2012年8月1日 商工文教委員会
いじめ問題、大槌の小中一貫校問題等に関する質疑(大要)
・いじめ問題について
【斉藤委員】
いま全国的な重大な教育問題、社会問題になっている。岩手の実態と対応についてお聞きしたい。
平成22年度のいじめ調査の概要について、件数、実態、児童・生徒の自殺の状況について示していただきたい。
【生徒指導課長】
平成22年度の国が実施した問題行動等調査だが、いじめの件数は、小中高・特別支援学校を合わせて478件。実態については、冷やかしだとかからかい、脅し文句だとか言葉でのものが多いと把握している。
自殺の状況だが、平成22年度においては、4件の報告を受けている。
【斉藤委員】
いじめの認知件数が478件というのは少なくない、これ自身はきわめて重大なことだと思う。
いじめの対応についてお聞きしたが、皆さんの調査で、「ひどくぶつかられたり叩かれたり蹴られたりする」が27件、「金品をたかられる」15件、「嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたりさせられた」が53件と、きわめてたちの悪い、命に関わるようないじめだと思う。からかいは確かに多いが、本当にいま社会問題になっているのと同じような暴力行為、恐喝行為、さらには危険なことをされたりさせられたりというのが53件もあるわけなので、この実態調査から見えるのは、岩手の子どもたちの命も人権も脅かされているのではないか。この事態を深刻に受け止める必要があるのではないか。
【生徒指導課長】
委員ご指摘の通り、事案に関わっても、命・人権、いじめに関しては人権の問題という捉えをしている。子どもの持っているものを侵害していく行為も中にはある。よって、重大な事案に関しては当然、いじめというのは悪い、ダメなんだという毅然とした姿勢は、学校でも我々もそういう認識はもっており、当然そういう対応をしていかなければならないと考えている。また、そのような重大な事案に関してはやはり学校だけで対応が難しいケースも中にはあるので、当然保護者との連携は当たり前のことであり、関係機関との連携ということも視野に入れながら、そういう対応も実際していることも事実であるので、そういうところを含めて今後もやっていきたい。
【斉藤委員】
私がリアルに紹介した件数だけで約100件である。本当にこの100件ぐらいの対応というのは、本当に子どもたちの命に関わる重大ないじめだったのではないか。
自殺の件数は4件ということだったが、岩手県の自殺対策の資料を見ると、平成22年の10代の自殺は9人となっている。4人と9人ではだいぶずれていると思うがなぜか。
【生徒指導課長】
自殺の件数のずれだが、10代となると、若干在学している年数の幅を超えるケースもあり、在学していない青少年の件数も含まれていると解釈している。
我々が捉えている4件に関しては、あくまで報告いただいた在学している子どもたちの件数と考えていただいてよろしいかと思う。
【斉藤委員】
この間の5年ぐらいの推移が分かれば示していただきたい。22年の4件というのは、いま把握されている段階でどういう要因だったのか。
【生徒指導課長】
平成19・20年は3件、21・22年は4件となっている。
22年の4件の要因については、学業に関する問題、精神的なケース等もある。件数の中には、複合的になかなか原因が特定できないケースも含まれている。
【斉藤委員】
今度文科相の大臣会見が通知として出されており、それに基づいて対応されていると思うが、大事なことは、どの学校でもどの子どもにも起こりうると。そして日常において決していじめの兆候を見逃すことなくいじめを把握したときには抱え込まずに速やかに市町村教委に報告してくださいと。これは今までの一つの到達点である。どの子にもどの学校でも起こりうると。そして実際に起きている。先ほど言ったように、478件のうち100件近くはかなり凶悪な命に関わるいじめが平成22年にもあったのではないかと指摘した。この100件近くは、どんな対応をされたと把握しているか。
【生徒指導課長】
重大な問題に関わっては、先ほど述べたように、学校の中だけでは対応できない、というのは、例えば警察との協力をいただくとか、地域の方々の協力をいただくとか、協力というのは相談だとかそういうことも含めて対応していただいているという風にうかがっている。現在、平成22年度の問題行動等調査の中では、大方早く発見されれば、早く対応できれば94〜95%が解消に向かうということが現場の声としてもあがっている。よって、どの学校でもどの子どもにも起こりうるという認識があれば、対策・対応していくということにもつながっていくので、ぜひ未然防止と合わせて早期発見・早期対応に力を注いで行きたい。
【斉藤委員】
こういう全国的な教育問題、社会問題になっている時だからこそ、私たちはこれを教訓にして、岩手からいじめをなくしていくと。そうした場合に1つの問題は、いじめ事件が発生する背景、直接的には、子どもの貧困、親の貧困、さらには受験競争その他で絶えず競争をさせられているストレス、そういう背景に立ち入って解決していかないと、いじめられる子どもだけでなくて、いじめる子どもの要因もあるわけなので、そういう問題をきちんと対応していく必要があるのではないか。
もう1つは、先生方がそういういじめの実態を全て把握できないと思う。それはずっとこの間多忙化の問題で、忙しすぎて子どもと接する機会がないと。毎日2時間残業していると。デスクワークばかりしていると。これが実態である。こういう点でも、教員の多忙化を解消して、教育というのは教員の共同の仕事である。教員自身が競争しあうのではなく、協力し合って一人一人の子どもたちの状況や課題を共有すると。そうしてこそ効果的で速やかな対応が可能となると思う。教員が抱える問題もまた解決しないと、いじめに対応する余裕がない。
3つ目には、成果主義の問題である。先生方の協力・協同を阻んでいるのは成果主義である。大津の事件でも教育の専門家が指摘しているのは、いじめが発覚すればそれだけで先生の評価、校長の評価、学校の評価が変わってしまうと。いうことで表に出せないと。全国的にこういう成果主義、教員を分断するやり方というのは根本的に見直すと。教育の場にこういう成果主義とか競争の原理は基本的になじまない。そういう風にこの間も指摘したが、この3つの問題を合わせて総合的に解決していく必要があるのではないか。
【教育長】
おっしゃる通り、教師集団が子どもたちに向き合って、しかも学校全体として子どもたちのために取り組むことは非常に大事なことだと思っており、我々もそういう風な環境づくりに向けて努力していきたいと思っている。したがい、まずはそれぞれの地域において学校において、何が課題になっているのか。そういった校長・副校長はじめ、それぞれの教員集団がある面で自由闊達に意見を言い合えて、なおかつそこで1つの子どもたちに向き合っていって、しかも同じ目標をもっていて、そしてなおかつ地域の方々のご協力をいただいて地域で子どもたちを育てるということで、地域と一体となって子どもたちを育てていきましょうということを目標にも掲げているので、引き続き子どもたちが1人でも素晴らしい子どもになってくれるよう我々としても努力していきたい。
【斉藤委員】
3つの問題を提起したわりには不十分な答弁だったが、これは問題提起にしたい。いずれ岩手の中にも深刻ないじめの実態があるという、この認識をしっかりもって、こういう時期に真剣に対応していただきたいし、認識をさらに改めていただきたい。
・大槌の小中一貫校問題について
【斉藤委員】
4月27日の新聞で、大槌高校のグランドに大槌の小中一貫校の候補地になっているというのがあった。これは県教委にも相談があるのか。あるとしたら、大槌の小中一貫校という構想がどういうものか。候補地として大槌高校の用地が関わるのかどうか。
【義務教育課長】
県の方で指定して、小中一貫についての研究を進めているところは、前沢と普代である。
大槌については、情報提供をいただくという程度の状況である。その中で話されている中身についてだが、大槌町の小中一貫教育については、これは現在大槌・大槌北・安渡・赤浜の4小学校を統合して、そして大槌中と統合した小中一貫校を15年度にスタートさせたいという意向である。中身についてだが、現在の学習指導要領の学年で定められた教育課程については、現行の制度を踏襲するという方向付けである。ただし、この中で、ふるさと科という学科を創設し、これは道徳とか特別活動、普通の教科、総合的な学習の時間、そういったものの中から少しずつ時間をとって、ふるさと科を創設すると。それについては、現在の現行の学習指導要領を逸脱する部分が若干あるので、国の特例措置の申請の方向で動いていると聞いている。
【学校施設課長】
大槌高校のグラウンドに校舎と体育館を整備したいということで、大槌町側からは事務的な説明を受けているところである。
【斉藤委員】
被災した小中学校の再建は急務中の急務だと思う。同時に、小中一貫校のあり方というのは、全国的にはかなり問題になっている課題で、震災のどさくさにまぎれて進めるべきでないと。もっと住民や父母も落ち着いたところで議論を進めるべきではないかと思っている。だいたい住民がどこに住宅を建てられるのか、まだ分からない状況である。そういう意味でいくと、特に小学校というのは、今回の震災の場合でも避難場所になり、地域のコミュニティの拠点である。小学校のあり方というのは、規模の大小に関わらず、地域にとっては、再生にとっては本当に重要な課題だと私は認識している。そういう意味で、震災のどさくさで小中一貫教育を進めるべきではないのではないか。慎重に、住民が理解して、協議して、一歩一歩進めるということが重要ではないか。
【義務教育課長】
こちらに入っている情報によると、現在学校の方では、カリキュラムの作成についていろいろ検討していると。そしてその後に試行期間を設けながら、そしてさらに保護者・地域の方を入れた学校運営協議会等を立ちあげながら、そういう形で住民合意を図りながら小中一貫教育については進めていきたいと聞いている。
【斉藤委員】
大槌の場合は、現行の制度の枠内でやるという話だった。おそらく6−3制のことを言っていると思うが、盛岡の土淵中学校の場合には、校長1人である。小学校の位置づけはどうなのかと。小学校の卒業式はやるといっている。小学校と中学校を新しくつくって、それぞれグラウンド・体育館があるのかというとそうではないと。今の進め方というのは大変危惧している。
大槌の場合は、校長先生はどうなるのか。小学校・中学校の関係はどういう議論になっているのか。
【義務教育課長】
校長の位置づけだが、大槌については、現在のところ把握はしていない。こちらに入っている情報によると、当然学年編成として4-3-2の区分けを考えながらいきたいということは聞いている。ただしこれは、小学校と中学校の現行の区分けを大事にしながら、その中で指導の過程で、ホップ・ステップ・ジャンプという1つの区切りとしてやっていきたいと聞いている。これは先ほど申し上げた通り指導要領の枠内でやっていくと。
【斉藤委員】
4-3-2体制というのが全国的に流行ったやり方なのだが、この区分けには教育学的な根拠がない。全国的にもそれは証明されていない。そして、小学校5年6年中学校1年という分け方をする。そこに何の合理性があるのか。結局、中学校のテスト教育を小学校に持ち込む、教科担任制とかいろいろあるが、そういうことが決して全国でやっていて成功していないというのも実態なので、盛岡は平成23年から、連携型なのだが、全小中学校で小中一貫教育をやると。聞いたら、まともな議論をしていないと。どういう議論を通じてそういうことを出したのか。去年聞いたときに、有力な小学校の校長先生もそのことを知らなかった。こんなことはありえないと思う。教育のあり方について、いろんな議論を通じて、それが本当にいいものだということでやるのなら合理性があるが、どこかで少し流行っているからやってみようというやり方では、子どもたちを動揺させることにしかならない。この問題はぜひ把握するところは把握してやっていただきたい。
この間、前沢の小中一貫教育を視察してきた。結局、数学と算数の先生を2人加配しているだけである。小中一貫教育の実態はほとんどなかった。説明したのは、市の教育委員会の担当者だった。だから学校として小中一貫教育取り組んでいる、モデル学校でそうだった。岩手県もあまり議論もしないで広がりつつあるが、もう少しこういう問題についてはよく把握してやっていく必要があるのではないか。
・心のサポート、学校の放射線対策について
【斉藤委員】
7月26日に復興本部委員会議が開かれた。そこで県教委から、教育委員会に関わる復興状況も報告されている。9項目にわたり報告されているが、2つお聞きしたい。
児童・生徒の心のサポート、この間の調査によれば、県内全体で15%ぐらいの子どもたちがストレスを抱え、きちんと対応しなければならないとなっていたが、この子どもたちに関わる心のサポートはどうなっているか。
もう1つは、学校における放射線測定、除染の実施状況について。この間県南を中心にやられていると思うが、いま県教委として把握されている、除染が必要な学校はどこまで取り組まれているのか。
【生徒指導課長】
心のサポートの今年度の取り組み状況だが、昨年度で大きかった点について。大きな柱、教員のスキルを上げる教員研修と、スクールカウンセラー等の人的配置、状況把握のための心と体の健康観察の実施という大きな柱は今年度も引き続き実施させていただいている。特にも、昨年度来課題となっている、かなり生活環境の変化により、子どもたち・保護者のニーズが変化してきているという状況を今年度は受け止め、教員研修にあっても、全県同じような研修ということよりも、多くのメニューを準備させていただいて、各学校や市町村教育委員会、地域でその中から選んでいただいて、そこに講師を派遣するような体制を今年度新たに構築したところである。人的配置に関わっては、通常のスクールカウンセラーの配置に加え、昨年度来配置している巡回型カウンセラーを5名から9名に増員して対応している。県立学校3つ、公立幼稚園6つについては、昨年度と同様に県内3つの大学の先生方の協力をいただき、カウンセラーや臨床心理士等を派遣させていただいている。
【スポーツ健康課総括課長】
汚染状況重点調査地域内の県立学校の除染についてだが、市町の考え方と合わせて除染をするということで進んでいる。現在、前沢めいほう支援、一関せいめい支援、前沢高校、一関二の4校で除染する方向で事務を進めている。
小中については、市町村で実施しているということである。
・盛岡工業高校の寮の閉鎖について
【斉藤委員】
盛岡工業高校の問題を以前も取り上げたが、寮が閉鎖になる。ところがクラブ活動は毎日ある。朝6時に出て、夜は8時過ぎに帰ってくると。汽車賃は往復で一日2800円である。スポーツが盛んな学校ほど、夏休みといってもクラブは休みではない。こういう寮のあり方、例えば食事を出せないなら自炊で開放するとか、そういうことが検討されないものか。子どもたちは寮が閉鎖されても通う。通わざるをえない。この現状と対応についてお聞きしたい。
【学校施設課長】
個別の学校の部分もあるので、よく現状を把握させていただいた上で、内部目標としたい。