2012年10月18日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑大要


・国保・後期高齢者医療、介護保険料・医療費・利用料の免除について

【斉藤委員】
 大震災後、国保、後期高齢者医療、介護保険料の保険料・医療費・利用料の免除措置がとられた。昨年度の実績はどうなっているか。
 これは9月末まで部分的に継続されたが、10月からは県単の助成により継続されることになった。10月以降の免除額と負担額はどうなるか。

【健康国保課総括課長】
 平成23年度の減免額だが、国保では保険税が約17億2000万円、一部負担金が約27億5000万円、後期高齢者医療では保険料3億2000万円、一部負担金が約10億7000万円となっており、これに要した経費については全額国が負担している。
 24年の10月から減免に関する国の特別な支援が変更となり、そのことから県では、一部負担金の減免が継続されるように、その経費の一部を支援することとしたところである。10月から来年3月末まで県内市町村において一部負担金の免除を継続するために、平成23年度の実績から試算すると、国保では免除額が約12億円にたいして県の支援が約2億円、後期高齢者医療では免除額約5億8000万円にたいして県の支援が約6700万円と見込んでいる。同じく10月から3月までの国保税保険料、これは国保・後期高齢者医療の部分だが、これについては県の支援を行わないとしている。県内では7つの市町村がこれについては減免を継続すると聞いているが、その減免額については把握していない。
【長寿社会課総括課長】
 介護保険についても、国保や後期高齢者医療と仕組み・状況については同様だが、介護保険の保険料・利用料の減免額は、23年度の減免額は保険料が約7億9500万円、利用料が約5億6400万円となっており、減免に要した経費は全額国が負担している。
 24年10月1日から減免にかかる国の財政支援が変更となり、県では利用料の減免が継続されるようその経費の一部を支援することとしている。
 10月1日から3月までの間、県内各市町村において、利用料の免除を継続するためには、平成23年度の実績から試算すると、免除額約2億8200万円にたいし、約700万円の県負担額が必要と見込んでいる。保険料については、減免継続に対する県の支援は行わないものの、県内2保険者において減免を継続すると聞いているが、その実績については把握していない。
 今年9月末までの保険料と利用料の減免額については、全額国が財政支援することとなっているが、交付申請手続き前だったので、現時点では金額を把握できていない。

【斉藤委員】
 被災者の国保や後期高齢者医療、介護保険の保険料、一部負担の免除措置はまさに被災者の命を守る命綱だったと。
 保険料で28億円、一部負担金で43億円の免除、計72億円、これが10月から残念ながら保険料は被災者負担になっている。おそらく28億円近い負担になっているのではないか。10月から3月までの半年分で18億3400万円の一部負担金の免除は継続されていると。これは年間でみると36億円余となるので、これ自身は大変重要な措置だったと。
 この被災者の免除措置というのは、来年の3月31日までである。国の責任で来年度も継続実施されることが、今の被災者の状況や仮設住宅での生活を見たら必要である。強く国に求めるべきと思うがどのように取り組んでいるか。

【保健福祉部長】
 保険料・利用料の減免については、今回県としては利用料について減免の措置を予算化したわけだが、本来国においてきちんと措置すべきものであると考えている。今までも何度も国には要望してきたところでもあり、今後も引き続き国にたいし要望を続けていきたい。

【斉藤委員】
 保険料の免除措置はできなかった最大の理由は、住民税を減税しているということが国の財政支援の条件になったからである。これは33市町村どこもやっていない。そういう形で、被災地の実態を国はまったく把握していないのではないか。ぜひこの問題は、3月31日で終わることなく継続されるように強く求めていただきたい。


・生活保護の問題について

【斉藤委員】
 義援金等を理由に生活保護を打ち切られた世帯と人員はどうなっているか。
 生活保護受給者の被災状況はどうなっているか。

【地域福祉課総括課長】
 災害義援金等の受給により生活保護が廃止となった世帯は、8月末現在で222世帯303人となっている。
 生活保護受給者の被災状況は、人的被害については、死亡78人、行方不明67人、軽傷者4人の計149人となっている。住家被害については、全壊368世帯、半壊85世帯、一部損壊78世帯、床上浸水17世帯、床下浸水6世帯の計554世帯となっている。

【斉藤委員】
 生活保護世帯だけが義援金とか災害弔慰金を受けた場合、収入に認定し、それを使うまでは生活保護を廃止すると。一般の人たちには収入認定されない、課税されない。これは本当に憲法上許されない差別だと思う。義援金や災害弔慰金は生活再建の資金である。そういう意味でいけば、今後生活保護受給者も本来使えるように確保すべきではないか。

【地域福祉課総括課長】
 これらの義援金等については、自立更生に充てる金額については、収入として認定する額から控除されている。一定額がそれぞれの世帯の状況や使途に応じて、控除措置がとられている。少額であれば、全額収入認定されないという場合もあるが、今回は数十万円から多い方で1000万円近い世帯もあるので、それぞれの生活の状況に応じた控除となっている。

【斉藤委員】
 生活保護受給者の実態について。残念なことに政府や国会の場で、自民党などから異常な生活保護バッシングが行われ、マスコミでもやられている。
 生活保護受給者は、県内全体の世帯の中でどれだけを占めるのか。生活保護基準で生活している世帯はどれだけなのか。そういう中でどれだけ保護されているか。

【地域福祉課総括課長】
 本年8月末で10492世帯・14592人の方が生活保護を受けている。これは県内の総人口の1.11%相当である。
 県内で生活保護水準の方のうちどれぐらい受給しているかということだが、生活保護制度は、一定の基準額を設定したうち、自前の収入あるいは資産を活用して生活が成り立たない、自ら保護申請する方々が保護を受給する仕組みなので、そういった方々がどれぐらいいるかという状況の把握は県では行っていない。

【斉藤委員】
 全国の状況、厚労省の推計はどうなっているか。

【地域福祉課総括課長】
 世帯の所得の状況等を調査して、貧困の状況について国で公表している資料、平成22年に行われた国民生活基礎調査等を利用した資料では、平成21年度の実質の可処分所得等を目安に112万円程度という設定をされているが、これは貧困線としてOECDの基準等に基づいて算定しているようである。これによると、おおむね全世帯の16%相当が相対的な貧困にある世帯と言われている。
 また国の方では、生活保護の基準の設定などの中で、さまざまな検討をされているようだが、そういった中で生活保護の基準額とかそういうものは検討する中では国の中での試算等も行われていると考えている。

【斉藤委員】
 資産を考慮しない場合、生活保護基準の世帯というのは597万世帯、うち生活保護受給世帯は108万世帯なので、補足率は15.3%、資産を加味した場合229万世帯、それに対する補足率は32.1%。いわば圧倒的に貧困世帯が多くて、厚労省の調査で15.3%しか補足されていないのが実態ではないか。岩手はもっと低いと思う。
 岩手における不正受給額はいくらで、生活保護費の中でどれぐらいを占めているか。

【地域福祉課総括課長】
 国の推計結果だが、これは少し古い資料等を前提として内部で試算しているものだと承知している。なお、これは補足率とかそういうものを算定するために作られている資料ではないので、誤解のないようにお願いしたい。
 生活保護の不正受給の状況だが、平成23年度に保護費を不正受給し返還を求めている方は全体で109件3909万7000円余となっている。これは23年度に給付した204億6400万円余に対して、0.2%という状況である。

【斉藤委員】
 いまキャンペーンがはられている不正受給の実態は、岩手の場合はたった0.2%である。全国でも0.4%、圧倒的にはまともに支給されて活用されている。この数字を針小棒大に取り上げているのが今のマスコミの実態である。
 なぜこういうバッシングが行われているか。生活保護費を削減するためである。すでに厚労省のたたき台が出され、生活保護費の基準を下げようとしているが、どういう中身か。

【地域福祉課総括課長】
 県では、生活保護費削減そのものについて具体的な内容というのは私としては承知していないが、生活保護の基準額については、5年に1度の改定が行われるということで、来年度の改定に向け昨年4月に社会保障審議会に生活保護基準部会が設定され、今年の年末を目途に、来年度予算編成に合わせた中での検討がなされており、年内にはおおよその結論が出されるものと聞いている。

【斉藤委員】
 生活保護基準が下げられたら、最低賃金に影響する。さまざまな社会保障の基準に影響する。消費税が社会保障のためというのは真っ赤なウソである。社会保障改悪で真っ先に今やられようとしているのが生活保護の削減である。
 盛岡市で、生活保護受給者が入院治療を中断して10日後に亡くなったという事件があった。盛岡市議会でも取り上げられた。入院6ヶ月を過ぎると住居費が出なくなることもあるという説明で、無理やり退院してしまった。ところが実態は9ヶ月までは出る。丁寧な説明がされなかったために痛ましい事件が起きた。県は把握しているか。そしてそういうことをきちんと点検したか。

【地域福祉課総括課長】
 ご指摘のあったケースについては、報道や市から経過について報告があり、内容の概要については承知している。
 入院について6ヶ月を超えれば住居費の扶助が止められるということについて、制度の仕組みは説明したということで、退院を強要したというわけではなかったと報告を受けているが、丁寧な制度の説明があれば、誤解があってすぐ退院するということはなかったのではないかと市では反省している。

【斉藤委員】
 盛岡市もまじめにやっていたとは思うが、ただケースワーカー1人当たりの担当が88件もある。基準が80件と言われているので、岩手県全体ではケースワーカー1人当たりの件数はどうなっているか。

【地域福祉課総括課長】
 ケースワーカーの配置標準数というのは、市であれば1人当たり80世帯、町村部であれば65世帯という標準が設けられている。
 県では全体の平均の受け持ち世帯数は、事務所ごとが状況が違うので、標準配置数については必要な数が満たされているかという形で資料をとり、基本的な指導をしているが、現在1人当たり何件という資料はないが、そういった算定でみると、ケースワーカーの不足がある実施機関が、盛岡市を含め3機関ほどあると。他は基本的に充足されている状況である。


・高すぎる国保税の問題について

【斉藤委員】
 国保加入者の平均課税所得、その国保税額、負担率はどうなっているか。
 高すぎて払えない滞納者に対して、資格証、短期保険証の発行状況、短期保険証の未交付の状況はどうなっているか。

【健康国保課総括課長】
 国保加入世帯の平均課税所得額は、所得状況に関する数値については国の公表データをもとに把握しているところであるので、昨年度の数字についてはまだ公表されていないことから、平成22年度の数字について述べると、1世帯当たりの総所得金額114万円から基礎控除33万円を差し引いた課税所得額は81万円であり、国保税額は14万1000円、課税所得額に占める国保税の割合である負担率は17.4%となっている。
 平成24年9月1日現在で、資格証明書が426世帯、短期証が10212世帯となっている。未交付の状況は、資格証が16世帯、短期証が1251世帯となっている。

【斉藤委員】
 課税所得額は81万円であり、国保税額は14万1000円、負担率は17.4%と。本当に耐えがたい、払えないレベルになっている。
 そういう中で、滞納者から保険証を取り上げると。これは直ちに是正すべきだと思う。盛岡市は、すでに基本的には発行しないと。短期証も発行しないと。私は度々このことを紹介し、部長にも是非盛岡の取り組みを全県に広げてほしいと言っているが、どうなっているか。短期証の未交付が1251世帯、届いていない。資格証は全額窓口で払わなければ受けられない。事実上この方々は無保険である。まさに命に関わる問題だと思うが、盛岡の取り組みがなぜ広がらないのか。

【保健福祉部長】
 資格証の関係について、盛岡市の取り組みについては委員から紹介いただいたところだが、これは1つ1つどういう状況なのかを確認した上で、本当に払えない世帯なのかどううかという実態調査を盛岡市でもよくやっていると聞いている。県全体においても、同様の取り組みを行うということで、現在取り組みを進めており、そういう結果としてこの発行証が昨年度と比較して減少しているという結果に結びついていると考えている。
 滞納者の生活実態などをきめ細かく、市町村が滞納者と接触し、確認を丁寧にやっていきたい。

【斉藤委員】
 滞納者から保険証を取り上げるだけでなく、財産差し押さえまでやっているので、こういう冷たいやり方は根本から見直すべきである。


・沿岸被災地における医療提供体制の再建について

【斉藤委員】
 被災県立病院の再生をテーマにした、沿岸市町村における医療提供体制の再建にかかる検討が行われている。各圏域ごとにどういう再建の方向が議論されているか。

【企画課長】
 気仙、釜石、宮古保健医療圏では、昨年度国の3次補正で措置された地域医療再生臨時特例交付金を活用する、医療の復興計画案の作成に向けて、それぞれの圏域における医療関係者、自治体職員を中心にした説明会や会議、保健所運営協議会等の場を活用し、被災した医療提供体制の再建に向けた取り組み方策等を意見交換してきた。
 今年度においても、具体的な取り組み方策等を継続して検討していくこととし、このための第1回の会議をそれぞれ5月までに行い、その後は、県保健医療計画の見直し担当と連動した取り組みを進めている。会議等では、被災した施設の再建に関し、具体的な公的支援の内容や地域のまちづくりの見通し、被災した県立病院の再建等についての意見・情報交換を中心に、医療の復興計画に盛り込んだ取り組みの具体化や、県保健医療計画の見直し方向に沿った今後の圏域における連携体制のあり方、医療と介護の連携等について、さまざま意見が交わされていると認識している。


・東北メディカル・メガバンク計画について

【斉藤委員】
 これは東北大学・宮城県が中心になってやっているが、岩手医大もこれに参加すると。これは被災地の方々を対象にして、遺伝子ゲノムを回収して、製薬会社と協力してやろうというものである。
 被災者を対象にするこういう研究というのは、許されるものではないと思うが、どういう目的・内容、県はそれに関わっているのか。

【医療推進課総括課長】
 この計画については、被災地における継続的な健康調査の実施による住民の健康不安の解消や、意欲の高い医療関係人材を被災地に派遣することによる地域医療への貢献、個人のゲノム情報と解析結果を比較することで病気の正確な診断や薬の副作用の低減、将来なりやすい病気の予測などの次世代医療の実現を目的に、今年7月に閣議決定された日本再生戦略に基づく国の事業であり、東北大学と岩手医大が共同で取り組むこととされている。
 県としての関与は、本事業の実施により、被災地域において健康相談や疾病予防のアドバイスなどによる住民の健康確保等の効果が期待されることから、県としても岩手医大と市町村や関係機関との連携体制の構築を中心に必要な協力を行っていきたい。
 なお、本事業における倫理的な問題については、国においてもワーキンググループを立ち上げて、倫理面についても検討を行う、大学の方についても倫理委員会等できちんと倫理面の配慮を行っていくとうかがっており、ヘルシンキ宣言をきちんと順守をした形で進むものと理解している。


・精神障害者のバス運賃の減免について

【斉藤委員】
 国からの通知も出たが、どのように取り組んでいるか。障害者のタクシー補助も含めて示していただきたい。

【障がい保健福祉課総括課長】
 国にたいし県で要望してきたところ、本年7月31日に、国交省が定める一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款が改正され、障害者割引の対象に精神障害者が加わったということで、9月30日から施行となっている。一歩前進と認識している。ただし、この約款が改正されても、実際に精神障害者のバス運賃の減免を実現するのはバス事業者ということで、事業者の理解が必要である。県としては引き続き障害者団体の皆さんと歩調を合わせて減免の実現に向けて、県バス協会等に要請を実施して理解を求めていくこととしている。あわせて、運輸行政を担う岩手運輸支局に対して、バス事業所に働きかけるよう要請していくこととしている。今後も粘り強く要請を実施し、バス運賃の減免の実現に努力していきたい。
 タクシー券の給付に関してお話があったが、本県では25の市町村において、障害者のタクシーに対する助成事業が実施されている。内容については、市町村により詳細は異なる。県としては、障害者の外出支援として、障害者自立支援法による重度訪問介護や行動援護・同行援護等、地域生活支援事業の移動支援等もあり、これらの事業と相まって障害者の社会参加の促進に貢献できればと考えている。