2012年10月16日 決算特別委員会
総務部に対する質疑大要
・大震災津波の復興の取り組みと検証について
【斉藤委員】
5800名を超える死者・行方不明者を出したというところに大震災の最大の問題があったと思う。これだけの犠牲者を出した原因・要因をどう分析されているか。
【防災危機管理監】
津波により多くの方が亡くなった最大の原因は、逃げ遅れによるものと認識している。逃げ遅れの要因については一概には言えないが、津波規模の過小評価、防潮堤・防波堤などのハードへの信頼感、過去の津波警報の空振りからの油断が生じて、津波開始時刻が遅れたこと、消防団等の避難支援従事者自らが避難すべき基準が不明確だったことなどが考えられる。
【斉藤委員】
釜石市が全住民を対象にしたアンケート調査で、震災時自宅にいたのが58.4%、犠牲者が津波に流された場所がどこかというので36.3%が自宅である。さらに、避難中が20.2%。だから避難しなかったと。もう1つは、避難したが遅れた。これは釜石市のアンケートなので、全てということではないと思うが、こういう実態分析を県としてもしっかりやるべきではないか。
静岡大学・総合防災センターの牛山先生などの研究成果が自然災害学会などで報告されているが、大槌・山田の犠牲者の動向について、「10分あれば高台に避難できた人が多かった」と。しかし避難が遅れたために大きな犠牲を出したという分析である。
今回これだけの大きな犠牲を出したという実態や要因・分析を明らかにしてこそ、今後の津波対策・災害対策に生かせるのではないか。そういう実態の分析や調査はどうなっているか。
【防災危機管理監】
20年、22年にチリ地震津波があった。その時も、避難率が9.5%ぐらいだったが、これはおかしいということで実態調査を行い、その結果、避難した人が約60.8%、避難しなかった人が35.6%で、避難しなかった人たちがなぜ避難しなかったのか理由を聞くと、自宅が高台にあるからとか、防潮堤があるからとか、これまで被害を受けたことがないからといった回答が84%で、そういう根拠のない思い込みで逃げなかったと。今回、釜石のアンケート調査も、だいたいこの時と同じような傾向を示している。そういう点から、津波が来ても、正常化の偏見という災害心理があるが、自分は大丈夫という心理があるのではないかと考えている。したがい、そういう正常化の偏見をいかに少なくするかということを、これから住民に普及徹底しておかなければいけない。もちろん行政に携わる者も、そういう意識をなくすような努力をすべきだと思っている。
【斉藤委員】
未曾有の大震災津波を受けて、これだけの犠牲者を出した。そういう意味でいくと、研究者の力も借りて、ぜひ引き続き徹底した実態の調査・分析をしてそれを本当に生かしていただきたい。
津波の第一波、第二波の到達時間はどのように記録されているか。
【防災危機管理監】
県内の津波観測値については、気象庁では、津波による計測機器が破損するなどにより、第一波第二波の正確な到達時間や高さは示していない状況である。
【斉藤委員】
気象庁は、津波警報が3mという大きなミスを犯したと。10mといったときには津波は来ていた。これは重大だと思うが、例えば宮古市などは、最大波に近い津波が来た時刻は15時26分と。それまでには40分あった。
それから、県土整備部は防潮堤の高さの設定のために、堤防付近の津波痕跡高を出している。それを根拠に防潮堤の高さを出しているので、気象庁は出していなくても、何らかの形で今度の津波の高さとか、後追い調査で分かることもあると思う。
例えば県南の方が比較的早いが、大船渡市は15時18分、釜石市は15時21分に最大波が到達したとなっている。ここは湾口防波堤があったところである。湾口防があって遅らせたと言いながら、一番早く到達している。この検証はしっかりやらなくてはいけない。あの湾口防波堤は津波を本当に遅らせたのか。第二波第三波には効果がなかったのではないか。そういう検証をしっかりやらなくてはいけないのではないか。
【防災危機管理監】
気象庁の速報値、津波の高さは宮古市で15時26分に8.5m以上、釜石市では15時21分には4.2m以上、大船渡市では15時18分には8m以上と、速報値は出ている。しかしながら、地盤沈下だとか測定器が壊れているということがあり、正確な数字が出ていない。事後の痕跡から推測すると、例えば陸前高田は15.8mというような数値もある。陸前高田市は15時24分に最大波が来たとなっているが、これは観測値というよりも、市が高田松原を越えた時間がこの時だということでこの時間になっている。いろんな機関や大学の調査団とか、そういうのが入っているので、それを参考に時間や高さなどを把握している。
【斉藤委員】
これだけの大災害なので、第一波がいつ来たか分からないということにしてはいけない。例えば、県警ヘリが撮影している。後で分かることは必ずあるはずなので、ここはしっかり記録していただきたい。
それでやはり30分から40分の余裕があったということである。だから十分にしっかり避難していれば、最低限命を守ることはできたのではないか。こういう点でもしっかり整理しておくことが必要だと思う。
避難できなかった中には、避難したくてもできなかった、いわゆる災害要援護者というのがあったと思う。だから、もう1つの教訓は、こういう災害要援護者対策について、犠牲の実態をどう把握して、今後の対策をどう検討されているか。
【防災危機管理監】
災害時要援護者対策について、今回の震災での犠牲者は10月10日現在で、死者・行方不明者合わせて5875人となっているが、いわゆる災害時要援護者の人数は特定されていない。しかしながら、犠牲者が60歳以上の割合が6割以上ということを占めているので、災害要援護者が多く含まれていると考えている。
このため県では、地域防災計画の見直しにおいて、社会福祉施設等の高台への移転等を盛り込んだところだが、今後とも自主防災組織の育成・強化などにより、地域における共助を促進し、災害時要援護者の安全確保に努めていきたい。
【斉藤委員】
障がい者の犠牲者は障がい福祉課は把握している。福祉関係、例えば介護者もそこで把握されている。そういった情報をまとめたら、災害時要援護者の全体像が出てくるのではないか。やはり犠牲者の比率は障がい者や高齢者の場合は。そのこともしっかり縦割りを廃止して、県庁の情報を集約して実態と教訓をまとめていただきたい。
消防団員の活動と犠牲について。消防団員は、検証報告書の段階では、死者117名、行方不明者2人となっており、多大な犠牲者を出した。多くは避難誘導中、水門閉鎖などの活動中だと思う。しかし、例えば田老の消防団の場合は15分ルールというので、団長がそういう指示を出して、1人の犠牲も出さなかった。あの被害の大きいところでそういう教訓もあった。消防団員の犠牲の実態と、今後避難ルールの確立に向けてどういう教訓があるのか。
【防災消防課長】
90名の方が震災の活動中に殉職されている。県においては、消防協会と連携し、震災時の消防団活動を改めて検証し、災害時における消防団の活動支援を取りまとめている。今後はこの活動支援を活用するなどして、市町村に対して災害時の活動マニュアル、消防団の活動マニュアルといったものの策定を促して、消防団の活動の安全確保に努めていきたい。
【斉藤委員】
こういう問題はスピードアップして、しっかり積極的な経験・教訓もあったので。
今度の教訓というのは、どんな津波が発生した場合でも、何としても人命を守ると。こういう立場に立ち取り組む必要があるのではないか。
・原発災害―地域防災計画の見直しについて
【斉藤委員】
原発災害問題については、地域防災計画にも入れるということだった。この今後のプロセスはどうなっているか。
【総務部長】
防災会議で防災計画の策定と法律上なっているので、防災会議の場、ただ防災会議だと非常に規模が大きくて、議論がしにくいので、幹事会等の場を生かしながら、より活発な議論が展開できるようにしていきたい。またその過程の中でパブコメ等も行い、県民のさまざまな声も吸い上げてやっていきたい。
目安としては、今年度中に、もともと防災計画に位置付けるように義務付けになる地域の見直しを今年度いっぱいにと国は言っているが、本県はその対象ではないが、それに遅れないように同じように今年度いっぱいということで進めていきたい。
・入札問題について
【斉藤委員】
今日の新聞報道でも、沿岸の業者は利益を上げていると。しかし内陸・県北には波及がないと。ぜひこれから本格的に復興事業が発注される中で、県内復興JV、県内企業が一緒になって復興に取り組める状況をつくっていく必要があるのではないか。
【入札課長】
復興JVの対応については、本年8月から復興JVの登録を受け付け、現在まで10のJVが入札参加資格名簿に登録されているところである。入札についても、8月13日以降に入札公告した対象工事について、復興JVが入札参加できることとしており、何件か入札参加をしてきているところがあるが、現時点で復興JVが落札した工事は1件である。
【斉藤委員】
復興JVを成功させるためには、宿泊費を見るとか、宿泊施設の整備の分をきちんと事業費に見るとか、そういうことをやらなかったら結びつかないと思う。そういう手立ても合わせてやっているのか。
【入札課長】
宿泊費等の実費について加算する等の対応については、設計単価等の所管をしている県土整備部で検討し、国の動向で入れるというような検討を進めているようだが、その辺も含めて対応を検討している。
【斉藤委員】
これから本格的な復興事業がどんどん出てくるわけなので、そして沿岸と内陸では格差が激しい。沿岸では対応しきれない状況に実際なっている。本当に県内の事業者、オール岩手で復興に取り組めるように必要な手立てもしっかりとってやっていただきたい。
・米軍の低空飛行訓練問題について
【斉藤委員】
平成23年度24年度、米軍と見られる低空飛行訓練への苦情などはどのように寄せられているか。
【防災危機管理監】
米軍の戦闘機またはヘリと見られる騒音苦情の状況は、平成23年は3件、24年は2件となっている。
【斉藤委員】
とても少ないが、実は去年岩手県に申し入れをした。中身としては、陸前高田市の広田小学校の上空をF16戦闘機が超低空飛行訓練で来たというのと、雫石の上空でそういう低空飛行訓練が頻繁に行われているということで、緊急の申し入れをした。
岩手県における米軍機墜落のケースはどうなっているか。
【総合防災室長】
昭和63年、平成11年にそれぞれ1件、計2件発生している。
【斉藤委員】
昭和63年は川井村、平成11年には釜石市に墜落した。数百メートルのところには小学校の分校もあった。
今問題になっている軍用機オスプレイは、今年2回も墜落事故を起こし、そして岩手上空をグリーンルートという飛行訓練ルートにしている。F16以上に危険な軍用機だと思うが、この飛行ルート、訓練回数はどうなっているか。
【防災危機管理監】
当県からも、東北防衛局に対して、本県上空のいずれの市町村上空を飛ぶことになるのか、また訓練頻度について照会している。東北防衛局からは、米軍のオスプレイの具体的な運用計画は確定していない旨の説明を受けている。
【斉藤委員】
米軍はレビューでルートも回数も示している。正式に当局に話はないかもしれないが。そして防衛大臣がアメリカに代わって安全宣言をし、市街地上空は飛ばないと。しかし沖縄でも四国でも市街地上空を訓練している。これは許してはならない。県議会はこの請願を否決したが本当に許されない。
・旧盛岡短大跡地の活用策について
【斉藤委員】
いま旧盛岡短大跡地はどのように活用されているのか。現段階でどういう位置づけになっているのか。
【管理課長】
現在建物は、県の物品や文書の保管場所として活用しているほか、県体育協会が体操競技の練習場に使用し、また県社会福祉協議会等が被災地支援物資の一時保管場所として利用している。
グラウンドについては、盛岡二高の学生がテニス部の練習場として使用している。
また当該施設については、現在、県県有未利用資産等活用処分方針に基づき、売却対象資産に整理されており、民間事業者等への売却を視野に検討を進めている。
【斉藤委員】
実際に活用している一方で売却予定資産だと。矛盾している。全く活用していないというのならあり得るが。売却予定資産だといっても、今すぐ売却する資産ではないと受け止めていいか。
【管理課長】
売却対象資産とはなっているが、現在利用している状況もあるが、現在は建物が老朽化しており、そこの建物の安全性の確保等もあるので、今後売却を視野に検討を進めていく対象としては引き続き検討していく。
【斉藤委員】
どういう時期的な見通しで売却に向かっていくのか。
【管理課長】
ただ今、建物の周辺の自治会から盛岡市に対して、公共的な施設等の利用に対する要望も出ていると聞いており、盛岡市の意向を十分に検討した上で、今後2、3年をかけて売却の実施方法や手段等について検討していきたい。
【斉藤委員】
これは県立盛岡商業があって、その後盛岡短大と。文字通り教育施設として地域住民に馴染んだ土地・施設である。地元からもそういう文化・教育的な施設として活用したいと強い要望が出ており、盛岡市も半分は検討中だとは思うが、地域住民の声や市の検討をしっかり受け止めて対応していただきたい。
【管理課長】
盛岡市の意向等も勘案しながら、また旧盛岡短大の建物の老朽化の度合い等も含めて総合的に検討していきたい。
・消費税の県民の負担額について
【斉藤委員】
県民全体の負担額はどうなるか。
法人事業税の対象事業者数と比率はどうなっているか。
【税務課総括課長】
消費税の県民全体の負担額、増税後の額だが、消費税の制度の骨格が完全には固まっていないので、厳密に算定することは困難だが、現在の消費動向等が増税後も変化がないものとして試算すると、平成22年度の地方消費税から推計すると、税率が増税後の10%となった場合、消費税と地方消費税の合計は1165億9000万円と推計され、現行の税率の場合と比較し582億9000万円の増と見込まれる。
法人事業税の発生している法人数は、7648法人であり、35.3%となっている。
・公契約条例の制定について
【斉藤委員】
公契約条例を求める請願が採択された。ぜひこれを県が正面から受け止めて、その条例制定に向かった検討を進めていただきたいと思うがいかがか。
【総務部長】
議会において請願が採択されたということで、議会の意思は重いと認識している。
6月議会の本会議でも質問をいただいたが、実際に公契約条例はさまざまな課題があるということは事実である。そういったことも含め、真摯に検討し条例制定に向けて準備を進めていきたい。