2012年10月9日 9月定例県議会・本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)


【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。
 東日本大震災から1年7ヶ月が経とうとしています。岩手県における大震災津波による復興は緒についたばかりです。被災地は2度目の夏を過ごしました。熱中症で搬送されるお年寄り、住まいと仕事を失い先が見えない暮らし、親しい人を失った深い悲しみなど被災者の多くが心身ともに疲労と悩みを深めています。「津波で救われた命を一人たりとも失ってはならない」この立場で総力を挙げた対策が必要です。

1. 被災者のいのちと暮らしを最優先にした支援策を

・被災者の医療費の一部負担や介護保険利用料の免除措置の継続について

 被災者は長引く避難生活で体調不良や持病を悪化させ、介護が必要な高齢者も増大しています。こうした被災者の命と健康を守る上で医療費の一部負担や介護保険利用料の減免措置を継続することは被災者の命綱となっています。ところが政府は、全額国が負担する「特例措置」をこの9月末で打ち切ってしまいました。県は免除を継続する市町村に財政支援を行うことを決め9月補正で対応したことは評価するものです。しかし、この支援はあくまでも今年度限りであり、市町村単独で減免継続できる財政状況にはありません。国に対し引き続き減免措置を継続できるよう強く要請するとともに、県としても最大限の対応をすべきと考えますがいかがでしょうか。今回の免除継続による財政負担および対象人数はそれぞれどうなっているのでしょうか。
 国保税や介護保険料の国の財政支援は、条例等による市町村民税の減免が要件となっていますが、被災者の多くは非課税となっているため、国が要件とする減免条例のない自治体では国の財政支援の対象とならず、すでに税の負担が行われています。このままでは滞納が増え必要な医療や介護を受けられなくなることが懸念されます。国保税、後期高齢者保険料、介護保険料のそれぞれの負担総額はどのくらいになるのでしょうか。
 減免打ち切りは、生活再建の根本に関わる問題であり県としても強く国に求めるべきであると考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 被災地においては、血圧の上昇傾向や健康不安の声があり、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会を確保する必要があること。また内陸市町村にも多数の被災者がおられ、県内統一した支援が行われるよう配慮する必要があることから、10月以降も一部負担金等の免除が実施されるよう市町村にたいし財政支援を行う補正予算を提案している。
 県としては、被災者の健康確保の観点から、これまで7月には統一要望の機会をとらえて、また8月には宮城県・福島県とともに3県合同でそれぞれ国にたいし要望してきたところだが、今後も引き続き国による財政支援の継続を要望していく。県の支援の継続については、国の支援や市町村の意向などを勘案し判断していく。
【保健福祉部長】
 平成24年10月1日から25年3月末まで、免除を継続することにより見込まれる県の財政支援額は、国保税については約2億円、後期高齢者医療については約6700万円、介護保険については約700万円、障害福祉サービス等については約60万円となっている。
 免除対象人数は、平成23年度実績で、国保税が29461人、後期高齢者医療については12048人、介護保険は5233人、障害福祉サービス等については184人となっている。
 国保税等の負担総額は、平成23年度の減免実績により、平成24年10月から平成25年3月まで減免を行った場合の負担総額を推計すると、国保税については約7億7800万円、後期高齢者医療保険料は約1億4600万円、介護保険料については約4億7600万円と見込まれる。
 県としては、被災者に対する国保税、後期高齢者医療保険料、介護保険料の減免について、これまで7月には統一要望の機会をとらえて、8月には宮城県・福島県とともに3県合同で国にたいし要望してきたが、被災地の実態に合った財政支援が行われるよう、今後も引き続き国にたいし要望していきたい。

・仮設住宅への対応―寒さ対策、風呂の追いだき・物置きの設置状況について

【高田議員】
次に二度目の冬を迎えようとしている仮設住宅への対応です。
 狭く寒い仮設住宅での不自由な生活は健康悪化をもたらす要因となりました。物置や風呂の追い炊き、風除室など改善しつつありますが、仮設暮らしは3年〜4年の長期になることも予想されます。それだけに入居者が不自由なく生活できる被災者の声にこたえ改善策を講ずるべきです。冬を迎えるに当たって仮設住宅での改善策はどうなっているのか。
 風呂の追い炊きや物置の設置は必要なすべての被災者に提供されているのかあらためて調査し対応をすべきです。

【県土整備部長】
 寒さ対策として、外壁の断熱や窓の二重化、風除室の設置、水道管の凍結対策として床下への外気の進入を遮断するシート張りは完了している。今後は、厳冬期前に施設の再点検を実施するとともに、水抜き栓や凍結防止装置の操作について改めて入居者の方に周知し、水道管の凍結防止に努める。
 風呂の追いだき・物置きの設置については、追加設置の希望については随時受け付けて対応しており、10月末までに決定する。

・福祉灯油について

【高田議員】
 次に福祉灯油への対応です。
 今年の原油価格は高騰し、9月の灯油価格は1?当たり92円と昨年を大きく上回り史上2番目となっています。最需要期にはさらに引き上げも予想されます。追い炊き機能もない中、昨年は寒い仮設暮らしを余儀なくされました。お金の心配なく安心して暮らすことができるように「福祉灯油」を実施し被災地を励ますべきです。内陸部の被災者にも対象となるようさらに拡充すべきと考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 福祉灯油は、これまで灯油価格が著しく高騰した場合に高齢者世帯等のうち、所得の低い世帯に対して、冬期間における経済的負担の軽減を図るため、市町村が実施し、県がその経費の一部を補助してきた。昨年度は、福祉灯油を実施した平成19年度・20年度の水準までは高騰していないものの、東日本大震災津波により、甚大な被害を受け、財政状況がきわめて厳しい中、福祉灯油を実施する沿岸部の市町村に対しては、手厚い財政支援が必要と判断し、被災地福祉灯油等特別助成事業費補助を実施した。
 県としては、今年度においても、灯油価格が高めに推移していることから、引き続き灯油価格の動向を注視するとともに、交付税措置など国による支援の有無や市町村の意向などを確認しながら、福祉灯油実施の必要性を検討していく。

・心のケア対策について

【高田議員】
次に、こころのケア対策の問題です。
 今年の5月、漁業の再建に展望が持てず漁民が自ら命を絶ちました。岩手の震災関連自殺は22人、孤独死11人、震災関連死は305人になっています。「復興が進み生活再建に格差が出ると将来を悲観する人も増加する」と専門家が指摘しています。阪神淡路大震災のときも2年をすぎて増加しました。保健と医療、福祉など専門家と連携し体制の強化が必要ではないでしょうか。
 岩手では県こころのケアセンターを岩手医大に設置し、沿岸部4箇所の地域こころのケアセンターの支援体制が行われています。相談件数や対応状況はどうなっているのでしょうか。保健師や生活支援相談員が訪問していますが支援が必要な高齢者などはどう把握していますか。保健師の定期的な訪問や専門的な支援が必要ですがどう取り組んでいますか。

【保健福祉部長】
 昨年度末に設置したこころのケアセンターでは、身近なところで専門家による相談を受けられる震災こころの相談室をはじめ、市町村が行う全戸訪問や、特定検診、こころの健康調査などの保健事業への支援を行い、要支援者を中心に訪問活動を行う地域の保健師との密接な連携のもと、リスクの高い方を適切な支援につなぐための活動を行っている。
 こうした活動の本年4月から7月までの主な実績は、訪問や相談室による相談件数が延べ1082件、こころの健康に関する教育や人材養成研修を67回実施し、約1400名の方に参加いただいたところである。また生活支援相談員等、被災者の訪問・見守り活動を行う支援者は、仮設住宅やみなし仮設住宅等を定期的に訪問し、支援を要する世帯の状況を把握し、必要に応じて保健師やこころのケアセンター、地域包括支援センターなどの専門機関に適切に情報をつなぐなどの連携を図っている。
 今後も引き続き内陸の保健所や市町村、岩手県看護協会等関係団体からの協力を得て、定期訪問を行う保健師等の体制確保に継続して取り組むとともに、保健医療福祉の関係者が連絡会議や情報共有の場を各地域に設け、ネットワークを強化することで、被災者一人一人の状態に応じた支援を行っていく。


2. 住宅の再建について

・持ち家再建へのさらなる支援について

【高田議員】
 もち家の再建は被災者の最も強い要求です。この間市町村と共同した100万円の補助、バリアフリーと県産材で130万円、住宅ローンへの利子補給などが行われ歓迎されています。しかし、消費税増税の強行という新たな情勢や土地利用計画が決まらず公営住宅に希望する被災者が増えています。先日、大槌の仮設住宅を訪問したときに「とにかく早く家を立てたいがまったく先が見えない」と訴えられました。住宅再建が進まない苛立ちが広がっていると感じてきました。陸前高田市では水道整備200万円、取り付け道路300万円、地元産材活用で50万円、浄化槽設置に50万円の独自の支援策が行われています。持ち家再建は、生活の軸足を被災地に置くことができ人口流失に歯止めをかけるものです。また、災害公営住宅は一戸当たりの建設コストは1500万円〜2000万円であり住宅再建に更なる支援を拡充することは財政負担の軽減となるものです。国に対して被災者住宅再建支援法の拡充を求めるとともに県としてもさらに100万円の上乗せなど支援策の拡充を行うべきですがいかがでしょうか。

【達増知事】
 くらしの再建を図るためには、被災者の住宅再建に対する支援策を充実することが必要であることから、これまでも機会あるごとに被災者生活再建支援金の増額を要望してきたところである。
 また県としても、限られた財源の中で今年度から新たに、復興基金を活用し住宅再建に際して最大100万円を市町村と共同で補助する被災者住宅再建新事業を創設するとともに、バリアフリー化や県産材の活用を行う場合の補助や、住宅ローンの利子補給などを実施している。
 このようなことから、まずは現行の支援制度を最大限に活用していただくとともに、国に対して引き続き被災者生活再建支援金や復興基金の拡充を要望し、被災者の住宅再建を支援していく。

・土地手続きの簡素化や土地の高騰対策について

【高田議員】
 土地手続きの簡素化や土地の高騰対策も住宅再建の課題です。どう取り組まれているのでしょうか。

【理事】
 復興事業の円滑かつ迅速な実施を図るため、土地利用の再編にかかる特例を含む東日本大震災復興特別区域法が昨年12月に施行された。この特区法は、市町村が行うまちづくり事業を対象とし、土地利用の許認可等にかかる手続きのワンストップ処理や、許認可基準の緩和等により事業の円滑化を図るものであり、この制度を活用するためには、復興整備計画を作成し、関係機関で構成する復興整備協議会で協議・同意を得る必要がある。このため、現在9市町村と県が共同で復興整備計画を作成し、手続きの簡素化に努めているところであり、例えば農業用地区域内農地の転用に必要な手続きや、埋蔵文化財発掘調査の実施に先立ち必要となる流木の伐採等の許可が不要となるなど、復興事業の円滑化が図られている。県としては、今後とも市町村と連携した復興特区法の活用により、手続きの簡素化等を促進していく。
【環境生活部長】
 土地の高騰対策だが、県では沿岸地域において地価上昇が懸念されたことから、四半期ごとに短期地価動向調査を行い、価格動向を監視しており、直近の7月1日現在の調査結果では、都市機能の回復とともに震災前の土地価格への回帰傾向がみられるものの、大幅に地価が挙げる可能性は低いとの報告を受けている。
 また、県や沿岸市町村の広報媒体を活用し、基準地価格を参考にした土地取引を行うよう呼びかけており、岩手県宅地建物取引業協会等に対して、地価高騰の起因となるような土地取引の防止について協力を要請したところである。今後とも地価高騰が起らないように適切な監視を続けていく。

・地元産材を活用した住宅について

【高田議員】
 地元産材を活用した「地域型復興型住宅」は、住田、釜石、宮古など地元業者が集まって取り組まれています。積極的に進めるべきですが現状と課題はどうなっているのでしょうか。

【県土整備部長】
 地域型復興住宅は、地域の住まいの作り手であるさまざまな住宅生産者が住まい手を手を取り合いながら作る地域にふさわしく良質で、被災者が取得しやすい価格の住宅である。
 現在、岩手県地域型復興住宅推進協議会には、138の生産グループが会員となり、4月発足以降、8月末までに121件の地域型復興住宅の受注があったと報告を受けている。今後、本格的な住宅再建が進む見込みであることから、地域型復興住宅について、パンフレットの配布や協議会の事務局のホームページ等による周知活動、地域型復興住宅推進協議会から派遣された相談員による住宅再建相談会での相談対応を今後も引き続き行い、被災者の方々への周知に努める。

・災害公営住宅について

【高田議員】
 災害公営住宅は、野田、田野畑などで行っているように集落を維持し、木造戸建を基本に希望するすべての被災者が入居できるようにすべきです。水産業を生業とする住民は、2世帯3世帯が多く集合住宅では狭すぎるという声が寄せられています。木造の戸建にすべきであり庭で作業ができるようスペースをとるべきです。

【県土整備部長】
 県としては、より早く、より多くの災害公営住宅を建設することが重要であり、十分な建設用地が見つかっていない現状においては、集合住宅を中心として整備せざるを得ない。また庭の確保についても非常に難しいと考えているが、今後も市町村と十分相談し、災害公営住宅の計画を進めていきたい。
 なお、市町村が中心となって進める比較的規模の小さな災害公営住宅については、地域の個別のニーズを勘案し、木造戸建の災害公営住宅を整備する予定である。
 
・二重ローン対策について

【高田議員】
 被災者の二重ローン対策として利用を見込んでいた個人版私的整理ガイドライン、いわゆる「住宅ローン減免制度」は、相談件数が全国で2835件、免除された件数はわずか83件にとどまっています。被災住宅ローンの制度説明の周知不足とともに返済期間を長くするなど金融機関による返済条件変更も行われているからです。義援金でローンを返済し続け再建資金をなくしている人も出ています。生活再建からますます遠くなってしまうだけに、県として周知徹底に努めるとともに金融機関にも積極的な取り組みを求めるべきですがいかがでしょうか。

【理事】
 本年10月5日現在本県における相談件数は632件、債務整理の成立件数は15件となっている。次にガイドラインの周知については、県としてはこれまで、いわてグラフや被災全世帯に配布しているガイドブックを通じたガイドラインの紹介や、関係機関と連携した沿岸4地区での市町村等を対象とした説明会の開催等により、周知に努めるとともに、本年9月には、県内金融機関にたいし、ガイドラインの被災者への積極的な周知を要請した。
 また本年7月には国にたいし、二重債務問題の早期解決に向けての支援を要望し、国は先般金融機関に対しガイドラインの積極的な活用を要請した。
 今後とも関係機関と連携し、ガイドラインの積極的な周知を図るとともに、被災者相談支援センターなどを通じ、被災者への相談支援や情報提供を適切に行っていく。


3. 雇用の確保と事業所の再建について

・雇用の実態、雇用のミスマッチの解消について

【高田議員】
 9月まで延長された雇用保険の給付が打ち切られました。厚労省は被災3県で雇用保険の延長給付を終えたのは2万2725人、全体の7割が就職先が見つかってないとしていますが、岩手県の実態はどうなっていますか。家族の生活を支える安定した収入と仕事の確保は待ったなしの課題であり、具体的な対策を講ずるべきです。
 県内の有効求人倍率は復興需要もあり回復しているものの職種別でみると人手不足も深刻化しています。特に復興関連の業種が多く被災者が地域の復興にかかわる仕組みづくりも必要です。こうした雇用のミスマッチの解消にどう取り組んでいくのか具体策を示していただきたい。

【商工労働観光部長】
 岩手労働局の発表によると、岩手県内の広域延長給付受給者数は、昨年10月から今年8月までの11ヶ月間で4219人、給付が終了した方は9月14日現在で3268人、うち未就職だった方は2233人68.3%となっている。
 給付終了後、まだ就職に至っていない方も多くいることから、ハローワークやジョブカフェ等の就職支援施設において、求職者個々の適性に合わせた就業支援をさらにきめ細かく行うとともに、あわせて緊急雇用創出事業により「つなぎ」としての当面の雇用の場を確保するなど対策を講じていく。
 雇用のミスマッチの解消についてだが、求職者が企業から直接説明を聞くことができる面接会は、マッチングを進める上で非常に有効であると考えており、県では今年度沿岸地域で就職面接会の回数を増やして開催している。
 また面接会に合わせ求職者がより広い範囲で仕事を考えられるよう、地域の求人がどの職種にどれだけあるのかについて説明会を行うほか、人手不足が深刻化している水産加工業の企業見学会や個別面接会を行い、これにより就職に結びつく事例も出ている。
 さらにハローワークでは、求職者のニーズを踏まえた担当制による職業相談の実施や仮設住宅への出張相談、積極的な求人開拓の推進や求人条件緩和指導の徹底を行っている。
 今後も沿岸各地において、ハローワークなど関係機関と連携しながらミスマッチの解消に向けたきめ細かな取り組みを進めていく。

・事業復興型雇用創出助成金について

【高田議員】
 「事業復興型雇用創出助成金」は、被災者を1年以上雇用する場合に雇い入れにかかる費用に対し最大で225万円助成するものです。しかし、9月末現在、目標15000人に対し367事業所1463人の実績にとどまっています。新規雇用がなければ支給できず、遡及対応ができないという2つの壁があるからです。事業実施期間が平成27年までと限られており使い勝手のいい事業に改善を求めるべきと考えますがいかがでしょうか。

【商工労働観光部長】
 県としてはこれまで当該事業について、より実効性のある事業とするため、国にたいし要件緩和を要望してきた。具体的には、再雇用者のみでも対象とするため、再雇用者の割合の制限を廃止すること、また、当該事業を遡及適用し、震災が発生した平成23年3月11日以降の雇用を対象とすること、さらに平成24年度末までとされている事業着手時期を延長し、これに伴い全体の事業実施期間を延長することについて見直しを要望している。現時点では見直しは行われていないが、国において検討している状況と聞いている。
 
・被災事業所再建―県の支援策について

【高田議員】
 被災事業所の再建は雇用対策の上からも地域経済対策でも重要です。第二回の「被災事業所復興状況調査」では、回答した33.2%が「震災前と同程度または上回っている」と回答しています。事業所などの再建が遅れ、取引先を失い業績を落としており、雇用の回復につながらない深刻な問題でもあります。「再建したい」というすべての事業所の再建を支援するとともに震災前の売り上げに戻すような支援策が大事です。県としてどのような支援策を考えているのかお聞きします。

【理事】
 県が9月にとりまとめた被災事業所復興状況調査によれば、事業所の再開率は、一部再開を含め約78%となっている一方で、各事業所が現在抱える課題としては、売り上げ利益率の低下を挙げた事業所が約35%となっているなど、事業所の再建と合わせて業績の回復が重要な課題となっている。
 このため、引き続きグループ補助や復興交付金事業等を活用し、事業所の再建を積極的に支援することとしている。
 また、業績の回復に向けては、王手量販店での物産展や県内外とのバイヤーとの商談会の開催によるマーケティングの支援、大手商社等からのアドバイザーの招へいによる販路の拡大、さらにはトヨタ生産方式の導入による生産効率の向上などにより事業所の復興を支援していく。

・グループ補助金について

【高田議員】
 グループ補助は9月補正で87億円措置されました。第4次申請で採択されなかったグループの事業規模に見合う補正規模となっていますが、国の予算措置がなければ前に進みません。平野復興大臣は「来年度も確保する」とマスコミのインタビューに答えていますが、これでは来年度以降の事業となってしまいます。政局によって臨時国会召集が遅れ予算措置もしないでは、事業所の再建どころか再開を断念する事業所も出てきます。臨時国会冒頭に予算措置できるように強力に働きかけるべきですがいかがでしょうか。

【商工労働観光部長】
 グループ補助金に対する要望が依然として多いことから、さらなる支援が必要と考えており、9月補正に盛り込んだところである。
 被災事業所の再建のためには、一刻も早い補助事業の実施が求められることから、国に対して、あらゆる機会を通じて早期の予算措置を働きかけるとともに、国の動向について、今後とも情報収集していく。

・中小企業被災資産復旧事業について

【高田議員】
 「中小企業被災資産復旧事業」は、当初予算に20億円計上しましたが、9月30日現在114件321,479千円の交付決定にとどまっています。今回利用実績が少ないこともあり全業種に上限で2000万円と拡充しました。なぜこれまで利用が進まなかったのでしょうか。どの自治体や商工会議所などに行っても延長の要望が寄せられます。津波被害ですぐ再建できる事業者もあれば、土地利用計画を見ながら再建を検討する事業者などまちまちです。内陸部の事業者も被災したという点では同じです。事業所の復旧ができず売り上げが戻らず、借金を返済できないために廃業した事業所も内陸部であります。事業の延長とともに昨年で終了した「修繕費補助」復活し内陸部へも支援の拡充をすべきです。

【商工労働観光部長】
 利用の進まない主な理由として、地域の土地利用の関係から復旧するための用地が定まらないため、本復旧が来年度以降とならざるを得ない事業者が多いことが挙げられる。
 そのため、今後も市町村や商工団体から、まちづくりの進捗状況や事業者の復旧状況を聞き、来年度以降の事業の延長について検討していく。
 内陸部への支援については、本補助および昨年度実施した修繕費補助は、今般の津波により地域の産業が甚大な被害を受け、早急な地域経済の再生と雇用の場の回復を促進する必要がある沿岸市町村をその対象としている。

・仮設店舗から本設再開できるような支援策について

【高田議員】
 仮設店舗は2〜3年で、自力で店を持つことは難しく仮設店舗から本設再開できるような支援策を国に求めるべきですがいかがでしょうか。

【商工労働観光部長】
 県では国にたいし、グループ補助金の継続や、グループになじまない小規模事業者に対する要件緩和に加え、新たな補助制度の創設を要望してきたところ、来年度の国の概算要求において、グループ補助金の実施と、新規で被災地域商業復興支援事業がそれぞれ事項要求されたところである。
 また県では、独自に沿岸市町村と共同で復旧費補助を設けているが、経営基盤の弱い小規模事業者の本格復興においては、国の支援が欠かせないと考えているので、引き続き財源も含め長期にわたる被災企業の復興支援について国に要望していく。

・事業所の二重ローン対策について

【高田議員】
 事業所の二重ローン対策は、鞄兼本大震災事業者再生支援機構が債権買取の対応期間を90日にするなどの改善がされているものの、東日本大震災支援機構及び岩手県産業復興機構による債権買取支援の決定はわずか43件となっています。金融機関が損失計上を嫌い「機構」への再建売却に消極的になっているのではないでしょうか。債権買取が進まない要因、及び県としての改善策を示してください。

【商工労働観光部長】
 9月末現在、2つの機構による債権買取と長期返済猶予や新規融資を含めた総支援件数は76件となっており、金融機関を含めた関係者の協力により債権買取は徐々に進んできた。
 一方、再建買い取りがなかなか進まない要因としては、本設再開に向けた事業用地が容易に定まらないため、いまだ資金需要が本格化していないといった事情が考えられる。
 県としては、今年9月に国・信用保証協会・金融機関・商工団体で構成する岩手県中小企業支援等連携会議を設立し、情報共有を図りながら、債権買取が円滑に進むよう取り組んでいる。


4. 漁業・水産業の振興の課題について
 
・漁港など必要な施設の復旧・整備について

【高田議員】
 すべての漁協で漁船の接岸が可能となりました。「台風による高潮で船を上げるだけで大変だ」という状況にあります。潮位に関わらず利用できる漁港は6割まで復旧していますが見通しはどうなっているでしょうか。

【農林水産部長】
 漁港・荷揚げ岸壁の改修状況は、8月末までに、被災した108漁港のうち87漁港で本格的な復旧工事に着手しており、潮位にかかわらず荷揚げ岸壁が利用できる漁港は約6割まで復旧している。
 養殖施設については、8月末現在、約13000台の整備が完了し、被災前の5割の水準まで復旧した。
 水産加工業に関しては、8月時点において、被災した水産加工場の7割強が再開または一部再開している。

・漁船の確保について

【高田議員】
 船は8月末現在、6077隻確保されました。被災を免れた漁船を合わせると8000隻程度が稼動可能となっています。被災漁船は13,271隻であり、少なくとも漁民に1隻は届くような計画の見直しを図るべきです。

【農林水産部長】
 漁船6800隻の整備は、漁協等からの要望をもとに、復興実施計画の補助事業を活用した平成25年度末の整備目標として掲げているものであり、今後とも漁船の整備については、漁協等の要望を確認しながら、必要隻数の確保に努めていく。

・水産物の放射能汚染検査体制について

【高田議員】
 基準値を超えるマダラが八戸で水揚げされました。盛岡中央卸売市場の自主検査で明らかになっただけに漁業関係者に衝撃が走っています。水産物の検査体制はどうなっているのでしょうか。

【農林水産部長】
 久慈・宮古・釜石・大船渡の県内主要4魚市場において、水揚げされた魚種の中から、毎週32検体を目途に検査を実施している。
 これとは別に、マダラについては、盛岡中央卸売市場で基準値超えが確認されたことを受け、主要4魚市場に水揚げされた場合、おおむね週10検体を目途に検査するなど、重点的なモニタリング調査に努める。


5.JR山田線、大船渡線について

【高田議員】
 大船渡線の沿線3自治体はJR東日本とBRT導入を合意しましたが、あくまでも「仮復旧」で鉄路での復旧を求めています。JRは、被災が少なかった気仙沼―陸前矢作駅間の運行再開にも答えず、いまだに鉄路復旧も明言していません。大船渡線、山田線の鉄路での復旧は市街地再生の柱であり、通院、通学、観光など住民の暮らしに直結するものです。本来JRの責任で直ちに取り組まなければならない課題です。三鉄はすでに復旧工事が行われているのに、なぜJR東日本は1年7ヶ月経過しても鉄路での復旧を明らかにしないのでしょうか。この間の交渉内容を県民に示すべきです。
 民主党政権もかさ上げやルート変更の負担分について地元負担とならないよう国の負担で行いJRに対して強く働きかける事を国の責任で行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 代替バスの確保が不十分で親の送り迎え、「早朝に乗車しなければ学校に間に合わない」などいまだに不満も出ていいます。改善できない理由はどこにあるのでしょうか。

【達増知事】
 JR東日本は、鉄道の復旧にあたり、「津波時の安全性の確保や町づくりとの整合性、復旧費用の負担が課題」との考えを示している。このため県では、鉄道復旧を前提に、これまで復興調整会議や個別の協議の場などにおいて、防潮堤などの整備計画と鉄道の安全性の確保や、市町の復興計画と鉄道の復旧についての協議を重ねてきた。
 復旧費用は、第一義的にはJR東日本が負担すべきものと考えるが、まちづくりに合わせたかさ上げなどの費用については、JR東日本は国にたいし財政支援を求めている。
 県としても、被災地域の早期復興の観点から、国が責任をもって取り組むべきと考えており、JR東日本への働きかけと財政支援について、宮城県や福島県、沿線市町村とともにこれまで国にたいし要望してきた。今後も、両線の早期復旧がなされるようJR東日本や関係機関との協議を加速させるとともに、沿線市町村等と連携しながら国にたいし引き続き強く要望していく。
【政策地域部長】
 代替バスについてだが、通学における交通の確保については、これまで関係市町や県教委と連携を図りながら、バス事業者への要請を行い、運行の増便やダイヤの見直し、乗り継ぎ時間の短縮など、利便性の改善に努めてきた。
 しかしながら、今回の震災により、バス事業者は営業所やバス車両を流出するなど大きな被害を受け、現在においても、営業所や運転手の確保が困難な状況となっているため、十分な運行水準を保てない状況となっている。
 代替バスの利便性の改善は引き続き必要と考えており、市町等関係機関と連携しながら、バス事業者の課題の解決を支援していくとともに、利用者ニーズを的確に把握しながら改善を図っていきたい。


6.被災した県立病院等の再建について
 
・県立高田病院、大槌病院、山田病院の再建の検討状況について

【高田議員】
 県立高田病院、大槌病院、山田病院は再建を基本に24年度内の再建方針を示しています。すでに75億円の再建基金を確保していますが、用地と病院規模、機能をどうするかが急がれます。25年度に入り込むような復興ロードマップになっていますが、一日も早い再建に取り組むべきです。それぞれの病院の検討状況はどうなっているのでしょうか。

【医療局長】
 被災した沿岸部の県立病院がある各保健医療圏においては、県の次期保健医療計画策定に向け、医療機関相互の役割分担と、連携を進めるための具体的な方策や目標などについて、議論がなされている。
 また建設場所については、地元市町において、現在具体的な土地利用計画などの策定を進めているところであり、津波の被害を受けない高台であること、早期に工事着手が可能であることなどの条件を満たす候補地の選定について、それぞれ地元市町との協議を行っている。
 こうした状況を踏まえながら、本年度を目途にそれぞれの病院の立地場所や規模・機能などの検討を進めていく。

・大東病院の再建について

【高田議員】
 大東病院は、3度の懇談会が行われましたが、夜間・土日の救急体制がなくなることへの不安が出ています。磐井、千厩で本当に対応できるのか。大東地域は高齢者が多いだけに医療・介護の連携はどう取り組むのでしょうか。

【保健福祉部長】
 大東病院の再建については、回復期リハビリの千厩病院への集約など、病院機能の見直しが行われることとされていることから、これまで以上に大東病院をはじめとした、地区内の医療機関・介護施設等が相互に役割分担と連携づくりを進めていくことが重要であると考えている。
 現在一関市においては、地域密着型特別養護老人ホームや認知症グループホームの大東地域内への整備を検討していくことと聞いている。こうした介護施設と大東病院をはじめとした医療施設の連携について、地域での議論を深めていただきながら、県としても地域包括ケアを推進するための人的ネットワークの構築など、その具体化に向けて支援していきたいと考えている。
【医療局長】
 大東病院の整備にあたっては、本年5月・8月・9月の3回にわたり意見交換会を開催しさまざまご意見をいただいたが、この地域に一定程度の病床が必要であるとの判断のもと、医師不足などの厳しい状況を踏まえつつ、病床を維持していくことを最優先に、医師への負担を少しでも軽減し、新たな医師を確保しやすい環境をつくる観点から、病床は40床程度とすること、診療時間内の一次救急に対応すること、回復期リハビリは千厩病院に集約すること、プールは廃止すること―などの整備方針を決定した。
 現在においても、診療時間外の救急については、磐井病院・千厩病院などで対応しており、引き続き適切に対応していく。

・花泉診療センターの民間移管に関する検証について

【高田議員】
 花泉診療センターの民間移管に関する最終報告案を示されました。「9月県議会で議会の意見を踏まえ最終報告とする」とされています。今回の民間移管の破綻の最大の問題は、根拠のない事業計画を作成し、医師の確保もできない中で民間移管を強行したことです。すでに明らかなように社会福祉法人七星会の理事長が「知事より直接の電話があった」と公式の場で述べているように医療法人「白光」と県が癒着していたのではないかという疑惑です。理事長発言を調査したのでしょうか。医療局と法人との協議、接触の経過を示すべきです。

【医療局長】
 医療法人「白光」の民間公募に関する平成21年1月28日付の新聞報道を受けて、同年2月16日と4月6日の2回にわたり、法人側の考えの聞き取りを行っている。
 またその後においても、地域診療センター等懇談会の状況等についての問い合わせなどを受けているほか、医師の紹介の場面でお会いしている。
 検証にあたっては、過去における一連の書類や記録等を精査するとともに、当時の関係職員から確認した上で、最終報告案としてまとめた。
 なお、「知事から要請されて受けた」との社会福祉法人理事長の発言については、これまでの県議会において、知事から「そのような事実はない」と明確に答弁している。


7.高齢者の介護について
 
・要介護、介護認定の実態について

【高田議員】
 被災3県で要介護と介護認定を受けている高齢者は昨年5月から今年の3月で1.2万人増えていると報道されています。岩手県の実態はどうなっているでしょうか。急増する理由は、仮設住宅での長期化による閉じこもりになることが要因でもあり、これがさらに増大することも予想されます。介護ニーズに即した十分な対応ができているのでしょうか。
 
【保健福祉部長】
 平成24年7月末現在で要介護認定を受けている高齢者は、震災前の平成23年2月時点で比較すると、全県では5.7%増の66022人となっており、うち沿岸市町村では2.1%増の15065人となっている。
 介護ニーズへの対応だが、本年9月時点において、沿岸被災地の入所居住系施設の定員数は、新たに開所した施設を含め震災前の101.6%に、また居宅サービス事業者数は99%まで回復してきている。
 今後とも仮設住宅団地等に整備した高齢者等サポート拠点等を活用するとともに、予定している施設整備を着実に進め、ニーズに対応したサービス提供体制の確保に努めていく。

・介護報酬の改定について

【高田議員】
 2012年度の介護報酬改定が行われました。介護職員処遇改善交付金が介護報酬に組み込まれ実質0.8%の引き下げとなり、強力な政策誘導が行われました。地域包括ケア構想などに沿った領域を重点にし、基本単価などの引き下げによって訪問介護、デイサービス、介護予防、介護施設などにしわ寄せされています。とくに生活援助については、これまでの『30分以上1時間未満』「1時間以上」の2つの区分から『20分以上45分未満』「45分以上」となり訪問時間が短縮され、重要な会話の機会が奪われ変化する高齢者を見過ごしてしまうと現場から改善の声も出ています。どんな実態になっているのでしょうか。

【保健福祉部長】
 報酬改定から半年経過したところであり、国では今年度より次期改定に向け介護報酬改定検証研究委員会等を設置し、今回の改定の効果・検証や介護事業者への経営への影響等について、実態把握や分析等を行うこととしている。本県においては、本年4月から6月の訪問介護の利用は伸びているところだが、その内訳については国の調査分析等と合わせ、県内事業者の意見を十分うかがうとともに、利用者からの相談等を参考に課題を把握し、必要な制度改正や措置について国に要望していく。


8.教育のあり方について

・被災した学校の再建、環境の改善について

【高田議員】
 東日本大震災では教育の在り方そのものが問われました。今年は猛暑続きで仮設校舎では40度近い室温に見舞われ授業に集中できない日が続きました。グラウンドが使用できず児童生徒の体力低下や競技力への影響が心配されています。子どもは後戻りができません。学び成長できる最善の環境を提供しなければなりません。
 被災した学校の再建とグラウンドの整備などどこまで進んだのか。その見通しを示していただきたい。
 すべての仮設校舎へのエアコンが設置されたのでしょうか。
 遠い仮設住宅からの通学や狭い部屋での勉強は集中できずストレスで学びの環境が問題になっています。教育委員会はこうした問題をどう把握しているでしょうか。こうした子どもたちを支援するボランティアの取組が行われていますが公的な支援体制が必要ではないでしょうか。

【教育長】
被災した学校の再建については、市町村立学校については、7市町17校において再建について検討が行われており、うち平成24年9月末現在、用地の確保を含め移転場所が決定しているのが4校、移転場所を選定し用地交渉を行っているのが8校、移転場所や復旧方針を協議・調整中が5校となっている。
 山田町の船越小学校は、平成26年4月、その他の学校の多くは平成28年4月の開校を目指してそれぞれ取り組まれている。
 県立学校については、高田高校の造成工事に7月より着手し、校舎・体育館等の主要施設について、平成26年度末までの完成を目指している。
 グラウンドの整備については、学校のグラウンドに仮設住宅および仮設校舎が建設されたことにより、グラウンドの使用の全部または一部が制約されている学校は、現在41校。うち仮設グラウンドを整備したのが9校、整備中または整備予定が4校となっている。
 仮設校舎へのエアコン設置は、4市町12校のうち、釜石市の全4校が設置しているほか、大船渡市および大槌町の6校で今後整備する計画となっている。
 学びの環境については、現在被災した沿岸各市町村では、2300人ほどの児童生徒が仮設住宅に入居しており、これらの児童生徒の多くは、通学に時間がかかることや、家庭学習に集中して取り組めるスペースの確保が困難なこと等により、放課後や休日の家庭学習に困難を抱えていると認識している。
 現在、陸前高田市や大船渡市、釜石市、大槌町、田野畑村で、民間のボランティア団体と市町村教委が連携するなどし、平日の夕方から夜間および休日の昼間の時間帯に、学校の空き教室や地域の集会施設等を利用し、児童生徒が集中して学習に取り組む場を確保するとともに、地元の塾講師や大学生ボランティア等が、児童生徒の学習のサポートにあたっている。
 これらの取り組みは、国の委託事業を活用し、支援を行っているが、今後も、国や市町村と連携しながら、児童生徒の放課後における学習支援の充実に取り組んでいく。

・教職員の勤務実態、多忙化の問題について

【高田議員】
 教職員の勤務実態はどうなって入るのでしょうか。
 先日被災地の県立高校を訪問しましたが、全生徒の7割の家庭が被災している状況になっており、生徒に対する支援業務など増大しメンタルヘルスが必要な教職員も増えていると伺いました。教員の加配は大変歓迎され、現場から継続を願う要望も寄せられました。次年度以降はどのように対応するのでしょうか。
 教職員の多忙化は被災地のみならず全県の課題です。1ヶ月当たりの超過勤務時間数、定年前退職者数、病気休職者数はどうなっているのでしょうか。

【教育長】
 東日本大震災津波により、被災地域の学校では、児童生徒の心のケアや奨学金の申請事務への対応など、教職員の業務が増大しているため、平成24年度も引き続き小中学校194名、県立学校33名、計227名の加配が国から認められ、各学校に配置している。
 来年度以降の継続的な加配措置については、これまでさまざまな機会をとらえ、国に要望しているところだが、今後とも被災地域の学校の状況を把握した上で、各学校の要望を聞きながら、必要な加配措置をしていきたい。
 また、超過勤務時間が把握できる県立学校事務職員の平成23年度における1ヶ月あたりの超過勤務時間は、一人平均5.3時間、学校における平成23年度の定年前の退職者数は123人、病気休職者は105人(うち精神疾患69人)となっている。

・いじめ問題について

【高田議員】
 次にいじめ問題について教育委員長に質問します。
 滋賀県大津市の中学2年生の自殺問題を受け文科省は「いじめ緊急調査」を実施しました。わずか半年で昨年を上回る75000件となっています。本県では、昨年の6倍の2000件に登ることも明らかにされました。『いじめはどの子にもどの学校でも起こりうる』といわれ、問題を隠さず対応することが繰り返し指摘されてきましたが、大津市でのいじめも隠ぺいされ、岩手県南部の女子生徒がいじめを受けて転校した問題でも2年前から日常的にいじめが行われ、母親が教育委員会に相談しても対応されずこの事例は文科省の調査には反映されないとされています。これまでのいじめ件数は氷山の一角でもあり、なぜこのようなことがおきているのでしょうか。
 文科省は、「規範意識の醸成」を強調し、今回の事件を受けて「いじめ総合対策」を発表しています。これで問題の解決になるのでしょうか。
 
【教育委員長】
 まずもって、いじめは決して許されないことと認識している。
 議員ご指摘の調査については、文科省が毎年実施している調査であり、学校および市町村教委からの報告をとりまとめて報告しているものである。
 報告に当たっては、これまでも学校や市町村教委において、いじめ等の問題行動について、情報の共有をし、共通の認識をもって対応していただいていると認識している。
 なお、今般の県南部の事案については、当該教育委員会で調査方法や報告のあり方など検証を行っていると伺っている。
 県としては、今月実施する研修会等を通して、いじめの兆候の把握や適切な対応について、全県に周知していく。
 いじめ問題に関する見解だが、本年9月に国が公表した「いじめ、学校安全等に関する総合的な取り組み方針」については、学校・家庭・地域が一丸となって子どもの生命を守る、国・学校・教育委員会の連携の強化」などの基本的な考え方が示されており、県としても重要なことと認識している。
 県としても、いじめを絶対に許さない学校づくりに向けて、児童会や生徒会活動などの自治活動を通して、子どもたちに自分たちの問題として取り組ませるとともに、学校・家庭・地域が一丸となった取り組みを進めていく。
 
 
9.東京電力福島原発事故による放射能汚染対策について
 
・牧草の除染について

【高田議員】
 原発事故による放射能汚染は原木しいたけ、山菜、きのこなどの出荷制限、2500頭に及ぶ廃用牛の滞留、15000haを超える牧草の除染など重大な課題に直面しています。原発事故以前の営業環境を取り戻し全面賠償に総力を上げる必要があります。
 第一に牧草の除染は、繁殖障害や代替資料の確保などさまざまな問題もあり前倒しの取り組みが必要です。物理的困難な箇所もあり、進捗状況はどうなっているか。牧草の利用解除を行う上でも一筆(地番)ごとの解除であり、膨大な作業となりますがその体制はどうなるのでしょうか。

【農林水産部長】
 進捗状況についてだが、現時点で平成24年度実施予定の8300ヘクタールのうち、4200ヘクタールに着手しており、秋施工を希望している農家も多いことから、前植生の処理も含めて施工方法の徹底も図りながら着実に作業を進めていく。
 除染後も暫定許容値が下回らない事例の原因については、これまでの知見から、前植生の処理や耕起が不十分であったとみているが、現在さらに要因解析や除染作業手法の実証試験を進めており、12月までに除染マニュアルを策定し、効果的な除染ができるよう取り組んでいく。
 除染後の牧草の検査体制は、農協等の協力を得たサンプル採取や、民間検査機関の活用も図りながら、検査を進めてきたが、今後とも、検査体制には万全の配慮をしていく考えである。

・しいたけ農家への支援について

【高田議員】
 しいたけは生産をあきらめる農家が広がっており、産地が崩壊しかねない事態です。「生産できるのかどうかの見通しを早く示してほしい」出荷制限解除や生産できる展望を速く農家に示すべきです。生産者一人一人の生産実態と状況に即した丁寧な支援が必要を行うべきです。

【農林水産部長】
 県では、原木シイタケの産地再生を図るため、原木シイタケ生産者への生産物の損害やほだ木更新にかかる支援金の貸付、市町村への使用自粛ほだ木処理経費の補助、ほだ木更新に必要な原木の確保等に取り組んでいる。
 加えて、9月補正予算には、新たにほだ場の放射性物質の影響低減を図るため、落葉層の除去等、ほだ場の環境整備への支援を盛り込んだところであり、今後とも市町村・関係団体等と連携して産地再生に向けて生産者支援に取り組んでいく。

・汚染状況重点地域の除染について

【高田議員】
 「汚染状況重点地域」に指定された一関市、平泉町、奥州市では『除染実施計画』にもとづき国の財政支援を受けて放射線低減対策に取り組んでいます。しかし、国の除染単価を超えるケースもあり、共同仮置き場の建設など補助対象外となっています。市町の実情に合った処理方法で除染し、その財政支援を国が行うべきで、国に柔軟な対応を求めるべきです。
 側溝の清掃、まきストーブの灰などの指定廃棄物処理ができずまったく前に進まない現状となっています。予想もしなかった放射能汚染対策に自治体も住民も困惑しており県として除染対策が進むように支援を強めるとともに国に対し強く働きかけるべきです。
 
【環境生活部長】
 放射性物質汚染対処特別措置法に基づく国の基本方針において、国は自ら「原子力政策を推進してきた社会的な責任から、国の責任において環境汚染への対策を講ずる」としている。
  しかしながら、除染実施計画への国の同意、補助金交付決定等の事務手続きに時間を要しているほか、補助対象経費についても、汚染土壌を除去した校庭の原状回復費用の一部や、コンクリート製の一時保管施設の費用が認められないなど、除染の円滑な実施に支障が生じている。
 このため県では国にたいし、自治体の負担とならないよう全面的な支援措置を講じるよう要望してきたところであり、今後も3市町と連携しながら、地域の実情を踏まえた除染が円滑に進むよう、引き続き国にたいし強く働きかけていく。
 除染対策だが、除染を進めるにあたって、不可欠な最終処分場の確保について、住民理解の増進も含めて国が市町村に委ねていることが、除染対策を進める上での大きな課題となっている。
 国がその責任を十分果たさないという現状の中で、除染対策を円滑に進めていくためには、既存の最終処分場の活用を図るということが、現実にとりうる方法と考えられる。
 このため、この方向で関係市町村との調整を進めることとし、最終処分場を活用する上で重要な周辺住民への説明を含め、県としても市町村と一緒に汗をかいていく考えである。
 また国に対しては、今後ともその責任を十分果たすよう求めるとともに、除染廃棄物の埋め立てによりひっ迫が懸念される最終処分場の新増設への特別な財政支援などについて、市町村と連携しながら引き続き要請していく。

・賠償の問題について

【高田議員】
 JAグループ県協議会が行った賠償請求は、111億円に対し69億円の支払いとなっています。賠償金が雄一の生活費になっている農家もあり賠償金の全面賠償は求められます。なぜこんな状況になっているのでしょうか。JA協議会で対応できないすべての被害者を視野に入れた賠償要求が必要ですが実態はどうなっているのでしょうか。漁業や観光など農業以外の被害の実態と賠償請求の取り組みはどうなっているのでしょうか。
 現在の「中間指針」では出荷停止や風評被害に対する賠償は営業損害のみとなっています。しかし、今回の原発事故により仕事そのものを失った被災者もいます。賠償金は増税となって跳ね返るだけに今後の営農意欲を失わせるものです。生産への日々の努力を無にされ仕事そのものが奪われただけに営業損害への賠償だけで償えません。非課税への取り組みを県として国に求めるべきですがいかがでしょうか。

【農林水産部長】
 JA協議会の請求に対する支払実績が約6割となっている主な要因は、東京電力が請求内容の確認に時間を要していること、肉牛の損害算定方法の一部の協議が整っていないことによるものである。
 JA協議会へ賠償請求を委任していない被害者については、東電の職員による請求手続きの説明会の開催や、問い合わせのあった被害者への個別訪問による説明の実施を支援している。
 漁業については、本年6月にJFグループ等の協議会、7月に内水面漁業系統の協議会が設立され、水産物関係被害の賠償請求に向けた作業が進められている。
 観光業については、東電と観光団体が風評被害の損害賠償方法について合意し、10月下旬から請求が可能となることから、県は説明会を開催し周知を図るなど、賠償請求の支援を行っているところである。
【総務部長】
 原発事故にかかる賠償金については、生命・心身の損害等に対するものにあっては非課税、必要経費を控除した後の利益の減収分に対するものにあっては課税対象とする旨、国税庁から示されている。
 こうした税制上の扱いは、損害賠償全般に当てはまるものであり、税制の公平性の観点からは、原発事故にかかるものに限って非課税の範囲を広げることは難しいとの感触を得ている。
 したがい、県としては、非課税範囲の拡充も課題であると認識しているが、まずは原発事故の原因者たる東電にたいし、放射性物質により県内で発生している全ての損害について、広く責任を認め、被害者が納得しうる十分な額の賠償を行うよう強く求めていく。

・原発ゼロ、再生可能エネルギーの導入について

【高田議員】
 次に、東京電力福島原発事故によって国民世論が大きく変化し原発ゼロを求める国民が多数になっていますが、知事はどう受け止めているでしょうか。政府の「エネルギー環境戦略」は原発ゼロを口にしながら先送りし、一方では中断している大間原発の建設再開を認めるという矛盾した姿勢です。原発再稼働を容認し原発に固執し続けるのかゼロを実現するのか問われています。原発被災県として原発からの撤退を国に求めるべきではないか。知事の見解を求めるものです。
 再生可能エネルギーによる発電は、地域密着型による地域経済への波及効果が地産地消で雇用にも中小企業の高い技術力が生かされるものでなければなりません。県内企業が参加できる環境整備が必要であり、県としての支援策は具体的にどうなっているでしょうか。

【達増知事】
 県としては、岩手に原子力発電所を誘致するつもりはないということ、県としてのエネルギー政策は、今後一層再生可能エネルギーの積極的な導入に取り組み、エネルギー自給率の向上を図っていくことが基本である。
【商工労働観光部長】
 県では、再生可能エネルギーの導入促進のため、大規模太陽光・風力発電の導入や、新規に再生可能エネルギー事業に参入する際には、低利融資などの支援を実施しているところである。
 また、新規に取引を希望する企業には、展示商談会への出展を支援し、その参入促進を図るとともに、将来の事業化に向け研究開発を行う場合は、いわて戦略的研究開発推進事業において、太陽光・風力等利用機器の高効率化技術の開発をはじめとし、環境・エネルギー分野を対象とするなど、その推進を図っている。
 現在、導入に向け取り組みを進めている洋上風力発電など、県内ものづくり技術の応用が可能な分野では、地元企業の参入に向けた支援など、県内企業が参加できる環境整備に努めていく。


10.オスプレイの普天間基地配備について
 
【高田議員】
 米海兵隊の垂直離発着機オスプレイが世界一危険といわれる普天間基地に強行配備されました。日米両政府が合意した運用ルートは飛来初日から踏み破られる事態となっています。これまでも度重なる事故を繰り返しており、生態系への影響が心配されるハワイでも中止されています。そもそもオスプレイは、日本の安全とは無縁の海外で活動する殴りこみ部隊です。
 1999年には、米軍三沢基地所属のF16が釜石の山中に墜落炎上し山林火災も発生しました。全国7ルートで低空飛行訓練が行われようとしており、岩手県も含まれています。
 墜落事故を繰り返すオスプレイの低空飛行訓練は国民の命の危険をさらすものであり、知事もオスプレイ撤退の意思を明確に示すべきですがいかがでしょうか。

【達増知事】
 9月25日に、東北防衛局長がオスプレイの安全性等の説明で来庁した際、県民の不安が払しょくされない段階での訓練は容認できない旨を伝えた。
  この問題については、これまで全国知事会においても沖縄の事情も踏まえ、考え方をとりまとめ対応してきたが、今後も全国知事会の場等での議論を通じ考えを整理していきたい。
 
 
≪再質問≫
 
・福祉灯油について

【高田議員】
 必要性については検討していきたいということだった。昨年も沿岸の被災地に限定して福祉灯油が実施されたが、結局県の対応が遅れて、沿岸の市町村では対応がばらばらになった。いつ頃判断するのか。
 福祉灯油は、灯油価格が著しく高騰したときの経済的な負担という観点から実施されている。福祉灯油の必要性は昨年以上に増していると思うがいかがか。
 昨年はクウェートからの支援もあった。そして今回新たに仮設住宅への追いだきが設置され、光熱費が大変高くなっているのではないかと思う。加えて、国保税や介護保険の負担も引き続きしなければならない。こういう被災地の生活実態からしても、灯油価格も史上2番目の価格になっている。こういうことを考えれば、昨年以上に必要性が増していると思うがいかがか。

【保健福祉部長】
 早い時期に対応すべきということだが、昨年度の場合は、いろいろ置かれている状況等を勘案し、制度設計をいろんな形で検討してきた。価格の動向について、今年度は高めに推移していると答弁したが、この動向をよく見極めつつ、制度設計もできるだけ早い時期に行いたいと考えているが、いずれにしてもやはりどういう風な価格で推移するのかということをきちんと把握した上で判断するということが原則であるので、その点はご理解いただきたい。できるだけ早く判断したい。

・空室の仮設住宅の活用、みなし仮設への支援について

【高田議員】
 現在の空き室と活用状況はどうなっているか。被災地に行くと、親戚や子どもなどがふるさとに帰ってくるときに、寝るところがないということで、日帰りになったり内陸部のホテルから通う状況になっている。何とか柔軟な対応ができないかという声が寄せられている。これについては柔軟な対応ができるのか。
 みなし仮設住宅だが、岩手県では10393人がみなし仮設で生活を余儀なくされている。みなし仮設住宅は、仮設住宅以上に孤独感が高いと言われている。仮設住宅ではみんなで集まっているものの、みなしでは分散しているので、孤独感が深くなりさまざまな問題がある。こういうみなし仮設住宅に対して、どういう具体的な支援がされているか。情報不足なども指摘されているが、ボランティアまかせになってはいないか、さまざまな支援策を仮設と同じような対応がされているのか。

【理事】
 仮設住宅の入居状況だが、9月3日現在で入居率は92%ほどである。現在空いている戸数が1000戸ほどあり、これについては、応援職員等の宿舎として約440戸ほど。その他、被災者のための保有というものが約500戸ほどある。こういったことからまずはとにかく被災者の生活の支援ということであるので、この仮設住宅の利用については、そういった観点から適切に判断・対応していかなければならない。
 みなし仮設については、現時点で全体で7700名ほどみなし仮設で暮らしている。こういった方々に対しては、生活支援ということで、県内のほとんどの市町村で実施していただいている情報提供、総合相談窓口の設置等による相談対応、見守り訪問ということで、民生委員による見守り、保健師・相談員による全戸訪問といった形で、さまざまな情報提供・相談活動が行われているところであり、さらには内陸の市町村においては、被災者交流会のイベントなども開催している。県としても、こうした市町村の取り組みと合わせ、本年5月から各戸に定期的に支援事業だとか復興関連情報を郵送で提供させていただいており、ファイナンシャルプランナーによる相談会を盛岡など内陸部も含め開催させていただいている。今後とも、みなし仮設住宅の方々に対する生活支援をしっかりやっていきたい。

・事業所の再建について

【高田議員】
 グループ補助金では、第4次申請で43グループ929社、225億円の申請に対し21グループ456社、140億円にととどまった。半分が不交付になった。被災事業者にしてみれば天国と地獄である。再建したいすべての事業者を応援する対応が必要ではないか。
 グループ補助については、国の動向を注視して対応するということだった。しかしのんびりしていていいのかと思う。つまり、グループ補助については、平野復興大臣が必要性を認めて、来年度の予算で対応すると。しかし来年度の予算に計上すれば、結局来年の春以降の事業になる。そんなことになったら、ますます事業再建を断念する事業所がどんどん出てくるのではないか。
 いま政局がらみで臨時国会も召集されない事態である。早く招集し、臨時国会冒頭にでも予算提案してもらうことをしてもらわないと、被災地の事業再建は本当に前に進まない。知事が先頭に他の被災県にも国会議員にも働きかけ喫緊に対応するべきではないか。

【達増知事】
 グループ補助金は今すぐ必要だという観点から、9月補正に盛り込んだところであり、なぜ国の方が今そうなっていないのかというのは非常にあってはならないことだと思っている。
 グループ補助については特に、さまざまな要望の中でも強調したところであり、あらゆる機会をとらえて国に訴えていきたい。

・被災県立病院の再建について
 
【高田議員】
 当該市町と協議しているということだった。この間県議団で被災した県立病院を視察し院長先生、自治体関係者と懇談してきた。高田病院は、震災前以上に外来患者が戻り、大変積極的な取り組みが行われている。高田病院は場所もほぼ決まり、石木院長は80床を提案し、県立病院の学会でも公式に発言している。
 大槌も院長先生から具体的な場所が提案された。これは町や教育委員会と協議しなければならない問題だが、被災地のこういう現場に行き、本当に医療局がもっと積極的に取り組めば早く再建計画が示されると思う。医療局の対応が少し弱いのではないか。
 条件の整ったところから再建を進めるべきだと思うがいかがか。

【医療局長】
 それぞれの自治体で状況が異なっており、陸前高田市においては復興計画において氷上山麓地区を健康と教育のゾーンと位置付けており、その中で高田病院の整備という形の復興計画になっている。先日公表された土地区画整理事業を導入する高田地区の土地利用計画検討案においては、同様に高田地区に県立病院を整備する案となっている。今後地区の住民に対する説明などを行い、土地利用計画を今後決定すると聞いている。
 大槌・山田については、復興計画の中で、公共施設は原則として津波の浸水想定区域外に整備するという方針が示されている。現在具体的な土地利用計画などの策定を進めていると聞いているので、こうしたそれぞれの状況を踏まえながら、場所・規模・機能等を含めて今年度中を目途に検討を進めていきたい。


≪再々質問≫

・グループ補助金について

【高田議員】
 あらゆる機会をとらえて国にたいし申し上げたいということだったが、平野復興大臣が来年度の予算で対応するという対応は大変問題である。これが計上されても来春以降の事業になる。そこまでは事業者はもたないのではないか。せっかく手を挙げて再建したいという事業者がたくさんある中で、一刻も早い対応が必要だと思う。今月にも他の被災県にも呼びかけて行動する必要があると思うがいかがか。

【達増知事】
 グループ補助金は、さまざまなインフラの復旧の時期等との兼ね合いで、来年度以降に必要になってくるというところもあると思うので、来年度以降の予算措置も重要と考えるわけだが、やはり年度内にいま必要としているところがあるわけであり、そこは補正予算なり予備費という手もあるかもしれないが、年度内の予算措置されるよう求めていく。

・内陸部の事業者への支援について

【高田議員】
 内陸部の被災事業者への対応も重要である。今回の地震の被害というのは、一関でいえば岩手・宮城内陸地震の6倍を超える被害状況である。住宅の再建では、内陸部の自治体にも支援しているが、事業所の再建だけはなぜか支援しないと。これは制度的な欠陥ではないか。
 内陸部の事業所の被害の実態は県としてどう把握しているか。

【商工労働観光部長】
 内陸部においても大きな被害が発生したと承知している。このため、被災された企業等への、中小企業の金融対策として、長期低利の中小企業東日本大震災復興資金という融資制度を創設しながら支援してきた。
 グループ補助についても、内陸部・沿岸部との関係性を保つ中で、一部採択をした経緯もある。
 内陸部の事業については、沿岸被災地の被害の甚大性に鑑み、そちらにはグループ補助等の支援を手当てし、内陸部等の損害については、融資制度等を有効に活用していただきながら事業所の再開に向けて支援してきている。

・いじめ対策について

【高田議員】
 いじめの広がりというのは、社会の反映ということも言われているので、すべて学校だけで解決できる問題ではないと思う。しかし、いじめ対策のカギを握るのはやはり学校であり先生方だと思う。そのためにも、教職員がいじめ問題に力を発揮できるような環境―多忙化の解決や学校のあり方を改革する必要があるのではないか。
 とにかく学校現場、先生方は本当に多忙である。行政への報告書を作ったり、各種の打ち合わせ、いろんな研修会への参加など、本当に肝心の授業の準備とか子どもたちと真剣に向き合う時間がなかなかないという中で、子どもの変化をなかなかキャッチできない面もある。
 第二に、目標達成型の学校経営により各学校の教育活動が数値で測られ、その達成具合で評価される問題もある。学力テストなどの平均点、進学実績など、どれだけ目標の達成に貢献するかというのが、教員と学校の評価になってしまい、なかなか時々のいじめ問題への対応に取り組めない環境にないということもあると思う。相談窓口、早期発見、アンケート活動、どれも大事なことですが、この問題にメスを入れなければ、いじめ問題も根本から改善できないのではないか。

【教育委員長】
 第一義的には、教育のプロとしての先生方に頑張っていただきたいと思っている。
 家庭においても、子育ての考え方として、「他人をいじめるな」とか「人の悪口を言うな」というようなことを日常的にやっていただきたいと。そして地域においても、正義感がみなぎる人を思いやるようなまちづくりに地域の方々にも頑張っていただきたいと思う。
 そこで学校の先生方が多忙化ということだが、たしかに忙しいということは知っているし、いろんなデータが出されているが、しかしこういう子どもがいじめられ死ぬかもしれないという事件があったときには、やはり時間を超越して働いていただきたい。その分を次の日軽減するということをやっていただきながら解決していただきたいと思うし、疲労感のある多忙と充実感のある多忙もあるのではないかと思う。
 目標達成型の問題については、例えば学校を序列化するのではないと。子どもたちに対して、どういう学校にするか、どういう子どもたちに育てたいかを子どもたちにも親にも示して、1年経ったらどこまで成長したか、それを見るにはある程度の目標が必要ではないか。
 テストについても、平均点を出したりするが、我々は順位は出しておらず全然問題にしていない。先生方の指導力の反省、工夫のために、あるいは子どもたちの欠陥がどこにあるかを見るためにやるのであり、必ずしも序列化をするのではなく、指導に生かすためにやっているということを述べておきたい。

・放射能汚染問題について

【高田議員】
 しいたけ農家は「やれるかどうか先が見えない」ここに応えた対策、一人ひとりの生産業態にあった支援策をしていただきたい。出荷制限解除に向けた取り組みがどうなっているのか。あるいは、再生産するための支援策がまだまだしいたけ生産農家に伝わっていない。そういう状況をよく説明し、一緒に再建のために考えていくという取り組みが必要ではないか。
 しいたけ農家を歩いていると、かなりの方々が生産を諦める状況である。それはさまざまな支援策を用意しても、結局汚染されたほだ木を処理する場がないなど、さまざまな生産条件が農家により個々に違う。確実に辞める方がたくさんいる。こうした辞めざるを得ない農家の方々に対して、新たな作物を導入した場合には特別の支援をするというような対策も同時にやっていかなければならないと思っている。
 人口ほだ場の問題も議論されたが、これから協議すると。それも対応が大変遅れている。そういう農家への情報提供をしっかりやっていくことが大事である。

【農林水産部長】
 出荷制限解除に向けた動きだが、出荷制限されて以来、解除に向けて継続的に国とは協議を続けている。この段階になり、秋に必要な調査、あるいは基準を超過した原木しいたけが流通しないということに対する対策を講じることにより、国が是とするのかといった点について、いま国と詰めている段階である。いま国は7月になってからしいたけだけについて基準を超える汚染の原因となる要因が管理に取り除かれていることということを特に追加してきたので、それへの対応というのを具体的にどう産地として講ればいいかを詰めている段階である。
 県としては、できるだけ早期に出荷制限解除につながるように、全力をあげて取り組んでいく。
 先々の展望が見えないという話だった。これについては、汚染されている生産物を外に出さないということで、生産物の検査をさせていただき、あるいは将来的に発生する可能性のあるほだ木を排除するということで、ほだ木の検査をさせていただき、さらにそういったものが生産環境の中から取り除くための処理経費について補助するというスキームを組み、さらにほだ場自体の汚染状況もあると。風評被害にもつながりかねないということで、今回の9月補正ではほだ場の環境整備の予算もお願いしている。そういったことで、環境条件を整えながら、あとあと国が出荷制限を条件付きで解除するといった運びになったときに、その対応ができていなかったということにならないように準備は進めていた。
 さらに生産者の方々に県の考え方が伝わっていないという話があった。こういった話については、もちろん振興局や市町村と意見交換しながら1つ1つの施策については、収集家団体の方々とも意見交換しながら組み立てて来ているが、それが生産者まで伝わっていないという指摘であるので、改めて今回の補正でお願いしている分を含めて、生産者の方々まで伝わるように周知徹底したい。
 特に汚染状況が強い一関農林振興センター管内では、県職員は一戸一戸の生産者を訪問し、ほだ場の状況などを確認しながら対応させていただいている。
 標準的なものに対応すればいいという考え方ではなく、一戸一戸の生産者の方々を見ながら対応していきたい。


≪再々々質問≫

・しいたけ農家に対する支援について

【高田議員】
 再生産を支援するさまざまな予算措置がされた。ほだ場の除染や焼却処理の費用とかほだ木の確保とか。しかしそういう支援策が打ち出されても、シイタケ生産農家個々によっては対応できない、辞めざるをえない農家もいる。そういう農家に対しては、特別の支援策が必要ではないか。

【農林水産部長】
 今いただいたお話なので、市町村なり収集家団体や生産者の方々と意見交換しながら研究させていただきたい。