2013年3月21日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・住宅再建の状況と抜本的な支援策について

【斉藤委員】
 岩手県の住宅復興基本方針について、今どうなって、持ち家や公営住宅の現時点での希望をどのように把握しているか。

【建築住宅課総括課長】
 恒久的住宅の想定供給戸数だが、2011年10月に策定した岩手県住宅復興の基本方針においては、公営住宅で約4000〜5000戸、民間持ち家住宅の新築や改修で約9000〜9500戸、民間賃貸住宅等で3000〜3500戸と想定していた。現時点では、災害公営住宅の建設予定戸数が5639戸となり、当初の想定を上回る一方、民間賃貸住宅の供給はあまり行われていないという傾向がある。そういったことなどから、民間持ち家住宅の想定供給戸数については、おおむねだが当初の想定に近いものであろうと考えている。
 なお、この想定戸数については、当時の限られた情報をもとに設定したものであり、現在の住宅再建の動向や市町村が行っている被災者の意向調査の結果を踏まえて必要に応じて適切に対応していきたい。

【斉藤委員】
 各自治体で聞いた範囲では、例えば、釜石市は7月のロードマップで1100戸だったが1641戸の公営住宅の希望である。宮古市は731戸にたいし863戸、山田町は733戸にたいし828戸と、どこでもすでに大幅にオーバーしている。5600戸というのは、すでに6000戸を大幅に超える状況になっているのではないか。それにたいして、「公営住宅の希望には確実に応える」という一般質問の答弁だったので、どの時点で見直しを図っていくのか。すでに釜石市の場合は1460戸に見直したと市長さんは言っていた。市の段階では。そういう整合性も図る必要があるのではないか。

【建築住宅課総括課長】
 現在各市町村で被災者の意向調査等により、災害公営住宅の戸数は、当初のアンケートよりは数字が伸びている状況である。実際、何戸にするかというような具体的な数字については正式にはあがってきていないが、入居を希望される被災者にたいしては、確実に災害公営住宅を用意するということについては実施していきたい。
 現在、被災者の意向で想定戸数がかなり動く状況がある。それから基本方針で数字を定めたとしても、そういった数字を要望が超えた場合はまた変えなければいけないとかそういったことがあるので、現在としては想定戸数は変えずに実際に需要に合わせて柔軟に対応していきたい。

【斉藤委員】
 柔軟にするのは良いが、現時点でもかなりのかい離がある。微調整の範囲ではとどまらない状況なので、おそらく3月末ぐらいで大槌町も意向調査をまとめるということなので、年度末のあたりでしっかり市町村・被災者の意向を把握して、500戸600戸違ったら大変なことである。新たに用地を確保したり規模を大きくしたりということになるわけなので。
 公営住宅がそのように増えれば、持ち家の希望が減ってしまう。ここが大きな問題だと思う。やはり持ち家に対する支援をさらに強化しないといけない。それで、生活再建住宅支援事業費補助について、特に岩手県がバリアーフリー・県産材活用で最大130万円補助するという制度をつくっている。これは立派なものだと思う。しかし十分活用されていないのではないか。この実績を示していただきたい。なぜ活用が少ないのか。

【建築住宅課総括課長】
 県産材・バリアフリーの補助の実績だが、昨年11月時点で、247件・1億4000万円となっており、1戸あたり約56万円の実績である。
 利用率が高いか低いか判断が難しいところだが、県としては、被災された方々が住宅を新築する際には、生活再建住宅支援金などの制度を十分に活用できるよう、住宅再建相談会等で積極的に周知・普及に努めていく所存である。

【斉藤委員】
 資料が古すぎる。私がいただいた資料では、今年度末の見通しで、バリアフリーは346件、県産材使用は315件と。これは2月補正段階の見通しなのでそこまでいっていないかもしれないが。
 生活再建支援金の加算金でいうと、新築購入が2487件である。岩手県の100万円補助は1587件である。それに対して、年度末の見通しでバリアフリーが346件、県産材が315件というのはあまりにも少ないのではないか。やはり新築しようとすれば、今ならバリアフリーが当たり前という感じを受けるが、この基準・規格が高すぎて、補助にならないのかどうか。

【建築住宅課総括課長】
 資料については、補助の実績ということで、実績を調べたところ11月までしかなかったものでその数字を使わせていただいた。
 加算金については、実際に新築した場合は、条件なしで補助が受けられるが、バリアフリーとか県産材使用については、それなりの行為が必要でそれを確認しなければならないといったようなことがあるので、ある程度利用率が下がる傾向が出てくるのはやむを得ないのではないかと考えている。

【斉藤委員】
 すでに2487件新築購入して、バリアフリーがたった346件、県産材活用が315件だと。これは実態を把握してよく研究していただきたい。使えない補助制度では意味がないので。どうやったら使える補助制度になるのか。補助制度そのものはいいが、規格や基準が高すぎて実際に使えなかったということになれば絵に描いた餅である。部長さん、きちんと使える補助事業にしていただきたい。

【県土整備部長】
 岩手県が先駆けてつくった補助制度で、少ないとはいえ二百数十件の補助実績がある。それで、一番留意しなければならないのは、そういう制度を知らずに家を建てると、これは不幸なことで、住宅再建相談会を通じながら、我々も毎週のように週末行って説明をしている。そのときに被災者の方々からは、これで少しは希望がもてたという方々もいらっしゃるので、これを着実に頻度多くやっていきたい。

【斉藤委員】
 住宅再建相談会では、あなた方がまとめた立派な資料がある。ただホームページには載っていないのではないか。もっと知らせるようにしていただきたい。
 震災復興特別交付税215億円について、復興局審査で聞いたら「交付決定はまだない」と。現段階でどのように把握しているか。

【企画課長】
 宮城県と違い、岩手県の場合は県として制度的なものをもっていたので、それらとの重複をどうするかという議論を重ねた結果、やはり当初の制度的な趣旨、沿岸地域に配分するという元々の考え方によるということで、215億円全額被災市町村に配分するということで、基本的には県の意思は決定している。
 あとは配分額と配分方法だと思うが、その詳細については、復興局を中心に政策地域部と調整をかけて最終的な交付決定となると思う。

【斉藤委員】
 災害公営住宅の具体的な見通しについて。県・市町村合わせて、今年度どこまで完成するのか。来年度、再来年度の完成見通し、入居可能見通しを示していただきたい。
 木造の公営住宅の建設予定戸数も示していただきたい。

【建築住宅課総括課長】
 県が整備するものについては、今年度8戸、来年度427戸、再来年度2386戸が完成予定である。市町村整備分は、今年度110戸、来年度684戸、再来年度以降は2024戸が完成予定である。
 木造の災害公営住宅については、682戸を建設予定である。

【斉藤委員】
 災害公営住宅は県・市町村合わせると、今年度中は118戸、来年度1111戸、再来年度3711戸、4年後639戸と。そうすると、来年は一定の数だが、実質は希望者の6分の1である。本当にこの見通しが早まるような取り組みをしていただきたい。
 被災者からはこういう要望が出ている。一人暮らしでも寝室と茶の間が別々の1LDKとか、2人以上の場合でも2DKではなく2LDKにしてほしいと。寝室と茶の間が一緒というのは、生活感覚からいって耐えられない。仮設住宅が狭くてそうだった。そういう多様な被災者の要望に応えた、間取りを含めた建設にすべきだと思うがいかがか。

【建築住宅課総括課長】
 間取りについては、県が管理するものについては、各団地において1DKを10〜15%程度、2DKを50%程度、3DKを30〜35%程度建設するということを想定している。実際に建設する際には、地元の市町村と協議しながら決めている。
 単身者については、原則1DK、2人世帯は2DK、3人以上は3DKと入居対象世帯を想定しているが、実際の入居募集にあたっては、単身者も2DKに入居できるような運用にしたいと考えている。

【斉藤委員】
 今日の岩手日報に、釜石市が建設した災害公営住宅の入居者募集が出ている。1LDK・2LDKである。市がやるのはこういう間取りがあって、県が造るのは1DK・2DKというのはいかがなものか。これは国会でも「多様にできる」と国交大臣が答えている。もう少し柔軟に被災者の立場に立って、一人用で1DKつくるのだから、そして盆や正月になると家族が帰ってくる。そういう10年20年生活できるものを県としてもつくるべきではないか。

【建築住宅課総括課長】
 現在県が想定している間取りについて、2DKについてはできるだけDKと接したリビングに使われる部屋についてはできるだけ開放できるような形で計画しており、建具を外していただければ1LDKというような形で使用できるものと考えている。
【県土整備部長】
 本日岩手日報に記載のあった、最後の下にある野田というのは、県が造っている住宅である。

【斉藤委員】
 県にだってできるということである。あまり頑なにならずに、部長がやっているというのだから、柔軟にやっていただきたい。


・まちづくり事業の取り組みについて

【斉藤委員】
 防災集団移転事業の地区数、集団移転戸数、そのうち持ち家・公営住宅の数、事業の進捗状況はどうなっているか。

【都市計画課まちづくり課長】
 3月8日までに7市町村で計画している54地区すべてで事業計画の大臣同意を得ている。高台等への集団移転戸数については、団地内での自立再建が3443戸、建設される災害公営住宅が373戸、計3816戸となっている。現在これらのうち、6地区で工事に着手している。

【斉藤委員】
 土地区画整理事業や津波復興拠点事業の地区数、区画数、進捗状況はどうか。

【都市計画課総括課長】
 住宅再建を目的とした跡地の区画整理を除くが、区画整理事業は7市町村17地区において予定しており、このうち3月21日現在で土地計画決定が行われたものが15地区、事業認可を行ったものが11地区となっている。他の事業認可が残っている6地区においても、25年度上半期までの事業認可を目指している。土地区画整理事業区域内での住宅再建戸数(画地数)で、全体で約6000戸を計画している。この他、公営住宅用地として6000戸のほかに1000戸ほど計画されている。
 津波復興拠点整備事業は、6市町村10地区において予定しており、うち3月21日現在で土地計画決定が行われたものが3地区、事業認可2地区となっている。

【斉藤委員】
 防災集団移転事業で、自力再建しようというのが3443戸、土地区画整理事業で自力再建が6000戸と。これは本当に至難の業だと思う。本当にここに対する、持ち家再建への支援策を丁寧にやっていただきたい。
 津波復興拠点整備事業については、1自治体2ヶ所までということになっており、陸前高田市長さんは、もう1ヶ所中心部をこの事業でやりたいということを言っているが、これは国との関係でどうなっているか。可能なのか。

【都市計画課総括課長】
 この制度ができた折に、1市町村2地区ということで始まっている。これについてはそれぞれの市町村でさまざまなまちづくりの計画がされており、必ずしも厳密にいうところの2地区に限定するというのは難しいという声もかなり出ており、個別に国と協議を進めながら柔軟に地区数を判断していくということで現在進めている。

【斉藤委員】
 そうすれば、陸前高田市の場合も可能だということで受け止めてよろしいですね。
 まちづくり事業の中で、津波災害なので、高台移転ということがあり、高台にまた新しい町をつくらなくてはならない。そこに必要な新しい道路もつくらなければならない。ところが、津波で浸水していないからそういう道路は認められないということで自治体は困っている。例えば陸前高田市の場合、いわゆるアップルロード―高田・米崎間の県道だが、高台の病院もつくる、介護施設もつくる、公営住宅もつくるところだが、この道路はなぜ復興交付金の対象にならないのか。できるのではないか。大槌町の場合は、小鎚と大槌それぞれ高台移転するわけで、いちいち海側に回って通らないと連結しない。トンネルが欲しいと。こういう道路をやらなかったら病院にも通えない、交通の便が大変である。釜石市の場合には、市道・平田―源太沢線、平田にニュータウンがある、災害公営住宅をそこにつくる、県立病院に行くのに、一回りして津波で浸水する国道45線を通らなければならない。これはまったく不合理である。こうした新しい高台移転やまちづくりの中で必要な道路は復興交付金の対象にし、その他の事業でも新しいまちづくりに必要な道路ということで進めることが必要だと思うがいかがか。

【道路都市担当技監】
 市町村が進めるまちづくりに必要となる道路やトンネルの整備の要望への対応だが、お話のあった3つの路線の整備については、各市町村において復興交付金事業を導入するため、復興庁と協議または申請したところである。いずれも浸水区域の外側に位置するということから、復興交付金事業計画の申請に至っていないか採択が見送られた状況と承知している。県としては、3つの市町がこれらの道路事業を復興交付金として実施できるよう引き続き対象事業の拡充などについて国に働きかけをしていきたい。

【斉藤委員】
 今の道路は1つの例だが、やはり復興交付金事業の見直しに真剣に国が取り組んでいるかどうかの試金石だと思う。県も一緒になってぜひ早く実現するようにやっていただきたい。


・復興道路について

【斉藤委員】
 復興道路、復興支援道路、復興関連道路の進捗状況と来年度の見通しはどうか。

【道路建設課総括課長】
 復興道路については、国が実施する復興道路については県の試算で平成24年度末の進捗状況は約27%である。25年度の事業費は、青森県・岩手県・宮城県・福島県の4県で約1384億円、前年比1.14となっており、県別の内訳は現時点では不明だが、直轄負担金については県予算で約170億円見込んでいる。県が実施する復興道路については、簗川道路と宮古西道路の整備を進めており、平成24年度末の進捗率で約70%、25年度の事業費は約10億円となっている。
 復興支援道路の改築系の事業については、平成24年度継続箇所の今年度末での進捗状況は約51%であり、25年度の事業費は約40億円となっている。
 復興関連道路の改築系事業については、24年度継続箇所の今年度末での進捗状況は約35%であり、25年度の事業費は約24億円となっている。


・津付ダム・簗川ダム建設事業について

【斉藤委員】
 これは大規模事業評価の見通し、進捗状況と課題について示していただきたい。

【河川課河川開発課長】
 簗川ダムについては、進捗状況は、平成24年度末の執行済み事業費の累計は約298億円、総事業費530億円にたいして56%となっている。大規模事業評価については、27年度を予定している。
 津付ダムの課題についてだが、現在再検討ということで進めているところである。気仙川の流下能力の算定と、陸前高田市が進めている高田・今泉地区の区画整理の計画をもとに氾濫した場合の被害額の算定および治水安全度も検討しているところであり、今後治水対策案の比較検討および費用対効果の算定などを順次行うということを予定している。