2012年10月18日 決算特別委員会
保健福祉部に対する高田一郎県議の質疑大要
・被災した介護施設の再建状況について
【高田県議】
被災した介護施設の再建状況はどうなっているのでしょうか?また、この介護施設に入所している方々がさまざまな所へ避難をしておりますが、入所者の実態がどうなっているのか、まずお伺いいたします。
【長寿社会課総括課長】
被災した介護施設の再建状況についてでございますが特別擁護老人ホームなど入所居住系施設のうち14箇所が被災により一時不能となりましたが、現在までに一箇所の事業廃止、仮設での復旧を含む6箇所が事業を再開し未再開となっている施設は7箇所となっております。未再開となっている7箇所の施設と仮設で再開している一箇所の施設が移転による本格復旧を目指しておりますが、すべての施設で再建の向けて新たな用地のめどが経ちまして国への移転協議が終了したところでございます。今後、災害査定を受けたのち災害復旧へ着手する段階になっております。次に他の介護施設へ避難されている被災者の実態についてですが本年10月現在で、これらの事業未再開施設の入所者だった方々のうち73名が内陸や沿岸の他施設において定員超過特例措置により受け入れていただきサービスを受けている状況です。
【高田県議】
被災した介護施設は、当初、国は現状復帰という事でなかなか再建が進みませんでしたが国の姿勢も変わって今、別の場所に建設できるということで移転再開の目途がたったという事ですが、ここに再建をして入所するにはかなりの時間がかかると思います。私も様々な介護施設を訪問しましたけれども受け入れてくれている介護施設でも被災者の事を考えたらと言う事で、本当に苦労しながらがんばっている状況でありました。しかも4月以降、居住費、給食費を負担しなければならないという事で色んな課題が出てきているというように思います。これはひとつ実態を良く把握をして必要な対応をしていただきたいと思います。
・介護サービスの実態、介護職員不足の問題について
【高田県議】
次に、要介護者が非常に増えているという状況になっていますが、施設や在宅を含めて本当に必要な介護サービスが提供されているのか?ということ、それから介護職員の不足が大きな問題になっていますが、これは実態はどうなっているのかという事についてお伺いいたします。
【長寿社会課総括課長】
沿岸被災地の介護サービス提供の状況についてでございますが、沿岸被災地の入居居住系定員は、震災前3769床でしたけれども、今年9月時点ですけれども、新たに開所した施設を含めまして3829床と震災前の101.6パーセントまで回復しております。また居宅サービス事業者数も408事業者でしたが同じく本年9月405事業所と言う事で99パーセントまで回復してきております。そしてもうひとつ、仮設住宅団地等に整備しました、高齢者等サポート拠点。これを活用したサービス提供を含めまして増加しております一定の対応が出来ているとういように考えております。
次に介護職員不足についてですが、介護従事者の確保は、震災前から本県はもとより、全国的に非常に厳しい状況であります。震災後、一層している厳しさが増していると聞いておりまして現段階で被災地において人材を確保することが出来なくて事業基準を満たす事が出来ず、利用受け入れを制限しているというものは、ないものと認識しております。
しかし介護従事者の確保につきましては被災地のみならず、全県に関わる最重要課題と認識してございまして、事業者団体や労働担当部署と連携をしながら対策を検討して行く事としております。
【高田県議】
施設については、101.6パーセント、事業ものは99パーセントという事で一定の対応が出来ているというお話でありました。しかし、施設や事業所が震災前の状況に戻っていても実際の介護サービスが必要な方々に提供されているかどうかというところが課題だと思うのです。被災地に色々お邪魔して、あるいは被災地の方々にお聞きしますと非常にデイサービス、例えばデイサービスの要望が大変強いと。しかし施設によっては、なかなか対応できないと。人手の問題もあります。いま被災地の高齢者の実態を考えるときに、デイサービスそれから介護サービスの役割というのは大変大きいと思います。いろいろ対応を検討していきたいというお話をされましたが、具体的にどういう対応をやろうとしているのか、この点についてお伺いします。
【長寿社会課総括課長】
まさに検討でございますので詳しくは今後という事になりますが、ひとつは介護従事者そのものの数については概ね足りていると思いますが、残念な事になかなか介護サービス事業者になりてがないということが課題だろうと思っております。そうしたことから介護サービス事業に従事する方々の雇用の確保についてなんらかの形で後押しと言いますか、支援を進める事を軸として検討を進めていきたいと考えております。
【高田県議】
ぜひ、現地の実態や状況をしっかりつかんで対応していただきたいと思います。
・介護報酬の改定について
【高田県議】
次に介護報酬の改定に伴う課題についてお聞きしたいと思います。今年度から介護報酬の見直しが行われました。本会議でも質問したわけですが、利用者あるいは介護現場。見直しに伴ってどういった課題があると考えているのか、その実態についてお伺いいたします。
また、介護サービスの利用実績。これもどうなっているのかについてもお伺いいたします。
【長寿社会課総括課長】
介護報酬の改定についてですが、今回の改訂は6月法改正に伴うものでございまして結論から言いまして、在宅1パーセント、施設2パーセント、1.2パーセントの引き上げが実施されたところであります。改訂介護報酬のもとで利用者、介護現場の状況についてでありますが、改定後の本年4月から6月までの3ヶ月間のサービス利用実績をみますと、サービス受給者が54,511人から55,611人と1,100人で2パーセントの動きとなっております。また、介護給付費で75億3千300万円余から78億1千800万円余と5億8千500万円余で3.8パーセントというように見ております。これは平成22年度と比較しまして特に大きな変化があるという事ではないと認識しております。なお国におきましては、今年4月に社会保障審議会の給付費分科会なかに介護報酬検討研究委員会等を設置いたしまして介護事業者の経営状況、あるいは介護従事者の就労状況の調査分析を行うと伺っておりますので、県としても国のこうした調査、分析等をあわせまして県内事業者の皆様の意見も十分にお伺いしながら、また利用者の皆さんからいただいた相談等参考に今後も実態把握に努めていきたいと思っております。
【高田県議】
今、課長の方から答弁を頂きましたが、今度の2012年度の介護報酬改定で1.2パーセント引き上がったとお話されましたけれども、実際は介護職員処遇改善交付金が介護報酬に組み込まれたという事もあって実質は0.8パーセント、マイナスになっているのですね。そこでどういう問題が介護現場でおきているのかと言う事をお聞きしたのですが。実際、どういう問題がおきているのか、県としての認識をお伺いしたいと思います。
【長寿社会課総括課長】
委員ご指摘のように、居宅のサービス事業者からは実質的に介護職員の処遇分が今回の報酬改訂で加算として盛り込まれましたのでその分を見れば実質的な引き上げでなかなか厳しいといったような事も伺っております。ただ、全体的な把握につきましては、国が行う調査分析とあわせまして県の実態把握に努めまして対応を考えてまいりたいと思っております。
【高田県議】
私もこの間、何件かの介護施設を訪問して実態を調査してきましたけれどもある施設では、施設も報酬の見直しがおこなわれて、ただでさえ月100万円ぐらいの赤字になってしまうと。新たな事業を展開しないとですね、普通の経営という話でした。つまり口腔ケアとかリハビリとか認知症対応こういった新たな事業を展開すれば、結局、研修もしなければならない、新たな人材も確保しなければならない、こういう悪循環に陥っているという話を聞きました。今度の介護報酬改定の最大の問題は、生活援助の訪問時間が短縮されたと言う事です。居宅サービス事業所にお邪魔してお聞きしますと生活援助の時間が減ったために高齢者との会話の時間が大変少なくなってしまったと。いままで一緒に買い物とか、調理をしていたその時間が全くなくなって、利用者との会話が出来ない、高齢者の変化をみることが出来ないと言う事で。ヘルパーというのは、ただ掃除をしたり、買い物をしたりするのではなくて高齢者とのコミュニケーション労働というのが、ヘルパーの大きな役割だと思うのです。そういう会話の機会が全くなくなったと言う事で非常に働くヘルパーさんにもやりがいの喪失ですね。報酬が引き下げられた事によって事業が大変になってきてしまうというようなね。新たな事業展開をしようとしても、非常に萎縮してしまうような、そういう介護報酬なっていくのではないかと思います。そこで私は、国においてもこの介護報酬見直しによる課題を分析するという対応をしようとしていますが、やはり県としても、しっかりと利用者あるいは事業者に対して必要な調査を行って制度改正を国に求めていく対応が必要だと思いますが如何でしょうか?
【保険福祉部長】
本県におきましては、本年4月から6月の訪問介護の利用などをみますと、伸びているという実態にはございますが、国の調査分析とあわせながら県内の事業者の意見の事業者の方々の意見を十分に伺いながら、課題を把握し必要な制度改正や措置、これについては国に要望してまいりたいと考えております。
・福祉灯油について
【高田県議】
次に福祉灯油についてお伺いいたします。23年度は福祉灯油が実施されました。その成果はどうだったのかお伺いいたします。
【地域福祉課総括課長】
平成23年度におきまして福祉灯油を実施したわけでございますが、この実績は、沿岸12市町村すべてにおいて実施されております。助成世帯は1万4940世帯、県の補助額は2,310万1千円となってございます。これによりまして被害が甚大だった沿岸市町村への財政支援、ひいては社会生活を送る上でなにかと不便の多い被災地におきまして、特に弱い立場にあります、所得の低い高齢者世帯、障害者世帯あるいは一人親世帯などの方々へ支援につながっていると考えているところでございます。
【高田県議】
昨年は、2月補正で大変、年度末の対応となりましたけれども被災地からは大変歓迎されたと私は思っております。いま、被災地の方から、あるいは仮設に入っている方からお聞きしますと、今年もぜひ、やって欲しいという声が沢山、寄せられました。中には冬は、反射式のストーブは危ないでエアコンを使う被災者もいると、灯油だけではなくて光熱費全体が高くなっているので灯油も含めて光熱費に対する支援もして頂きたいという声がよせられました。クエートからの支援が終わるとか、あるいは追い焚き設置されて新たな光熱費が増えるとか、被災者の生活の実態を考えると今年も継続してやっていただきたいと思いますが。県は灯油が高騰した、そういう時に対応するという対応をしてきましたが、それも大事ですが、それとあわせて被災者の生活の実態を踏まえた対応をして頂きたいと思いますがその点について如何でしょうか?また、市町村の意向はどうなのか?その点についてもお伺いいたします。
【地域福祉課総括課長】
今、委員からご指摘のありましたけれども、県といたしましても灯油価格動向でございますとか、なによりも実施する市町村の意向等を十分把握しながら、あるいは県の対応、あるいは昨年度でありますと義捐金の配分等もございました。そういった様々な要素を確認しながら早い時点で検討を進める必要があろうかと考えておりますが、全体的な状況を十分ふまえまして前向きに検討できればと考えております。
【高田県議】
昨年は繰り返すように、かなり年度末になってからの対応で。先ほど報告にもあったように自己繰越をおこなってしまって、自治体によってはまちまちの対応になってしまったという事もありますので、ぜひ早い時期に対応して頂きたいという事を申しあげて次の質問に移ります。
・被災地での保健師の活動について
【高田県議】
次に被災地での保健師の活動についてお伺いしたいと思います。孤独死とかあるいは高齢者の健康悪化を食い止めるためにも、保健師の役割というのは非常に重要だと思います。
今回の質疑でもありましたけれども、保健師を前年度に対して増員をするという話もありましたけれども市町村において訪問活動、みなし仮設を含めて保健師がどういう活動をしているのか、その活動の実態についてお伺いしたいと思います。
【健康国保課総括課長】
沿岸市町村で被災者の健康状態を把握するために、各市町村の保健師さん等が全戸訪問等を行っているところでございますが、この全戸訪問を行った結果、高血圧等の治療を必要とする方への受診勧奨や生活習慣病予防のための保健指導等を行うと同時に自殺や孤独死の恐れのある、継続した見守りが必要な方につきましては、関係機関とも連携し、対応をしているところでございます。具体的には、自殺を防ぐための活動といたしましては、昨年度末に県が設置いたしました「心のケアセンター」と連携いたしまして身近なところで相談が受けられる「震災心の相談室」をはじめ、リスクの高い方への適切な支援を行っているところでございます。また、孤立あるいは孤独死を防ぐための活動といたしましては安否確認や相談、見守り活動を行っている民生委員や生活支援相談員との連絡を密にいたしまして必要な支援を行っているところであります。
【高田県議】
具体的にお伺いいたしますが、被災自治体における保健師の訪問活動、市町村ごとにどうなっているのか具体的に示してください。
【健康国保課総括課長】
具体的な訪問活動につきましては、今お話させていただいたように全戸訪問における例えば要援護を必要する方々の掘り起こし等でございますが、回数等につきまして例えば昨年度、沿岸市町村におきましては、多いところでは6回少ないところでも1回以上、要援護者を把握するための全戸訪問をおこなっている状況でございます。
【高田県議】
阪神淡路大震災の時も、震災から2年が過ぎると孤独死とか自殺が増えてくるというのは、阪神淡路大震災の実態でありました。本当に津波で救われた命を一人たりとも失ってはならないという強い決意のもと対応していく事が必要だと思います。そういう点で今お伺いしますと、被災自治体では保健師の訪問が1回というところから6回という開きがあるんですね。これは年一回の訪問では、まずいのではないかと思うのですが。少なくとも年6回とか、訪問回数を高めていくというような事が時期的に大切になっているのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか?
【健康国保課総括課長】
訪問回数もそうでございますし家庭訪問を行う対象の方についても例えば、今回はみなし仮設の方を行うとか在宅の被災者の方を行うというように色々市町村の方ではメニューを組みながら全戸訪問といたしましても中身については色々なメニューを組みながら行っている状況でございます。
今年度につきましてもこの全戸訪問を行っております。ただ、一般質問の中でも話題になりました通り、沿岸の保健師の数というのは充足しているわけではないので、昨年と同様に内陸の方から保健所、市町村、それから関係団体の協力をえまして、この全戸訪問の支援を行っていく事としておりまして、もう既に始まっておりまして今の計画では約600名ぐらいの内陸の保健師さんを沿岸の方に支援として送り込む予定としてございます。
【高田県議】
孤独死とか自殺防止、高齢者の体調悪化を食い止めるためにも民生委員さんとか生活支援員さんの役割も大きいのですが、やはりこの血圧を測定しながら健康状態をきいて対話をするという保健師の役割は大きいと思います。いっきに体制を強化することは出来ませんが、そういう体制を強化するという方向で県自身も努力して欲しいと思います。
・子どもの医療費無料化について
【高田県議】
最後に子供の医療費無料化の問題についてお伺いいたします。子供の医療費無料化について県内市町村単独で乳幼児医療費を実施している、その実施状況。前年度と比べて広がっているのかどうか、この点についてお伺いいたします。
【健康国保課総括課長】
前年度に比べて子供の医療費無料化の助成について拡充をしている市町村につきまして平成24年度の4月2日以降、新たに助成対象を拡大した市町村についてお答えいたします。
北上市につきましては就学前から小学校3年生まで。それから遠野市、葛巻町につきましては、小学校卒業から中学校卒業までに拡大をしております。また、大槌町につきましては、就学前から中学校卒業まで拡大をしている状況でございます。
【高田県議】
子供の医療無料化については今の答弁お聞きしていますと、前年度から比べても大きく広がっているという事であります。東日本大震災を受けて本当に被災地でも財政状況大変な状況の中でも、決断をして子供をまもりたいと。安心して子育てを出来る環境を作りたいという自治体も増えている状況であります。私は、大震災のときだからだからこそ子供を育てる環境を充実すると言う事が、必要だと思いますし県としても最大限努力すべきだと思います。おとなりの秋田県では、今年からさらに小学校まで県として拡充をしてその分財政的に浮いたものですからさらに中学校まで広げる、所得制限を緩和すると言う事で非常に先進的な取り組みです。ぜひ県としても決断するべきだと思いますがいかがでしょうか?
【健康国保課総括課長】
いま、お話のございました子供の医療費助成補助につきまして、現在の就学前までの児童対象にしているものを対象を拡大して中学生まで拡大した場合で、荒い試算でございますが新たな県負担として6億3千万を要すると見込まれております。県予算のおける新たな財政的経費の確保は、大変厳しい状況となっておりこれについて、ただちに実施することは困難であると考えております。ただ、この医療費助成につきましては市町村と共同で運営しているところですので引き続き市町村と充分協議の上、制度のあり方については検討してまいりたいと考えてございます。
【高田県議】
最後にしますが、6億3千万円という数字は、多いか少ないかは、議論があると思います。盛岡市では、県がやるのであれば、盛岡でも実施したいという声も出ています。ぜひ、今、課長がおっしゃるように市町村の意向を確認をして実施に向けて努力をしていただきたいと思います。