いただきたい。
【斉藤委員】
新聞報道になると、事業再開73.2%と報道される。もっと丁寧に。再開しようとしている事業所の抱えている問題ということであれば調査は意味があったと思う。再開状況から見ると実態を正確に把握できない。2月1日現在の商工会議所・商工会の調査だと4240事業所が被災し、休業中が698、廃業・転出が568、計1266事業所が廃業・休業である。その他に不明というのが723ある。計1989である。半分近くが廃業・休業・不明という数字である。そういう深刻な実態を踏まえた上で対応することが必要である。
グループ補助金についてだが、今年度150億円予算化されているが、5月1日から第4次の受付を行うと。このグループ補助というのが今まで一番力になっている、効果の大きい補助制度だが、この取り組みがどうなっているか。今まで3次で受けたのが30グループ295社426億円。岩手・宮城・福島全体で500億円という新年度予算だが、圧倒的に足らないと。早く拡充してということが出ており、平野復興大臣が大船渡に来たときには「少ないのは分かっている。拡充の方向で検討したい」と述べたようだが、このグループ補助の取り組み状況はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
グループ補助の公募については、5月1日から31日となっている。その後、県での審査会を経て、最終的には国の審査を経て交付決定ということになるが、県の審査会は6月の中頃から下旬ごろと考えており、だいたい1ヶ月ぐらいかかるので、7月中旬に交付決定というような日程で考えている。
額の関係だが、公募がこれからであるので、実際どれほど出てくるかはこれからであり、実際の応募の状況とか採択の状況を見て、さらに必要ということであれば増額を要望していきたい。
【斉藤委員】
東北経済産業局が、グループ補助金アンケートを行い、どういう状況になっているのかと。グループ補助を受けたところがどう再開しているのか、していないのか。またどういう課題があるのかということでかなり丁寧な調査になっている。このアンケートで明らかになった現状と課題はどうか。
【経営支援課総括課長】
公開されているアンケートの内容を見たところだが、補助事業が、工事の進捗状況が岩手県の場合遅れている、繰り越しが多かったと。やはり業種ごとに見ても、例えば建設だとか水産業で比較すると、建設については進んでいる一方、水産加工にあたる水産食品加工業が遅れているというような分析になっていると記憶している。そういったことで事業が早期に進むようにと考えており、進捗状況については、事業者への執行状況の調査なども行い、繰り越しが必要なものは繰り越しの手続きをすでにとっており、事業の進行管理という意味でも、何らかの方法で進捗状況を把握するような方法をとっていきたい。
【斉藤委員】
新聞報道も出たが、グループ補助を受けたが岩手県の場合は15%着手していないと。すでに事業を受けて完成したのが13.6%にとどまっていると。事業再開したが売り上げが減少しているということもあり、グループ補助金の課題についてもかなりリアルにここでは、資金繰りに関する課題、資材・部品調達に関する課題、雇用関係に関する課題、特に岩手の場合は、移転・土地利用の課題。特に水産加工の場合には、どこに再建するのかが定まらないということなども、補助決定を受けたが事業が進まないという大きな要因だと思う。
わたしはこの間、中小企業団体中央会や県の商工会議所・商工会も訪問して話を聞いてきた。緊急に解決が必要だと思うのは、グループ補助金の交付決定は受けたが4分の1の融資が受けられないと。これは金融機関の姿勢が問題ではないか。わずか295社、県内の中核的な企業が今まで対象になった。せっかく国の4分の3の補助が決まったのに4分の1の資金確保ができないで再開できないでいる、困っている。この問題について、先日4月10日に開かれた金融関係の会議でも出たと思うが、やはり金融機関がもっと県内の事業所の再建に積極的な姿勢を示すべきではないか。
【経営支援課総括課長】
4分の1の自己資金の手当ての関係については、高度化スキームということで、高度化資金に対応したような資金の調達方法もご案内しているところである。それから、4月10日の金融機関・行政・商工団体など支援機関の会議だが、岩手県の復興に向けた金融関係機関連携支援対策会議を開催した。この際にも、いろんな情報交換などもあり、金融機関の方からの課題、現状、方向性という報告もあった。東北財務局長からは、運転資金が不足しているということで、今後も金融機関の負担が大きいという発言もあり、いずれ復興元年ということでこれからの資金需要が期待される。そういったこともあり、県でのいろんな支援・補助もあわせて、金融機関そのものの融資判断というのは県では関与できないが、金融機関が例えば産業復興相談センターとの連絡会議などの開催、そこでの県での情報共有などということは可能だと思うので、金融機関とも情報を共有しながら事業者が早期に立ちあがれるよう、資金調達が円滑にいくように努めていきたい。
・二重ローン問題について
【斉藤委員】
金融機関の姿勢の問題でいけば、二重ローンの復興機構、再生支援機構が二重につくられた。この債権買取や融資条件の変更などの最新の現状はどうなっているか。全体として進んでいないと思うが、これも金融連絡会議で議論になったと思うが、何が問題になっているのか。知事は二重ローンの問題は生命線だと言った。せっかく仕組みを作ったが進まない問題は何なのか。どうすれば打開できるのか。
【経営支援課総括課長】
累計で申し上げると、岩手県産業復興相談センターからの聞き取りということで、債権の買取決定が6件、長期の返済猶予が13件、新規融資が11件ということで計30件解決に至った。その他にも、さらに支援に向けたものが30件ほどある。順次解決に向けて進んでいくと考えている。
解決が進まないということだが、数的には徐々に増えてきているが、二重ローンの1つの問題としては、新たな資金調達が難しいということもあるので、グループ補助金などの制度がいろいろ立ちあがってきた、融資制度なども出てきたということで、必ずしも買取のファンドに頼らなくても復興できるような手段が出てきたというところもあると思う。また、買取自体のスキーム自体が私的整理という方法なので、被災した事業者の書類そのものが流出してそれをまず復元する作業だったり、あるいは不動産の鑑定、担保保険の処理など、その上での債権者間などの調整も行うので、一定の時間がかかるものを圧縮した時間の中で処理するということで、いずれさらに順次解決に向けて取り組んで解消に向かっていくと理解している。
【斉藤委員】
二重ローン問題は、県の姿勢・受け止めが弱いと思う。知事があれだけ強調して復興構想会議に持ち込んで制度がつくられたと。しかし何ヶ月経っても債権買い取りがたった6件。長期返済猶予などは支援機構がなくても現行制度でもできる。復興機構、再生支援機構というのは、債権買取のための機関。それが何ヶ月経っても経った6件。事業所はどう見ているか。これは使えないと見てしまう。
4240件も被災している。3県で債権総額は、業者の返済の一時停止や返済条件の変更を受けている債権額は7036億円に及ぶ。本当は、もっと積極的に債権の買取に応じるということが必要である。なぜそのようにならないのか。4月11日の産経新聞に、再生支援機構の池田社長のコメントが出ている。復興機構は債権の買取件数が少ないとの指摘について再生支援機構の対応について、「買取は、金融機関の新規融資の見込みが条件となる。金融機関が『担保がないと融資しない』という姿勢を変えないことが件数が少ない原因ではないか」と。金融機関の姿勢である。これは復興機構で2000億円、再生支援機構で5000億円組んでいる。これで事業再建しようと新しい制度をつくった。それがたったの6件。相談もたったの255社である。4200社が被災している中で。みんなが相談して、解決の方法はいろいろあるかもしれないが、債権の買取を中心にどんどん解決していくことをしないと制度が生きない。
最近の岩手県の金融機関は、石橋を叩いて渡らないどころか戻ってしまうと言われている。岩手県は大株主なので、この制度に魂を入れるような取り組みが必要ではないか。
【経営支援課総括課長】
ファンドの方の買取した債権額ということで話されたと思うが、それについては出資に応じたキャピタルコール方式なもので、全体の額については承知していない。
3月末現在で255社ということで、いずれ周知には努めていきたいと思うし、買取の他にもいろいろ解決手段があるということで対応しているので、事業者の皆さんに説明していきたい。
再生支援機構との関係、両者が補完的な運営をしていくということで理解しているが、再生支援機構もまだ立ち上がったばかりなので、いずれこれからそれぞれの機能を発揮して買取などが進むものと考えている。
【斉藤委員】
新任の部長にお聞きするが、雇用の確保や事業所の再建は復興の中心をなす最優先課題。この二重ローンの制度の積極的な活用や事業所の再建に向けてどういう決意で臨まれるか。
【商工労働観光部長】
これまで被災地における商工業の被災状況、これまでの議論の過程でも明らかにされている通り大変な状況と思っており、この復興を第一に考え、その際にやはり重要となってくるのは、地域経済としてきちんと立ち直っていくということが一番重要と考えている。そのため、被災された商工業者がもっとも望んでいる要望は何かということにしっかり対峙し、例えば、当面必要とする資金繰り対策、あるいは融資を受けるにも現在の抱えている債務等があり、困難な状況ということであれば、それを解決するために設けた復興ファンドであるので、それがしっかりと機能するように復興相談支援センターともしっかり連携しながら、あるいは金融対策会議等を通じて、金融機関には現地の被災されている商工業者の復興に向けた意欲が削がれることがないように、しっかり対応していきたい。
・仮設店舗の状況について
【斉藤委員】
仮設店舗の申請・整備状況を示していただきたい。
【経営支援課総括課長】
仮設店舗・工場の進捗状況だが、3月末現在で、全体のエントリー数が334カ所、市町村との基本契約を結んだものが229カ所、着工済みが205カ所、完成したものが150カ所となっている。