2012年8月2日 県政調査会
岩手銀行・高橋頭取に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
6ページ7ページのところで、頭取さんが285社のサポートをしてきたと。大変積極的な取り組みだが、お話では6割を超える企業が再開と。残り4割というのはどういう状況になっているのか。
二重債務の解消で、県の復興機構がつくられ相談センターもつくられた。7月末現在で、債権の買い取りは13件にとどまっている。相談企業数が295社というので、四千数百社が被災しているわけだが、新聞報道でも「あまりにも相談件数が少ない、債権買い取りが少ない」と。せっかくつくられた機構が十分な役割を果たしていないのではないか。相談センターの主力は金融機関のOBで、ある意味でいけば、金融機関の姿勢も問われているのではないかということもあるのだが、二重債務の解消という新しい制度、これを本当に生かすためには、どういうことが必要なのか。銀行としての役割・使命を教えていただきたい。
3つ目に、被災者にとって住宅ローン、これも二重ローンである。1年ぐらいは返済を免除・凍結してもらったと。しかし今返済が始まっており、義援金とか災害弔慰金で一年分を払ってしまうと。そしたら新築の資金もなくなってしまうという事態がすでに起きているが、実は住宅ローンも、私的整理ガイドラインというのがあり、二重債務をそれなりに整理するものがあるが、これについては県内で1ケタ台もない。おそらく5件ぐらいではないか。これは買取ということではなく、話し合いで解決するということなので簡単ではないが、しかし本当に人命も財産も仕事も失ったというのが津波災害の特徴で、そういう今回の災害を考えれば、こうした住宅ローンを解消する制度ももっと活用されるべきではないか。債権は銀行が持っているわけだが、こういう住宅ローンに対して金融機関はどういう対応をしているのか。そしてこの二重ローン解消を進めるためにはどういうことが求められているかお聞きしたい。
最後に、3月期末決算が出て、新聞報道では、岩手銀行も純利益が回復と。48億円ぐらいの純利益で、ほとんど震災前に戻ったと。これは復興交付金などお金や、被災者のさまざまな義援金などの預金ということが多いと思うが、新聞報道では、中小企業向けの貸出金は県内は微減で、仙台市など県外が伸びたとなっている。いわば預金は増えると。しかし貸し出しは減るという、これはいかがなものか。日経グローカルでも指摘されていることだが、地元に回らぬ復興マネーということで、復興が被災地で進んでいないということがあるかもしれないが、こうした資金を特に地元の金融機関がこういう震災の中でさらに大きな役割を果たす必要があるのではないか。
【高橋頭取】
285社の中の6割が事業再開を果たしたと。残りの3割強については、今事業の再開に向けて歩み始めているということである。ですから、時間の問題で次の3割強の事業者も次のステップ、つまり事業再開を果たすところに向かうのだと思う。残りの1割弱というのが、事業を辞めたり、業種転換をしたりというような割合になっていると理解していただければと思う。
岩手産業復興機構の活用が少ないということだが、これはたしかに我々今取り上げているのも、7件の約5億円という実績である。しかし、いまさらに18件に対応中ということで、徐々にスピードが上がってきている。それから、なぜ今まで多くの案件があがってこなかったかというと、1つにグループ補助金の存在が非常に大きいととらえており、我々も復興資金は433億円ほど3月末時点で出しているが、そのうちの7割が運転資金である。設備の本格的な回復というのはこれからですし、そのうちの4分の3はほとんどが補助金によりまかなわれる事業者が多いと見ている。したがい、なかなか設備としての資金ニーズが高まってこない、我々は積極的に対応しようとしている。
中小企業向けの貸し出しが微減している、あるいはなぜもっと伸ばすというような努力が不足しているのではないかということだが、いま話した通り、グループ補助金の存在があるし、もう1つは都市計画の遅れでなかなか事業の再生が進んでいないということが背景にあると思う。したがい、今後徐々にそのような解消が図られることにより資金ニーズも高まってくると考えている。それから、実は、政府系金融機関が非常に震災以降残高を伸ばしているということがある。これは全国の地方銀行協会で問題にしているが、民間の金融機関にとってはとても呑めないような低利の資金を出していると。やはり我々としては、政府系金融機関というのは、民間の補完という役割をぜひ果たしてほしいと思っているが、そのような政府系金融機関のパフォーマンスが非常に大きく出ているために、我々としてはそれに負けて残高が伸びないというところにもつながってきていると考えている。
住宅ローンの問題だが、なかなか沿岸地域で新しい住宅が進んでいないということもある。二重ローンという問題は、新たな家を建てようとしたときに従来の債務が残るということで、たしかに沿岸の方の中で、私が意外に思ったのは、住宅ローンに浸かっている方は少なかった。そういう事情があって少ないと。それから、岩手県の県民性というか、借りたものは返すという考え方の方が多く、山形県と岩手県というのは、住宅公庫の延滞率が一番低い。これは、借りたものを返すという気持ちが強いと思っているが、ただそれとは別に、私的整理ガイドラインというのが、金融庁からも口酸っぱく言われているので、これもきちんと対応していきたい。