2013年1月22日 商工文教委員会
NPO法人の事業費使い切り問題に関する質疑大要


・県の指導、問題の把握について

【斉藤委員】
 私も15日に調査に行き、詳しく状況を山田町からも聞いてきたが、あまりの異常さに驚いてきた。
 例えば、平成24年度事業の支払状況については、金銭出納帳がない、伝票方式をとらず口頭指示の支払いが常態化している、現金も一時まとめて出金して支払に充て、精算記録がない等の状況だと。これは23年度もそうである。24年度からではない。23年度は5回も契約変更をして、事業費は1500万円から4億3000万円になった。それが24年度は7億9000万円になった。
 このNPOの実態というのは、旭川市の認証団体で、630万円ぐらいの事業しかしていない。その賃借対照表も間違っていると指摘されているような管理能力のないNPOに、23年度は完了検査もしているが、なぜ気づかなかったのか。
 事実確認で違うと思うのは、昨年11月29日というが発覚したのは28日ではないか。町はそのように受け止めている。そのときに初めて知ったというような話なのである。本当か。県が危ない、おかしいと感じたのはいつなのか。

【雇用対策課長】
 11月28日、29日の関係は確認させていただきたい。
 県がこの問題について把握したということについては、11月26日に、宮古地域振興センターと雇用対策労働室で山田町に対する調査を行っている。事業の状況について確認した結果、どうも明確な回答が得られないという、当初書面でやりとりをしていたが、なかなか回答が得られないということであり、調査をすることになった。そういったことから考えると、いろいろやりとりをしていて、10月ごろから、どうも不明瞭な部分があるということは認識している。もう少しさかのぼると、年度変わりの頃に、前年度事業を精算する段階で、精算準備に向けた一連の打ち合わせの段階で、非常に経理記録等の整理がお粗末であるということを確認したため、これについては早急な改善をするようNPOおよび町に指導した経緯がある。

【斉藤委員】
 今日の資料で、事業途中の出納状況の確認というところで、平成23年度は12月および3月に山田町およびNPOに対し、経理書類の整理および事業費執行について指導を行ったと。この中身について示していただきたい。何について、どういう指導を行ったのか。

【雇用対策課長】
 12月28日に指導を行っているが、この時点で2億を超える事業費となっていたことから、当然今後会計検査等も想定され、きちんとした規模に応じた書類整理等が必要と考えて、具体的な整理書類の整理をすること、あるいは内容的には制服やジャンバー等でブランド的な物品の購入も見られたことから、常識的な購入をするべきという指導を行っている。
 3月のときには、年度末終了後の実績報告を受けた際に、県は完了検査をしなければならないので、それがスムーズに進むように、精算報告で必要な会計帳簿類の整理をきちんとするようにという指導をしている。

【斉藤委員】
 この12月、3月で指導をきちんとしていれば、今年度の被害はなかったと思う。この時点でまともに経理がされていないと分かったのではないか。その時だって伝票がない、帳簿がなかったのではないか。そのことをあなた方が認識していて、今年度の事業計画を認めたとしたら県の責任は問われる。12月、3月の時点で、どういう状況だったのか。金銭出納帳がない、伝票方式をとらない、これは23年度もそうだったのではないか。そういう認識にあったのではないか。

【雇用対策課長】
 会計出納帳簿がない、伝票方式でないというのは、山田町の先の調査結果で記載されている表現だが、県の12月・3月の調査の段階で、そこまではっきりとした認識をもっていたかどうかについては把握していない。ただ、たしかに領収書類の整理だとかそういった部分で不備があるということは報告を受けている。

【斉藤委員】
 ここはとても大事なところである。調査していてそういう曖昧な認識ではいけない。県は指導している。指導する具体的な根拠・事実は何だったのか。

【雇用対策課長】
 県の指導にかかる根拠だが、県と山田町の補助金交付契約に基づく山田町に対する指導ということで入っている。当然その中にNPOも同席しており、山田町に対する指導の徹底と同時に、同席してそれを聞いているNPOに対してもそこをきちんとやりなさいという形で指導をしているものと聞いている。


・変更契約の中身について

【斉藤委員】
 最初にいただいた資料ですぐにおかしいと思ったのは、23年度分の事業変更である。12月20日、第4回変更契約で5000万円きっかり増額補正されている。1月25日には4億3000万円になり1億6000万円余補正されている。この補正の中身を町に聞いたが、この5000万円は事実上の損失補てんである。もう23年度で事業費を使いきっている。それを2度にわたり損失補てんしたから、今回もやってくれるのではないかというので、悪どいNPOが思った。この第4回5回の事業計画変更の中身を、実態を把握しているか。

【雇用対策課長】
 いま手元には第4回の変更に関する詳細な資料はないが、第5回の変更については、内容的には、1億6000万円のうち、7000万円ほどが人件費(社保・手当に係る部分)、5000万円がリース料と。

【斉藤委員】
 私は山田町からこのように聞いてきた。平成23年12月の5000万円は未払い分の補てんだったと。24年1月25日の補正は、社保・雇用保険料である。そして公共料金の未払い分。これは第3回までの事業計画変更でいわば見込まれていたものである。使い切ったからまた補てんしている。
 先ほど、12月に県が指導したのは、事業費が2億円を超えてきちんと整理されているかと指導したと。それがその後4億3000万円になった。12月1月にどさくさまぎれに補正された。事実上の損失補てんである。あなた方が指導しながら、こういう事業計画変更を認め、そして24年度は7億9000万円のとんでもない事業費をこのNPOに委託することを認めたのは二重に問題だと思う。そこはきちんと調べていただきたい。


・事業内容、チェック体制について

【斉藤委員】
 事業内容で1つの大きな転換点は、御蔵の湯だったと思う。御蔵の湯というのは、23年12月に開業しているが、無料で入浴を提供すると。しかしこの時期は、8月の段階で全員が仮設住宅に入居している。自力で全ての人が風呂に入れるという段階で、なぜこんな御蔵の湯のようなことをやらなければならなかったのか。その必要性は全くなかったのではないか。いわば、体育館などで避難生活をしているのならともかく。
 そしてこの御蔵の湯というのは、受注したのはカガヤという建設会社で、盛岡の建設会社である。山田町出身だというが。大雪りばぁねっと。から1億2千万円で発注されている。こんなことができるわけがない。NPOが建設会社に発注するなどということは。しかし財産を持てないから、8月の段階で関係者のたった1人のリース会社を立ち上げた。この会社を調べるだけでも、このごまかしはすぐ分かったと思う。あれだけの大規模な入浴施設をなぜつくったのか、誰が建設したのか。どこからどういう形でリースされているのか。こんなのは当然確認して当たり前ではないか。そういう確認はしなかったのか。この事実関係について、いま何が分かって何が分かっていないのか。

【雇用対策課長】
 伝聞情報で恐縮だが、たしかに仮設住宅が全ての人が移っていた時期だが、まだ追いだき機能もなく狭い風呂で、町とすれば、足を伸ばして入れる風呂を提供したい、そして散り散りになった町民が集まれる場所を提供したい、そのためにつくったと聞いている。
 オールブリッジなるリース会社だが、県はこのリース会社の代表が関係者であるということを把握したのは、昨年11月初めだった。不明瞭な点を感じ、調査を始める中で、そういった事実も把握したものである。
 現在まで分かっていることは、建設会社への御蔵の湯の発注元は大雪りばぁねっと。であるということである。県の当初の町から説明を受けた内容としては、リース会社が鋼材・資材をリースで提供し、りばぁねっと。がその組み立てを発注したと聞いていたので、そういう意味では、組み立て者はNPO法人ということでつじつまは合うわけだが、建設会社の方では、新聞報道等においても、オールブリッジという会社の存在は知らないということだった。

【斉藤委員】
 入浴施設は、第何回の事業計画変更で出ていたか。その無料入浴施設をやると言ったときに、誰が建設するのか、どこからリースするのか、当然チェック項目だと思う。これだけの施設をNPOは持てないのだから。今の説明で重大だと思うのは、町がリース会社がリースで提供してNPOが組み立てたと言っているのだったら、山田町も共犯だということである。山田町もそのごまかしを知りながら県をごまかしたということになる。これは重大なことである。いつの事業計画にどういう形で盛り込まれたのか。
 そしてたった一人のリース会社、最初は山田で設立され、それが翌年の4月1日に役員の地元の石川県に移転されたと。山田でつくられたごまかしのトンネル会社である。そんなリースなどできるものではない。事実、このリース会社の通帳を持っていたのは岡田代表である。すべて自作自演であり許されない。本当にこの雇用事業は捻じ曲げられた。この時点でのチェックができなかったのはきわめて重大である。
 さらに、カガヤに災害ボランティアセンターの改修工事が2千数百万円でNPOから発注されている。町の公共施設である。その改修をNPOが発注するということは二重に許されない。こんなでたらめなことをやっている。そして1泊1万円の無料施設ケビンというのをつい最近まで無料で借りていた。これも2年近くにわたって無料で提供していたということも異常だと思うが、この施設も改修されている。災害ボランティアセンターをつくっていた体育館には、会長の専用のトイレがつくられ、その外には露天風呂までつくられた。この体育館の施設はサティアンと呼ばれ、怖くて入れないと。町民はそう言っている。県や町にもたくさん苦情や問い合わせがあったと思うが、この時点で8月前後の時点で、こうした無法がすでに行われていた。それがなぜチェックできなかったか。これは徹底して、県のチェック体制も含めやるべきだと思うがいかがか。

【商工労働観光部長】
 県のチェック体制等について、町が立ち上げた第三者委員会の調査の推移を見守る中で、県としてどのような指導、適切な対応、そういった面で不適切な部分があったかないかについてもしっかり確認していきたい。

【斉藤委員】
 改めて23年度から不正があるということを指摘した。そういう無法は夏前から始まっていたので、徹底した調査をしていただきたい。ところがこの23年度事業計画の県の完了検査はすんなり通ってしまっている。いま慌てて再精査している。本当にこれは異常なことである。
 それでどんな事業を行っていたのかということを事業報告で見てみた。率直に、税金を使ってやるような仕事ではなかった。観光のための人材育成、災害対応のための人材育成、防犯のための対策やヘリコプターを使った捜索までしている。こんなのは事業計画で想定していたのか。あくまで町が期待したのはボランティア程度の捜索活動だと思う。ボートも購入し、ヘリまで使い、そして140人にブランド物の外国製の制服である。400万円以上使って。そういう意味でいくと、雇用対策事業で委託すべき事業だったのではないのではないか。だいたい人材育成などできる団体ではない。その事業の中身も、本当にこれが雇用対策・復興に関わる事業だったのか。雇用のためだったら何でもできるというやり方をしている。そこも徹底して精査する必要がある。
 例えば、無料入浴施設をつくっていて、ここで44人働いている。無料の施設に44人。商工会関係者からも話を聞いてきたが、「地元の商工業者がいくら求人を出してもNPOの方が待遇がいいから来ない」と。役員レベルは月に40万円もらっていた。日当6000円はそれほど高くないが、日曜に出勤すれば1万円など、だいたい手取りで15万円もらっていたと。だったら地元の会社に行くよりは―というので、残念ながら町民の間にも亀裂をつくってしまった。だから地元の商工業者は「復興に逆行した」と言っている。再建しなければならない業者は求人を確保できず、そういうバッティング現象まで起きた。そういう意味でいくと、この中身もきちんと検証すべきである。あなた方は事業計画をきちんとチェックしているのだから。本当にそれが必要だと安易に認めたのか。

【雇用対策課長】
 初めに訂正だが、ヘリの捜索だが、これは我々の確認では、日本財団からの寄付により行われたものと把握している。
 事業内容の検証だが、緊急雇用創出事業は、国が示す要項には、県が行う事業について説明された後、市町村がこの事業を行う場合は、県が企画する事業と同様に、市町村も事業を企画することができる。それに対し県は基金から補助するという形になっており、そういったこともあり、県の方で、積極的に事業内容について査定および修正を加えるというのは、実際これまではあまり行っていないと認識している。当然、内容を事前に承認手続きがあるので、そもそも事業の要件に外れるものを除外するようにとか、あるいは、こういった内容では緊急雇用ではできないなどといった指導は行っているが、事業に対する評価のような形での調整は非常にしづらいというか、そこは市町村に対する自立的な企画を尊重するというスタンスでここまできたものである。
 一番問題となるとすれば、その中で緊急雇用創出事業で、対象として認められるもの、認められないものをきちんと指導するという部分については、我々としても再確認は必要であると考える。


・大雪りばぁねっと。への事業委託となった経緯について

【斉藤委員】
 なぜこの事業が委託されたかという初動の問題について。昨日の町の第三者委員会でも初動の問題が提起された。わたしは経過を聞いて本当に驚いた。震災直後の3月27日にりばぁねっと。が山田入りし、28日の災害対策本部会議に参加している。そして4月1日にはケビンハウスの使用料は免除されて、4月9日に山田町の災害ボランティアセンターが開所し、岡田氏が副センター長に就任すると。5月2日には、災害対策本部の委嘱、沿岸域捜索担当主幹・物資センター担当主幹に任命されている。そして9月30日には、山田町復興支援参与の委嘱と。本当に町との癒着というのは深刻なものだった。実はこの中で、23年6月15日、「岩手県知事との意見交換会に出席」というのがある。知事がこの段階で3人の沿岸の代表と懇談しているが、3人のうちの1人が岡田代表である。あまりにもお粗末だったのではないか。誰が推薦して、なぜこういうことになったのか。岡田氏の素性も調べないでやったのではないか。だいたい大雪りばぁねっと。の定款では、大雪山系の環境保全とか捜索など、北海道旭川で活動することを目的につくられた。それが岩手県にきて、何億という事業をやるようなNPOでは全然ない。知事との懇談の経過は知っているか。

【雇用対策課長】
 宮古で知事との意見交換に出席した地元側から3名のうちの1名として出席したということは承知している。どういった経過で岡田氏が入っていたかは確認していない。

【斉藤委員】
 これは県主催である。秘書広報室長が司会をしてやっている知事との懇談である。誰がどういう根拠で推薦したか調べていただきたい。この大事な時期にこんなことをやっているから、この問題が拡大してしまったと言わざるを得ない。
 実は山田町もおかしいと思って、調査に昨年入った。7月26日に、町の監査委員会から一部不備の指摘があった。それでヒアリング調査をして、厳重注意・改善策を求め、当初予算内の支出を指示したと。今回は損失補てんはできないと。そして、それだけでは済まないから、2人の職員をNPOに派遣している。しかし2人の職員を派遣したが、伝票も出なかった、現金出納帳も出なかった。もうこの時点でアウトである。何を今まで引きずってきたのか。23年度に転換点はあったと思うが、24年度でもこういうことが起きている。県は承知していたか。チェックしていたか。

【雇用対策課長】
 いつの時点でこれらの内容について把握したかについては確認していない。昨日の町の第三者委員会でも「立ち止まるべき時期は何度もあった」という意見が委員から出ていたが、そうしたことも含め、今後町の検証委員会の中で、深く検証されていくものと考えている。


・被害状況について

【斉藤委員】
 被害状況を正確にお聞きしたい。新聞報道では1億6000万円の未払いがあると。盛岡の業者から「最初は社協にさまざまなリースをしていたが、途中からNPOに変わった。800万円未払いだ」と聞いた。山田町の町内の商工業者は10件1000万円未払いだと。事業費を使い切っただけでなく、未払いがどのぐらいあるのか。
 そして従業員に対する賃金はどこまで払われたのか。未払いはいくらか。
 新聞報道では、7億9000万円の実績のうち、人件費は2億5400万円支払われて、人件費以外の経費は5億3600万円だと。使い切った段階で。しかしこの事業は、人件費は5割を超えなければいけない。約3億円ぐらいは自動的に返還されるのだろうと指摘されているが、事業によってはそれどころではない。そういう被害の状況はどう把握されているか。
 全額返還ということもあると。どういう場合全額返還になるか。いろんな問題はあるが雇用の実績だけはあるので、一部それは認められるかもしれないが。現時点で認められる事業、そうでない事業は把握しているか。

【雇用対策課長】
 部分的に確認しているものはあるが、正確な未払いの状況は把握していない。直接的には、事業の発注者である山田町において調査されることがのぞましいが、新聞報道にもあったが、山田町の弁護士との相談の中で、山田町が積極的に動くことは、債権者にたいし山田町が肩代わりするかのような誤解を生みかねないこともあり、正確な全体像を積極的に把握するという状況にはなっていない。したがい、山田町から情報提供を受けている県においても、全体像の正確なところは把握していない。
 賃金の未払いについては、12月分の支払いから支払不能となったわけだが、その内容は11月実績の翌月15日払い、したがい11月実績分について支払われた額は一人5万円。ただし、これを受け取らなかった従業員もいたと聞いているので、正確な支払額は分からない。また、本来11月実績として支払うべき額も、法人が勤務実績に基づき把握していれば分かるが、そこについても情報提供は受けていないので、結果、あといくら未払いが残っているか、12月11日以降の自宅待機に対する休業補償、これらの額が総額いくらになるかも不明である。
 補助金の返還だが、最悪全額返還を求めるケースとして考えられるのは、県の契約相手である山田町に明らかな不正行為があった場合は、この事業そのものを補助事業から除外するということはあり得る。

【斉藤委員】
 これは最終的には、告訴・告発で犯罪になると思う。第一義的には事業主体であるNPOが未払いがいくらか調べる責任はある。しかし、伝票もない、出納帳もないのだから、この調査についてまともに回答する能力をもっていないと思う。だから、ある意味では、事件の全貌を町なり県が把握する責任があるのではないか。徹底してこの問題を解決していただきたい。
 大震災津波で山田町は甚大な被害を受けた。復興に全力をあげなくはいけないときに、こういう負の遺産を背負ってしまった。これは町にも責任はあるが、しかしそれにより復興が遅れたり、町民が犠牲になっては絶対にならない。だから徹底した真相究明とあわせて、復興の取り組みを進めることをしないと、町民が二重の犠牲になってしまいかねない。
 来年の雇用事業は、今年は12億円だが来年は2億円だと。NPOの分はすっかり来年はできない。雇用対策事業もそうなりかねないというので、この問題は徹底して解明し、しかし町民を犠牲にするような、復興の障害になるようなことは最大限避けるような手立てをしっかりやっていただきたい。

【商工労働観光部長】
 今回の事案については大変遺憾であると思っている。
 この問題で震災復興が遅れるということがあってはならないと考えている。このため、県庁内においても、関係課による連絡会議を開きながら情報を共有し、それぞれの部局とも連携を図りながら、今後こういった事案が発生することのないよう適切に対処していきたい。