2013年3月19日 予算特別委員会
農林水産部(林業・水産部門)に対する質疑(大要)


・TPPによる水産への影響について

【斉藤委員】
 先ほどの答弁で、106億円の生産額の減少と。紹介されたものだけだと78億円にしかならないので、さらにワカメやコンブなど正確に示していただきたい。

【企画課長】
 8品目について試算した。
サケ・マス類が55億円・57%の減少、
カツオ・マグロ類が12億円・27%の減少、
イカ・干しスルメが12億円・41%の減少、
ホタテが11億円・52%の減少、
タラが9億円・52%の減少、
サバが5億円・30%の減少、
イワシが1.2億円・45%の減少、
アジが0.2億円・47%の減少、
という試算になっている。

【斉藤委員】
 ワカメ・コンブ類は、11カ国の関係で対象がないということでいいか。

【企画課長】
 TPP交渉参加国からの輸入実績はほとんどないというで試算に入っていない。


・漁業の復旧状況について

【斉藤委員】
 漁船の確保について、年度内に5500隻確保の見通しだと。1100隻分は繰越ということになるのか。それも含め来年度1200隻の確保という計画なのか。
 1トン未満の小型漁船、養殖作業船、湾外使用する少し大型の漁船の確保状況を示していただきたい。

【漁業調整課総括課長】
 23・24年度の補助事業で整備される漁船の確保については、ただ今年度末に向けて追い込みをかけているところであり、これまでの交付決定された隻数の変更や、繰越される隻数の精査を実施している。18日までにまとめた分では、年度内に確保される隻数は5502隻、25年度へ繰越される隻数は800隻と見込んでいる。25年度は、当初予算で約200隻の整備を予定している。
 漁船の確保の状況だが、1トン未満の小型漁船はおおむね要望隻数が確保されているが、2トン以上の大型船・養殖作業船等が納入が遅れているので、これらがおおよそ繰越隻数になっているものと考えているので、引き続き早期納入について造船メーカー等に協力を要請していきたい。

【斉藤委員】
 登録漁船数、被害を受けなった漁船もあるが、震災前と比べて、全体として年度末でどこまで復旧するということになるか。

【漁業調整課長】
 被災を免れた船、自力復旧した船等を合わせると、今年度末までに約9400隻程度が稼働可能な隻数となる。

【斉藤委員】
 震災前は14000隻なので、そこと比べればパーセンテージが出ると思うので。
 養殖の関係で、ワカメ・コンブ・カキ・ホタテの養殖施設の整備状況、来年度の見通し、それぞれの漁業者・経営体の状況を示していただきたい。漁獲量・漁獲高も合わせて示していただきたい。

【漁業調整課長】
 今年度までのワカメ・コンブ等の海藻類の施設は約12000台、カキ・ホタテ等の貝類の施設が約4000台、その他にホヤ等が1000台程度あり、計17000台の整備を見込んでいる。来年度は、今年度の繰越分と合わせて、当初予算分と合わせて300台の整備を見込んでいる。
 再開状況だが、ワカメ・コンブ等複数の種類を組み合わせた複合養殖の経営体があるので重複しているが、種類別ではワカメが約1000経営体、コンブが500経営体、カキとホタテはそれぞれ300経営体となっている。
 生産量だが、25年度産のワカメは今シーズンのもので19000トン、コンブは約9000トンと震災前の8割を見込んでいる。カキ・ホタテについては、出荷まで2〜3年程度かかり、今年度の夏から本格的な生産が始まると見込んでいる。生産額については、今後の価格動向を注視していきたい。

【斉藤委員】
 着実に復旧しつつあると受け止めた。
 がんばる養殖漁業、がんばる漁船漁業の取り組み状況、参加漁業者数を示していただきたい。

【漁業調整課長】
 がんばる養殖漁業だが、現在12漁協において36グループの計画が認定され、延べ451名の漁業者が参画する予定である。
 がんばる漁業復興支援事業は、4漁協において5件の計画が認定され、延べ6経営体が参画する予定で取り組んでいる。


・秋サケ漁の取り組みについて

【斉藤委員】
 今シーズンの水揚げが7500トン、昨年よりも下回ったというところに衝撃を受けている。今後の対策、漁協経営への影響をどのように受け止めているか。

【水産担当技監】
 今後の対策については、不漁要因への調査ということになると思うが、不漁要因については、大きな気候変動によるものとも考えられるが、これまでの研究によれば、放流直後からオホーツク海に至るまでの稚魚の減耗も要因の1つとされており、今春から県水産技術センターが国や北海道の研究機関と連携して、稚魚の初期生残や減耗要因に関する共同研究を実施する予定としている。また増殖事業関係団体と連携しながら、飼育の池ごとの適正な飼育管理や適期放流の徹底などにより、健康な稚魚の放流に取り組むなど、サケ資源の早期回復を図っていく考えである。
【団体指導課総括課長】
 今シーズンの秋サケ漁の漁協経営への影響についてだが、水揚げは不振だったものの、漁獲共済金などの支払いを受けたことや、国のがんばる養殖業復興支援事業の導入により、組合員への資材供給が増給したことなどから、各組合とも平成24年度決算で、おおむね復興再生計画を上回る当期剰余金を確保できる見通しとなっている。

【斉藤委員】
 大変厳しい状況の中で何とか黒字だということなので。


・地域再生営漁計画、漁業担い手確保育成事業について

【斉藤委員】
 地域再生営漁計画は25年度作成ということになると思うが、取り組み状況と特徴はどうなっているか。
 漁業担い手確保育成事業について、昨年実は5億5000万円余で取り組まれて、今回1879万円余になっている。何がどうかわったのか。昨年度の実績はどうだったか。

【水産担当技監】
 地域再生営漁計画については、漁業・養殖業の生産を回復し、担い手を確保・育成するため、各漁協が生産目標と、目標達成に必要な施設や就業者の確保、販売対策等を内容とする計画を策定するもので、県では、計画策定作業に必要な人員の雇用等を支援することとしている。この計画の実施については、復旧復興事業によるハード整備や担い手の確保・育成を進める国等の制度も活用しながら、取り組みを支援していきたい。
 漁業担い手確保育成総合対策事業だが、24年度は、漁業を再開できない被災漁業者の緊急的な雇用を目的に、定置網や養殖施設の設置作業への従事などを進めてきた。このために、5億5000万円の予算で被災漁業者を雇い入れるということで、多額の予算を計上したものである。25年度は、漁業や養殖業の再開が進み、被災漁業者の多くが失業状態ではなくなったことから、この雇用目的の事業ではなく、新たに担い手の確保・育成に向けて地域の協議会を設置し、漁業費等の活動支援や漁協が新規就業者を雇用して育成する体制の構築などに取り組んでいこうとするものである。25年度の予算が5億5000万円だったわけだが、実績は約4000万円ほどで大幅にダウンしたわけだが、24年度になり、その意味では漁業者の再開があり要望が少なくなったということである。

【斉藤委員】
 漁業担い手確保育成総合対策事業は、事業の中身として、「漁協が自営する定置網漁業や養殖業に新規就業者を雇用する」となっている。大槌漁協などからは、そういうものに支援してほしいという具体的な要望も受けたが、実際にどれだけ取り組まれ、どれだけの新規就業者の雇用があったのか。

【漁業調整課長】
 この事業は、1つは漁業就業者確保の取り組み、通常の漁業就業者確保の取り組みで、青年部あるいは女性部、漁業のマッチングというような取り組みが1つ、もう1つは、被災漁業者を雇い入れる緊急雇用事業を使い雇い入れて、養殖施設・定置網の復旧を進めるという2つの事業で構成されている。
 5億5000万円の減額だが、24年度取り組んでいたが、これについては2つの漁協で延べ2900人ほどの就業実績がある。予算は5億円ほど計上していたが、実績が大きく下回ったということで、大幅に減額したところである。

【斉藤委員】
 「漁協が自営する定置網や養殖漁業に新規就業者を雇用する」という事業はどうだったのかと聞いた。

【漁業調整課長】
 この事業により、24年度は2漁協が定置網ではなく、養殖施設への従事ということで全部関わったので、おおむね施設の整備に延べ2900人ほどが関わったということである。この方々は、その後の養殖再開に向けて、漁業を一部再開しているということで、我々は認識している。


・漁港・防潮堤・防波堤の復旧状況、漁業集落機能強化事業について

【斉藤委員】
 漁港・防潮堤・防波堤の復旧状況と来年度の見通しはどうか。
 漁業集落機能強化事業の取り組み状況と対象戸数を示していただきたい。

【技術参事】
 平成25年2月末までに、潮位に関わらず陸揚げが可能な漁港は72漁港で被災漁港数の約7割まで復旧している。県北部の22漁港では復旧工事を完了している。71漁港においては、防波堤の本格的な復旧工事に着手しており、平成25年度中には、すべての漁港で倒壊した防波堤の復旧工事に着手する。被災した54海岸のうち、本年度末までに8地区で防潮堤の工事を着手する。このうち、種市地区では復旧工事が完了している。25年度中には全ての地区で復旧工事に着手する。
 漁業集落機能強化事業だが、これまで沿岸11市町村の40地区において事業に取り組んでいる。移転対象戸数は、計約650戸の計画となっている。うち田野畑村・宮古市の5地区で高台の住宅団地等の造成工事等に着手している。今後とも、市町村・漁協等と連携しながら、引き続き漁港・防潮堤等の復旧整備を進めるとともに、漁業集落の体系が加速化するよう頑張っていきたい。

【斉藤委員】
 来年度の予算で、漁港災害復旧事業費が541億円、漁業集落防災機能強化事業が41億円余である。かなりの規模の事業が来年度も予定されている。大変頑張っていると思うが、技術者の確保は大丈夫なのか。

【技術参事】
 いろいろな課題がある中で、やはりマンパワーの不足は重大な課題だと認識している。今回の災害で阪神淡路と一番違うのは、復旧復興しようとしている側も被災者であるということが一番大きな課題であり、市町村も被災者であり、沿岸の県職員も親を亡くしたり厳しい状況の中で頑張っている。
 その中で、技術職員の確保については、他県からの応援を今年度は13名受けているが、来年度は残念ながら10名を切る状況である。新たに任期付き職員を採用し、何とか頑張ろうと思っており、昨年度は15名採用している。今年度は30名を採用する予定である。


・県産材の活用、供給体制、木質バイオマスについて

【斉藤委員】
 県産材の活用が先ほども議論になった。
 1つは、公共施設・公共事業・木材利用推進本部というのがつくられ、県営工事に木材を積極的に活用すると。この計画・目標はどうなっているのか。
 災害公営住宅、持ち家の住宅再建は、おそらく平成25年度26年度あたりから本格的に建設が始まると思うが、今でも持ち家の場合は2年待ちになっている。だからかなり資材の供給だけではなく、供給体制、森林組合から建築・大工の関係まで、かなりの体制をとってやらないと、住宅を建てる段階になっても建てられないということにならないか。その点はどのように検討され取り組まれているか。木質バイオマスの活用も含めて示していただきたい。

【林業振興課総括課長】
 公共施設・公共工事・木材利用推進行動計画の推進目標だが、昨年4月に震災を踏まえ、復興に関する事業量の増大に対応するということで、計画期間を延長するとともに、木材利用量を66000立方メートルに上方修正したところである。
 県産材の活用だが、体制として、県土整備部や建築士事務所協会と連携し、岩手県地域型復興住宅推進協議会を設立しており、住宅建設・木材関係者がグループをつくるという取り組みをしており、岩手県内で135の地域住宅生産者グループが登録されている。24年7月から受注開始しており、12月までで252棟の注文を受けており、こういったグループ等の取り組みにより復興住宅事業に対応していきたい。
 木質バイオマスの取り組みだが、平成24年度におけるハード施設の整備においては、県内でチップボイラーが食肉加工工場に2台、学校施設に1台導入された。木くず焚きボイラー、これは木材乾燥用だが、製材工場に1台導入されている。さらに、木質バイオマス発電施設について、宮古市の木材加工企業により整備に着手されたというところである。ソフトの取り組みでは、木質バイオマスエネルギーの利用促進を図るための、県が委嘱している木質バイオマスコーディネーターによる導入希望事業者に対する技術指導・新規導入に向けたバイオマスセミナーの開催などを実施している。25年度においては、引き続きバイオマスコーディネーターを活用した指導・助言、さらに発電等の大口需要に対応した燃料の安定供給を促進するための安定供給体制整備のための林業・木材関係団体との連携、さらにバイオマス利用にともなう排出量取引への参加支援などに取り組んでいく。さらにハード整備を支援する、森林整備加速化林業再生基金事業により、新規の宿泊施設の木質燃料ボイラー等の整備に対する支援を予算として計上している。


・松くい虫対策について

【斉藤委員】
 盛岡が今最前線になっている。この盛岡でどう食い止める対策になっているか。今回の補正、来年度の取り組みを示していただきたい。
 紫波町については私も調査し、対応をお願いしてきたが、紫波町の国道396号、その周辺が枯れていつ倒木してもおかしくない深刻な状況だが、この対応、樹種転換の取り組みはどうか。来年度の事業でも一定の計画はあるようだが、紫波町がどれだけ対象になっているか。

【森林整備課長】
 盛岡市での対策だが、盛岡市は最前線ということで、被害発生木については、全量駆除を目的に、合わせて感染の恐れのあるような劣性木等も駆除を実施していきたい。
 紫波町の扱いだが、24年度事業において3ha更新伐を実施した。これは樹種転換にむけての取り組みである。25年度に向けても、紫波町のみならず、激害地における樹種転換については、およそ50haを目標に取り組む予定にしている。