2013年3月14日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・子どもの甲状腺がんの問題について
【斉藤委員】
すでに現段階で3人の子どもが甲状腺がんで、7人の方々がその疑いがあると。これを無視できるという判断を今すべきではない。
これは先日、チェルノブイリの甲状腺がん対策で取り組んできた方の講演会が日曜日にあったがそういう指摘をしていた。わずか2年しか経っていない中で、3人、7人と。これを現段階で無視できるというのは非科学的なことではないか。今の状況推移を注意深く見守るということがなかったら、子どもの健康を守るということにならないと思うがいかがか。
【医療推進課総括課長】
我々としては、このことに関しては最大限の関心を持って、注視・監視しながら、内外の知見を集め分析をしていくところである。
一方で、さまざまな評価については声があるという形で一般論として答弁したものであり、この問題についてはきちんと注視をしていきたい。
【斉藤委員】
岩手県は、独自に子どもの健康調査を希望者を含めてやっているので、これは評価をしたい。継続的な調査を通じてこそ、我々が体験したことのない放射能被曝という事態にあるわけなので、1年2年でこの影響があるとかないとか簡単に言える状況である。
・被災者の国保・後期高齢者医療・介護保険の免除措置継続について
【斉藤委員】
来年度も一部負担の免除措置を継続すると。これは岩手県の英断であり、部長はよくやったと評価したい。
問題は、事業主体が市町村なのである。今年度は33全市町村で実施されたが、きちんと4月からも全市町村が足並みをそろえて免除措置が継続されるようになっているのか。
今年度は、陸前高田市などいくつかの市町村で国保の保険料の免除もやられたが、この保険料の免除措置を継続するところがあるのか。
【健康国保課総括課長】
一部負担金の免除措置について。国保は全ての保険者で実施または実施する方向で検討中と聞いている。後期高齢者医療では、広域連合において実施を決定したと聞いており、県内では足並みをそろえて実施されるものと承知している。
保険料・保険税の減免措置についてだが、国保・後期高齢者医療ともに、東日本大震災津波による被災に着目した減免を行う保険者は4月以降ないと聞いている。
【長寿社会課総括課長】
介護保険料の利用料の免除措置だが、介護保険では全ての保険者で実施または実施する方向で検討中と聞いており、県内で足並みをそろえて実施されるものと承知している。
【斉藤委員】
いま被災者の状況というのはほとんど2年前と変わらないような状況なので、被災者の命と健康を守る施策を進めていただきたい。
・民間医療機関の再建状況と県の補助について
【斉藤委員】
民間医療機関が大きな被災を受けた。その再建状況、県の補助実績を示していただきたい。特に、県が独自にどういう形で支援したのかも含めて示していただきたい。
【医療推進課総括課長】
東日本大震災津波により被害を受けた民間医療機関は県全体で311ヶ所となっており、うち253ヶ所が自院で診療を継続または再開し、30ヶ所が仮設施設で診療を行っている。
これらに対する県の補助実績だが、恒久的な施設(本設)に対する補助は、延べ101件となっており、うち施設に対する補助が4億6200万円余、医療機器に対する補助は4億1500万円余となっている。
【斉藤委員】
合わせて、来年度の予算には、医療介護複合型施設復旧事業費補助が6億250万円盛り込まれた。これは山田町の診療所と介護施設を複合して整備すると聞いているが、この複合施設は、いつ再建整備する予定か。
【長寿社会課総括課長】
東日本大震災津波で喪失した老人保健施設をベースとする複合型施設復旧事業だが、老健の再建に合わせ、無床診療所、ケアマネ事業所、土地の関係で微妙なところだが地域交流スペースということで、地域の医療の拠点としての整備予定である。地域医療再生基金を使い、山田町を通じた間接補助方式を考えている。現在主体となる医療法人で用地を取得し、いま造成中である。予定通り進めば、25年度中の完成をめざし、山田町は医療法人と調整をしながら進めている。
・医師確保対策について
【斉藤委員】
奨学金制度による奨学生の確保の状況はどうなっているか。
平成28年度ごろから、本格的にこの奨学生が医療現場に配置されると聞いているが、医師不足解消の見込みはどうなっているか。
【医療推進課総括課長】
現在、市町村医師養成事業、医療局医師奨学資金貸付事業および県医師就学資金貸付事業の3つの制度で、合わせて55名の貸付枠を設定しており、旧制度も含めて現在226名の医学生が奨学金の貸与を受けている。
医師不足解消の見込みだが、これらの奨学金を貸与した医学生が卒業後2年間の初期研修を経て、平成28年度以降配置が本格化していく見込みである。今後、奨学金貸与枠55名すべてに貸付を行い、またこれらの奨学生が初期臨床研修後すぐに公的病院等に勤務し、大学院等での研修などの勤務猶予を行わず最速で地域医療に従事すると仮定した場合は、9年後の平成34年度には、平成22年度に国で実施した必要医師数実態調査の必要医師数293名を超える300名余の医師が養成される見込みとなっており、県内の医療機関においては段階的に医師の充足状況の改善が図られてくるものと期待している。
【斉藤委員】
226名の奨学生がいて、今後もこの制度を最大限活用してほしいが、順調にいけば34年度には今の医師不足は解消できると。こういう見通しを示していくことはすごく大事だと思う。震災で沿岸地域は特に医師不足で悩んでいるが、いま本当に頑張って、10年以内にはそういう見通しがあるのだということも大変大事なことだと思う。
この医師確保対策を引き続き全力をあげて取り組んでいただきたい。
・岩手医大に対する補助金、委託費等について
【斉藤委員】
新附属病院整備に対する県の補助金の考え方、補助金総額を示していただきたい。
【企画課長】
新附属病院の整備に対する、今後小児・周産期・救急部門の一体化と機能拡充を図り、高度医療を提供する「仮称:遠野医療センター」の整備に対する支援として40億円、また災害時の電力確保をするための発電施設の整備に対する支援として8億円、計48億円を地域医療再生等臨時特例基金を活用して支援することを想定し、地域医療再生計画等に盛り込んでいる。また医療施設耐震化臨時特例基金を活用した支援を検討しているところであり、今後具体化に向けて大学と協議・調整していくこととしている。
【斉藤委員】
来年度予算でもさまざまな医大に対する補助金・委託費があるがどうなっているか。
【企画課長】
当初予算案に計上した支出の相手先が医大となる見込みの事業費について、補助金が、救命救急センター運営費補助やドクターヘリ運行等事業費等の救急医療対策費や医師確保対策費など11億633万円。委託料は、被災地心のケア対策事業費など9億1286万円、計20億円1919万円となっている。
【斉藤委員】
岩手医大が岩手の医療にとって本当に大きなかけがえのない役割を果たしているというのは分かるが、同時に、かなりの補助・委託をしている。
この間、岩手医大が県立病院にどれだけの常勤医師を派遣してきたか。
【医療推進課総括課長】
医大からの派遣、これは民間や公立さまざまあるので、すべてという形ではまとめていないが、県で委託している地域医療支援センターという形で、岩手医大が医師派遣調整を行っている数だが、本年度4月から12月までの間、これはいわゆる医局人事としての地域医療機関への派遣というのを含んでいる数だが、293名となっている。
【斉藤委員】
これは医療局からの資料で、平成13年度は317人、平成24年度は236人で81人少ない。年度ごとにずっと減ってきている。
来年度予算に、地域医療支援センターの委託も医大にお願いすると。医師不足の地域病院に派遣すると。こういう取り組みをするのだが、現実は減っている。この問題はリアルに見ていく必要があるし、新附属病院の移転整備にかなりの補助金を使うということで、反対はしないが、補助するならそれなりの県立病院・医師不足病院への派遣をしっかり保障させることが必要ではないか。
以前に、岩手医大の教授会決議で、「いくつかの地域病院には医師を派遣しない」という決議をあげていると、これが大きな障害になっているということが問題になったことがあった。こんなことは許されない。また地域医療支援センターの医師派遣の精神にもこれは反すると思うが、そういう事実を把握しているか。
【医療推進課総括課長】
決議について医大にも確認したところ、教授会においてご指摘のような決議といった形で行った事実はないと聞いている。
【斉藤委員】
岩手医大が正式に「そういう決議はない」と。それはそれで答えとして大事なことである。しかし現実問題、特定の病院には派遣されてこなかったのも事実である。これは今日公の場で聞いたので、岩手医大が特定の病院には派遣しないということがあってはならない。きちんと一定の県民の税金を使って医大を支援するときには、そういうことを困っているところにきちんと医師を派遣してもらうと、しっかり確約させることが必要だと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
今回岩手医大にさまざまな支援をしているわけだが、この岩手医大は、本県の随一の医師養成機関であり、さまざまな医療機関に医師を派遣している。この岩手医大の社会的な使命として、やはり医師派遣をはじめとした地域貢献をきちんとやっていく必要があるだろうと考えている。そういった観点から、知事も一般質問で「岩手医大が県民の期待に応えるように自らも県内医師の確保を図るとともに、県立病院等の公的医療機関への勤務医師数などについても、目標を定めて、全学が一丸となってまい進していくことを期待する」「県としても同大学とのパートナーシップのもとにその実現を働きかけていきたい」と答弁をしているところであり、我々としては、知事のそういう答弁を受けて、岩手医大にそういう働きかけをしていきたい。
【斉藤委員】
岩手医大は私立だが、岩手県の地域医療にとって本当にかけがえのない大きな役割を果たしていると思うし、ぜひ今回地域医療支援センターなどさまざまな支援があるので、医師派遣の数がずっと減りっぱなしということがないようにやっていただきたい。
・看護師不足と看護師確保対策について
【斉藤委員】
看護師需給見通しと看護師不足の状況はどうなっているか。
県内の看護学校・看護学部卒業生の県内就職の状況どうなっているか。
看護師の労働条件の改善の取り組みはどうなっているか。
【医療推進課総括課長】
平成22年度に策定した第7次の岩手県看護職員需給見通しにおいては、平成27年に看護職員需要数17170人に対し供給数が16433人と推計され、737人が不足することが見込まれる。現時点でもこの状況は変わっていないと考えており、引き続き看護師不足の状況は厳しいと認識している。
大学・短大を含む看護職員養成施設卒業生の県内就業率は、近年低下の傾向にあり、平成22年には42.6%と、10年前に比較し10ポイントほど低下するなど、県外流出が進んできた。その後、23年には50.1%、24年には50.8%と若干回復が見られるが、依然として4割弱の卒業生が県外の医療機関等に就業している状況であり、卒業生の県内就業率の向上が重要な課題と認識している。
看護職員の確保・定着のためには、苛酷な勤務条件である看護職員の就労環境や労働条件の改善が重要であると認識している。県では、看護師等の雇用の質の向上を目的として、多様な勤務形態の導入や、看護業務の効率化および職場風土改善を図るため、県内医療機関等の看護管理者を対象とした研修会を実施するとともに、労働行政と連携し岩手労働局が設置している看護師等の勤務環境改善企画委員会への参画や研修会の共同開催などを行っている。
【斉藤委員】
岩手県は看護師を養成しているが、やっと5割の県内就職と。いまや看護師を確保しないと病院は経営できないという状況に全国的にもなっているので、岩手県はしっかり養成しているので、県内で働き甲斐があって就職できるような状況をぜひつくっていただきたい。
・東北メディカルバンク構想について
【斉藤委員】
突然国家プロジェクトになったが、中心的な目標は、遺伝子情報の地域疫学的な調査研究である。そして被災地を対象にしてこういう遺伝子的な研究をされるということは、さまざまな倫理問題・人権問題・セキュリティの問題が問われると思う。
国内では、久山町・長浜市が2年間ぐらい地域住民・医療関係者・専門家と協議して取り組んでいるところがある。しかし今、大震災を受けて困っているときに、そういう人たちの遺伝子情報を集めるというような事業が拙速に進められていいのか。
この事業の内容、事業費、県の関与について示していただきたい。
【医療推進課総括課長】
この事業については、国家事業として、文科省・京大・岩手医大を中心に進められているものである。
本県においては、岩手医大が実施主体となり、沿岸地域に医師や看護師等の医療関係人材を派遣して、住民に対する健康調査を実施するほか、健康相談への対応、疾病予防のアドバイス等を行い、地域医療への貢献を図ろうとするものである。またこの健康調査にあわせて、住民に血液等の生体資料の提供をお願いし、いわゆるバイオバンクを構築し、それをもとに病気の正確な診断や薬の副作用の低減、将来なりやすい病気の予測など、次世代医療の実用化を目指そうとするものである。
事業については、実施主体である岩手医大からは、文科省から岩手医大に交付される補助金は、平成24年度が約10億円であり、来年度は現在未定である。
県の関与だが、県としては予算措置等は行っていないが、本事業の実施により、被災地域において健康相談や病気予防のアドバイスなどにより、住民の健康確保等の効果が期待されることから、県としても、岩手医大と市町村と関係機関との連携体制の構築を中心に、必要な協力を行っている。
【斉藤委員】
9月の決算でもこの問題を取り上げたが、ヒトゲノム、いわゆる遺伝子情報の地域疫学的な調査研究というのは、倫理問題・人権問題・セキュリティ問題が絡むシビアな問題だというのは、国際的も明らかになっている。先行事例でも、時間をかけて、地域住民の合意をとりながらやっている。震災で、少しぐらい健康調査やるという形で遺伝子情報を集めるというやり方は、ヘルシンキ宣言にも反するやり方なので、ぜひ本当にきちんと拙速にならずに県としても対応すべきである。
【斉藤委員】
ヘルシンキ宣言等の倫理的な問題については、すでに国においてもワーキンググループを立ち上げて十分な議論を行っているところである。また岩手医大においても、倫理委員会を設置しており、同宣言の趣旨に反するものではないと理解しているところであり、いずれこういうことについて、倫理的な問題をきちんとクリアした形でやっていただくということは必要だと考えている。