2012年7月5日 商工文教委員会
震災に関わる雇用・事業所再建対策に関する質疑(大要)
・被災地の雇用対策について
【斉藤委員】
ハローワーク前のアンケート調査を行ったと思うが、その結果を示していただきたい。
【雇用対策課長】
沿岸のハローワーク前でアンケート調査を行い、209人から回答を得た。
管内で就職を希望するという方が約9割であった。雇用形態については、男性は正社員希望が56%、女性はパート希望がもっとも多く40.9%で次いで正社員希望が33.3%である。
現在の就職活動の状況についての問いについては、急いで就職したいという方が全体で半数以上54.7%、男性が約6割、女性は、急いで就職したいというものの一方で、約3割の方がまだ具体的にいつ頃ということは考えていないということだった。
これまでの就職活動の中で、面接を一度も受けたことのない方が約6割あった。ハローワークで求人情報を探してはいるが、具体的に個別の事業所の面接を受けたことがないという回答だった。
これまで就職に至っていない要因として、一番多いのは、希望に合う求人がないというもので49.1%、その内容としては、業種だとか雇用形態あるいは雇用期間、職種といったことが主に上げられた。
【斉藤委員】
現在の管内、被災地で仕事をしたいという方が9割を占めると。復興への熱い想いを感じるが、同時に、急いで就職したいという6割の方に対してまだ就職が決まっていないという問題も切実である。
実はすでに、雇用保険が切れて未就職と。未就職が多数を占めていると思うが分かるか。
【雇用対策課長】
現在我々で把握しているのは、沿岸被災地に適用されている雇用保険の広域延長給付を受けた方の中で、それが切れて未就職状態ということで把握しており、労働局から発表された数字をもっている。これまでに、90日間の広域延長給付を受けて、その支給が終了した方は2005名。給付の手続きを取り始めた方が3263人で、うち2005名の方が給付終了となっている。2005名のうち、就職が決まらないまま終了となった方は1319名である。うち14名は現在訓練を受けている最中である。
【斉藤委員】
2005名が失業給付が切れて、求職しているにもかかわらず1319人65.8%が未就職である。これは収入が断たれている深刻な状態である。
実は就職率の状況というのが、1月は62.4%、5月18日には34.2%まで落ちている。就職率が落ち込んで、未就職は率も数も増えている。ここに深刻さがある。単純なミスマッチではない。
労働局の発表の中に、完全失業率がある。この完全失業率が岩手の場合、1月〜3月の統計では5.1%32000人。去年の10月〜12月が4.3%で28000人である。完全失業者が4000人増えたことになる。いわば、有効求人倍率が劇的に改善している一方で、未就職が増えて完全失業率が高くなると。求職を諦めている状況も生まれているのではないか。雇用情勢について、この現状をリアルに見て、有効求人倍率の改善という一方でこういう深刻な実態が進んでいることをよく見る必要がある。部長にこの現状についての受け止めをお聞きしたい。
【商工労働観光部長】
全体的なマクロ的な県全体の数字としては委員からお話があった通り、有効求人倍率5月分で1.03ということで、しかも継続的に上昇してきている状況にあるわけだが、一方で、完全失業率とかそういった部分、あるいは未就職の方が増えてきている状況について、詳しい分析というものはまだできていない状況だが、やはり現実個々の求職者においては、それぞれの事情があって、ミスマッチは複合的な要因にあるものということで、ここはハローワークともきちんとその辺についてのデータの提供を受けるだけにとどまらず、しっかりと分析し、個別の実情等も丁寧に把握しながら対応策を考えていかなければいけない状況にある。単に有効求人倍率等が上昇しているから良いという見方をしては正確な状況把握にはなっていないと思っているので、その辺については労働局とも連携して情報共有しながら適切な対応をしていきたい。
【斉藤委員】
ぜひ深刻な雇用実態の現状を知恵を出して深く分析し、それに対応した雇用対策が打ち出されるように頑張っていただきたい。
事業復興型雇用創出事業だが、1万人を超える規模で1人あたり225万円の補助という今までにない制度だが、実際にはあまり浸透していない、使われていない。今の実績と十分使われていない問題点をどう把握しているのか。その打開の方向は何か。
【雇用対策課長】
現在の雇用状況だが、この事業は2月から開始して、6月25日時点で、我々のところに書類を受付け、審査中のものを含めて76事業所360人についての事業となっている。
あまり利用されていない要因だが、1つには事業主サイドとして、雇用の対象が昨年11月21日以降であったということはあると思う。これについては、国に引き続き要望していくとして、その他に、周知がまだ十分でないということも反省しなければならない。これまで、沿岸地区を2巡・計10度説明会をしてきている。それでなお、伸びが上昇カーブを描かないことから、グループ補助金の交付決定を受けて、事業進捗が比較的早いと我々の方で把握している事業所に電話調査を行った。その中で、利用しない理由として回答があったのは、「グループ補助を受けているが、販売は一旦中断して、それが回復する見通しが十分確信がもてないので、雇用をとまどっている」と。また、「ハード整備がまだ終わっていない」ということもある。あとは、再三説明してきたつもりだったが、やはり制度を間違って理解していたという事例―「ハローワークがやっている雇用開発助成金と勘違いしていた」とか「一部にそういう助成金を入れると、会社自体この制度は使えないものだと勘違いしていた」などある。そういった意味で、きめ細やかな周知活動を再度やっていかなければならないと考えている。
【斉藤委員】
グループ補助を受けた企業の電話調査もやったということだが、11月21日以降に限られているというのは問題で、すでに県の施策はほとんど遡及してやっているので、粘り強く国に改善を求めると。ただ、グループ補助金の多数が決まったのはこの後なので、それにしても対象となる企業はまだたくさんあるので。
もう1つ、2割までは新規雇用が義務付けられている。新規雇用×4まで再雇用を認めるという形である。だから新規雇用者を増やさないと再雇用者だけでは対象にならないと。これは矛盾だと思う。津波で工場が流されたとか店がダメになったといって、一旦全部解雇している。だから事業主にしてみれば、全員を再雇用したいのである。これが事業者の切実な願いである。そこに回復の状況で一気に全部再雇用できない。そこに新規雇用も入れないと再雇用が対象にならないのは一番のネックだと思う。だから、津波災害という災害の状況を踏まえれば、再雇用を優先して対象にさせないと、せっかくのこの制度が生きないのではないか。この点は強く国に求めているのか。国は何と言っているか。
【雇用対策課長】
今の点についても、国に対しては、大震災にかかる要望だとか知事会を通じた要望にも「対象範囲を拡大する」ということで要望を出している。国の考え方としては、どうしても一部廃業する事業者も出てくる、とすれば、そこにいた労働者を吸収するための何らかの他の事業主への制約もかけなければという発想で今回の制度をつくったということだった。いずれにしても、国に対する要望は、現在制度適用は岩手県全域だが、例えば広域延長が適用されている沿岸被災地に限定してでも、再雇用のみで可とするような対象の拡大は引き続き要望していきたい。
【斉藤委員】
ある程度の規模の企業は毎年新規雇用を入れているので、こういう被災の状況でも当然のようにやると思う。しかしあまり何年に1回しか雇用しないところは、やはり一度解雇した従業員を即戦力として早く再雇用したいと。それが解雇した従業員の家族の生活にもかかる。だから元の事業所で働きたいというのが切実な願いである。それで再就職をためらっている人たちも少なくない。この問題はぜひそういう被災の実態を国に認めさせて、そうしないとこれだけの予算を組んだが使われないということになる。これは厚労省にしたら困るわけなので。
それから、現場に行って聞いてきたのは、中小企業にとって県というのが今までほとんど窓口になっていない。今回の事業復興型は県が窓口である。職安にはしょっちゅう行くが。そういう意味でいくと、職安との連携と、県が窓口になる機会というのは中小企業にとってあまりないので、敷居が高い感じがある。ここをどのように敷居を低くしていくのか、ぜひ必要な人員も含めてていねいな対応をして雇用確保に結び付けるようにしていただきたい。
・被災事業所の再建について
【斉藤委員】
やはり雇用の確保にとっても、被災した事業所の再建というのは決定的課題である。
今の時点で事業所の再建状況をどう把握しているか。
【経営支援課総括課長】
商工団体を通じての調査だが、6月1日現在で事業の再開の割合は71.2%。2月の調査の時には63.5%ということだったので8ポイントほど回復した。事業所数では、3076事業所である。被災した全体が4323である。
【斉藤委員】
グループ補助金の議論もあったが、これは5月で締め切って、6月中に審査すると。内々示もされたという話も聞いている。150億円の予算に対して、グループ補助の申請が43グループ・929社255億円であった。審査の状況はどうか。どのぐらいまで対応されるのか。
【経営支援課総括課長】
審査の状況だが、県で審査し国に補助金申請なども行い、国で最終的な審査をして決定すると。公表については7月の下旬ということである。たしかに応募が255億円ということで予算を上回る応募になっていた。予算の範囲内で、それからグループの編成した効果、復興事業計画の中でグループを編成することによってどのように効果があがるかということも含めて審査して決定していくということである。
【斉藤委員】
おそらく県の審査は一定程度山を越えて、国との協議も含めて決定額の精査をして、7月末の公表と。今の答弁だと150億円の枠内で審査せざるをえないと。
今回のグループ補助金の申請の特徴は、商店主・商業者がグループを組んで申請したと。宮古・大槌・山田はそうだった。そういう意味で、グループ補助への申請も新たな段階にきたと。そういう努力が広がっていると。こういうことを見直さなくてはいけない。今回そういう商業者のグループ補助が決定される見通しはどうか。
さらに半分弱は今のままだと認定されない。間髪いれずに第5次のグループ補助を実施しないと、また半年延びるのだったら再建が難しくなってくる。グループ補助決定してもすぐ事業の再開とはならない。そういう意味でいけば、宮城も福島も同じ状況だと思うが、間髪いれずにグループ補助の拡充を実現しなければならない。実は復興予算の中には4000億円の予備費がある。去年は第3次はこれを使った。これを使えばできるわけだから、そういうことも含めて早期のグループ補助の拡充を実現すべきである。
【経営支援課総括課長】
昨年度3次にわたる公募を行って採択をしたと。今回は商業者のグループも多く、たしかにグループ補助のステージに応じて応募してくるということを感じている。見通しについては、審査中なので答えられないが、5次の公募については、国の方にも今後事業の継続を要望していきたい。予備費の活用についても、国の方で対応していただけるようにということで要望していきたい。
【斉藤委員】
すでに295社が決定を受けているが、295社の再建状況はどうなっているか。
あわせて、資産の復旧事業費補助が今年度から実施された。この取り組み状況はどうか。
さらには、仮設店舗の設置状況はどうか。
【経営支援課総括課長】
295社の事業の完了見込みだが、慎重状況は、年度内に完了するところが9割、残りについては、土地利用の問題などで見込みが立たないということである。
県単の復旧補助費だが、実は2月の補正から始まっており、2月補正・24年度も含めてあるが、県と市町村合わせて33件8900万円補助している。
仮設店舗の状況は、市町村と中小企業基盤整備機構が基本契約を結ぶ個所が事業開始された個所ととらえており、これが全体で6月22日現在で287カ所、うち着工しているのが271、完成が222となっている。残り49が着工中だが、お盆前くらいにはさらに30カ所ほど完成見込みと聞いている。
【斉藤委員】
295社で9割が年度内に完了の見込みと。すでに完了したのはどれぐらいか。
【経営支援課総括課長】
6月18日現在で、完了したところは91社で約3割である。
・トヨタ自動車東日本岩手工場(旧関東自動車岩手工場)の雇用について
【斉藤委員】
アクアを含めてフル生産と。自動車産業でこそ正社員を増やす最大のチャンスだと思うが、関東自動車の正規・期間工・契約の社員の状況はどうなっているか。今年の新規採用はどうだったか。この間期間工から正規への採用はどう推移しているか。
【企業立地推進課総括課長】
6月時点で2998人の従業員数で、正規が1800、期間社員が898、派遣が300人である。
新採用の状況だが、24年度は87人だが、具体的に岩手工場の配置については聞いていない。
期間工の正規への登用は、平成18年から行っており、18年46人、19年71人、20年106人、21年10人、22年15人、23年13人ということで、計261人である。
【斉藤委員】
関東自動車はこれだけ景気が良くてフル生産しているときに、正社員が6割、期間工―これは半年雇用の継続で、5年6年と働いているベテランの労働者がたくさんいる。それが3割を占めている。挙句の果てに派遣が300人と。
リーマンショックの直前には、106人期間工から正規に登用している。今あれ以上の生産の状況である。やはり本当に100人ぐらいの期間工から正規への登用を岩手県として強く求めるべきではないか。企業にとっても、ベテランの労働者は貴重だと思う。そういう労働者を使い捨てさせるような企業では未来はない。ぜひ関東自動車が岩手の経済にとっても産業にとっても大きな役割を果たしていると、そういう時にこそ先頭に立って正規への登用を進めるべきではないか。
【商工労働観光部長】
7月1日からトヨタ自動車東日本という新しい会社になった。
改めて新会社の体制に移行されたことを契機として、県としても可能な限り正規への登用等についても要請しながら努めていきたいが、あくまでも、現状におけるアクア等の好調な生産状況というのはあるにせよ、一義的には企業の経営状況の判断によっていろいろな雇用形態等については選択されるものと承知しているが、県としてはできるだけ正規採用として採用していただきたいということは機会あるごとにお願いしていきたい。