2012年10月23日 決算特別委員会
農林水産部(農政部門)に対する質疑大要


・東日本大震災津波の農業被害の復旧状況について

【斉藤委員】
 農地被害は717haということで、313haは現況で復旧すると。これは今年度内に目途がたっていると。404haはどういう見通しになっているか。大区画で圃場整備するのであれば、いつからどういう形で進められるのか。
 復興組合の取り組み、農家の所得対策について示していただきたい。

【農村整備担当技監】
 農地復旧・復興について、25年度以降整備が必要な406haについては、このうち合わせ行う圃場整備を進めたいと思っているのが180haほどあり、これについては今年度から着工し、できれば26年度内に工事を進められればと思っている。それ以外の200ha余については、市町村がさまざま区画整理や防集事業などを検討しているが、その土地利用計画と合わせて整備計画を樹立していく考えである。
【農業振興課総括課長】
 復興組合の取り組みだが、東日本大震災津波により被災した地域において、営農再開に向けたがれき拾いや除草作業など復旧作業を共同で行う農業者に対して、経営再開までの間、支援金を交付する事業として、被災農家経営再開支援事業が国庫事業として措置されている。この事業を実施する場合、被災地域の農業者で組織する復興組合を設立することとされており、23年度は、10市町村で24復興組合が設立され、514haの農地を対象に共同作業が実施されている。

【斉藤委員】
 いま復興組合は514ha対象にやったと。現況復旧するのが313haで、これはそれ以上にやられたということでいいか。
 復興実施計画には、525ha対象となっているが、これは昨年度どのぐらいの事業費になったのか。農家の所得になったのか。今年度はどう取り組まれているのか。

【農業振興課総括課長】
 復興組合の514haのうち、沿岸8市町村で取り組まれたところと、内陸2市町村とあり、沿岸8市町村では475haの取り組みで、被災面積の約70%の取り組みとなっている。
 支援金としては、この復興組合に1億4300万円が交付され、共同作業の実績に応じて農業者に配分されている。
 24年度はこれより若干減り、8市町村で14の復興組合、対象農地が400ha強という予定になっている。

【斉藤委員】
 復興実施計画の見直し版で、被災地農業復興総合支援事業、さらには農用地災害復旧関連区画整理事業、これは目玉となっているが、どういう中身か。

【農村整備担当技監】
 県では、温暖な気候など沿岸部の特性を生かしながら、生産性・収益性の高い農業の構築に向けて、地域の意向を確認しながら圃場整備や農地利用集積を一体的に進めたいということで、復興整備計画に掲げている。この5月に復興交付金による圃場整備事業として採択された、宮古市の摂待地区をはじめとする9地区ではすでに地元の合意形成が図られ、土地改良法手続きが進められている。この手続きが完了した工区から順次工事に着工していくことにしている。
 今月17日には、第4回の復興交付金事業計画の提出があったが、その際、平成25年度からの圃場整備に向けた計画策定を行うべく、山田町の大沢地区・大浦地区、宮古市の田老地区・津軽石・赤前地区を追加申請したところであり、このように沿岸各地で津波被害にあった農地、集団的な農地について圃場整備を進めながら、地域の営農の再生に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 180haは圃場整備で進めると。農用地災害復旧関連区画整理事業は306haになっているが、これはまた別な事業か。

【農村整備担当技監】
 基本的には同じ事業であるが、被災地と被災地を含めて、それから超える部分も合わせて整備計画の中に含めているということで、面積的には大きくなっているのでご了解願いたい。


・地域農業マスタープラン、青年就農給付金、岩手型集落営農組織について

【斉藤委員】
 地域農業マスタープランはどれだけ作成されたか。そのエリア・規模はどうなっているか。
 青年就農給付金の要望と認定の状況、準備型・経営開始型それぞれ示していただきたい。9月までに給付するとなっていたが、給付されたか。
 これまでは岩手型集落営農組織の取り組みを進め、それぞれプランを作ってきた。岩手型集落営農組織は今どうなって、そしてマスタープランとの関係はどうなるのか。

【担い手対策課長】
 地域農業マスタープランの作成状況は、9月末現在で沿岸地域での経営再開マスタープランも合わせて、11市町村37地区で策定されている。エリア・規模については、マスタープランの作成範囲で申し上げるが、集落単位で取り組むものが23地区、複数集落や旧町村単位で取り組むものが13地区、市町村全域で取り組むものが1地区となっている。
【農業普及技術課総括課長】
 青年就農給付金の要望と認定の状況は、9月末に取りまとめた受給希望状況は、準備型が36人、経営開始型が147人の計183人で、金額ベースでは所要額2億2900万円余であり、全員に給付できる見込みである。
 青年就農給付金にかかる研修計画および経営開始計画の認定状況は、準備型は36人全員の計画を県が承認した。経営開始型は、これまで7市町村が38人の計画を承認しており、この方々については10月より支給が開始されているものと考えている。
 今後給付金の受給を希望する者は、市町村に経営開始計画の承認を申請し、市町村は審査の上これを順次承認していく予定であるので、10月にも相当数承認されていると思うし、今後順次滞りなく進められていくものと考えている。
【農業振興課総括課長】
 岩手型集落営農組織の取り組みだが、県では岩手型集落営農組織の推進ということで、具体的な支援として、集落営農推進員を配置して、集落営農組織の研修会の開催、集落営農モデルの実証、担い手の経営指導、さらには県単事業の1集落1実践事業というものを創設し、園芸品目の導入や加工販売等の促進ということで、経営の高度化・多角化を支援してきた。その結果、地域のリーダーの育成、組織内部の事業の活動の活発化といったこと、1集落1実践においては、加工品の開発や産直活動など新たな活動が芽生え、あるいは定着してきているととらえており、集落営農の発展が促されてきたと感じている。
 マスタープランとの関係だが、マスタープランを作る段階において各地域においては、地域の中心となる経営体を明確化するということで、地域の中での集落営農組織は、だいたいは地域の中での中心となる経営体として位置づけられるものと理解しており、その中では、法人化を視野に入れながら経営の確立や多角化というところが今後進められるものと理解している。

【斉藤委員】
 青年就農給付金は、申請が183人あったと。これは全員支給可能だと。当初は158人分しか国が認めなかったというのがあったが、全員が対象になるということでいいか。

【農業普及技術課総括課長】
 当初の158人分国からきた。今の183人というのは、実際の給付を希望される方の実人数である。ただ中には4月からさかのぼって受給される方と、10月から受給される方、12月からの方とさまざまある。遅れても、5年間ずっとまわりながら5年間分は受給できるので、減額されるということではない。開始時期から6ヶ月毎に受給されるということで特に不利はないが、ただ今年度の予算としては、150万円が1年分なので、例えば10月後半から受けると75万円で1人分は予算が済むということで、183人分は158人分の予算で間に合うということである。

【斉藤委員】
 9月5日にいただいた資料では、きれいに158人分にきれいに振り分けて、この時点では準備型と経営開始型を入れると、準備型で52人、経営開始型で166人だったが、これは減ったのか。絞られたのか。

【農業普及技術課総括課長】
 絞ったのではなく、当初希望されていた方が手を下されたということである。下ろされた理由は、親元に就農するがまだ受給の段階にないなどさまざまある。

【斉藤委員】
 岩手型集落営農組織は、地域農業を守る上で1つの前向きの方向だと。特に岩手型といって、集落全体で地域農業を守ろうということで、これは品目横断的対策が出たときに、岩手として打ち出した方向で、それなりの一定の意義をもっていたと思う。
 これは今の時点で、どこまで集落営農組織は作られたのか。

【農業振興課総括課長】
 ご指摘の通り、国の事業の創設を契機に作られた組織が23年度で421組織がある。組織がいろんな活動展開をしながら、経営を確立しながら、その中で経営の多角化を進めながら経営を安定させ、法人化をめざすと。法人化まで至っている組織が68までいっている。地域全体として所得を確保しながら一定の組織体となって経営を進めていくという方向に進めていくものと考えている。


・原発事故による影響と賠償について

【斉藤委員】
 111億円のJAを中心とした損害賠償の中で、先ほどの議論を聞くと、104億円は畜産関係だということか。111億円の損害賠償請求の中での正確な分類を示していただきたい。

【企画課長】
 損害賠償の請求内容について、牧草が16億4100万円の請求にたいし8億円の支払い、稲わらは1600万円、肉牛が79億7700万円、子牛は3億3400万円、シイタケが9億8800万円、農業団体の検査費用はまだ協議が整っていない。

【斉藤委員】
 牧草の除染対象面積だが、9月補正で風評被害対策も対象に広げたと。これは葛巻はやっており、滝沢もやろうとしており、それぞれ9月議会で補正も出されたと思うが、当初15000haと言っていたが、この9月補正に対応してどのぐらい除染対象面積は増えているか。

【畜産課総括課長】
 牧草地除染対策にかかるそれぞれの事業の対象面積だが、風評被害対策を含めた除染対象面積については、基本的には県内の全牧草地面積の約40000haである。うち約15300haは国で利用自粛を要請している牧草地、約2000haについては県で減乳対策として利用自粛を要請している牧草地、残りの約22000haが風評被害対策の一環として市町村が独自に取り組む放射線物質低減対策となっており、今年度については、複数の市町村で2200haを対象に取り組むこととしている。

【斉藤委員】
 風評被害対策が22000haと。これは市町村の事業でやるということになるので、実施主体は市町村がそれなりの事業体なりにしてやるということになると。減乳対策の場合は県が責任をもってということになるのか。

【畜産課総括課長】
 県の減乳対策として利用自粛を要請している牧草地の除染事業については、基本的には農業団体が事業主体となりやることになっている。
 当初より、今年の3月から4月にかけて、農業団体の方から要請があったということも踏まえて、農業団体と協議した上でするようにさせていただいている。

【斉藤委員】
 9月にこういう積極的に風評被害対策まで打ち出したというのは画期的だと思う。ただ大いにアピールしないと風評被害対策にならないので。やはり岩手県は全牧草地を対象に真剣に取り組んでいると。アピールの仕方をぜひ考えて、しかし22000haは大変な規模なので、実際の酪農や畜産に支障のないようにやるというのはかなり知恵を使わないと、かえって支障をきたすということにならないようにやっていただきたい。
 そして実際に農家施工している方々、JAから聞いてもプラウ耕で1ha当たり18万円というのは現状に合っていないのではないかと。この引き上げの声が強いが、実態と対応はどうか。

【畜産課総括課長】
 除染作業にかかる委託単価については、地域の畜産農家等の協力を得ながら、作業現場ごとの状況に弾力的に対応できるように、反転耕や撹拌耕などの基本的な除染作業の標準作業単価に加え、耕起する深さの確保や石礫除去などの追加作業単価を合算した委託単価に見直しをしているところである。

【斉藤委員】
 廃用牛の滞留解消対策について、25年度末までかかるというので本当に大変な事態である。生体検査が進んで、生牛市場も元通り再開しているのか。そしてこれはどういうテンポで進むのか。結局これが滞留してしまうと再生産のシステムがいかない。25年度末までかかるということをやっていたら、本当に大変なことになってしまうのではないか。
 集中管理されているが、いっぱいいっぱいのところ、まだ余裕のあるところ、2500頭あるわりには使えないというのは遠すぎて届けられないという声も農家の中にあるが、2500頭の滞留牛を効果的に対応する手立てはないか。

【振興衛生課長】
 廃用牛の滞留解消対策だが、出荷が滞留している廃用牛については、9月末現在で約2500頭と推定している。
 県では3ヶ所で1500頭規模の集中管理施設を設置し、9月末現在で714頭を管理している。10月1日からは、岩畜において、と畜される廃用牛について、サーベーメーターを用いた生体検査の運用を開始している。
 生牛市場だが、全農岩手県本部では、6月から再開しており、6月以降9月までに約300頭が売買されており、来月からは月2回の開催が予定されていると聞いている。
 集中管理施設については、ほぼ収容能力が満杯に達しているところもあるが、これについては買い直しが終了したものを順次と畜出荷し、収容能力に余裕を持たせるという形で調整を図っていき、遠距離ではあるがそちらの利活用も促しながら農家の理解を得ながら進めさせていただきたい。なお、それにかかる経費については、輸送費に関しては損害賠償請求の対象となる。


・競馬組合の状況について

【斉藤委員】
 昨年度は大震災津波の被害も受けた。被害額、全国からの支援額、売り上げ実績、今年度の事業運営の状況について示していただきたい。
 釜石場外馬券売り場がうまくいかなかったようだが、この要因は何か。
 さらには、県・盛岡・奥州から競馬組合に派遣されている職員は何人いるのか。人件費がどのぐらいかかっているのか。

【競馬改革推進室特命参事】
 昨年度については、震災があったわけで、岩手競馬とすると、12億円の被害があった。特に釜石の施設については、津波の直撃を受けて廃止したというところであり、施設の復旧にあたっては、地方競馬全国協会から復旧費約4億1000万円、そのうちの9割について助成をいただいた。
 昨年度の発売収入だが、やはり震災の影響があり、22年度の発売額に比較し37億8800万円少ない146億4800万円、前年度8割の水準といったところである。またJRAから5億円を超える支援をいただいている。こういった財源を活用し、自動発売機の整備など、コスト削減につながる設備投資を進めてきたところであり、将来の負担に備えるための施設等整備基金、あるいは退職手当基金といったところに積立をした上で、23年度の利益としては8300万円を確保した。この利益については、地全協の1号交付金の支払猶予を受けているので、今後の支払に備えて、全額財政調整基金に積み立てをして留保しているところである。
 今年度だが、岩手県競馬組合運営協議会という組織の中で、5期に分けて検証等を行っているが、そのうち第2期までの発売実績をもとに、9月中旬に開催した第3回の運営協議会において、今年度の収支計画を見直した時点においては、発売収入や広域受託協力金の収入合計が当初見込みよりも6億9000万円ほど増えており、現時点においては192億2000万円となる見込みとしている。そこから払戻金など売り上げ原価や販売管理費を差し引いた当期純利益を7600万円程度と現時点では見込んでいる。
 釜石場外発売所の設置に向けた取り組みだが、釜石地域のファンの要望、一定の発売額確保など、場外発売所機能の回復をめざして、釜石地域への設置を要件として、期限を付して企画提案を公募していたところである。結果としては、応募を予定していた法人から、期限内に具体的な提案がなされなかったが、その要因については、市街地に震災からの復興を図るための土地の利用規制があり、場外発売所の設置に必要な土地および建物の確保が困難だったためと聞いている。なお、この間地元とも随時協議をしながら、進めてきたところである。組合としては、やはり安定的な経営を図るために、場外発売所の機能回復が必要と考えているので、設置場所や時期を特定しない形で改めて10月から公募を進めている。
 競馬組合への派遣人数だが、県から8名、奥州市から2名、盛岡市から2名となっている。