2012年10月10日 商工文教委員会
教育委員会(いじめ問題等)に関する質疑(大要)


・いじめ対策について

【斉藤委員】
 本会議で議論されたときに、教育長の答弁は「緊急調査は2000件」と。解消率は約8割と。調べた途端に解消しているというのも少し不思議な感じがするが、去年のいじめ調査というのはかなりまとまって報告され緊急調査がされたと。2000件の実態、特徴を示していただきたい。

【生徒指導課長】
 文科省のいじめの緊急調査、おおむね2000件の内容だが、対象とした学校は小中学校・高校・特別支援学校すべての公立学校である。各学校・市町村教委から回答があった区分、対応で一番多かったものが、「冷やかし」「からかい」といったこと。次に多いのが、「軽くぶつかったり、叩かれたり」、「仲間はずれ、集団による無視」というのが多かった。

【斉藤委員】
 昨年の調査で331件と。東日本大震災津波でああいう被害を受けて絆が問題になっているときに、331件のいじめがあったことは深刻である。
 331件の詳しい中身は、「ひどくぶつかられたり叩かれたり蹴られたりする」が30件、「金品をたかられる」14件、「金品を隠されたり盗まれたり壊されたり捨てられたりする」20件、「嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたりさせられたりする」47件。かなり悪質だが合計で111件、全体の20.5%である。2000件の中にはどれだけあったか。

【生徒指導課長】
 委員ご指摘の部分については、「金品をたかられる」が40件弱で1.3%、「金品を隠されたりする」が200件程度で6.9%となっている。「嫌なことをされた、恥ずかしいことや危険なことをされたりさせられたりする」が170件程度で約5.8%となっている。「ひどくぶつかられたり叩かれたり蹴られたりする」は60件ほどあり約2%となっている。

【斉藤委員】
 足すと470件、去年の調査は111件だった。緊急調査をしたらこれだけ増えた。かなり深刻ないじめだと思う。こういういじめは、かなり進んだ段階だと思う。今回のいじめ調査というのを本当に真剣に受け止めないといけない。
 いじめ問題の専門家は、いじめのない学級は全国でも2割もないと。文科省も皆さんも、いじめはどこの学級でもどの子どもでも起こり得ると。どういうことかというと、そういう教育の環境、社会の環境に子どもたちが置かれているということである。どこの学校でもどの学級でもどの子にも起こり得るということは、そういう学校の現状、社会の現状に子どもたちが置かれているということである。
 教育長にお聞きするが、大津の中学2年生の自殺事件、これは教育委員会の対応が悪かったというので、衝撃的に全国に報道され、その後もいじめ自殺事件が相次いだが、今2000件の調査を踏まえて、県内におけるいじめ問題、これをどう受け止めているか。

【教育長】
 やはりどの学校でも学級でも起こり得る、子どもたちがそういう環境に置かれていることはその通りである。
 思い起こせば、我々も中学時代高校時代同じようなことがあったのだと。それがこのようにデータをとっているかといえばそれは弱いところがあり、近年になりこれが急激に増えてきたかはなかなか検証が難しいが、いずれこういったことが子どもたちの活動に影を落とすことがあってはならないと。したがい、大津の事件の指摘もあったが、学校や教育委員会、あるいは父兄も含めて地域全体で取り組んでいかなければならない課題だろうと思っている。それぞれ学校においては情報共有をして、学校全体としてそういうことに対応していると。非常に子どもたちが多感な年ごろなので、同じ事案に対しての学校の評価や教員の対応が異なるというのが非常に敏感に対応するので、そういったことを注意しながら学校をあげて対応していかなければならない。そのための学校体制も当然つくっていかなければならないと思っており、意識も合わせていかなければならないということで、緊急に今月全小中学校・市町村教委の生徒指導担当に緊急においでいただき、研修会を行うというのはそういう意味もある。
 いずれ子どもたちの環境、学校の環境を少しでも改善し子どもたちの健やかな学校づくりに努めていきたい。

【斉藤委員】
 去年のまとめた調査の中で、いじめ発生件数の推移というのは昭和60年度からずっとある。昭和60年度は1674件、大きな事件が起きた時である。平成18年度が1913件、これも大きな事件が起きたときだった。しかしあとは300件とか400件台。2000件台というのは始まって以来である。
 私たちの時代にもあったかもしれないという、そういう状況ではない。子どもをめぐる状況が変わっている。私はそういう子どもが置かれている状況、社会の反映もあるが、教育をめぐっては、国連子どもの権利委員会が指摘しているように、過度に競争的な教育が日本で行われていると。これは国連が世界的な視野で見て日本の教育を指摘している。それが子どもたちのストレスを高めている。これは3度にわたり指摘されている。
 本会議で教育委員長は、「岩手県は学力テスト、さまざまなテストで順位をつけていない」と言っているが、そんなことはない。市町村教委にいけばきっちり順番が出され、平均点が悪いところはそれを上げる特別の取り組みをしている。現実はそうである。ああいう認識にいたら間違いである。学力と言ってもテストの結果はほんの一部である。それで学校を評価し、子どもたちの尻を焚きつけてやっていることが大変ストレスを高めている。昔と違って、学歴社会といっても勉強すればいい大学いいところに就職できないという、変わった状況である。
 もう1つは、子どもの貧困、家庭の貧困である。これは国際的にも有数である。だから家庭の教育力が落ち込んでいる。そして学級などというのは死語になっている。学級集団の形骸化も言われている。そしてそれに対応する先生方は多忙化で、子どもを見ないでパソコンに向かっている。教師集団の対話もないと。昔は何か事件があれば、職員室の中で相談ができた。今はそういう余裕がなくなっている。だから多忙化で子どもたちの変化が見れない。こういう問題をしっかり見て、本当にそういう構造的な問題に正面から立ち向かうような対策が必要だと思うがいかがか。

【教育長】
 全国的にああいったいろんな事件でクローズアップされたときに数字が跳ね上がる。そしてまた落ちてくるという傾向が残念ながら見られる。それはやはり評価の問題もあるかと思う。したがい、やはりそのときは非常に関心を持っているが、それが時間が経つと徐々に薄れてくる、こういったことがあってはならないと思っており、今回企画したような研修会を今後もずっと継続していきたい。それから構造的な問題についてはいろいろご指摘があったが、これは全部教育の場面だけで担えるかというと、非常に難しい問題もある。ただ、我々として、そこに子どもがいて、そこにいじめられている子どもがいるとすれば、そこを何とか現在ある中での最大限の努力をしていかなければならない。そこは学校や市町村教委と一緒に取り組まなければならないと思う。
 学力テストの話があったが、学力テストについて、実は今回の県民計画の具体的なアクションプランの中では、平均点とか順位という言葉は一切使っていない。目標としているのは、子どもたちが授業を聞いて分かる、その率をどう高めていくか。やはりそこがベースだろうと。その結果として学力があるだろうと思っているので、そういった思いで県教委としては学力向上についての計画を作っているということを、全小中学校の校長先生にも話している。したがい、やはりテストをやることが目的ではないので、そこで子どもたちがどこでつまずいているかということをそれぞれ分析して、どうそれを良い方向に結び付けていくのか。子どもたちが分かる、授業を聞いて良かったなと思えるような授業を1つでも多くやっていくと。そういう思いで我々としては、いじめについて、そこで困っている子どもがいる、学校皆でそれに寄り添っていくという体制をできることを最大限やっていきたい。

【斉藤委員】
 いじめ問題は深刻に広がっていると思う。そういう受け止めで今回の機会を、そこの解決に向かう、大事な契機にしなくてはいけない。
 そこで、調査したとたんに8割解消というのが腑に落ちない。何をもって解消というのか。解決に取り組んでいるというのなら分かるが、こういう形のデータを出すと、無理して解決しなければいけなくなる。そんな単純な話ではないと思う。一時的に制圧したとしても、制圧したのではいじめは解決しない。いじめられている子どもの安全を守るのは最優先だが、いじめている子どもを解決しないといけない。いじめている子どもも大変なストレスを抱えている。そういうことも含めて解決するとしたら、かなりの腰の入れたことをしなければならない。
 本会議では、出席停止ということも出されたが、出席停止というのは最後の手段である。基本的には、子どもの安全を守りながらいじめている子どもを解決すると。そこを最大の基本にすべきだと思うが、担当課長はいじめ問題の研修会でこの問題を提起して解決に取り組むわけなので、県教委としてどのように取り組もうとしているか。

【生徒指導課長】
 はじめに先ほどの数字だが、あれは複数回答となっているので、2000件に対して200件で6.9%というのはそういう意味である。昨年度の調査についても、331件に対しての複数回答、五百数十件の回答となっているので、単純に比較は難しいと考えている。
 いじめの解消については、調査の時点で解消しているというのは、当然年度途中の調査であり、8月時点での調査をかけたものである。よってすでにそれまでの間に発生したいじめに関しては、すぐに学校でも対応いただいていると解釈しており、当然委員ご指摘のように、加害の児童生徒に関しての指導も含めて被害者を守るのはもちろんだが、加害の児童生徒に対しての指導と合わせて、いじめの行動として、取り巻く周りの子どもたち、傍観的になっている部分、またはそれをはやし立てる者もいるので、そういう学級・学年・学校での指導等も含めて、各学校で適切に対応していただき、早期の解決につながっているものと解釈している。そういう点も含め、研修会等においては、学校体制できちんと臨んでいただきたいということを中心にすえて、各学校からの参加の生徒指導主事または主幹教諭の先生方に、一人の問題として抱えることではなく、学校体制として是非いじめに関しては真摯に当たっていただきたいということを中心に説明、お願いしたい。

【斉藤委員】
 教育委員長のメッセージは拝見した。それなりに気持ちの伝わる分かりやすいメッセージだったと思う。ただこれは一過性にしないで、どの子にもどの学級にも起こり得ると。そのためにやはり教師集団で問題を共有し、取り組めるようなものにしていただきたい。


・大槌高校グラウンド用地の活用について

【斉藤委員】
 この間大槌高校に行ってきた。
 実は県立大槌病院、大槌高校のグラウンドに再建整備したいというのは院長の強い要望だった。県立病院の再建というのは、安全な高台と再建のスピードである。そして医師の宿舎もないという中で、そういうのも一体的に整備したいと。個人的には適地だと思う。ただ、あそこは大槌町が統合小中学校の予定地にもしている。だからこれは最終的には大槌町のところで調整していただくことが必要だが、県立病院というのは、寄るも患者がいる、職員も働いているところで、そして命に関わる問題で、これから山を造成してということでは間に合わない。そういう点でこの問題を県教委としてもとらえ、医療局から話もいっているかもしれないが、上手く町も含め調整していただきたい。

【教育長】
 大槌町はなかなか公共施設を建てる場所がない。たまたま大槌高校については校舎も被災せずグラウンドも使える、したがい貴重な地だと。ただ、大槌高校の子どもたちは、今年の夏の高校野球ではベスト8まで残り大きな活躍をしてくれて、そういった子どもたちの運動の環境を守っていかなければならないという我々の立場もある。そういった小中高、地域住民の方、大槌高校といってもやはり大槌の子どもたちが行かれている学校なので、大槌町や医療局とよく相談させていただき、大槌町の住民の方、子どもたちにとって何が一番いいのか、決して子どもたちが困ることのないよういろいろ調整させていただきたい。


・「不適格教員」としたとする問題について

【斉藤委員】
 現役の先生から「上司である校長から不適格教員というレッテルを貼られ、校内研修までさせられた」という相談を受けて事実確認をした。そしたら、「県教委はそういう不適格教員と協議も指示をしたこともない」という回答だった。
 平成20年の2月13日にこの先生は校長室に呼ばれ、「県教委は君を問題のある教師に指定し、1年間久慈高校で校内研修を受けてもらうことにした。研修の結果改善が見られなければ教育センターでさらに1年間研修を受けてもらう。これが県教委の決定だ」と。不適格教員というのだったら、その根拠を示していただきたい。県教委が決めたというのなら文書があるのではないか。そういうことを求めたが、そういうことは一切示さず、現実問題、新しい年度で3度にわたって自らの授業を副校長が指導に入り、授業が終わった後、生徒が見ているところで指導すると。生徒の前でこの先生は不適格教員だというような指導が実際に行われた。
 この教員にたいし、不適格教員という校長からの提起や協議はあったのか。改めてお聞きする。そして不適格教員という場合に、どういうシステムで不適格教員というのは認定・研修されるのか。

【県立学校人事課長】
 ご指摘のあった平成20年に、久慈高校の校長と県教委で、指導不適切ということで認定する、しないという協議をしたことはない。
 指導力不足教員の状況だが、現在は指導が不適切である教諭等の定義として、指導が不適切である教諭等の認定の手続き等に関する規則第2条第2項により、「教科に関する専門的知識および技術、学習指導および生徒指導の方法、その他教員として求められる資質および能力に課題があるかないか。日常的に児童等に対する指導を行わせることが適当ではない教諭等のうち、改善が見込まれる者」と規定している。
 制度としては、課題を抱える教諭にたいし、経過観察と必要な指導を行い、改善が見られない場合、校内研修を実施し、さらに専門家で組織する判定委員会の意見を聞いて判断し、総合教育センターで指導・改善研修1年間を実施する。その指導改善研修の結果、判定委員会の意見を聞き、復帰・復帰不可・研修継続を決定する。復帰不可の場合、職種変更または分限免職となるが、分限免職は法律上慎重にすべきとされており、本人の意向を確認の上、職種変更を規模する場合は、その能力実証を行い、可否を判断するなど他の職も含めてすべての職について適格性を検討し判断することが求められている。この制度により、平成15年度からこれまでに判定された教諭は25人である。
 県教委としては、今後とも課題を抱える教諭の実態把握に努め、校長の指導のもと、自然改善等を行うなど、適切な措置を講じることにより、指導が不適切な教諭が児童生徒の指導にあたることがないようにして、学校教育に対する信頼向上を図っていきたい。
 なお制度としてこのように載せられる前に、校長のところで指導あるいはお互いに授業を見合いながら研究時間等を行う中で指導力の向上を図っていきたい。

【斉藤委員】
 今確認した。そういう協議も決定もないと。校長が県教委の決定だと言って、不適格教員だと校内研修した。これはどういう問題か。

【県立学校人事課長】
 斉藤委員にお話になった方はそのように捉えているとのことだが、その中で校長が何と言ったかというのは、現段階では我々は把握できていない。あるいはそれ以前に、間接的に話があったということだが、その時点で担当者が調べて問題にするようなことではなかったということで、一度終わっていることだと考えている。

【斉藤委員】
 弁解を聞いているのではない。この先生は何度も確認して、不適格教員だと言うのなら、その文書を示してほしい。しかし事実問題として校内研修を3回している。あなた方の事実確認は後でやったらいいと思うが、こういうケースはどうなるか。これはパワハラであり人権侵害ではないか。

【教職員課総括課長】
 事実確認もして、その当時の職員にも聞き、そういう事実ではないと聞いているが、事実としてそういうことがあったかどうかの確認がとれていない状況だが、指導力であるかどうかの認定については、我々の方では、校長からの申請、あるいはそういう申し出を受けて、十分協議をしてやっているところなので、そういうことはないものと思っている。
 もしそのような形で指導力不足というものについての制度を不参しながら指導したということになれば、若干問題があるものととらえるので、そういった時には管理職に対して指導すべきと考えている。

【斉藤委員】
 調べたが事実確認できなかったと。本人に確認したのか。誰に確認したのか。
 わたしは克明な告発を受けている。校内研修をされたのは事実である。当時の副校長を確認してみてほしい。
 不適格教員という認定がなかったら、それはまさに人権侵害ではないか。

【県立学校人事課長】
 当時の副校長に確認している。

【斉藤委員】
 この校長は、「9時まで仕事をするから久慈高校だ」と。こうやって進学一辺倒で指導した。黒北に転勤してからも同じである。「9時10時まで、警備員から鍵を借りているから何時まで仕事をしてもいい」と。もうこの校長の評価基準は進学率、それだけと言ってもいい。
 この校長先生の名誉のために言うが、一人の先生としては大変情熱的な力のある先生である。しかし全ての教師にそういうことを押し付けたら、これはとんでもない。
 それで不幸な事件が起きた。久慈高校から宮古工業に転勤させられたある教師が、黒北の校長宛に「生徒を誘拐する」というメールを出して逮捕された。これは許されない事件だが、「人事異動に不満があった」と裁判でしゃべっている。黒北の先生に聞いたら、校長に同調する先生は一人もいなかったと。そういう中での犠牲者の一人ではないか。
 いま具体的に人権侵害の問題は示した。その根拠がなかったということになったら、これは明確なパワハラであり人権侵害である。それはしっかり調べて対応していただきたい。

【県立学校人事課長】
 校長が夜遅くまで残って進学指導に熱心であったということはその通りである。
【教育長】
 個別の事案について申し上げるのは差し控えたいが、いずれ校長としては、それぞれの教員の状況をよく把握し、また子どもたちの状況を把握し、教員が働きやすい環境をつくるように努力すべきだと思っているので、そういった趣旨で各校長には引き続きそれぞれの学校の職場づくりを求めていきたい。