岩手県知事 達増拓也 様
2012年4月27日
日本共産党岩手県委員会
委員長 菅原則勝
県議団 斉藤 信
高田一郎
被災者の生活と生業の再建を最優先に、
東日本大震災津波の救援・復興を進めるための申し入れ
昨年3月11日の東日本大震災津波から1年1カ月余が経過しました。県・市町村、関係者の献身的な取り組みが行われていることに心から敬意を表します。この間、震災関連の自殺者が17人(6月〜12月)、震災関連死が160人(申請223人)、仮設住宅での孤独死も5人、要介護認定者も沿岸市町村で前年比1107人、34.8%も増加するなど被災者をめぐる状況は深刻です。10月以降延長された雇用保険受給者は1381人、うち3月16日までに雇用保険切れが699人、うち再就職者は306人(43.7%)にとどまっています。被災した事業所の再建も63.5%にとどまり、1266事業所(29.8%)が休業・廃業となり、不明事業所を含めると1993事業所(47%)となっています。
未曽有の大災害から、被災者の生活と生業を再建し、被災地の復興を果たすこと。原発事故の被害から県民の暮らしと健康を守ることは、県政はもとより、日本の政治に課せられた最重要、最優先の課題です。しかし、被災地での懸命の努力にもかかわらず、生活と生業の再建は遅々として進んでいません。県独自に住宅再建に100万円の補助や事業所の再建に300万円、工場・宿泊業では2000万円などの独自の助成事業が実施されつつあるものの、政府の取り組みが、あまりにも遅く、その規模も小さいうえに、様々な分野に「競争力」や「規模」などの条件をつけ、上から選別し、切り捨てる施策を持ちこんでいることは問題です。
日本共産党は、大震災津波の救援復興の取り組みが1年余経過した現状を踏まえ、選別と切り捨ての「復興」ではなく、すべての被災者の生活と生業の再建を最優先に位置づけ、雇用の確保と事業所の再建、住宅確保へのさらなる支援、集落・コミュニティを維持した集団移転やまちづくり、住民の合意に基づく安全対策、原発事故による放射能汚染対策などを進めるよう以下の通り申し入れるものです。
記
1、被災者のいのちとくらしを守ることは引き続く緊急課題
1) 被災者の国保税・医療費、介護保険料・利用料の減免措置の継続を求めること。
(現状は9月末まで)
2) 震災関連死の申請の周知徹底をはかるとともに迅速な認定作業を行うこと。
3) 自殺、孤独死等の防止のために、保健師の増員をはかり、継続的な見守り支援と、生活再建・心のケアなど総合的な支援を強化すること。
4)災害救助法の対象となった仮設住宅の風呂の追いだき機能の設置と、物置の整備を早急に行うこと。
5)応急仮設とともにみなし仮設住宅の入居期間の延長にあたっては、地権者への適切な地代の支払い等、丁寧な対応を行うこと。
6)障害者や要援護高齢者対策を強化するために、グループホーム型応急仮設住宅(4市町120戸)の増設や施設の整備を行うこと。
7)仮設住宅等の被災者の通院・買物等の交通の確保を行うため、ワンコインバスや乗り合いタクシーなどきめ細かい対策を講じること。
8)仮設住宅への集会室・談話室の整備と活用をはかり、自治会活動への支援と強化をはかること。みなし仮設住宅や県内外への避難者を含め、活用できる制度の紹介や復興状況などの情報提供を強化すること。
2、住宅の確保にさらなる抜本的な支援を―県・市町村で200万円の補助を
1) 被災者の住宅再建へ、県・市町村でさらに200万円以上の支援を拡充すること。
(陸前高田市では水道整備に200万円の補助、大船渡市でも前向きに検討)
2) 希望者全員が入居できる災害公営住宅の建設を進めること。集落とコミュニティ維持を基本に地域にあった戸建・長屋方式、木造住宅など多様な公営住宅を建設すること。
3) 国の生活再建支援金の200万円以上(全壊300万円を500万円以上に)の拡充を強く求めること。
4) 県の生活再建住宅支援事業費補助の周知徹底をはかり、積極的な活用を推進すること。
5) 改善された「個人版私的整理ガイドライン」の活用を推進し、住宅の二重ローンの解消に取り組むこと。
3、仕事の確保と事業所の早期再建を
1)1万5千人の被災者の常勤雇用確保をめざす事業復興型雇用創出事業・助成金の周知徹底をはかり、活用を推進すること。その他の活用できる制度の徹底をはかること。
2)家族を支える安定した仕事の確保をめざし、県・市町村が独自の雇用確保対策を講じること。
3)第4次グル―プ補助(5月1日〜31日募集)の申請を支援し、早期の交付決定を求めること。希望するすべての事業者が活用できるよう復興関係の予備費(4000億円)の活用で、 グループ補助金の抜本的な拡充を求めること。
4)仮設店舗(3月末―334申請、229事業契約、着工済205、完成150)の早期完成を求めること。
5)県の中小企業資産復旧事業費補助制度の周知徹底と積極的な活用をはかること。
6)二重ローン解消めざす岩手県産業復興機構、事業者再生支援機構、産業復興相談センターの活動と役割を強化・改善し、積極的な債権買取を行うよう、県として対応すること。(3月末―債権買取6件、長期返済猶予13件、新規融資11件、相談255社)
4、漁船・養殖施設の確保と水産加工施設の再建を軸に漁業・水産業の再生を
1)漁船の確保(3月末で6081隻交付決定、3793隻確保)を急ぎ、復興実施計画の目標(5割、6150隻)を見直し、被災した8割の漁船の確保をめざすこと。国へも漁船確保の拡充と延長を求めること。
2)養殖施設の整備(3月末で10905台)を急ぎ、「がんばる養殖復興支援事業」の周知徹底と制度の改善を求め、漁民の所得確保対策を講じること。
3)グループ補助や水産業共同利用施設復旧整備事業等の活用をすすめ、水産加工業の再建と製氷・冷凍施設等の整備を急ぐこと。販路の確保・拡大策を支援すること。
5、被災した県立病院の早期再建を柱に地域医療の確保を
1)岩手県医療の復興計画に位置付けられ、地域医療再生臨時特例交付金として交付決定された県立高田、大槌、山田の被災県立病院再建(75億円)を早期に事業化し、再建整備に取り組むこと。
2)県立大東病院の早期再建をはかること。
3)被災した民間医療施設への支援を強化し、全面的な再建をはかること。
6、集団移転・区画整理事業など―住民の徹底した協議と合意を大原則に
1)防災集団移転促進事業、都市再生区画整理事業、漁業集落防災機能強化事業にあたっては、徹底した住民の協議と合意づくりを大原則に、専門家・アドバイサーを派遣して住民が主体の町づくりを進めること。
2)集団移転にあたっては、集落・コミュニティの維持を基本に、持ち家と災害公営住宅をセットで整備すること。災害公営住宅は、払下げの希望や地域にあった戸建て、長屋、木造住宅など多様な整備を行うこと。
7、JR大船渡線・山田線の早期復旧を求めること、岩泉線の廃線許さない取り組みを
1) あくまでも鉄路による早期の復旧を強く求めること。
2) かさ上げやルート変更に伴う新たな負担については国の責任で対応するように求めること。
(JRは、2011年度2545億円の経常利益、2兆3499億円の内部留保)
3)復旧までの代替交通の確保を―鉄道便と同じ、きめ細かな交通の確保を求めること。
4)JR岩泉線の廃線計画を許さず、早期の復旧を求めること。
8、湾口防、水門、防潮堤―安全の確保は徹底した検証と住民合意を貫いて進めること
1) 大船渡・釜石の湾口防破堤については、第一波で破壊されたとされている。徹底した検証を行い、地域住民に情報を公開し、住民の協議と合意を貫いて今後のあり方を決めること。
2) 防潮堤の高さや水門の整備についても、総合的な防災計画の中で検討するとともに、地域住民の協議と合意を貫いて進めること。高台移転の地域については防潮堤の高さを柔軟に見直すこと。漁業との共生、観光との両立など総合的な検討を行うこと。
3) 被災地での生活と生業の再建、生活道路整備・まちづくりを最優先に、復興道路(残事業費9404億円)などの大型公共事業については、優先順位を決め、中長期的な見通しを持って進めること。
4) 復興事業の発注にあたっては、被災地の事業者を優先に、県内事業者の力を総動員するように特別の手立てを講じること。
9、福祉と教育の緊急課題
1)県として子ども医療費の助成を小学校卒業まで拡充すること。(新年度、大槌町が中学校卒、陸前高田市も小学校3年生まで実施)
2)被災地での小中学校の統廃合計画は、被災者の住宅確保や再建の状況を踏まえ、拙速にならず、あくまでも地域住民の合意を踏まえて進めるようにすること。全国で問題になっている小中一貫校の取り組みは慎重に、地域住民の理解と合意を前提に、再検討すること。早期の学校の再建整備を行うこと。校庭・運動場の確保に努めること。
10、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染対策について
1)子どもと妊婦等の健康と安全を守るために、徹底した放射線量の測定と除染、健康調査を継続的に行うこと。住宅の除染も国・東電の責任で行うこと。学校給食とともに保育園給食の検査を地場産品だけでなく全食で徹底すること。
2)農林漁業における放射能汚染の実態調査と検査体制を強化し、除染対策を徹底すること。測定と除染は国の責任を明確にして、生産者に押し付けず、当面、県や市町村が実施すること。牧草の除染にあたっては、実態に合った単価に大幅に引き上げること。
3)東京電力に、全面賠償を強く求めること。賠償請求に対する支払いは翌月にすること。
4)原発ゼロをめざし、事故原因の解明のない再稼働に反対すること。再生可能エネルギーの抜本的な活用で先進県をめざす取り組みを強化すること。
11、復興に逆行する消費税大増税、TPPに反対し、県民運動の先頭に立つこと。
以上