2012年10月16日 決算特別委員会
人事委員会に対する質疑大要


・県職員の超過勤務の実態把握とサービス残業の改善について

【斉藤委員】
 県職員の超過勤務の実態把握とサービス残業の改善の取り組みはどうなっているか。

【職員課総括課長】
 毎年人事委員会は、労働基準監督機関として、職権を有する全事業所にたいして、労働基準法および労働安全衛生法等の順守状況について書面調査を行っている。昨年度も調査の中で、超過勤務の状況に対して、超過勤務の実績の把握方法や超過勤務縮減の取り組み等について調査を行った。この書面調査の結果を踏まえ、超過勤務の多い事業所等6ヶ所に出向き、職員からの聞き取りや関係書類等により確認を行い、超過勤務にかかる実態の把握に努め、超過勤務手当の支給に関しては不適正な事例がなかったことを確認している。
 これらの結果に基づき、昨年度は、平成23年12月28日付の文書により、各任命権者にたいし、超過勤務時間の適正管理に関しては、超過勤務命令権者による事前命令と事後確認を徹底することについて指導するとともに、超過勤務の縮減に関しても、東日本大震災津波の影響により超過勤務時間が例年を上回ると見込まれることから、職員の健康への影響を考慮し、超過勤務について一層の適正な運用と縮減対策に努めるよう指導している。

【斉藤委員】
 23年度は文字通り大震災の復興に身を粉にして県職員が取り組んだ年である。実際に超過勤務時間はどのように推移したか。

【職員課総括課長】
 22年度から23年度の超過勤務時間だが、各任命権者から毎年超過勤務時間に関する報告を受けており、1人当たり1ヶ月当たりの平均超過勤務時間数は、知事部局は、22年度は11.9時間だったが23年度は14.1時間ということで18.5%の増となっている。教育委員会は、22年度は11.7時間にたいし23年度は10.4時間ということで11.1%減少している。警察本部は、22年度は33.8時間で23年度は35.5時間と報告を受けている。全体で見ると、平均で22年度が19.7時間にたいし、23年度は21.6時間ということで9.6%増加している。

【斉藤委員】
 知事部局では、月で平均2.2時間しか増えなかったと。去年の震災復興の現場を見ている私たちとしては信じがたい。これは実態を把握していないと思う。これはあくまでも超過勤務手当を支出した時間ではないか。
 県警の場合は35.5時間、実際には超過勤務手当は19時間しか出ていない。これは2月県議会で本部長が答えている。県警は実態に比較的近いかもしれないが、そういうことを理解しているか。

【職員課総括課長】
 超過勤務時間の実態については、いずれの事業所においても現在自己申告制により行っていると報告を受けている。その際に、厚労省の基準等もあり、使用者が講ずべき3つの措置がある。1つは、職員への十分な事前説明を行っているかとか、超過勤務時間について上限時間を設定するなど申告を阻害するようなことが行われていないか、また超過勤務の状況について定期的に内部で実態調査を行っているかといった点について、当委員会においても毎年調査しているが、昨年度もその観点で調査した結果では、不適正な事例はなかったところである。
 県警の関係では、昨年度行った事業所調査においては、警察の事業所も含めて、超過勤務の多い事業所は6ヶ所において実態確認を行ったが、超過勤務手当の支給に関して不適正な事例はなかった。しかしながら警察本部においては、超過勤務時間が他の任命権者よりも比べて多いということもあるので、業務の合理化や効率化など超過勤務時間の縮減に努めていることについて、人事委員会としては引き続き取り組みの進捗を注視しながら、超過勤務の縮減に向けて引き続き指導していきたい。

【斉藤委員】
 昨年、月平均で前年度より2.1時間しか超過勤務時間が増えなかったということは考えられない。これは超過勤務手当支出時間ではないか。
 警察本部は、本会議の議論でも超過勤務時間と手当時間に大きなズレがあることが明らかになり、県警本部長は認めている。これはサービス残業である。そういうサービス残業があることを認識しているか。
 なぜこういうことになるか。岩手県庁は自己申告制をとっているからである。民間はこんなところはない。サービス残業を横行させるというので民間では是正されている。県庁だけが自己申告制で自主規制させられている。きちんと出勤退勤時間を把握すべきである。そうすれば、超過勤務時間と手当時間のズレがあるのはある意味では当然である。予算の枠があるから全額出ないという事実もあると思う。しかし手当と超過勤務時間が一体ということになったら実態が全然分からない。

【事務局長】
 22年度23年度の時間については、各任命権者から聴取した時間である。
 サービス残業というものについては、基本的には我々は認識していない。超過勤務の多いところについては、多い事業所について実際に出向いて書類等を確認し、それで間違いなく不適正な事例はなかったと確認している。
 自己申告制の部分については、たしかに厚労省の基準では、始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法ということで、使用者が自ら現任することにより確認し記録すること、タイムカードやICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録することのいずれかによるとされている。ただ、これらの方法によることなく、自己申告制により行わざるを得ない場合には、@使用者が事前に職員に対して自己申告制について十分な説明を行うこと、A自己申告により把握したものと実際の労働時間が合致しているか必要に応じて実態調査を実施すること、B適正な自己申告を阻害する目的での超過勤務時間の上限設定等を講じないこと―という3つの措置を講ずるということにされている。しかし県においては、任命権者によっては、庁内情報共有システムが導入されていない部署がある。また仮にシステムで管理する場合には、勤務時間後の退庁時刻の記録が超過勤務によるものか、業務外によるものかの判別が難しいこと、業務によっては、県民や関連業務等との関係から工場等のように時間で業務を終えるわけにはいかない面があることなどの事情から、原則的な方法によることが難しいために、超過勤務を行わざるを得ない場合の対応として、自己申告制をとっているものと理解している。

【斉藤委員】
 結局、あなた方が把握しているのは県庁の人事課の調査である。この人事課というのは、超過勤務時間と手当が一致している。こんなことは普通ありえない。あなた方は、自ら実態を把握するということをしていない。
 県警本部は、自ら超過勤務時間を把握して超過勤務手当がそこまでいっていないことを認めている。ある意味では一番まじめにやっている。しかし議会で、警察の予算・決算で具体的に取り上げて明らかになっているにも関わらず、人事委員会で議論されないのはどういうことか。一番大事な労働基準監督機関の仕事ではないか。
 そしてこういう議論があったということを人事委員会に必ず報告していただきたい。そして自ら、県庁任せにしないで、この大震災の時に献身的に頑張っている県職員の方々に、賃下げされた中で残業手当も出ないということがあってはならない。こういう議論があったことを人事委員会にしっかり報告していただきたい。

【事務局長】
 我々は事業所調査ということで、すべて警察も含めて人事委員会が所轄している事業所から報告をいただいている。超過勤務の分についても報告をいただいている。それでその中で、超過勤務の多い警察等に出向き、実際に基準給与簿とか、きちんと支払いがなされているかどうかという分について、適切になされていると、不適正な事例はないということで調査してきている。
 超過勤務の問題については、この分については毎年勧告等でも触れている。人事院に対しては、この分についてはきちんと報告している。また各任命権者に対して実施している事業所の調査に結果についてもきちんと報告している。