2013年3月12日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・JR山田線の復旧について

【斉藤委員】
 3月8日のJR山田線の復興調整会議の内容が示された。
 3月10日に、太田国交大臣が来県した。新聞報道では、「JRが示した試算の中身を精査し、まちづくりと一体化する中では支援ができる」と発言をしたというのだが、太田大臣にどういう要請をしてどういう発言があったか。

【交通課長】
 大臣への要望については、これまでと同様だが、JRは「原形復旧については自社で負担する」と。「まちづくりにかかる費用は国等に財政支援を求めたい」ということが一貫している。これを受け県としては、国に財政支援をこれまでも求めてきており、先日の大臣が来県がされた際にも同じように、国に対してJRへの直接的な支援ではなく、まちづくり・復興への支援という形で国費の投入をお願いしたいという内容で要請している。
 大臣からの発言は、新聞に記載してあるような内容で、まちづくりと一体となった場合は支援できるのではないかという話だったと聞いている。

【斉藤委員】
 太田大臣がそこまで言ったということになれば、この立場で早く解決していただきたい。
 おそらく費用負担が最大のネックだと思う。JRが復旧を明言しないのもそれが最大の問題がある。JRは、復旧を明言しないこと自身が大問題だと思うが、太田大臣が「まちづくりと一体化する中で応援できる」と言うのであれば。
 3月8日に第5回の復興調整会議をやったばかりだが、4回目の開催から4ヶ月かかった。こんな間延びしたことをやっていてはいけない。1ヶ月以内に、個別も詰めて、早くJRが山田線の復旧を明言すると。すでに地元は、区画整理事業とか津波拠点事業などを進めるわけなので、そのときに肝心の「鉄道・駅舎は不明」ということになったら、まちづくり・復興に逆行すると思うがいかがか。

【政策地域部長】
 大臣がいらしたときは私も同席させていただいていた。大臣からは前向きな発言をいただいたと思っている。我々地元としては、これを1つの梃子にし、JR東日本から早期に復旧の明言を引き出すべく、次回の復興調整会議の日程等も含めて国と調整していきたい。

【斉藤委員】
 知事は議会の中で、「JR東日本は津波からの安全の確保、まちづくりとの整合性、費用負担等が課題との認識を示しているわけですが、これまでの復興調整会議や個別の協議の結果、これらの課題についてはおおむね解決の見通しが立ってきている」と述べた。これは楽観的ではないか。楽観的だと思うが、しかしこれを一刻も早く実らせると。いま部長から答弁をいただいたので、時間をかけずに、大臣発言をしっかり政府の方針にして進めるようにしていただきたい。

・JR大船渡線の復旧について

【斉藤委員】
 3月2日にBRTが運行された。私も3月3日に見てきたが、少し都会型で、たくさん詰め込み型のバスだった。
 まずJRは、大船渡線が被災してから、どれだけの代替バス・交通を確保したのか。ほとんど代替交通確保の責任を放棄したのではないか。
 今度のBRTは51本とか61本とか言われているが、これは鉄路と比べてどのぐらいの交通量の確保になるのか。

【交通課長】
 BRT仮復旧導入前のJRの振替バスということになるが、大船渡―気仙沼間、いわゆる県境を越えるバスについては、6往復となっている。非常に震災前は、大船渡線そのものが9.5往復あったので、低水準の振替だと言える。
 BRTの輸送能力だが、震災前の列車が9.5往復という中で、車両そのものが2両もしくは3両編成だったので、1日3800人程度の輸送能力だった。今回BRTの運行により、4000人強の輸送能力となり、震災前よりは若干水準を上回っている。

【斉藤委員】
 BRTになりやっと震災前のレベルの代替交通を確保したが、この2年間何をやってきたのかという感じを受ける。三陸鉄道は震災後5日間で運転再開させた。本当に復旧をさせて地域住民の生活の足を確保するという復旧の精神である。ところがJRは復旧の精神がまったくなかった。代替交通さえまともに確保しなかった。
 その1つの試金石は、例えば大船渡線は、陸前矢作まで鉄路が残っている。浸水したのはたった500mである。その気になったら陸前矢作まで通せた。なぜ通さなかったのか。そして陸前矢作の駅も、周辺にはバスターミナルになるような敷地がある。そこまで列車を通したら、そこからバス輸送もできたし、やはり復旧に対するメッセージが示されたと思う。今でもできるところから復旧させると。せめて陸前矢作までは通すということで、これは陸前高田市も要求しているし県も要求していると思うが、この要求はしっかりJRに伝えているのか。JRはどう対応しているか。

【交通課長】
 気仙沼―陸前矢作間については、被災がきわめて小さかったということで、県も市も、この先行再開を強くJR側に求めている。
 先日もJRへの要望の際に、この区間の先行再開を改めて強く要望したが、JR側からの回答は、「大船渡線全線の復旧の見通しをつけた中で、気仙沼―陸前矢作間を一緒に再開したい」と。それから、「『当該区間の利用者が全体の路線の区間の中で少ない』ということもあり、全体の中で再開ということを考えたい」という認識を示している。

【斉藤委員】
 できる区間もやらないと、この復旧に対するJRの後ろ向きの姿勢が示されてしまった。
 これは引き続きぜひ、できるところから復旧させると。大船渡線が陸前矢作駅までつながるだけで全然違う。今までの利用者とは違い、そこにターミナルをつくればそこからBRT輸送も可能な場所である。これはJRの復旧の姿勢が問われる問題なので、ぜひやっていただきたい。


・被災市町村への職員派遣の状況について

【斉藤委員】
 市町村課のみなさんが、この間92回にわたり全国の都道府県・政令市をまわり努力されてきたと。また立派な冊子も作り、そうした取り組みもやられたと。
 1つは、今年度までの確保は県内・県外・県庁内からどういう形で派遣されたか。
 来年度の派遣要請と確保状況、不足分の対応はどうなるか。
 派遣職員の心のケアの問題が深刻だが、帰省の処理はどの程度みられているのか。その拡充ということも求められているし、大槌では、家族が大槌に来てもらう旅費も独自に支援するということをやっているが、そうした必要な対策、住居の確保含めて示していただきたい。

【市町村課総括課長】
 被災市町村への職員派遣の今年度の実績は、3月1日現在で、11市町村にたいし、321人の派遣決定がなされた。内訳については、県外自治体職員が222名、県内市町村職員が69人、県職員が30人となっている。
 来年度の派遣要請は、3月1日現在で、10市町村から479人の要請がある。これまで407人の確保に目途がついた。
 不足分への対応については、復興庁の支援を受け、国職員のOBだとか、青年海外協力隊経験者の派遣、内陸部市町村へのさらなる要請、複数の内陸部市町村からなる短期ローテーション派遣などのほか、あらゆる手段を講じて確保していく。また、全国行脚を今年以上に来年度も積極的にやり、確保に努めていきたい。
 心のケア等についてだが、派遣市町村においてはこれまでも、医療関係機関等の支援を受けながら、ストレスチェックだとか専門家による面談等の取り組みを行ってきた。職員の心のケアについては、被災市町村において実施していくことが原則だが、県としても被災市町村のみに任せることなく、県と被災市町村による人材確保連絡会議を開催し、各市町村の取り組み内容について情報交換を行っているほか、派遣職員との面談を行い、その結果を市町村にフィードバックして、業務環境や生活環境の改善を促してきた。
 派遣職員の定期的な帰省については、県と被災市町村との連絡会議の場で、県から先進事例などを紹介し、各市町村へ取り組みの強化をお願いしている。
 住居の確保については、市町村において例えば、陸前高田市における専用宿舎の建設とか、大槌町においては民間アパートの一括借り上げ等により、利便性の向上だとか通勤負担の軽減に積極的に努めている。

【斉藤委員】
 ちょっと気になったのは、山田町の派遣要請が少ない。来年度の事業費は平年の10倍になっているが、ここは指摘にとどめて、本当にそれでやっていけるのか懸念するものである。


・ILCの誘致について

【斉藤委員】
 誘致のプロセスだが、たしかに今年の7月頃までに国内候補地の一本化というのもあるが、この高速加速器の研究者の段階では一致しているが、日本の学者・科学者全体の合意形成というのが必要なはずである。それを踏まえて、政府が国家プロジェクトにするかしないか、これも財務省の壁があると思う。このプロジェクトをやったからといって、文科省の予算がそのまま増えるということはないと思う。学者全体の中での調整・合意、政府全体の中での合意、そういうプロセスがあるのではないか。
 ILC誘致のコンセプトだが、グランドデザインを委託して近々出すという発想はあまりにも貧困ではないか。東北ビジョンというのも、基は野村総研、おそらく今回のグランドデザインも野村総研ではないか。そういう財界シンクタンク任せで、本当に岩手のプロジェクトがつくられるのか疑問である。岩手が誘致する場合のコンセプト・思想なしに、野村総研は脊振山地もやっている。同じようなものが出ても勝負にならない。やはりそういうものをしっかり考えるべきではないか。

【ILC推進監】
 国内候補地決定のためのプロセスだが、研究者の方で7月頃までにと言っているのはその通りだが、推進している側の研究者がそのようなスケジュールでやりたいと。したがい、その後国内全体でどのような合意形成を図っていくかということに関しては、実は具体的な内容は現段階では不明である。
 委託の関係だが、昨年7月に策定した東北ビジョンについては、調査・検討の部分を野村総研に委託しているのはその通りだが、単に丸投げということではなく、きちんと東北の産学官でかなり揉んだものである。また、現在は策定している国際的なまちづくりのグランドデザイン、これは野村総研ではなく、東北ILC推進協議会が中心になりやっているが、その調査・検討については、NPO法人「とうほくPPP・PFI協会」という、東北でつくっている産学官の団体だが、そちらに委託すると聞いている。
 コンセプトだが、東北地域がどのような研究圏域をめざすかという上で、セルンの場合というのは非常に参考になると思っている。ヨーロッパで現役で動いている巨大加速器は、セルンというところが運営しているが、ジュネーブの近郊にうかがい、そこは非常に田園地帯が広がる地域である。その中に研究者の方が村内に点在して住んでいるということも聞いており、そういったスタイルを取り込んで、我々もまちづくりのデザイン等に反映させていこうということで考えている。

【斉藤委員】
 当面は国内での一本化というのが当面の課題だが、これが国家プロジェクトになるには、やはりさまざまなレベルの合意形成がある。
 もう1つは、ヨーロッパ・アメリカが日本でやってほしいと言っているのは、財政の問題がある。日本がやるといったときに、アメリカ・ヨーロッパがどれだけ財政負担するかというのも全く不透明である。セルンも拡充の計画がある。そういう意味では、そういうプロセスをよくにらんでやる必要がある。
 4.3兆円の経済波及効果というが、たしかに建設工事があれば、それなりの効果はあると思う。ただ問題は、国際科学技術研究圏域の整備が2890億円と。これは誰が負担するのかと。地方自治体の負担とかそういう問題もきちんと示さないと、県や市町村の負担全くなしで素晴らしい効果があるということでは、まったく片手落ちの話になってしまうのではないか。

【ILC推進監】
 ILCの建設そのものはこれはぜひ国家プロジェクトでやっていただくということで、これに関して地元が負担するということは想定していない。
 またILCの立地にともない、例えば地域づくり・まちづくりということになると、私たち地元でどのようにそれをつくっていくのかということが課題になるが、基本的には既存の社会インフラを極力活用して新規の整備は抑制するということを基本としている。さらに、民間の活力を導入するということを第一に考えていきたいと思い、全くなしということはどうかと思うが、できるだけ地元の自治体等が負担を負うということがないような考え方で進めていきたい。


・市町村合併の検証について

【斉藤委員】
 委員会の議論の答弁で、「合併により財政基盤が強化された」というものだけがあったが、決してそうではないと思う。一関市にしても奥州市にしても深刻な財政危機に直面している。同時に、合併10年後で交付税が大幅に削減されると。新たな財政危機に直面しようとしている。そのための新たな合理化が奥州でも進められようとしている。どのぐらい交付税がこれから削減されるのか。
 県の検証でも、合併の課題として、「人口減少」「周辺の衰退」などの課題が指摘されていた。実は人口減少は、奥州市や一関市は被災地並みに人口が減少している。これで本当に合併の効果があったのかと。合併しても、新たな財政危機、人口減少に歯止めがかからないという問題はどう受け止め、この負の側面についてどう対応するか。

【市町村課総括課長】
 地方交付税の削減についてだが、トータルでおさえておらず申し訳ないが、合併市町村においては、普通交付税の算定特例の合併算定替という制度がある。それが例えば、合併後10年目以降、11年目から15年目まで、1年目が10%削減されてくる。例えば一関市では、10年目まで56億円増加している。奥州市については、10年目まで34億円増加しており、花巻市では約25億円と。1年目は10%減、2年目が30%減、3年目が50%減、4年目が70%、5年目が90%減になり、最終的には16年目以降、特例がないということで、通常のレベルになる。
 財政危機に陥るのではないかというだが、たしかに今申し上げた通り、特に普通交付税の合併算定替については、16年目からなくなるということで、その影響が大きいのではないかと思う。合併市町村においては、合併時からそういった合併算定替の復元を見込んだ財政計画を策定し対応してきており、県としてもソフトランディングできるように助言をしてきた。
 また総務省においては、合併算定替の終了に備え、交付税算定法案の見直し作業に着手しているという情報が入っているので、県としては算定方法に合併市町の財政事情が反映されるように対応していきたい。
 人口減少の関係だが、平成17年と22年に実施された国勢調査から見ると、人口増加がなされているのは滝沢村と矢巾町のみであり、それ以外は合併市町村も含め人口減少している状況である。これについては、全県的にそういった状況なので、合併が直接的な引き金になっているのかどうかというのは分析できないところである。