2013年3月5日 商工文教委員会
教育委員会(いじめ、体罰問題等)に関する質疑大要
・いじめ問題について
【斉藤委員】
いじめ問題がきわめて重要な教育問題で社会問題だと。これはだいたい多くの共通の認識になっていると思う。
問題は、学校で、本当に子どものいのち最優先ということで対応できるかどうかである。
そこで、いじめの研修会がやられていると思うが、どれだけの学校でいじめの研修会がやられているか。
【生徒指導課長】
今年度の各学校の状況については、例年実施し国で実施している問題行動等調査の中の項目にも入っているが、昨年10月に緊急の研修会等を実施している。また県立学校長会議等でも説明しており、その後に県内小中高数校で聞き取りを行っているので、その具体の取り組みを何校か紹介したい。
一関市の小学校では、この研修会後に、研修会に出席した教員が、校内伝達用のプリントを独自に作成し、説明をするということとともに、市町村の指導主事を招へいし校内で研修会を実施している。
野田村の中学校においては、資料は当然回覧するが、12月に改めて時間を設定し、県教委で出しているいじめチェックシートを自校に照らし、そのチェックシートを活用しながら、いじめ防止に向けた取り組みをどうしていけばいいのかという研修会を実施している。
西和賀高校では、国・県の通知や資料等を活用しながら、職員会議と抱き合わせての研修等を実施などを行っている。
このように、各学校においては、時間設定や研修内容を工夫しながら研修等を実施しているものと考えている。今後においても、各学校における研修の定着が重要だろうと考えており、県における研修の実施や各種研修資料等の提供に努めていきたい。
【斉藤委員】
問題の重大性・緊急性が認識されていないのではないか。滋賀の大津でああいう事件があり、文科省が全国で調査し岩手県でも2004件いじめの報告があった。その対応もきわめて深刻なものである。
いじめというのが子どもの人権侵害であり暴力だと、本質的な認識から、学校が最優先で子どものいのちを守る体制をつくることが緊急の課題である。そういう共通の認識をつくることが第一歩である。学校で全教職員参加でやらなかったらそうならない。
大津でも、結局あれをいじめだと認識していた先生がいたが、全体のものにならなかった。担任もそう判断できなかった。子どもたちからいじめだという訴えがあったにも関わらず、学校としてそういう認識に立って対応できなかったという重大な教訓が出ている。
いま2004件も報告されているときに、そして教育委員長も議会で述べたが、どの学校でも学級でも起こり得ると言っているときに、本当に教訓をすべての学校・教職員のものにすると。1ヶ月2ヶ月で優先していじめ問題の研修がやられて当然ではないか。いじめの問題は、あらゆる課題に優先して対応すると。そういうことで研修は、おざなりでなく、すべての学校で今年度中にやるということが必要ではないか。
【教育長】
たしかに大津の事件を教訓にして、緊急に全学校・全公立小中学校の生徒指導担当へ、主任指導主事を対象とした研修会を緊急に実施した。その後、やはりご指摘の通り、そういった意味ですべての学校から参加したと。それをただ単に我々として伝達するだけではなく、グループの中で討議していただき、自主的な研修にも取り組んでいただいた。したがい、今後そういう取り組みを毎年実施していきたい。当然そういった研修について、各学校において伝達が決定されるように県教委としても徹底していきたい。
【斉藤委員】
事態の重大性・緊急性を県教委も市町村教委も学校長も認識すべきである。たしかにすべての先生方を集めることはできないかもしれないが、全ての学校から副校長や主任指導主事が出ているというのであれば、校長と協力して全教職員参加で、学校での研修をしっかりやると。いわばいじめ問題というのは、発生したら最優先で、些細なことでも全教職員が情報を共有して、父母とも協力してやるという体制をつくることが大事である。ぼちぼちやっていてはいけない。こういうときにこそ、そういう認識・体制で、取り組みを一気に定着させるということでやっていただきたい。
今のいじめというのは、広がっているし深刻になっている。これは教育委員長とも本会議で論戦してかみ合わなかったが、子どもをめぐる今の苛酷な状況をしっかり認識することが大事だと思う。その点で質問したいのは、心と体の健康観察というのをやった。その結果を見ると、去年と比べれば少し改善されているが、岩手県全体で優先的に教育相談してほしい児童生徒というのは、16671人・12.6%。沿岸部は13.6%、内陸部は12.3%である。震災の被害を受けた沿岸が少し高いのは分かるが、それと比べて内陸も決して低くない。いま多くの子どもたちはそういうストレスを抱えていると。以前に北海道大学の先生が、子どもが鬱的な状況にあるという、かなり詳細な調査をやったことを紹介したことがあるが、やはり子どもが置かれている状況というのは、本当に心と体の健康観察でも、震災とは直接かかわりのない内陸の子どもたちもそういう苛酷な状況にあると。もちろんその要因・背景については、これ自身もしっかり、専門家がさまざまな指摘をしているので、そういう認識も一致させることが必要だと思うが、このデータをどのように受け止めているか。
【教育長】
体については健康診断というもので対外的にある程度データは分かるが、心の問題はなかなか分かりづらいということで、そういう専門家の方々の助言も頂きながら、これだけの規模でやっているのはおそらく全国で例がないと思っている。ただそういった中で、子どもたちの心の動きが少しでも分かるようにしたいと。それを今何とか子どもたちに教育相談を重点的に行い、子どもたちの心の健康を守りたいと思っているので、こういった取り組みを通じながら、カウンセラー等の配置の充実も図りながら、教員の対応力も向上させながら、あらゆる方策を講じていきたい。
【斉藤委員】
ぜひそのようにお願いしたい。
小学校に35人学級を拡充するというのは、一番子どもたち・父母が喜ぶ対策だと思う。そういう子どもたちの状況をせっかく調査して出ているので、しっかり受け止めて対応するようにしていただきたい。
・体罰問題について
【斉藤委員】
体罰が大きな社会問題になったときには、今年度は報告はなかったと。今調査の途上で、各議会で議論したら、一関でも山田でも何件か出てきたと。これは調査なので出て当たり前だが、やはり氷山の一角といいますか、実は最近の新聞報道で、法務省管轄の県内人権侵犯事件状況では、学校のいじめに関する相談が18件、体罰は9件と。このデータではすでにそういう数字が出ている。それが学校で報告されないと。ここの学校の体質、教育委員会の体質は、今度の調査を通じて本当に解決できるかどうか。
以前に体罰問題を取り上げてきたが、その時も、体罰の実態というのは、やはり常習的である。そしてそれに対する処分がきわめて甘かった。これは23年11月に処分規定は見直された。遅きに失したが。今年の状況をとらえても、実際は学校に報告されずに人権委員会に訴えられると。いま各市町村で出てくると。こういう事態をどのように受け止めているのか。
【教育長】
今回の調査だけで全部解決できるわけではないと思っており、これが1つの第一歩だろうと思っている。したがい、現状を把握し、それにどう対応していくのか。これは継続的にやっていかなければならない課題だと思っている。いずれ調査の結果を踏まえ、県教委としてあらゆることを考えていきたい。
【斉藤委員】
大阪の高校の場合も、自殺に追い込まれた部活の指導者は、前にも体罰事件があり、今回の訴えもあった。しかし学校は報告しなかった。いわば処分対象になるからである。処分を厳しくしたことは当然である。しかし厳しくなったから逆に報告できないという、仲間内のような状況もあるのではないか。そういうことは絶対にあってはならない。本当に今回の事件と調査を契機に、やはり学校の現場から体罰を一掃すると。それは教育でも何でもないと。人権侵害であり暴力だと。そういうことでぜひ取り組んでほしい。
やはり部活動の分野で多いので、その背景にはやはり勝利至上主義、強くなれば何でも許されるような雰囲気がなきにしもあらず。それが今全国的にも否定されているので、教育としてのクラブ活動、人間を育てると。それなしには実際には強くならない。優れたスポーツ関係者が様々な発言をしているので、ぜひそのように体罰問題については、今回の事件と調査を踏まえて、文字通り一掃するし、ガラス張りにしていくという風にしていただきたい。
・シックスクール問題について
【斉藤委員】
奥州市が、あの事件を契機に原因究明にも取り組んで、市独自のシックスクールマニュアルをつくったと。奥州市のシックスクールマニュアルは、TVOC検査を義務付けている。県教委はこれに注目し、奥州市のマニュアルを紹介しながら各市町村でも作ろうとしているが、残念ながら各市町村でこれに続くところが出ていないのではないか。
そして市町村任せにせず、県のマニュアルも奥州市のレベルに引き上げて、大規模改造工事・改築などのときに、やはり工事できちんとTVOC検査をすると。そして子どもの安全を守るとしなかったら、一戸町でまた起きてしまったようなことになるのではないか。
【学校施設課長】
工事の引き渡しにあたっては、VOCの検査をするとなっているが、TVOCまでやるとなっているのは奥州市だけとなっている。そういったような趣旨を各市町村に周知する観点からも、毎年度通知等を行っているところだが、なかなかマニュアルの策定あるいはTVOCの検査まで至っていないという現状である。
県としてどのようにするかというところはあるが、以前にもお答えしたが、TVOCをやるということもある意味効果的な部分もあるし、VOCをやって基準値以下であっても、夏場の気温上昇により化学物質が放散するということもあるので、そういった点について十分注意していただきたいということ、そういった総合的な対応の中でまずは市町村に働きかけていきたい。
【斉藤委員】
残念ながら一戸町でもシックスクールが発生した。この点については、県教委も入って、町教委・父兄と三者の話し合いがかなり継続的に行われ、生徒の復帰問題を協議しているが、これはどうなっているか。
やはり県のシックスクールマニュアルを変えるべきである。奥州市で一戸町で発生して、三度絶対に繰り返してはならない。発生した事態を踏まえて、子どもの安全を学校でこそ守らなくてはいけない。このマニュアルは県教委が先頭になってやっていただきたい。
【学校施設課長】
12月定例会の常任委員会以降の対応だが、1月25日に、保護者・町教委・学校・県の関係部署ということで県北教育事務所の担当の方にも入っていただいた。そういった中で、生徒の学校復帰というのをまず具体的に取り組んでいこうということで、その点について検討を重ねアドバイスを県としても行った。
2月8日には、保護者と町教委・学校・県教委ということで、発症生徒の主治医を訪問し、医学的な観点から生徒の学校復帰ということについて指導を受けた。
【教育長】
いずれにしても、子どもたちの健康・安全をどう守るのかという観点から、我々として何ができるかということを検討させていただきたい。
・文科省の積算単価について
【斉藤委員】
この間陸前高田市に行ったときに、市長から、小学校・中学校の災害復旧で、文科省の積算単価が低すぎて入札が不調になり大変だという話があった。文科省と国交省等との積算単価が違うのか。
【学校施設課長】
市町村における工事費の積算だが、市町村においては独自の積算基準・単価をもっているという市町村が少ないということもあり、県の積算基準・単価を用いている市町村が多い。県の積算基準・単価は、国交省の公共建築工事積算基準を基にし、県土整備部が公共住宅建築工事積算単価表を定めている。
文科省の単価だが、公立学校施設の災害復旧事業においては、新築復旧の場合に限り、文科省が基本単価と加算単価を定めているが、それからなる補助単価を毎年度定めているところであり、これは工事費の積算単価とは異なる。
【斉藤委員】
結局、採算がとれるような単価になっているのか。
【学校施設課長】
文科省の単価は、補助単価となっており、いわゆる工事の入札予定価格を立てる設計等を行う際の基準単価ではない。つまり、工事の積算にあたっては、国交省の単価基準を参考にしている。
【斉藤委員】
文科省から出るお金が文科省の補助単価ではいけないと。そういうことにならないか。文科省が補助単価があって、積算は国交省の単価でいいと言っても、そんな差があったらどこがお金の面倒を見るのか。
【学校施設課長】
文科省の単価は補助単価ということで、実際価格よりも低いということになると、その分は実際の負担となるわけだが、そこの部分については我々として自治体の負担が増えることがないようにということで国に対しても要望している。
【斉藤委員】
現場からそういう指摘があるわけなので、学校の改築など最優先の課題なので、ところがこれが単価が低くて不調で、工事に入れないというのが現場の声なので、ぜひそういう認識で対応していただきたい。
・食物アレルギー問題について
【斉藤委員】
食物アレルギーの問題について昨日一般質問で指摘があった。食物アレルギーの子どもたちの実態、危険な症状を発症する状況=アナフィラキシーショック、それから学校給食の対応についてお聞きしたい。
【スポーツ健康課総括課長】
20年5月に調査したところ、小学校では、食物アレルギーのある児童1244名1.7%、中学校においては481名1.3%が食物アレルギーをもっている。
アナフィラキシーというのは、複数同時に同一の食物で症状が出るという状況を言うが、その割合は、小学校では228名、中学校で135名、高校で57名、特別支援学校で2名、計424名が先ほどの数字のうち占めている。
学校給食での対応だが、アレルギー物質を取り除いた除去食を提供している場合、そしてアレルギー物質がある食品を別の食品に代える代替食を提供したり、それで対応できない場合には、弁当を準備して持ってきていただくというようなものである。
なお、献立を見て、自分で除去して対応するケースもあるが、事前に献立表を配布する、あるいは管理表などを用いて安全を確保できるような形で給食を指導している。
【斉藤委員】
直接的には給食が関わる。そういう意味でいくと、学校の中で、子どもたちの状況を把握し除去食をやるなど、やはり自校方式の学校給食がとても大事なのではないか。またそうでなければ、何千食も作るような共同センター方式では対応できないのではないか。そういう対策はどうなっているか。
【スポーツ健康課総括課長】
自校方式の件だが、学校給食の実施主体については、設置者である市町村が行うということであり、さまざまな状況を把握しながら選択されるものと考えているが、学校給食の趣旨、あるいは質の確保など、住民の理解と協力を得ながら進めていかなければならないものであると認識している。
・障がい者雇用について
【斉藤委員】
障がい者雇用率が県教委は残念ながら4年連続で勧告と。この解決の見通しはどうか。
【教職員課総括課長】
24年12月31日現在で1.79%ということで、このため、採用計画があり、平成24年1月からの採用計画、2年間で65人採用する予定に対して、これまで12人の採用にとどまっていることを受け、2月27日付で厚労相から適正実施勧告を受けた。
来年度については、これまで採用試験等で別枠採用という形で取り組んできたが、教員採用で1人、事務職の選考採用で2人を採用予定であり、今年度から実施している障がい者雇用促進対策事業で今年度は9人採用したが、来年度は拡充し、28人採用できる予算をお願いしており、そのような形で採用数を増やして雇用率向上に努めていきたい。