岩手県知事 達増拓也 様
2012年5月25日
日本共産党岩手県委員会
委員長 菅原則勝
県議団 斉藤 信
高田一郎
地方議員団
東京電力福島第一原発事故による放射能汚染対策に関する申し入れ
昨年の3月11日に発生した東京電力福島第一原発事故により、大気中に放出された放射性物質の放出量は約90万テラベクレル(東京電力、12年5月24日発表)と推定されています。海洋にも大量の放射性物質(1万8100テラベクレル、東京電力)が放出していますが、どの放射性物質がどれだけ流れ出しているのか把握されず、一年三ヶ月たった現在もなお深刻な被害がおきています。
県内でも生シイタケや川魚(ウグイ、岩魚)などの出荷制限、山菜も一部が基準値を超え出荷自粛が行われています。また、基準値を超えた牧草の除染対象は県内で1万ヘクタールにのぼり早期除染、草地更新が農家の協力を受けて取り組まれています。
特にシイタケや畜産農家への被害は産地を崩壊する危機的な状況でもあります。山菜の最盛期の時期となっているだけに、産直施設での売り上げの激減で農家と産直施設の経営も深刻な打撃を受けています。産直施設に農産物を出荷して生計をたてている農家は、「収入が途絶えているのに税金の納付書が届く」、酪農家は「東電が賠償をきちんとやらないと倒産してしまう」と悲鳴をあげています。
「汚染状況重点調査地域」に指定された県内3市町(一関市、平泉町、奥州市)は、3月に「除染実施計画」を環境省に提出しました。しかし、国の承認が遅れ、一関市では承認を待たずに除染作業が実施しています。しかも、国の除染ガイドラインは、除染対象地区や除染対象物が極めて限定的であり、汚染された廃棄物の処理方法が示されず、「現実的な対応をせざるを得ない」(自治体担当者)状況となっています。
岩手県が、原発事故による放射能汚染の被害から県民の命と暮らしを守るため、徹底した除染対策、再生産できる具体的な営農対策や東電による全面賠償のすみやかな実施など必要な放射能汚染対策に機敏に取り組むよう以下の通り申し入れるものです。
記
1、子どもや妊婦など県民の健康と安全を守るために
1)子どもが利用する学校・保育園・通学路・公園などの徹底した放射線量の測定を行い、速やかな除染を実施すること。子どもの健康調査を継続的に行うこと。
2)学校給食とともに保育園・幼稚園給食の放射性物質検査を行い、地場産品だけでなく食材の全品検査を実施すること。
3)食品の検査を迅速に実施するために、検査機器の増設や体制を強化すること。市町村への支援を強めること。産直施設等に出荷する農産物等については、県・市町村が責任を持って検査すること。
4)放射能問題について正しい知識を身につけるための専門家による学習・講演会活動や相談体制を強化すること。
2、「汚染状況重点調査地域」指定に伴う「除染計画」について次の点について国に働き
かけること。
1)早期に承認するよう国に働きかけることとともに、「事前着工」による除染にも補助対象とすること。(一関市と奥州市の計画は5月24日承認)
2)国のガイドラインは除染対象地域や対象物もきわめて限定的となっている。「除染計画」は年間1ミリシーベルト以下にすることを目標にしているものであり、これを越える対象物をすべて除染対象とすること。
3)自治会などで実施した除染も補助対象にすること。
4)2013年8月までの除染ができるよう自治体の除染計画を支援すること。
5)汚染廃棄物の処理方法を国が責任を持って早期に明示すること。
3、農家の再生産を支える支援策について
1)ホダ木の全戸検査を急ぐこと。更新に当たっては生産者が新たな負担とならないよう支援策を講じるとともに、ホダ場の除染など再生産できる具体的な対策を講じること。汚染されたホダ木の処分方法を明らかにするよう国に求めること。
2)汚染された牧草の「自力除染」は実態に合った単価に大幅に引き上げること。利用自粛となった牧草の処分については、国・東電の責任で処理すること。
3)農家負担の軽減、飼育管理など公共牧場の利用中止に伴う対策を講じること。
4)牧草の新たな基準値により代替飼料の確保が必要となっている。関係機関と連携して取り組むこと。牧草の全圃場検査、生乳の全戸検査を行うこと。
5)出荷できない廃用牛が滞留し更新できず経営を圧迫しており、集中管理施設での受け入れ態勢を拡大すること。
6)農産物の出荷自粛に当たっては1検体でも基準値を超えれば当該自治体全域がすべて出荷、採取自粛の対象とする対応を改善すること。
4、東京電力福島第一原発事故による全面補償について
1)東京電力に全面賠償を強く求めること。賠償請求に対する支払いは翌月など毎月支払いができるよう知事を先頭に働きかけること。
2)賠償に当たっては、すべての農家を対象に農家個々の被害の実態に即した賠償請求にすること。賠償金に課税しないよう国に特別の措置を求めること。
3)原発ゼロを目指し、事故原因の解明のない再稼動に反対すること。再生可能エネルギーの抜本的な活用で先進県めざし取り組みを強化すること。
以上