2012年10月24日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑大要


・防潮堤の整備について

【斉藤委員】
 防潮堤の整備の総事業費と進捗状況についてお聞きしたい。

【河川課総括課長】
 県土整備部所管の防潮堤の総事業費は1050億円である。現在は、防潮堤の施設設計や用地測量の準備が整い次第、住民説明会などにより用地交渉を進めて、順次工事発注手続きを進めている。
 契約額ベースでの進捗率として、9月末時点で3%だが、平成24年度末までに約41%の予定である。

【斉藤委員】
 ぜひ農林水産部関係の防潮堤も含めて答えていただきたい。
 防潮堤の高さを変更した箇所とその理由は何か。

【河川課総括課長】
 農林水産部関係も含めてだが、設定した最大高さに至らない個所としては、19カ所ある。
 これらの理由については、背後の土地利用状況や地形条件を勘案し、市町村や地域の住民の方々と協議しながら決定したものであると考えている。

【斉藤委員】
 全体の工事個所は何ヶ所になるか。

【河川課総括課長】
 今述べた19ヶ所というのは、地区名ということで、農林水産部所管と県土整備部所管と接している場合には1つとカウントしたが、個所数としては21カ所となる。
 農林水産部関係については把握していないところがあった。県土整備部関係だと69カ所である。

【斉藤委員】
 県土整備部所管で69ヶ所で、堤防の高さを見直したところは7ヶ所ということですね。
 岩手県が提起したのは、最大高さの堤防であって、これは決して住民の話で高台移転する場合にはそういう高さはいらないし、後背地に何もないというところもある。そういう点で何が理由になっているか。

【河川課総括課長】
 背後地が高いとか、浸水想定区域が主に農地だけだというようなところについては、基本的には災害復旧事業としては、堤防等のかさ上げが認められないということもあり、そういうところが県土整備部では7ヶ所のうち4ヶ所あった。残りの3ヶ所は、地元市町村と協議し、まちづくりと調整した上で、住民の方々と協議させていただいて、最大高さに至らない低い堤防で了解いただいた。

【斉藤委員】
 全体で19ヶ所、21地区ということになると思うが、防潮堤の高さというのは住民合意を貫いてやるべきだと思う。


・津波高の痕跡について

【斉藤委員】
 防潮堤の高さを根拠としている堤防付近の津波高、到達時間はどこでどのように計測したものか。

【河川課総括課長】
 防潮堤の高さの設定にあたっては、岩手県沿岸を24の地域海岸に区分して、過去に発生した津波の高さを整理し、最大クラスの津波と数十年から百数十年の頻度で起こる津波ということで区分した。
 東日本大震災時の津波高については、大学や研究機関、岩手県を含む自治体等の調査結果をまとめた、東北地方太平洋沖地震津波合同調査チームというところでまとめた調査結果に基づいており、各地域海岸ごとに海岸堤防付近の痕跡高の最大値として整理したものである。

【斉藤委員】
 これは津波の到達時間というのは分かるか。

【河川課総括課長】
 震災後に痕跡高として調査したものであり、到達時間等は把握していない。

【斉藤委員】
 湾口防波堤が本当に機能したのか。釜石、大船渡はどういう壊れ方をしたか。大船渡の場合には、県警のヘリで第一波で壊れたと、これはリアルタイムで報道されたが、それは分かるか。

【港湾課総括課長】
 湾口防波堤の機能についてだが、釜石港および大船渡港の湾口防波堤については、ビデオ映像から、倒壊まで一定時間機能していたことが分かっており、国交省が東日本大震災津波を対象にシミュレーションにより検証したところ、釜石港では、湾口防波堤がない場合は津波高がの計算値が最大で13.7mであったのにたいし、湾口防波堤があった津波の痕跡は8.1mであり、5.6m約4割の低減となるほか、防波堤を越えるまでの時間を28分から34分に6分遅らせたことが確認されている。
 大船渡港ではシミュレーションによると、湾口防波堤がない場合の湾奥上の津波高は11.1mとなるが、津波の痕跡は9.5mであり、1.6m約2割弱の低減効果があったとされている。
 湾口防波堤の倒壊の原因については、釜石港・大船渡港の両港について、津波の湾口防波堤の中と外での水位差、どちらも10m以上あるが、この水位差が原因となり、湾内側に倒されたと分析されている。

【斉藤委員】
 今のはシミュレーション結果であり、実測値ではない。釜石で6分遅らせたというが、津波の到達時間はあまり変わっていない。そして大船渡の場合は、県警ヘリの映像で第一波で破壊されている。
 やはり実測で、ほとんど変わらなかったというシミュレーションもある。一度報道された。多角的に検討し、最大限実測値でこれを評価しないといけない。
 釜石と大船渡の湾口防波堤はどのぐらい破壊されたか。そして大船渡は第一波で破壊されたのではないか。

【港湾課総括課長】
 大船渡港の湾口防波堤については、南堤・北堤ともほぼ全壊の状況である。
 釜石港については、北堤が全壊し、南堤も被害を受けている。
 大船渡港の映像を見ると、たしかに第一波で被害を受けているが、倒壊するまでの間、ある一定の時間については持ちこたえたということが映像でも分かる。シミュレーションでも津波高を低減させているということが確認されている。

【斉藤委員】
 大船渡港は第一波で壊れたのが映像で出た。第二波・第三波が大きかった津波である。だとしたら大きい津波の時には効果がなかったということにならないか。
 釜石は第一波でどのぐらい壊れたのか。

【港湾課総括課長】
 第一波が最大であったということが国交省が設置した三陸沖のGTS波浪計の観測記録を分析した港湾空港技術研究所の分析により分かっており、第一波が最大波だったとされている。

【斉藤委員】
 津波の到達時間はあまり変わっていないので、6分遅れたという比較はないので。


・防潮堤維持管理について

【斉藤委員】
 防潮堤の事業費は県土整備部関係で1050億円と。この維持管理費はどのぐらいかかるのか。

【河川課総括課長】
 防潮堤は、定期パトロール等により点検管理している。パトロール等により異常が発見され、必要な場合にはその都度補修を行うこととしており、震災前までの実績として、大きく補修した実例は確認されていない。
 今後、復旧復興事業により、防潮堤の整備が進むわけだが、震災前までの管理状況から、頻繁な補修はあまりないと考えられるところだが、コンクリートの劣化や空洞化の対応等適切な管理に努めていきたい。

【斉藤委員】
 防潮堤の耐用年数はあるのか。

【河川課総括課長】
 通常言われているところでは、50年程度というようなことは言われてはいるが、点検管理等をすることにより、長持ちさせるというようなことは可能かと思っている。

【斉藤委員】
 耐用年数は50年と。今回の津波は1000年とか数百年という規模である。費用対効果を考えてやるべきだと思う。


・復興道路、復興支援道路、復興関連道路について

【斉藤委員】
 復興道路の総事業費と県負担分、昨年度・今年度の事業費の県負担分はどうなっているか。

【道路建設課総括課長】
 県復興計画における、国が実施する復興道路整備の総事業費は、平成23年度第3次補正以降の事業費として約1兆円と国からはうかがっている。この事業における県負担金については、県の試算では約1900億円程度になるのではないかと見込んでいる。
 23年度の国における復興道路の事業費は、第3次補正を含めて約759億円、この事業における県負担金は約139億円となっている。
 24年度復興道路の事業費は、約836億円で、県負担金は約157億円となっている。

【斉藤委員】
 復興道路は約1兆円規模の事業費ということで、復興道路は否定はしないが、今本当に被災地が優先すべき復興は何かと。やはり被災者の生活、それに関連する道路、施設。生活と生産に関わるものを最優先すべきだと思う。ところが復興道路という大プロジェクト、1兆円の事業費が全部事業開始である。そういう意味で、本当にこれでいいのかと。優先順位があるのではないかと思う。
 復興支援道路、復興関連道路の総事業費と昨年度・今年度の事業費と進捗状況を示していただきたい。

【道路建設課総括課長】
 復興支援道路は、改築事業についてとりまとめているものである。平成24年度の継続している個所の総事業費は約738億円、昨年度の事業費は23年度2月原形で約38億円、今年度の事業費は24年度9月原形で約51億円となっている。24年度に継続している個所の24年度末での進捗状況は約49%となる見込みである。
 復興関連道路も同様に、平成24年度の継続している個所の総事業費は約140億円、昨年度の事業費は23年度2月原形で約10億円、今年度の事業費は24年度9月原形で約18億円となっている。24年度に継続している個所の24年度末での進捗状況は約33%となる見込みである。

【斉藤委員】
 復興支援道路、復興関連道路はまさに被災地域の生活がかかった道路なので、これは本当に早く優先して進めるようにしていただきたい。ただ1ケタ以上復興道路と違う。被災者の生活がかかった道路こそ本来なら優先して整備されるべきである。


・復興JVの取り組みについて

【斉藤委員】
 こうした取り組みを進める上で、沿岸の業者は手一杯である。復興JV、内陸との復興JVを、内陸の企業の力も総結集して進めるべきだと思うが、復興JVの取り組みはどうなっているか。

【建設技術振興課総括課長】
 本県においては、2500万円以上5億円未満の復旧復興工事を対象として、沿岸部の企業の代表者、その他の構成員を県外企業とする復興JVを8月1日に制定した。
 本日時点で13の復興JVが登録されている。復興JVが受注した工事は、昨日までに2件ある。
 今後の復興JVの取り扱いについては、まさにこの復興JVの受注が始まったところである。この効果等を見据えた上で、入札執行状況等を見極めながら、どのような検討が必要かということを考えていきたい。

【斉藤委員】
 例えば、宿泊費とか宿泊のための施設の経費だとか、こういうものをきちんと見ないと、内陸とのJVというのは上手くいかないと思う。この対策はどうなっているか。

【建設技術振興課技術企画指導課長】
 宿泊費にかかる経費については、10月10日以降契約がされている工事について、設計計上している以上の支出について、清算して変更契約をするという通達を出している。県土整備部所管の工事に限ってである。


・橋、ダム、道路のインフラの維持管理と長寿命化対策について

【斉藤委員】
 国交省白書では、2011年から50年間、更新費用だけで190兆円かかると。岩手県の場合どれぐらいかかるか。

【道路環境課総括課長】
 現在橋梁・道路等の施設については、補修・長寿命化計画を策定しており、基本的には今ある施設を長寿命化させるということを優先して考えている。
 したがい、今のところ更新にかかる橋梁等の費用というのは今は数字はない。
【河川課河川開発課長】
 県土整備部所管の9ダムの維持管理には、年間3億5000万円かかっている。
 長寿命化計画については、国交省で策定中と聞いており、これを受けて来年度以降に計画を策定する予定としている。


・簗川ダム、津付ダム建設事業について

【斉藤委員】
 簗川ダム建設事業の進捗状況、付け替え道路の状況、ダム本体建設にかかる状況はどうか。
 津付ダム建設事業は、ダム本体工事は見直しという方向だと思うが、どういう状況か。

【河川課河川開発課長】
 簗川ダムの事業の進捗状況は、23年度末執行済み事業費の累計は292億円余、総事業費530億円にたいし約55%の進捗率となっている。付け替え道路工事は、事業費ベースで国道106号が196%、県道盛岡大迫東和線が約89%となっている。ダム本体工事については、昨年度から平成25年度にかけて実施設計を行っている。その後本体復旧に向けた手続きを進める予定としている。
 津付ダム建設事業については、東日本大震災津波により、氾濫防止区域の1つである陸前高田市が大きな被害を受け、治水計画の前提となっている被災前の土地利用状況にたいし、陸前高田市の復興計画における土地利用計画が大きく変わるということから、復興に関わる具体的な計画を踏まえて、気仙川の治水対策の再検討を行っている。現在、気仙川の流下能力の算定と陸前高田市高田・今泉地区の区画整理の素案をもとに、氾濫した場合の被害額の試算をしようとしているところであり、今後市の区画整理事業計画の決定を待って、氾濫被害額の算定、治水安全度の検討、治水対策の比較検討および費用対効果の算定などを順次行うこととしている。

【斉藤委員】
 津付ダム建設事業については再検討と。これは公共事業評価委員会にかかると思うが、どういう見通しか。いつぐらいにかける見通しか。

【河川課河川開発課長】
 再検討した結果をもとに、関係機関と協議し、大規模事業評価専門委員会で審議いただくが、毎年度の大規模事業評価委員会で審議いただき、その答申を踏まえて、方針決定後国に報告したいと考えている。

【斉藤委員】
 簗川ダムも根本的に見直す時期に来ていると思う。


・花巻空港整備事業と検証について

【斉藤委員】
 花巻空港整備事業は昨年度で完了となっているが、総事業費とその内訳、県負担分はどうだったか。
 計画時の利用客数と昨年度までの実績はどのようになっているか。いわて花巻空港の収支を含めて示していただきたい。

【空港課総括課長】
 花巻空港の整備事業の事業費は計約309億円である。内訳として、ターミナル地域整備に約94億円、滑走路延長事業約73億円、並行誘導路整備に約132億円、緑地等の整備約10億円となっている。このうち県負担分だが、約270億円となっている。
 利用客だが、国内線需要予測と実績について、平成10年度に実施した当初の花巻空港需要予測の数字は、供用開始予定年度が平成16年となっているんで、その平成16年時点の数字だが、82万7000人、平成14年度に需要予測を見直し、それは供用5年後(平成22年)をイメージしているが、61万2000人となっている。実績だが、23年度の国内定期便の利用者実績は、約29万8000人である。
 花巻空港の平成23年度の収支だが、キャッシュフローベースの空港収支となっているが、整備および維持運営にかかるすべての収入・支出を計上した場合は、17億900万円の赤字、維持運営のみ計上した場合は4億9300万円の赤字となっている。

【斉藤委員】
 花巻空港は、当初は82万人を想定してこの事業は始まった。その後見直されて61万人となったが、去年の実績は29万8000人である。そして309億円を投入して、これは国の補助事業にならなかった。県の負担が実に9割の270億円。これは本当に検証すべきだと。こういうやり方をしていたら本当に財政破たんしてしまう。
 部長はこういう結果になったことをどう受け止めているか。

【県土整備部長】
 いわて花巻空港のこれまでの経緯と、できた後の検証で今どう考えているかということだが、先人たちはやはりいろいろな意味で社会資本として、岩手に空港がという思いで、いろんな形で地域振興を含めて取り組んできたという思いはきちんと受け止めていきたいと思う。
 その上で、いろいろな航空界の経緯もあり、機材の小型化などがあり、現時点では約30万人にとどまっているが、今後やはり今できたものをいかに有効に活用するか、そして1つには、名古屋圏との自動車産業を含めたつながり、今後国際チャーター便の台湾との運行も回復を目指すということからして、いろいろな波及効果を考えると、やはりいわて花巻空港の利用促進に県土整備部あげて取り組んでいくということをお話したい。