2012年9月4日 商工文教委員会
いわてディスティネーションキャンペーンの成果に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
DCの成果については、東日本大震災津波の1年後という状況の中で、22年度比107.9%という観光客の入れ込みに成功したということは大変貴重で重要な成果だったと思う。その背景には、平泉の世界遺産登録やタイミング良くDCが行われたということがあると思う。
お聞きしたいのは、東北六魂祭のイベントの実績が含まれないというのはなぜなのか。これは5月26〜27日に行われ24万3000人と。これは特筆すべき取り組みだったと思う。これがなぜ含まれないのか。
それから、平成22年度当期比で増加した主な観光地というのが出ているが、14ヶ所で調べたのなら14ヶ所をきちんと明らかにすべきである。22年度比で回復できなかったところもあるわけだから、それはそこでしっかり分析しなければならない。増えたところを見ると、盛岡周辺がほとんどない。石川啄木記念館がわずかに増えているが。盛岡周辺はあまり成功しなかったのかという感じを受けるが、14ヶ所については是非資料を出して、回復できなかったところはなぜなのか。盛岡周辺はどうだったのか。
【観光課総括課長】
東北六魂祭を含まないということだが、東北六魂祭に限らず14ヶ所の各観光地点にお客様がどれだけ来てるかというのをとったものなので、いろんなイベントが各地で開かれているが、それはこの14ヶ所の中には入っていないので、含まれていないと。単にデータのとり方の問題なので、DC関連のイベントに来た実績は資料で紹介している。
この後10月の上旬までには、観光客の入り込み数県全域のものが取りまとまる予定だが、当然それにはイベントに来たお客様も含まれてくる。
14ヶ所で増えたところ以外も明らかにすべきということだが、入り込みが落ち込んでいるところを明らかにすることにより、なかなか賑わいのないところにはお客様が行きづらい気持ちになることも懸念されるもので、マスコミの取材に対しても、増えたところはお答えできるが、落ち込んだところはそれで逆に風評被害をつくってもよくないので、勘弁してほしいということで答えている。
【斉藤委員】
そんな志の小さいことではいけない。増えなかったところは増えなかったところなので、きちんとした全体像ではない。六魂祭というのはまさにDCと連携した行事だったと思う。14ヶ所のものを出していただきたい。そんなことを言っていたら風評被害以上に回復しない。
それから、盛岡周辺はどうだったのか。もっとリアリズムで。大震災津波があり、ある意味では減って当たり前の中で頑張ったわけである。そういう災害の中でも被災地はこうだったとか、これは本来前向きに見れるものである。だから冒頭私は実績を高く評価した。明らかにするものは明らかにしていただきたい。
【観光課総括課長】
14ヶ所のサンプル調査においては、各観光地の任意のご協力で調査をしているものであり、他のマイナスのところも含めて公表していいかどうかは、個別にあたって、差し支えないということであれば出したいが、任意で調査に協力してもらっていることなので、今のところはプラスのところだけ報告したい。14ヶ所のうち6ヶ所出しているが、程度の差はあるが、残りの8ヶ所は減っている。
盛岡周辺ということで申し上げると、県央部で4ヶ所データをとっており、石川啄木記念館以外では、程度の差はあるがマイナスになっている状況である。
【斉藤委員】
全体としてはこういう状況の中で7.9%増やしたのは素晴らしい成果だったと。しかし盛岡のようにそこに十分乗り切れなかったところもある。石川啄木記念館は良いのだが、そもそもの実数は少ない。わずかに増えた程度であまり全体に影響しない。県都盛岡はどうだったのかというのは、岩手の観光の中心課題ではないか。そういうことが示されないのはおかしい。総括にも教訓にもならない。
そういう意味で、例えば平泉は54万5000人211%で倍以上増やしたということになる。ただリアルに見ると、春の藤原祭の1週間で37万5000人である。だから圧倒的にはこの1週間で来ている。そして平泉効果が残念ながら宿泊は花巻まで効果があったらしいが、盛岡や県内までは十分波及されていないのではないかと受け止めざるをえないがそれはいかがか。
【観光課総括課長】
観光客の入り込みの状況、宿泊の状況については、10月の上旬までには全体の数が取りまとまるので、その中で盛岡周辺という話があったが、エリアごとの状況として公表できるかどうかは検討したい。
先ほどご答弁申し上げたのは、DCが始まって早々の段階から花巻までは相当のお客さんが来ているというのがはっきり明らかになったが、5月の後半、東北六魂祭の辺りから6月にかけては盛岡地区にも相当のお客さんが入り込んでいるという風に聞いている。盛岡地区に波及していないということではなくて、特に後半辺りは相当程度の効果があったと聞いている。
【斉藤委員】
資料の最後のところで、「おもてなし力が向上、被災地復興支援に寄与」ただし「誘客面では震災前の観光客入り込み数に達しなかった観光地も見られる」と。現段階でこの問題をどのように分析しているか。
【観光課総括課長】
14ヶ所のサンプル調査ということであり、先ほど申し上げたような事情もあるので、なかなか十分に説明が尽くされない点は申し訳ないと思うが、増加した6地点以外の8地点の状況で申し上げると、屋外の観光施設が含まれており、うち4月5月の悪天候の影響を相当受けたと思われる観光地が3ヶ所ほどある。そういった悪天候以前に、沿岸部の観光地も含め、条件的になかなかお客様を増やせない現状にあるところが3ヶ所ほどある。そういった現状だと考えており、特に震災前の水準を回復できなかった観光地については、今後展開するいわてDCありがとうキャンペーンの中で少し重点的にフォローしていきたい。
【斉藤委員】
4月から6月は全体とすれば平成22年度を超える観光入り込み客数だったと。しかし地域的には増えたところと回復できなかったところもあるということなので、やはり全体として波及させる知恵を考えていかなくてはならない。
その際に、今後相乗効果という風に資料では出ているが、仙台・宮城のDC、秋田DC、私は黙ってれば相乗効果以上にいわてDCの成果を宮城とか秋田に引っ張り込まれる可能性の方が強いと思う。だからこの4月〜6月のDCの成果をどう継続発展させるかというのは、並大抵のことではない。それは皆さんも共通して強調していることだと思う。だからそういう点で本当に真剣に知恵を出して岩手ならではの魅力、そしてそのために必要な改善点を明らかにして取り組むべきだと思う。
それで、復興応援バスツアー、教育旅行、これは1つやはり岩手の戦略的課題になるのではないか。復興応援バスツアーだが、おそらくこの間は日帰りツアーにならざるをえなかったと思う。盛岡から出発して帰ってくるので4時間かかるので。それはそれで継続していただきたいし、しかし宿泊施設が7割まで定員で回復してきたということなので、これからは一定程度宿泊を含めたコースも組めるのではないか。これは今東京や関西に行ったら大震災津波のニュースはほとんどない。大震災は終わった、復興は終わったと圧倒的に思わされている。だからそういう意味では、岩手から発信しないと復興事業も進まない。同時に、今度の大震災というのは数百年から千年に1回と言われる大災害で、そしてこれから東海・東南海・南海連動地震で32万人の犠牲が出るのではないかと言われ、逆にいけばこの震災津波の教訓は、本当にこれから生かされなくてはいけないというもう1つの大きなものがある。そういう意味で、今回の震災・津波というのは何だったのかと。これを知らせることは被災県としては特別の意義をもっている。そして百聞は一見にしかずで、被災地に足を運んで認識を新たにする。そして多くの人たちは復興を応援したい、協力したいという気持ちをもっている。かなり戦略的に復興応援ツアーをいろんな形で展開する必要があるのではないか。それは文字通り相乗効果をきたすものだと思う。岩手でなければ果たせないそういう観光にもなるのではないか。先ほどはそのための語り部ガイドの研修もやりたいという話だったので、本格的な体制・中身でやっていく必要がある。
教育旅行については、8月29日付の新聞だったが、教育旅行の誘致で、県の観光協会が東京・北海道・大阪に誘致活動をしていると。新聞報道だと、今までは約20万人前後だったと。それが昨年は13万人台に落ち込んだと。これはどこで減ったのか。13万人台、それでも教育旅行がやられたということは大変な成果だったと思うが、どこで回復すればこれをもっと増やせるのか。教育旅行についても増やすチャンスだと思う。そういう意味で、これは戦略的な課題で、岩手ならではの中身として取り組む必要があるのではないか。
【観光課総括課長】
復興応援バスツアーだが、今回3コース運行したが、これを早ければ年度内、新年度にかけて6コースから7コースに拡充していこうと考えている。この想定しているバスコースがその通り運行されることになると、内陸と沿岸とを結ぶ横軸の二次交通がかなり充実してきて、県北部から県南部まで横軸ができると考えているので、そういったものを使いながら、震災を風化させずに復興につなげるような取り組みをしていきたい。来年度にかけて宿泊施設が復活してくるので、ツアーコースの見直しは随時行い、宿泊を含むものについても検討していきたい。
教育旅行だが、昨年度震災以降の影響により、北海道、これは主として中学校の入り込みが延べ19校にとどまっており、前年比で1033校98.2%の減だった。一方で、福島県から、従来福島県に行っていた修学旅行が行き先振替でこちらに来たということで、宮城からの入り込みが延べ1513校前年比1049校増で226.1%増となっている。我々としては大口である北海道を何とか回復したいということで先ほど申し上げたような取り組みをしているが、これは行き先振替で来た分についても、これはあまり露骨にやるわけにはいかない気もするが、せっかく岩手に来てくれているわけなので、離さないように現地での受け入れも含めてしっかりやっていかなければならないと思っている。震災の関係では先ほど紹介したが、すでに県内外の小中高33校4800人がこの語り部ガイドも含め、震災・防災教育という観点で、入ってきて現在も増えているところなので、これをなお一層増やしていけるようにしていきたい。
【斉藤委員】
世界遺産・平泉の効果を盛岡・全県にどう波及させるか、連携させるか。これに成功していないと思う。簡単ではないと思うが、せっかくの世界遺産、この魅力を岩手県の自然や文化とどう結びつけて県内に波及させるのか、この知恵を出さないと仙台に負けるし金沢にも負けてしまう。私も明確な答えを持っているわけでもないので、それだけに知恵を結集して、戦略的な課題としてこの平泉の効果をどのように県内に広げていくか、いろんなところから聞いてやっていただきたい。そうでないと平泉止まりになってしまう。
教育旅行の問題で、原発事故の損害賠償で100%みるという方向が出た。観光については7割損害賠償の対象となる形が出た。岩手が原発・放射能事故によりどれだけの影響を受け、観光施設の関係が損害賠償しているのか。教育旅行の場合はどのぐらいが損害賠償請求ができるのか。
【観光課総括課長】
平泉の効果だが、DC期間中の6月1日から6月20日まで、平泉を訪れた観光客894人対してアンケート調査を実施した。全体の9割が県外客であり、県外客の状況で申し上げると、宿泊先は県内宿泊がもっとも多くて49%、県外宿泊のみの方が27%、日帰りの方が24%であり、県内の宿泊先としては、花巻・一関・平泉・盛岡・北上という順で多い。立ち寄り先だが、平泉以外にどこに立ち寄ったかということだが、県内が62%、県外が21%、立ち寄り先なしが17%で、県内の立ち寄り先としては、一関・花巻・盛岡・宮古・奥州となっている。県外を含めると一関の次が仙台・松島・花巻・盛岡となっている。
今後の課題としては、各県内宿泊、県内の回遊を一層強化していくというのは委員ご指摘の通りだが、特に盛岡にいかに呼び込むかということも大事な観点だろうと思っている。
平泉効果の波及ということだが、平泉と合わせてここに旅行したいということで、お客様に選んでもらわないことにはそこには来ないので、そういったものがしっかりあって初めて平泉に行ったお客様が立ち寄るということだと思うので、各地域において選ばれる観光地づくりをしっかりやって、それを切れ目のない宣伝・誘客活動によってやっていきたい。
原発・放射能にかかる県内の商工観光業者の被害額だが、団体等を通じた事業者アンケートで24年3月現在、145社19億5200万円となっている。観光関係は11億3500万円となっており、賠償請求済みは商工観光全体のうちの14社と聞いている。教育旅行の関係だが、原子力損害賠償紛争解決センターというところが、総括基準としてそういった数値を示したということだが、原子力事故により被害を受けた方に対する公正かつ早期の救済を図るために、原子力事業者に対する賠償請求にかかる紛争の和解を仲介する裁判外の紛争処理機関と承知している。この示された総括基準というのは、和解の仲介を進めていくなかで、多くの事案に共通すると思われる問題点に一定の基準を示したものと承知しており、これは和解の仲介に際して参照されるものと承知している。したがい、東電がこの総括基準に基づいてその通り賠償するかどうかというのは、保障されたものではなく、この総括基準に対して、県内では岩手県旅館ホテル組合が一番大きな観光被害を受けた団体ということだが、まだどのように対応するかは決まっていない段階だと聞いているので、当面その推移を見守っていきたい。