2012年7月9日 最終本会議
請願陳情第42号、43号、第31号の不採択、第32号の一部不採択に対する反対討論全文
日本共産党を代表して、請願陳情第31号、42号、第43号の不採択、第32号の一部不採択に反対の討論を行います。
請願陳情42号と43号は、消費税増税に反対する請願と消費税増税関連法案の廃案を求める請願であります。消費税増税関連法案は、6月26日、民主、自民、公明の3党合意による談合によって、衆議院本会議で強行採決されました。消費税増税は、どの世論調査を見ても5〜6割が反対を表明しているように、国民の声に背を向けるものです。民主党にとっては明白な公約違反であり、許されないものであります。
とりわけ、東日本大震災津波で戦後最大の被害を受けた岩手県にとって、消費税10%の大増税は復興に逆行し、被災者の生活再建と中小企業、漁業・水産業の再建を脅かす最悪の増税となります。衆議院の採決でも岩手県選出の4人の民主党議員は、3人が消費税増税法案に反対し、1人は棄権しました。賛成はさすがに1人もいませんでした。達増知事も「消費税の増税は、被災者の暮らしの再建と生業の再生の妨げとなる」と明言しました。今回、岩手県議会に提出された消費税増税に反対する請願に反対の立場を取る議員がいるとすれば、被災者と復興に背を向けるものとして厳しく批判されなければなりません。岩手の民主党が消費税増税に賛成の立場をとるなら、新たな変質、県民への裏切りと厳しく批判されるものであります。
消費税の10%増税は、岩手県民に1273億円の増税を強いるものです。県立病院にとってはこれまでの消費税負担額は累計で、139億7700万円余となっており、205億円の累積赤字の68%であります。10%増税となったら県立病院自身の経営が成り立たなくなってしまいます。
消費税の大増税は、世界に例のないデフレという経済不況が長期にわたって続いているもとで、国民の暮らしと経済をどん底に突き落としてしまうものです。中小企業の5〜7割は消費税が転嫁できず、自腹を切っていますが、10%増税となるなら大規模な倒産・廃業に追い込まれ、商店街も消滅しかねません。経済がさらに落ち込むなら、消費税を増税しても税収全体は減少し、結局は財政危機を悪化させてしまうことは、1997年の消費税5%増税の結果であり痛切な教訓であります。当時、国と地方の税収は90兆円ありましたが、今税収は76兆円に減少しました。大企業への減税と相まって14兆円も税収は減少したのであります。
民主、自民、公明の3党合意の密室談合で、突如として出てきたのが「社会保障制度改革推進法案」であります。この法案は、社会保障の「基本的考え方」として「自助」「自立」を基本にすえ、社会保障の公費投入を縮減しようとするもので、国の責任で社会保障の増進をはかることを義務づけた憲法25条を真っ向から否定するものとなっています。しかも、公費の財源については「消費税収を主要な財源とする」と明記するなど、「消費税の増税か、社会保障削減か」の選択に国民を追い込むものとなっています。自民党の対案を元に「合意」された「社会保障制度改革推進法案」は、社会保障の基本理念、医療、年金、介護、生活保護など各分野での「改革」の方向を規定した全くの「新法」であります。日本弁護士連合会も会長声明で、「安定した財源の確保」「受益と負担」「持続可能な社会保障制度」の名のもとに、国の責任を、「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた個人の自立の支援に矮小化するものであり、国による生存権保障及び社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、日本国憲法25条第1項及び第2項に抵触する恐れがあると指摘しています。
この重大な社会保障改悪基本法と言うべき法案が、まともな審議もなく衆議院で強行されたことは、内容の点でも手続きという点でも暴挙というべきものであります。
消費税増税法案は、関連法案を含め、参議院段階での徹底した審議と国民的な運動で廃案にすべきものであります。
請願陳情第31号は、「放射能を海に流さないこと」とする法律の制定を求める請願であり、不採択とされました。請願陳情第32号は、岩手県・国土を六ケ所再処理工場の放射能汚染から守ることについての請願であり、第2項目の「原発から生じる使用済み燃料の再処理の凍結、直接処分の研究を求める」項目は不採択とされました。どちらも福島原発事故と放射能汚染に関わるものであります。
7月5日、福島原発事故に関する国会の事故調査委員会の報告書が提出されました。この報告書では、原発再稼働の根拠を崩し、これまでの原発のあり方に関する重大な指摘がなされました。
一つは、福島原発事故は「自然災害ではなく、明らかに人災だ」と断言したことです。「関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱うものに許されない無知と万信であり」と厳しく指摘しています。二つには、「規制する側と規制される側の力関係が逆転していた」「監視・監督機能の崩壊」という指摘です。三つには、地震による原子炉の損壊について「ないとは確定的には言えない」と指摘したことです。
野田民主党政権は、福島原発事故の原因も明らかにされず、国会の事故調査委員会の報告も待たず、安全をないがしろに関西電力大飯原発3・4号機の再稼働を政治決断しました。とんでもないことです。再稼働に反対する首相官邸前には毎週金曜日デモが呼びかけられ、ツイッターなどで市民が集まり、6月29日にはついに20万人の規模となりました。60年安保闘争以来の市民参加の運動と広まっています。こうした国民の声に野田民主党政権は応えるべきであります。
放射性物質の海洋投棄は、そもそも国際法(ロンドン条約)で禁止されており、福島原発事故でも膨大な海洋投棄がなされました。放射能海洋放出規正法(仮称)の制定を国に求めることは、被災県の県民にとって、三陸沿岸で漁業・水産業を営む者にとって当然の切実な要求であります。
また六ケ所村の放射性廃棄物の再処理工場は、原発より危険な、安全性の確立していないものであり、事故が続いているものです。経済的に見ても採算性に疑問が出されており、国際的にも見直されているものであります。今回の福島原発事故の教訓を踏まえるなら直ちに核燃料サイクルの中止を決断すべきものであります。
原発の再稼働の中止と原発ゼロを求める請願に対しては継続審査として、これらの請願を不採択とすることは、東京電力福島第一原発事故の教訓から学ぶことなく、原発推進・原発再稼働、核燃料サイクル推進の立場に立つ者として、厳しく批判されるものであります。
以上申し上げ、討論といたします。ご清聴ありがとうございました。