2012年9月4日 商工文教委員会
被災した中小業者の再建に関する質疑(大要)
【経営支援課総括課長】
陸前高田市の被災中小企業事業再開支援補助金は、対象事業に入っており、これについては、当初一番最初のグループ補助金から今年度に入り、4月5月8月と、予算の市町村等の補正予算の時期を考慮しながら、市町村に意見を求めながら順次拡大してきている。特に、震災復旧・復興関連で行っている市町村事業については、そういったものは対象事業として拾うようにしているので、必要なものは取り込まれているものと考えている。
【斉藤委員】
あとは全体として復興が遅れて、雇用を全部戻せないという状況があるので、復興そのもののスピードを上げる以外にないと思う。
・大卒者の雇用について
【斉藤委員】
雇用の問題で、最近文科省の学校基本調査結果が出され、全国の大学を卒業した卒業生の中で、12万8224人22.9%が「安定的な雇用についていない」と。アルバイト程度とか、就職も進学もしていないとか、こういう発表があった。岩手県内ではどのぐらいになるか。
【雇用対策課長】
県内各大学・短大等の合計数字は把握していないが、県立大学に限って申し上げると、今年の春4年生の学部卒業生のうち、卒業生420名のうち就職希望者376名で、正規の形での就職をしていない卒業者は23名となっている。
【斉藤委員】
県立大の場合は23名と。ぜひ全体像を把握されるようにお願いしたい。
というのは、政府が自殺総合対策大綱を出したのだが、1つの目玉が若者の自殺である。まともな仕事に就けずに自殺をしたというケースも少なくないということが指摘されている。20歳〜29歳の2010年の自殺者は3002人、全体が3万人なので10%は青年の自殺と。そして15歳〜34歳の世代で、死因の1位を自殺が占めているのは先進7カ国で日本だけと。死亡率も飛びぬけて高い。これは河北新報の社説だが、「希望創出社会への警鐘」ということで、そういう今の深刻な雇用、就職難というのがそういう1つの背景になっていると思うので、ぜひ県内の大学の状況を把握して、関係各課とも連携した対策を強めていただきたい。
・被災中小企業の再建状況、グループ補助金について
【斉藤委員】
被災した中小企業の再建状況、再建の中身は直近でどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
6月に商工団体を通じて調べたものが直近では新しいデータで、再開状況は71.2%である。
9月時点でも改めて調査を今しているところなので、新しい数字については後日紹介したい。
【斉藤委員】
東日本大震災復興計画取り組み状況に関する報告書、岩手復興レポート8月版というのが出た。そこでは、ちょっとデータは古いが、事業所の復旧状況というので、ほぼ震災前の状態に復旧したというのが19.2%、およそ半分以上復旧したと回答した事業者は39.5%と。このデータでは71.3%と少し違うが、7割は事業を再建した、この中には仮設店舗も入っていると。しかし震災前までのレベルに達したのが19.2%で、半分以上というのが39.5%ということは、6割は震災前の半分にも達していないと。ここが被災事業者の深刻な実態ではないか。だから雇用も半分も戻せないということになっているのではないか。
その点で、どう最大限再建を支援するのかということと、再建の中身を早く震災前までの状態に取り戻すような支援を強める、この二正面でやる必要があると思うがいかがか。
【経営支援課総括課長】
具体的な中身となると、やはり現地の商工団体なり市町村などが支援していくものかなと思う。岩手県復興相談センターが仮設の店舗をまわり、アンケート調査をしている。364件回収し、どういった課題があるかを聞いているが、やはり売り上げが回復していないということも挙げている。また仮設から本設に移行する意向があるかということについて、多くの方々が移行したいという意向をもっている。それから資金の問題も出てくるが、仮設に入って一時的にある程度投資は防げたということもあるが、借入自体については、大半の方が新たな借り入れはしないと。ただ、本設に移行するときにちゃんと融資を受けられるかどうかを心配されている。こういった傾向を見ても、委員ご指摘の通り、まず赤字でも一時的でも復旧して再開したとしても、やはり事業が本格的に再開するためには、例えば販路があるとか、地域での経済状況が回復しているとか、そういったことが必要になっていくかと思うので、事業者の復旧、地域経済の復旧ということが両方大切と認識している。
【斉藤委員】
業種別に見ると、水産加工業の復旧状況というのが相対的には遅れており、震災前まで戻ったというのが14.7%しかない。水産加工業の復旧状況はどうなっているか。そしてグループ補助金はかなり水産加工業を主体にやられたと思うが、順調に再建されているのかどうか、課題は何なのか。
【産業経済交流課総括課長】
24年6月現在、対象が従業員4人以上の工業統計調査の対象であるものだが、沿岸地域に事業所の数だと156事業所あるが、この中で何らかの被害を受けた事業者は138事業所88.5%になる。このうち、6月末現在で再開済み、事業をスタートした等の回答があったのが87事業所55.8%、まだ再開には至っていないが今後再開したいという事業所が26事業所である。再開済は23年9月には32件だったが、6月末で87件なので55件がさらに再建できたという状況である。
グループ補助金の関係では、全部のグループ補助51グループあるが、水産加工のものは17グループ、ちょうど3分の1で補助金の申請額は189億円である。
【斉藤委員】
グループ補助金というのが、4分の3事業費補助なので、今までにない画期的な制度だったわけだが、残念ながら希望・申請に対して枠が小さすぎるということが最大の問題だと思っている。7月末に第4次がなされ、申請がいくらで決定されたグループ・企業・額はどうなっているか。
【経営支援課総括課長】
岩手県の第4次の公募では、申請グループが43グループ、申請金額が補助金ベースで255億円、採択されたグループは7月末と8月の末に追加で採択され計21グループが採択されたと。金額で140億円である。企業数は、申請段階で929社、採択されたのは456社である。
【斉藤委員】
第4次でグループ数でいけば半分以下だが、額でいけば半分ちょっと、企業数でいっても半分以下である。被災した中小業者が一番あてにしている、もっとも効果的な支援がグループ補助である。しかし第4次をやっても申請の半分しか認められないというのは、こんなやり方はないと思う。復興のスピードが問われているときに。
先日、経産省の副大臣に会って要請してきた。大臣もグループ補助は継続すると言っている。継続するのだったら今の国会中に補正を組んで早くやると。遅くなったら今年のものにならない。事業を決めてから申請に何ヶ月もかかって決定にも何ヶ月もかかると。年を越してしまう。いま事業を再建できない事業者は1年半仕事ができていない。本当に切実である。せっかく継続するというのだったら、早く申請に見合った規模にしていくということが必要だと思うが、県はそういう風に強く求めているか。そして今回決定されなかったグループ・企業の計画に、問題があるから認められなかったというケースはほとんどないと思う。いわば枠があって入らなかったということが実態ではないかと思うがいかがか。
【経営支援課総括課長】
国に対する要望については、これまでも適宜要望しており、委員ご指摘の通り、申請されるグループが多数あると。たしかに復興に有効な補助金であるということで、事業の継続・増額、それから要件の緩和ということを挙げている。予算の枠ということだが、これは公募型の競争する資金であるので、どうしてもやはり公募された中から、復興事業計画というのを出していただいているが、その事業の中身、計画の中身を見て、その善し悪しというか、復興にあたってそのグループが地域の経済に寄与する効果というものを判断している。予算もあるが、その事業計画の中身と両面でやはり認められるかどうかというところがあると思う。
【斉藤委員】
申請の半分しか認められていない。これは復興事業なのだから、通常時の公募型競争の事業ではない。被災した事業をどうやって復興させるか、再建させるかというときに、それが半分も対象にならないような対策でいいのか。政府も必要性を認めて「継続する」と言っている。危険なのは「これが最後」と言っており、最後にしてもらっては困るが。
本当にやっと第4次で商店の方々がグループを組んだとか、中小の人たちも零細の人たちもグループを組んで申請して認められるケースが出てきた。やっとそういう規模まできた。これからが本番といってもいいぐらいである。そういう立場で、ぜひ県が強く、早く、必要な規模でグループ補助を実現させていただきたい。
このグループ補助も、期限が決められたら困る。田老漁協からも聞いたが、水産加工施設をグループ補助をもらって造るのだが、土地利用計画がまだ正式に決まっておらずできないと。今年度中来年度中にできるかどうか。この期限というのも、津波被害の特殊性から、完成するまで認めるということをしてもらわないといけないのではないか。
【経営支援課総括課長】
グループ補助金の考え方だが、たしかに予算も限られているということだが、当然増額については要望していくということである。実は大臣も、計画の中身のブラッシュアップをするようにという指示をされているので、それを受けて我々も申請される事業者・グループについてはそういった支援もしていきたい。
・被災資産修繕費補助金について
【斉藤委員】
この実績について。市町村が何を困っているかというと、県はいつまでやるのかということである。これは今年限りではなく、平成27年28年まで延長してやってほしいと。いわばこれから土地かさ上げしたり高台移転したり、そこで商店を本設するなどとなる。今回の復旧というのはそういうものである。今すぐ本設再開できない事業者もいる。だったら岩手県の事業も、来年再来年やるのかどうか見えないことではなく、やはり一定の土地区画整理だったり高台移転だったり最低5年はかかる。だから一定の長期的な展望をもって取り組む必要があるのではないか。
例えば宮古市では、去年修繕費補助金に取り組んだが、去年乗れなかった事業者がいたと。今年は市独自にやる予定だという話を聞いた。やはり津波災害ですぐ立ち上がれる人、様子を見ながら土地利用計画が定まってからやる人さまざまいるので、一定の長期の展望をもって取り組む必要があるのではないか。
【経営支援課総括課長】
委員おっしゃる通り、修繕費については、昨年度制度を立ち上げたが、被災した事業者がすぐ復旧することで地域の経済・雇用を守っていくということを考えたものだが、今般の復旧事業については、まったく資産を流出・全壊してしまった方々を復旧していただこうというものなので、考え方からすると、できるだけこの補助金を使っていただいて、元の事業所を復旧していただくということが狙いかなと思う。
市町村からも実は要望を聞いており、事業の継続をということは聞いている。当然予算の裏付けというものも必要になるわけだが、いずれ市町村の要望も聞きながら対応していきたい。
現状だが、8月末の執行状況は、24年度分で、小売業・製造業合わせて103件、県と市町村の補助金を合わせて2億9982万円余となっている。当初もうちょっと出てくるのかなと思っていたが、やはり地域によってはまだ土地利用の計画が定まらないというようなことで、なかなか申請に至らないというところもあるように感じられるので、こういったことも勘案しながら予算の編成にあたっては検討していきたい。