2012年12月10日 商工文教委員会
いじめ問題、シックスクール問題に関する質疑大要
・いじめ問題について
【斉藤委員】
詳しい資料をいただいたが、「ひどくぶつけられたり、叩かれたり、蹴られたりする」が63件、「金品をたかられる」39件、「金品を隠されたり盗まれたり壊されたりする」208件、「嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたりさせられたりする」が176件と。これはかなりいじめがエスカレートした段階だと思う。全体として、今回の2004件といういじめの認知件数をどのように受け止めているか。
【生徒指導課長】
いじめの緊急調査の2004件の受け止めだが、内容によっては非常に精神的・肉体的に苦痛を与えるもの等も多々あり、大変憂慮されることだと考えている。今回、前年の調査が6割強という数字になったわけだが、各学校において、いじめに関して社会問題化している状況を踏まえて、学校も保護者も子どもたちも非常に敏感になって、それをあまねく突きあげた結果だろうととらえており、やはり件数の多さもだが、1件1件に子どもたちが被害・加害の生徒がいるという事実をしっかり認識し、丁寧に対応していかなければならないと考えており、それについての学校での指導、また市町村の教育委員会、県の教育委員会一体となって今後取り組んでいかなければならないと認識している。
【斉藤委員】
いじめ2004件、過去最高の認知件数だと思うが、件数も中身も悪化している。このことをシビアに認識することが必要だと思う。
このいじめ問題の重大性、一言で言うと、子どもに対する人権侵害であり暴力行為なので、その本質を認識して対応する必要がある。本会議での教育委員長の答弁を聞くと、「いじめは絶対許されない」と。なぜ許されないのかということがない。その本質をしっかりつかまないと、空を切ってしまう。
学校というのは、子どもたちが一番長く生活する場である。ということは、子どもの安全・配慮をする義務が学校にある。だから、いじめにより生命が脅かされたり、神経を脅かされるようなことがあってはならない。学校として、子どもの人権、生命、健康を守る学校の安全配慮義務があるのではないか。
【生徒指導課長】
やはり保護者から大事な子どもたちを預かっている学校であるので、児童生徒の安全を守るということが第一であろうと思う。いじめにより児童生徒の安全が脅かされるようなことが決してあってはならないと思っている。
義務ということについてだが、やはりこれまでも述べてきたが、早期発見・早期対応、未然防止、または教職員間の共通理解、関係機関との連携等があるのではないかと考えている。例えば、やはり安全配慮義務の中でも、いじめの本質を理解する義務というのがあるのではないか。教職員がきちんといじめというものをとらえて、どのようにやっていけばいいのかということの共通理解を図る必要があるだろうと。もう1点は、児童生徒の動静をきちんと把握する義務があるだろうと考えている。これは生徒の実態を日常からきめ細かに観察することにより、早期発見につながるものではないのかと考えている。その他にも、防止するための未然の策を講じる義務等もあるので、そういう点もきちんと学校やPTAの方々等と情報を共有しながら一体となって今後も進めていかなければならないことだろうと考えている。
【斉藤委員】
今度の調査結果で、1つは、いじめを認知した学校数が280校で644校の半分以下で本当なのかと。どの学級でもあると言われるような状況の中で。
もう1つは、いじめを解消したというのが81.7%である。これが本当なら立派だが、しかしいじめというのは、何を基準に根拠に解消したというのか。かなり継続的な状況を見ないと簡単には解消と言えないのではないか。そのあたりの評価はどうなっているのか。
3つ目に、学校として児童生徒の生命または身体の安全が脅かされる重大な事態が12件報告されている。その中身を見ると、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」と。1261件、いわば一番件数の多い、一般的には軽微と言われるいじめだが、もう1つは、「仲間はずれ、集団により無視をされる」1件、「軽くぶつけられたり遊ぶふりをして叩かれる」が3件。だからいじめの対応からすれば、一般的には初期段階の軽微な中身でも、学校では命に関わる重大な事態と認識している。いじめというのは、初期の段階でもケースによっては生徒の命に関わると。大変驚いたのだが、本当に実態を一人一人に即してしっかり見ないと、子どもの命や人権を守れないなと思うがどう受け止めているか。
【生徒指導課長】
認知校数だが、これは調査としての数ととらえているが、やはり児童生徒の数が少ない学校もあるので、そういうところの数は認知されていないというのも多くあり、数的には280という数字になっている。
解消率だが、これらも加害・被害の関係、子どもたち同士の改善もその通りだし、そこに関わっていた保護者の方だとか、そういうところでもお互いの理解というところで、学校として解消されたと。以降の子どもたちの日常の生活等も踏まえて見ながら、この状況であれば解消されたのであろうととらえているものだと考えている。
重大な事案についてだが、委員ご指摘のように、トータルとして、延べ数とすれば8件と報告が出ている。中身については、軽微なものと若干複合的な内容もあり、やはり学校としてそれが重大な事案だととらえ報告いただいたものと考えている。中には、それが継続的に続くことにより、重大性を帯びていたというものもある。よって、こういう状況を受け、その後に各教育事務所において、すべての学校の教職員を対象とした研修等を実施しながら、いじめに関しての共通の認識を持っていただく、その定義を理解していただく等のことを現在進めてきており、今後も引き続き対応していきたい。
【斉藤委員】
件数も多いし、中身も1つ1つ吟味しないと簡単にはこれが軽いとかそうは言えない実態だなと指摘しておきたい。
今後の対応として、1つは、子ども・生徒自身がこの問題を解決していくということは大変大事だと思う。81.7%解消しているという中で、こういう取り組みをやって解消したという実例・経験をしっかり返していく必要がある。特にその中には、子ども自身が主体になってということを取り組んでいただきたい。
2つ目に、今回何ヶ所かで指導主事などを対象に研修を行ったようである。これは全ての学校でぜひ徹底していただきたい。今回これだけ全国的な社会問題になって調査したら2004件と出たわけなので、今のいじめの実態の深刻さ、このことによって神経が脅かされて長期にわたるというケースがたくさんある。そういう意味では、この時期にきちんと全校でこの問題の校内研修をしっかりやるべきではないか。
3つ目に、その際に、いじめの問題というのは早期発見・早期対応である。それで、学校全体の取り組みにすると。これは文科省もそのように指示している。絶対その先生が抱え込んではならない。学校全体の取り組みにするという点で、今の教員政策が障害になっている。学校評価・教員評価・多忙化など。この問題を一緒に解決していかないと、逆にいけば、こういう教員評価のやり方が先生方の協力協同の障害になっているのではないか。そういうことを含めて、学校全体の取り組みにどうするかと。これは教育委員会自身が知恵を出して、実態に即してやるべきだと思うがいかがか。
【生徒指導課長】
今後の対応について、実際の取り組みの具体例等、ぜひ学校にということで、まさにその通りだろうと考えている。よって、次年度以降についても、今年度緊急に実施したいじめ根絶のための研修会等を各教育事務所で開催する予定としている。その持ち方については、一方的な講義等ばかりではなく、今年度も実施したが、例えば、学区内の先生方だとか、小中を越えての意見交換または実例等を交えての意見交換等を通しながら、ぜひお互いの実践が他の学校でも生きるような研修の持ち方を工夫していきたい。
すべての学校で徹底ということだが、これについても、12月3日付で各県立学校長・教育事務所を経由し市町村教委・各学校に通知をさせていただいた。中身については、今回の緊急調査の結果、本県の実態もそうだが、全国的にも、子どもたちへのアンケート調査を継続的に実施していただきたいこと、また事案によっては警察等との連携をいただきたいこと、各学校でいじめ等の研修を実施していただきたいことをお願いさせていただいたところである。
【企画課長】
各学校においては、人間形成をめざし、生徒の成長と希望する進路の達成だとか、人格の形成などを目指して日々取り組んでいる。
学校評価については、そのようなことを進めるにあたり、さまざまな視点から検証し、継続的に組織で改善に取り組むことを目的に実施しているものなので、いじめについても、各学校において、全教職員の共通理解のもとに、一貫した対応が求められているので、子どもたちに接する教員が、1人1人と信頼関係を築いて、向き合っていけるよう、学校・家庭・地域が一体となって進めていくような評価となるよう進めていきたい。
【斉藤委員】
やはり風通しのいい学校、教職員が一体となって取り組めるようなものにすべきだと。その上では、多忙化を本気になって解消するということにも取り組まないと、パソコンに向かう時間が一番長いという状況は本当に解決していただきたい。
ユネスコの調査では、日本の子どもの孤独感が29.8%がダントツで世界一である。フランスは6.4%、イギリス5.4%、OECDの平均は7.4%である。そして子どものストレスの最大の問題は勉強である。国連子どもの権利委員会が指摘するように、極度に競争主義的な教育制度というのは、日本の教育制度は世界から見ればそういうそうである。このストレスが背景にあり、孤独感を感じる、時間もないと。こういう子どもを取り巻く状況、特に競争的な教育制度というものを、根本的には解消を目指していくべきだと。
国連子どもの権利委員会の問題の勧告を三度受けているが、これは県の教育委員会議でも、子どもの権利委員会の勧告をしっかり受け止めてやっていただきたい。いくら教育委員長に聞いても全然噛み合わない。本当に狭い視野の話しかしない。そこで重大な法的権限を持って勧告されているので。国内法に優先する。そういうことをしっかりやっていただきたいし、そういう精神でいじめの問題も対応していただきたい。
【教育長】
日本の子ども、自己肯定感の非常に低いという調査結果が出ている。やはりいろんな要因があるのだろうと。教育の面で取り組めるもの取り組めないものあるが、我々としては、子どもたちが学校で過ごす時間、特に授業を含めて学ぶということの喜びを生涯にわたってもってもらうというのは一番大事だと。したがい、今の県の計画の中では、授業が分かる子どもの率を増やしていこうという目標を掲げている。これはやはり、授業が一番大事でそれを分かるという自己達成感を少しでも持つ子どもたちを育てていこうと。それは平均点でもないと。授業が分かる子どもを増やしていこうという取り組みをしている。現在、いろんな教育に対する議論がなされているが、我々としては、子どもの中心に立った議論がこれからもいろいろ深まっていくことを期待したい。我々としてもそれに向け努力したい。
・シックスクール問題について
【斉藤委員】
決算審議の関連質問でも取り上げ、この間の本音で語ろう県議会でも父兄の方がこの問題を県議会に直訴するということもあった。
1つは、私が取り上げて以降、県教委としてどのような対応をしてきたのか。
2点目、大規模改造工事により、TVOC検査の測定というのは4ヶ月ぐらいやられたが、基準値を超える結果が出たと。専門医もこれはシックスクール症候群だと。これだけTVOC検査や専門医の診断でそのように指摘されているのに、なぜ一戸町の教育委員会はこれをシックスクールとして認定しようとしないのか。それは県教委としてはどう考えているのか。
【学校施設課長】
県教委の対応だが、10月26日に県教委同席のもとに町の教育委員会と保護者との間で話し合いがもたれた。この場では、発症原因だとか学校復帰、学習支援ということで話し合いが行われたが、発症原因については、両者の見解の隔たりが大きく、進展はなかったと考えている。
11月30日に、県教委として町教委を訪問し、発症原因や学校復帰等についての町教委の認識を確認した。また学校復帰に向けた両者の話し合いの場を設けるべきだということで要請し、現在日程調整している。
こういった町教委・保護者との話し合い等については、以前からも行っているところだが、今後についても話し合い等を継続し、いずれ町教委と保護者がよく話し合うということがまずは必要であろうと考えており、県教委としても助言を続けていきたい。
発症原因についての一戸町教委の考え方、聞き取りをした部分での話だが、「大規模改造工事を実施した棟の各室のTVOC測定値が暫定目標値を上回っていたことから、これがシックスクール発症の一因になったと推測されると認識している」というのが町の話である。「TVOC測定値が暫定目標値を超過したことのみを理由にして、発症の原因がすべて大規模改造工事になるとまでは言い切ることができないのではないか」ということで、町の話があり、この点、大規模改造工事がシックスクール発症の原因だと考えている保護者と見解が異なっている。
県教委の考え方だが、シックスクールのポイント等もつくっているが、そもそも工事完成後引き渡しにおいては、VOCの測定をするということになっており、基準値を下回った場合に引き渡しということになるが、その後の気温上昇等により、使用建材等から揮発性有機化合物の放散が進む可能性もある。これは、学校の施設の改修等が春先ということで、2月3月に終わって、7月8月に向けて気温が上がっていく中で放散も考えられるということで、そこの部分については、県教委として、工事完成時の測定結果を過信することのないよう、日常的に良好な室内空気環境を維持するよう取り組みを要請してきたところであり、これについては今後も働きかけていきたい。
【斉藤委員】
第希望改造工事による化学物質が発散したと。TVOC検査は工事完了後4ヶ月後である。4ヶ月間それを受けていたということになる。そして教室が検査を超えただけでなく、避難場所とした被服室も超えていたと。二重の被曝をこの子どもはしてしまった。そして専門医が診断して、そのことによる発症だと。町教委は「一因だ」と言っていても「全てではない」と言って否定している。だったら、一因以外に何があるのかと。結局「子どもの体質」だと。これはとんでもないことである。人権侵害である。大規模工事による化学物質の暴露がなかったら、この子どもは発症していない。それがあったから発症した。それ以外に、何か特別な事情があるか、子どもたちの体質や個人差は当然ある。しかしそれが主因では絶対にない。これを認めたら、子どもの人権を学校・教育委員会が認めないことになる。
実は、その根拠を聞いたら、長野県教委のシックスクール問題の対応を根拠にしていると。「新築後の建物に居住し、これらの化学物質に汚染された空気を吸うことにより、症状が表れるが、居住者全員が同様の症状を表すわけではなく、個人差があります。また、それまでの化学物質の状態や体質にも左右されます」と。こういうのは全く全国共通ではないと思う。長野県教委のシックスクール対策というのは進んでいるものか。これはとんでもないものだと思う。岩手のシックスクール対策の中身も含めて示していただきたい。
【学校施設課長】
長野県の話が出たが、詳細を読んでいないので、その部分についてはコメントはなかなか難しいと思うが、委員から指摘のあったようなシックスクールの発症の部分については、ご指摘のあった部分ではないかと考えているが、学校に入学して4ヶ月間、具体的には8月6日に測定しているが、その前の7月中旬から学校には行っていないと。自宅学習を続けているという状況もあった。その間に、TVOCの測定等が行われていれば、揮発性有機化合物が400マイクロを超えていたのかという部分が明らかになったのだと思う。ただそれがVOCの検査自体が基準値を超えていなかったということで、そのTVOCまでやらなかったというようなことが1つ反省点としてはあるのかなと思っている。
本県においては、胆沢において、シックスクール問題があり、22名の方が発症したわけだが、23年の3月に奥州市教委が、奥州市立学校等におけるシックスクール対策マニュアルというものを策定している。これは、工事の引き渡しを受けてから、使用開始を行うにあたり、市の教育委員会がTVOCの猛毒測定を行い、厚労省の暫定目標値400マイクロ以下であることを確認してから使用開始するということもマニュアルの中には書かれている。
我々としても、奥州市の対策マニュアルをコピーをとり、全市町村に配布等も行い、研修会において周知徹底を図っているところだが、いかんせんまだまだ周知が足りなかったということもある。その一方で、どういう対策をとるかということについては、あくまでも市町村の判断という部分もある。我々としては、夏場の気温上昇等にともなう発症ということも十分考慮し、適切な対応をとっていただきたいということで、今後機会あるごとに要請していきたい。
【斉藤委員】
ぜひ県教委が指導性を発揮して、子どもの人権がかかっている、教育委員会の体質が問われている問題だと思う。この教訓を踏まえるなら、TVOC測定を県のマニュアルにもきちんと位置づけてやるべきではないか。
この生徒は、学校に戻りたいと努力しているので、さまざまな環境をつくっていただきたい。ところがあの学校は、分煙をしていると。タバコの煙も出てくる。学校の敷地内はあり得ないと思うがそういうこともしっかり把握して対応していただきたい。