2012年7月6日 東日本大震災津波復興特別委員会
入札ミス問題に関する質疑大要


【斉藤委員】
 農林水産部、県土整備部で、県土整備部の場合は昨年24件あるが、この全体の中でどれだけのミスだったのか。

【建設技術振興課総括課長】
 23年度については、717件中24件・3.3%である。
【漁港漁村課総括課長】
 23年度については、このような事案は発生していない。元々数件しか発注していないので。
 今年度については、ここに掲げている部分で、19件中14件の誤りである。

【斉藤委員】
 県土整備部の714件というのは、設計・測量調査の案件か。

【建設技術振興課総括課長】
 県土整備部関係の平成23年度の件数は、測量・地質調査、土木関係の設計、建設関係の設計、いわゆる建設関連業務すべてである。

【斉藤委員】
 24件を見ると、ほとんど調査・設計業務委託である。これに限ればどうなるか。

【建設技術振興課総括課長】
 設計に関しては15件ほどである。

【斉藤委員】
 そうすると、県土整備部は去年24件中15件、農林水産部は19件中14件と。圧倒的にミスしたということになる。
 この問題は、個人・県職員の責任は問われない。組織的な弱点があったと言わざるをえない。そういう点で個人の責任は追及するつもりはないが、特に県土整備部の場合は、昨年24件再入札をしている。これは県土整備部長は、昨年の実態について把握して、この状況をどのように受け止めていたのか。それを全庁の問題としていたのか。

【県土整備部長】
 24件中15件ではなくて、全体は業務委託717件のうちの24件ということである。業務委託すべてであるので、例えば、設計・測量・調査など含めて、それが717件中24件あったということはご理解いただきたい。
 24件だが、私もきちんと把握している。中には、契約まで至らなかったものもあるが、落札決定した以降の部分もあった。それはやはり業者にご迷惑をおかけしている。落札決定前に開札したが、そこで分かって再度入札をやり直したというケースもある。
 その内容だが、単純なミスもあるが、例えば小数第3位まで判定しなければならないところを、少数第2位の四捨五入で止めたとか、微々な部分にわたるところもあり、また、業者からそういう内容について質問状が寄せられ、その質問に設計の内容とは違ったことを答えてしまったというパターンもあり、さまざまなパターンがある。
 一番重大な話は、応札決定したのだが、応札決定者が「入札をきちんと認めてくれ」という話もあり、これは重大な案件だとは認識しており、これについて気をつけていこうという話はしていた。そういう矢先であった。ただ、今回24年、ましてや業務委託の件数が増えているので、その中にあって今回積算システム自体に問題があって、1件あったと。そして加えて、再入札の取り止めというのは発生している。再度そこは我々としても徹底していきたいと思っている。

【斉藤委員】
 弁解ばかりで自体の重大性が伝わってこない。去年24件、これはほとんどは積算ミスである。それで再入札している。この問題が去年の段階できちんと検証されて教訓化されていれば、今回の事案もかなり歯止めがかかったのではないか。今回検証委員会は、当初と違い、災害復旧事業関係入札検証委員会になった。そこに情報共有がされていない重大な問題があったのではないか。
 24件の中で、落札決定後取り止めたのはいくつあるか。

【建設技術振興課総括課長】
 前回の席で少なくとも4以上と申し上げたが、その後確認したところ、11件あった。

【斉藤委員】
 これは大変重大だったと思う。
 それで県土整備部の場合、ほとんどが業者からの問い合わせである。県土整備部の場合は件数が多いので、業者もきちんと積算して誤りを指摘すると。それで対応している。漁港の場合には、慣れていなかったので業者の問い合わせへの対応が遅かった。しかし問題は同じだったと思う。時期の違いで契約まで至ってしまった。県土整備部の場合にはよくあるから、落札決定後契約までに間に合ったという件数がこういう形になった。
 もう少し昨年の24件について、事態の重大性について、全庁的にこの問題を報告したか。

【県土整備部長】
 入札取り止めというのは、一部には新聞報道があるが、仮処分までいきそうな対応がきちんとしなければいけない件については知事まで報告している。それ以外は入札の取り止めということで、業務報告までは至っていない。

【斉藤委員】
 そこに1つの問題点があったのではないか。
 やはり初期の段階で早く対応して、そして全庁のものにして、全体がそういう過ちを犯さないようにしていくと、ぜひそういう契機にしていただきたい。
 2つ目の問題は、今回の入札ミスによって、どういう影響があるか。工事がどのぐらい遅れたのか。もう1つは、清算払いを含めて、経費の問題としてどういう損害を県民に与えたのか。

【漁港漁村課総括課長】
 工事関係の影響だが、今回の委託をこれから再入札にかけるということで、工事内の設計関係に3ヶ月ほどの遅れが出るという形になる。この3ヶ月程度の出だしからつまづいてしまったということなので、これについては今後新たに設計・積算をし直して入札をやり直すわけだが、新たなコンサル等の協力を得ながら、新たなものを早急にやるという手立てと、今後工事が発注になるので、その間に最終的に4カ年で工事を完成させるということに影響のないように努力していきたい。
 それから、ご迷惑をおかけした委託業者との変更の清算の関係だが、清算についてはこれからお互いに協議しながら、どの程度の清算額になるかを決めていきたい。
【建設技術振興課総括課長】
 道路災害復旧にかかる測量設計業務については、現時点で約2ヶ月の遅れが生じているが、再入札においては、測量個所だとか調査個所の見直し、設計業務の統合等により、3月末までの当初の工期を守れると考えている。

【斉藤委員】
 工事の遅れ、完了までにどれだけ取り戻せるか、これは業者の負担になると思うが、あとは再入札にかかる経費や精算払いというのもあると思うので、この問題は軽視できない。この責任はどこが誰がとるのか。

【県土整備部長】
 先ほどの質問の中で、工事と、今回やっているのは業務委託ということでコンサルワークの部分なので、その成果品が出てきた後にそれを基に数量から何から設定して工事を発注するという形になるので、ご了解賜りたい。
 いずれ、県民に復旧関係のいろいろな流れ、進捗に影響を与えたことは事実なので、これをカバーするように努め、ご迷惑をかけた企業の方々や県民の方々におわび申し上げたい。それを一刻も早く成し遂げることが我々の責務と考えている。
【農林水産部長】
 農林水産部としても、今回事案が発生したほとんどのものが農林水産部事案であった。業務について不慣れということは通用しないと思っているので、現場の職員ともよくコミュニケーションして、どういうサポートが必要かなど最終的な完成に遅れが生じないように全力で取り組んでいく。

【斉藤委員】
 これだけ県議会でも議論したことなので、きちんと教訓を明らかにするだけでなく、責任の取り方はいろいろあると思うが、責任を明確にして前に進めるというふうにしていただきたい。
 3つ目の問題として、今回の入札ミスの背景には、業務量の増大があったのは事実である。昨年・今年、どのぐらい業務量が増大しているのか。それに対して技術職員、体制はどうなっているのか。何人不足しているのか。これは県全体でも技術職員を国に要望している。そこを示していただきたい。

【人事課総括課長】
 技術職、それから用地関係の職員なども含めて、いわゆる震災復興業務ということで増員した体制は、本年1月1日現在で昨年比260名の増員である。
【総務部長】
 業務量、それぞれの業務ということになる。なかなか全体を示すことは困難だということで課長の答弁になったが、漁港・漁村については、年間の業務量を見越した場合の状況というのはそれぞれの業務になるが総務部でも各部局からうかがい、それに必要な人員をどのような形でケアするのかというヒアリングを重ねた上で今のような260名の増員になっている。なかなか数字は申し上げにくい状況である。
【県土整備部長】
 もっとも今大変な業務は、市町村がいろいろな形で計画調整をしているわけだが、そこにいろいろ関わって調整する事項が多いということもあり、昨年は頻繁に気象用警報等が出た。そういうことを常に抱えながら、仕事をせざるを得ない状況である。つまり職員が一番負担に感じていることは、さまざまな要因なものを抱えながら進めざるをえないというところを一番苦しんでいる状況と考えている。これを1つでも打開するためには、業務をつけておいても、何かを優先していかないとなかなか進まないと。職員の健康管理もなかなか難しい状況になると考えている。

【斉藤委員】
 260名の増員の内訳を示してほしい。不足で今国にも技術職員を要望しているのではないか。

【人事課総括課長】
 260名の増員の内訳だが、農林水産部で70名、県土整備部で111名などとなっている。
 不足分ということで、全国知事会を通じて国に要請している数だが、欠員が生じている部分および各部局からの改めてのヒアリングを行い、全体で29人の派遣要請を行っている。

【斉藤委員】
 業務が何十年分の仕事が出ていると思うので、それだけにこれは検証委員会の中で外部委員も指摘したことで、職場環境がどうなのかと。仕事が厳しくてもやりがいのある仕事をやっているのも事実なので、本当に幹部職員がそういう現場で頑張っている人たちの仕事の状況や気持ちも汲んで、風通しのいい職場環境というのがこういう時こそ必要だと思うが、それについてどう受け止めているか。

【人事課総括課長】
 厳しい環境下でも職員が意欲をもって業務に取り組んでいただけるようにということで、幹部職員との意見交換がいろいろあり、個別にも各所属のグループ長等が現場を見て、知事が現在沿岸各広域局を訪問し、現場の若手職員など、あるいは県外から応援で来ている応援職員等とも意見交換を重ねているところである。

【斉藤委員】
 全体としてオーバーワークの状況が続き限界を超えるような取り組みをしていると思うが、こんなときに成果主義賃金はやめるべきだと思う。全体が今まで以上の仕事をやっているなら、それだけの評価をしなければいけないと思うがいかがか。

【総務部長】
 評価については、なるべく客観的に個人の能力なり業務を見ていかなければならないと思っている。その評価をきちんと行う、あるいはきちんと努力している職員をしっかり評価することが業務意欲の向上にもつながると思っている。
 ご指摘もあったが、風通しの良い職場環境づくりなり、両輪で適切な対応をしていきたい。

【斉藤委員】
 成果主義賃金というのは、いくら頑張っても相対的な評価である。これは給料にも反映される。2倍3倍の仕事をやっているときに、評価をされるのがそのうちの何割というような成果主義のやり方というのは、こういう非常時では適用すべきではない。絶対評価で、今まで以上にみんな頑張っているとしたらそういう評価をすべきではないか。

【総務部長】
 現場で職員が努力されていると、あるいは相対評価であるということだったが、即評価をやめるということにはつながらないと思う。ただ、評価のやり方なりいろんなやり方があると思うし、その中で、相対的に頑張っている職員が多いということであれば、そこをうまくすくいあげられるような、そこにきちんと適正な評価を加えられるような、あるいはそれが処遇に反映できるような仕組みを考えていかなければならないと思っており、組織なり人事を扱う我々としてもそこはしっかり研究していきたい。

【斉藤委員】
 県職員の給与はどんどん下がりこの10年間で100万円年収が下がっている。そういう中で、さらに非常時で仕事が2倍3倍の仕事をしている。さらにその中で相対的に評価されるという、そういう賃下げの中でそういう成果主義賃金制度というのは完全に行き詰まり破たんしていると思うので、ぜひ非常時の中でのあり方というのは検討していただきたい。
 最後に、改善方策の中で、最低制限価格の見直しが提起されている。簡略にすると分かりにくくすると、相反する提起だと思うが、最低制限価格に張り付いて、くじ引きで決められている件数・率はどうなっているか。

【建設技術振興課総括課長】
 平成23年度の建設関係業者におけるくじ引きの発生率は43%である。

【斉藤委員】
 これは検証委員会の議論でも外部委員から指摘されているが、入札制度の趣旨に合わないのではないか。結局、価格の競争になっている。最低限価格を競い合っているだけである。本当にそういう意味でいけば、ここの改善は今までも求められてきた。ここに思い切ってメスを入れる時期に入っているのではないか。
 今回出ているのは、最低制限価格に掛け算の率をかけて分かりにくくするという姑息なことでは、解決策にならないと思うが、現状をどう打開すべきなのか。

【建設技術振興課総括課長】
 今回の最低制限価格の見直しは、2つ論点があると思う。最低制限価格の算定過程において、誤りが発生したということだが、この誤りを排除するために算定式は簡素化する。これが予定価格の0.8ということで、ただそれだけだとあまりにも簡単すぎて分かってしまうことから、予定価格に0.8をかけたものの上限に一定幅の中で最終的な最低制限価格を設定するということで、簡素かつ分かりにくくするという方法を考えている。

【斉藤委員】
 やはり43%がくじ引きだというところに今の入札制度の問題点が凝縮されていると思う。低価格競争にならないように、そして地元の業者が潤うように、そうでなくてもこの間単価が下がり続けている状況があるわけなので、思い切ってこの入札制度の抜本的な改善に結びつける必要があるのではないか。技術力が評価され、地元の業者がそれなりの実入りのある価格で仕事ができるという風にすべきだと思うがいかがか。

【県土整備部長】
 最低制限価格というのは、いずれダンピングの防止と一定のきちんとした成果品の品質の確保という観点から設定したものである。ここにめぐって、仕事がだんだん少なくなったゆえに、過当競争が起きて、最低制限価格でもっても取ろうというのが今の流れになっているが、行き過ぎた部分があるので、今回は若干それをブラインドをかけさせていただくと。ただ、今後最低制限価格制度を含めて、どうあればいいのかというのは課題はあるので、そこについては今後業界の皆さんとともに検討していきたい。

【斉藤委員】
 これからどんどん復興関係の事業が発注されていけば、被災地の企業だけでは当然対応できなくなり、漁港関係などはそういう状況がすでに出ている。それで県は、県内JVというのを提起した。内陸の企業はほとんど復興事業に関われない。県内JVを実のあるように進める必要があると思うが、そのための課題と取り組みは何か。

【建設技術振興課総括課長】
 被災地の企業に優先的に発注するということでやってきた。ただこの間、発注見込み等を積み上げてくると、今年度の下期から大量発注が始まると。そうした時に、当然優先発注だけでは進んでいかないと。それで、代表者を沿岸部の建設企業に、それ以外の方を県内全域から募りJVを組んでいただくと。まずはその手法により沿岸部と内陸部の方の力を総動員して、まずは復興にあたっていただくと。その先はいろんなことも考えていくが、そのことを今お話する段階ではないと承知している。