2012年9月6日 臨時県議会
議案に対する質疑(大要)
・釜石市平田地区での災害公営住宅の新築工事の請負契約について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
議案第1号、第2号は、釜石市平田地区での災害公営住宅の新築工事の請負契約に関するものであります。
第一に、二つの工区に分けた理由は何でしょうか。
第二に、A棟では、1DK14戸、2DK33戸、3DK14戸、1DK車椅子対応2戸、B棟では、1DKは無く、2DK35戸、3DK24戸、2DK車椅子対応4戸、合計126戸となっていますが、この根拠は何でしょうか。駐車場の確保台数は何台でしょうか。
第三に、県が管理する災害公営住宅の入居基準・入居方針はどうなっているでしょうか。今回建設される災害公営住宅には、地元平田地区の被災者の入居が優先されるのでしょうか。
第四に、落札額ですが、第1工区は税抜きで7億8300万円、落札率は97.85%、第2工区は落札額6億1000万円で落札率99.60%となっています。入札に参加した業者・グループは第1工区で2社、第2工区で2社のみとなっており、それぞれダブっており、実質3社の入札参加となっています。談合が疑われても仕方がない状況ですが、どうしてこういうことになったのか。その要因・背景、建設業者の状況を含め示していただきたい。
【県土整備部長】
二つの工区に分けた理由だが、工区を分けることにより、契約ごとの施工面積が小さくなり、工期が2カ月以上短縮できる。また、受注機会を増やすことや工事規模が大きい場合には、施行者が限られる可能性があることなどを考慮して工区を分けたものである。
災害公営住宅の住戸の構成割合だが、仮設住宅の供給実績や入居状況を考慮し、1DKを10〜15%、2DKを50%、3DKを30〜35%、車椅子対応を5〜10%程度として、立地市町村と協議によりきめることとしている。なお、駐車場は各世帯1台に来客用10台を加え、合計136台の計画としている。
県が管理する災害公営住宅の入居基準・入居方針についてだが、入居が可能な者は、震災により住宅を失った者であり、現に住宅に困窮していることが明らかであることなどが要件となる。その他の詳細については現在検討を進めている。また、今回建設される災害公営住宅にかかる地元平田地区の被災者の入居については、平田地区といった限定的なエリアの被災者の入居を優先することは現在のところ考えていないが、かなりの割合を市町村内の被災者とする方向で市町村と協議を進めている。
【総務部長】
入札結果の要因について。具体の入札手続きの過程におけるそれぞれの事業者の事情や応募理由が重なり、相まって結果に至っているものであり、入札を執行する側としては、あくまでも推論にとどまらざるをえない部分があるが、そうした前提でお答え申し上げます。
落札額についてだが、国や民間による発注を含め、災害復旧のための大規模な工事がすでに多数発注されていることから、生コン等の資材や技能員の確保が厳しくなっており、これらに伴い単価の高騰傾向も見られるところである。このため、建設業者が入札参加に慎重になっている面がある上、応札した業者においても一定の利益を確保するべく、事前公表している予定価格に近い額での入札額になっているものと考えられるところである。
・釜石港須賀地区港湾災害復旧工事の請負契約について
【斉藤議員】
議案第4号は、釜石港須賀地区港湾災害復旧工事の請負契約に関するものであります。
第一に、鹿島道路と伊藤組のJVが落札しましたが、1社が入札辞退し、入札参加が1社のみでした。これで競争入札と言えるのか。なぜこうした事態となったのか。
第二に、落札額は11億1700万円で、落札率は99.96%となっています。これまででは考えられない異常な高率な落札率ですが、なぜこうなったのか、その要因、背景を含めて示されたい。
【総務部長】
一般に入札参加資格要件設定の際には、施工実績等から入札への参入可能者数を把握した上で設定しており、大規模なコンクリート舗装工事であるこの工事においても、JV代表者となり得る者の参入可能者数とJVの構成員となる県内業者の参入可能者数をそれぞれ検討した結果、一定数の参入が見込まれ、競争性が確保されると判断して入札を行ったものである。実際の入札結果としては、参加者が1社のみだったが、この理由としては、資材や技能員の確保が厳しくなっていることや、単価が高騰傾向にあることから建設業者において、入札参加が慎重になった面があったものと考えられる。
落札率についてだが、入札参加者があらかじめ他社の入札参加状況を把握することはできず、応札者数と落札率については、直接関連しないものである。本工事をめぐっても、生コン等の資材や技能員の確保が厳しくなっており、これらに伴い単価の高騰傾向もあるというようなことであり、落札業者においては一定の利益を確保するべく事前公表している予定価格に近い額での入札額になったものと考えられる。
・小本港小本浜地区港湾災害復旧工事の請負契約について
【斉藤議員】
議案第5号は、小本港小本浜地区港湾災害復旧工事の請負契約に関するものであります。
第一に、本間組、梨子建設JVが落札していますが、落札額が9億5600万円で、落札率は95.94%となっています。入札参加は2社であります。これまた低調な入札で高率の落札率となっていますが。なぜでしょうか。
第二に、技術提案評価項目Bの評価の違いで、総合評価が決まっていますがその違いは何だったでしょうか。
【県土整備部長】
技術提案項目Bの評価について、発注者が指定した課題は、ケーソン据え付けにおける施工管理であり、その課題に対する技術提案を入札者に求めたものである。入札者から提出された技術提案が、対策・手法・効果の全てが具体的に示され、かつ効果が確実に期待できる優れた提案かどうかを評価したところだが、落札業者の提案がケーソン製作精度の向上に対して優れたものであったと評価したものである。
【総務部長】
この落札率についても、生コン等の資材や技能員の確保が厳しくなっており、これらに伴い単価の高騰傾向も見られる。特に本工事については、ケーソン製作、据え付けを行う海中工事であり、コンクリートを大量に必要とする、あるいは特別な技術を要することから、こうした要因が大きく働いているものと考えられる。このため建設業者が入札参加に慎重になっている面がある上に、応札した業者においても、一定の利益を確保するべく事前公表している予定価格に近く額での入札・応札になっているものと考えられる。
・資材不足、職人不足の実態、労働者の宿泊施設について
【斉藤議員】
これらの請負契約案件に関わって、生コン不足、骨材不足、職人不足と資材等の高騰が指摘されています。実態をどう把握されているでしょうか。今回の請負契約案件では、資材や労賃などは実態に合った適正なものに算定されているのでしょうか。また国、県、市町村の事業の調整をはかるべきとの声がありますが、なされているのでしょうか。県は、復旧工事が本格化する中で、労働者の宿泊場所の確保が困難になっていることから、宿泊費や宿泊施設の建設費を事業費に上乗せする方向で検討していると報道があったが、どう検討されているのでしょうか。
【県土整備部長】
契約案件にかかる資材、積算等についてだが、沿岸4地域で、国・県・市町村・業界団体が、復旧・復興工事情報連絡会を開催し、生コンや石材などの受給状況について認識を共有し、受給がひっ迫している地域については、季節生コンおよび砕石工場の増産体制の確立、請負工事での仮設プラントの設置、生コン工業組合への仮設プラント建設要請、石材などの県外からの調達などの具体的な対応を行っているところである。請負契約案件の予定価格の算出にあたっては、最新の設計ログ単価や資材単価、積算基準を用い、適切に積算しているところである。また、国・県・市町村による事業調整については、今後本格化する復旧・復興工事を円滑に進めるため、資材調達や大規模土工の土砂流用等について、各発注者間において調整を行うこととしている。
労働者の宿泊については、支出実績を踏まえて設計・変更することができる方針が国から示されており、現在国において具体な運用方法を検討している。なお、宿泊施設の建設費については、国から金融機関を通じた融資制度が示されているところだが、さらなる支援についても、国に対して要望している。
・災害弔慰金等支給審査会の運営に関する事務の受託について
【斉藤議員】
議案第9号、第10号は、北上市と久慈市から災害弔慰金等支給審査会の運営に関する事務を受託しようとするものです。
第一に、県全体の災害関連死の申請と認定、保留・審査中の状況はどうなっているでしょうか。
第二に、県内の災害関連死の原因等をどう把握されているでしょうか。
第三に、審査中の件数が少なくないと思われますが、県審査会の開催状況と審査状況はどうなっているでしょうか。すみやかな審査を行うべきと考えますがいかがでしょうか。
第四に、不認定となった場合の再審査の申請、不服申し立ての仕組みはどうなっているでしょうか。これまでに再審査の請求はあったのでしょうか。
【理事兼復興局副局長】
県全体の災害関連死の申請と認定、審査中の状況については、7月末現在、県内市町村への災害関連死の申し出件数は566件で、うち災害関連死として認定された件数は約281件、認定されなかった件数は72件、審査中が213件となっている。
災害関連死の原因等についてだが、県が受託している災害弔慰金等審査会において、災害関連死とされた事案の分析によると、避難所等における生活の肉体的精神的疲労によるものが約4割、病院の機能停止により十分な医療を受けられなかったものなどが約3割、十分な介護を受けられなかったものや、地震津波のストレスによる肉体的精神的負担によるものがそれぞれ約1割となっている。
県審査会の開催状況と審査状況についてだが、県では審査会を昨年11月から毎月1回開催し、これまでに10回開催してきており、その審査件数は400件となっている。そのうち、「災害と死亡との関連性あり」とされた件数は236件、「関連性がない」とされた件数は92件、審査中の件数は72件となっている。また、審査の迅速化を図るため、県の審査会では本年1月には災害関連死の認定基準を、4月には災害障害見舞金にかかる精神障害の認定基準を独自に策定し、市町村に周知するなど、迅速な処理に努めているところである。
不認定となった場合の再審査や不服申し立ての仕組みだが、災害弔慰金の支給決定について不服がある場合は、市町村に対して、行政不服審査法に基づき、異議申し立てができるほか、行政事件訴訟法に基づき、取り消し訴訟等が提起できることとされている。災害関連死と認定されなかった場合においては、こうした異議申し立て等の手続きができることを指示することが必要であることから、県では本年7月、各市町村に対して、異議申し立て等ができる旨の教授を行うとともに、異議申し立て等に要する被災者の遺族の負担を軽減するため、新たな事実が判明し、再度審査の申し出がある場合等には、再審査についても柔軟に対応するよう助言している。また県の審査会での再審査の申し出については、これまでに3件の申し出があった。
≪再質問≫
・災害関連死の実態について
【斉藤議員】
これまで556件の申請で281件が認定されていると。かなりの規模で認定がさらに進むと思うが、すでに死者・行方不明者で4671名・1205名、計5876名犠牲となっているが、震災関連死が今の段階で281名というのは軽視できない重大なことだと。この事態を重く受け止めて、速やかに審査すること、そしてこの分析・要因を今後の震災対応の教訓にすべきと考えるが、知事はどのように今回の震災関連死の審査の状況・要因を受け止めているか。
【達増知事】
災害関連死というのは痛恨のことであり、原因として、避難所等における生活の肉体的精神的疲労、病院の機能停止による十分な医療を受けられなかった、十分な介護を受けられなかった、地震・津波のストレスによる肉体的精神的負担等指摘されているが、国の災害対策基本法の見直し、県の防災計画の見直し、市町村をはじめ関係諸機関の防災計画の見直し等の中で、これらの反省もきちんと踏まえて、今後災害そのものの事務的な要因により犠牲になる方が出なくなるよう努めていきたい。
・災害公営住宅の入札について
【斉藤議員】
今回臨時議会でこういう提案をされ、工事を早く進めるということは積極的なことだと思う。しかし残念ながら入札の状況は、例えば10億円前後の契約案件が多かったが、2社しか入札しないとか、1社のみだったとか、これでまともな競争入札と言えるのかと。なぜこういう状況になったのか。この要因・背景をはっきりつかまないと、これから復興事業がどんどん加速的に発注されてくるときに、今からこんな状況で対応できるのか危機感をもった。もっと正確にこの事態を把握すべきで、どのように受け止めているのか。落札率が99.60とか99.96とか、普通の一般競争入札だったら談合である。そうでなかったら起きないようなことになっている。ただ震災なので、総務部長も述べたように、「資材高騰・その他の要因で積極的に入札参加できないということであれば、違った解決の方向が求められている」と。県土整備部長は、「適正に反映している」と。少しニュアンスがずれている。その辺の状況はどうなのか。こういう事態が続いたらまともな工事発注が今後できないのではないか。
【総務部長】
もっと正確につかむべきではないかということだが、なかなか個別の入札について、具体的にどうだったかということは難しい面がある。参加しなかった業者の主張等も含めて難しいところがあるが、全体の動向、さまざまな事業を進捗に伴いどういう状況なのか、それに伴う入札への参加動向、事業への参加意欲等についてはさまざま事業推進の観点も含めて、県土整備部を中心に事業者と県・発注側なりと意見交換をする場を設けており、我々入札執行側としても、そういったものに参加しているので、そういったものを通じて状況把握なりに努め、それをなるべく踏まえた形で入札の参加資格なり、参入可能者数の見込み等検討し、なるべくある程度一定の参加事業者が出ていただいて、競争性が確保されるよう努力を続けていきたい。
積算について、県土整備部長と答弁のずれがあるということだが、積算については適切に行われているものだと思っている。今のやり方がありそれに基づき正確にやっているということで、実際の参加者の行動や入れ方などでそういう数値になっているということで、積算についてはある程度、状況を把握したものにするようにということで、国交省や実際の発注部局含めて努力していただいていると思い、それについても今後よく発注する側と調整を図り、なるべくきちんとした積算、実態に合った積算になるような形、それを受けて我々も適切な入札執行に努めていきたい。
【県土整備部長】
積算関係で、当初の契約については、今の時点、最新の単価について適用しているが、今後いろいろな形で資材の高騰が短期間に発生することも考えられるので、これについては、柔軟に対応する、つまり設計変更等でもきちんと対応する備えをしているところである。
・災害公営住宅の入居方針について
【斉藤議員】
災害公営住宅の場合、入居基準・入居方針は詳細を検討していると。ただ平田地区の入居についてはかなりの割合を考慮するということだった。釜石市の入居方針は、やはり以前住んでいたところを基本的に入居させるというのが市の方針である。そして集落・コミュニティを守ると。これはかなり徹底して、私は県営住宅の場合はまったく同じようにはいかないとしても、平田地区唯一の災害公営住宅である。だからそこはきちんと市の入居方針とぜひ調整をして、地域のコミュニティ、地域で生活したいという方々の願いが叶えられるようにしっかり対応していただきたい。
そして今回の場合、一戸あたりの建設費はどうなっているのか。これは解体作業も含めればどういう形になるのか。
今までの住所をなくした方々は8割方持ち家だった。やはり地域に合った公営住宅にしてほしい。そのためには、鉄筋コンクリートだが、内装に最大限地元の木材を活用するなどの対策が必要だと思うがいかがか。
【県土整備部長】
住居の構成割合やいろいろな部分について、地元の市と十分協議の上進めていきたい。
一戸あたりの建設費は、約1540万円である。
現在は敷地等の制約から、集合住宅化になっているが、従前から県産材を使っていただくように要請しているので、これは引き続き業者についてもお願いしていきたい。
≪再々質問≫
・被災した県立病院の再建について
【斉藤議員】
災害関連死の要因で、4割は避難所の問題、3割は病院等の機能の問題だった。
岩手の災害で3つの県立病院が被災、大東を含めると4つになる。それだけに、被災した県立病院の再建を早期に図るということが必要なのではないか。院長からは、「早く再建の方向を示さないと医師確保の見通しも立てられない」と。最後にこの決意を知事にお聞きしたい。
【達増知事】
病院も大変大事なのでしっかり取り組んでいきたい。