2013年3月26日 2月定例県議会・最終本会議
2013年度県立病院等事業会計予算に対する反対討論


 日本共産党を代表して、議案第13号、2013年度岩手県立病院等事業会計予算に反対の討論を行います。
 被災した県立病院はもとより、県立病院の医師、看護師、医療関係者の県民のいのちと健康を守る献身的な取り組みに心から敬意を表するものであります。また、来年度予算には被災した県立高田病院、大槌病院、山田病院の用地取得費及び基本実施設計料等の再建整備の予算が14億7千万円余、県立大東病院の増改築の予算が7億6千万円余盛り込まれたことは、地域住民と医療関係者の切実な願いにこたえるものとして評価するものであります。
 しかしながら、被災した県立病院の再建整備にあたって見直すべき問題と看護師等の厳しい労働条件など改善を求めるべき課題が少なくありません。
 県立病院等事業会計予算に反対する第一の理由は、県立高田病院の再建整備の基本方針が、地域住民の願いにも医療関係者の努力にも背を向けるものとなっていることであります。
 県医療局は、「高田病院の整備にかかる基本的な考え方について」で、救急機能については、「診療時間内の一次救急を基本とし、診療時間外の救急については大船渡病院等で対応します」としています。しかし、県立高田病院は仮設病院の現状で二次救急まで対応しています。地域住民も医療関係者も二次救急まで対応することを当然の課題と考えています。仮設病院の現状でも実施している救急機能を本格的に再建整備した病院で対応しないということでは、何のための再建か、だれのための再建かが問われるものであります。また、救急に対応する高田病院をめざしてこそ、必要な医師の確保ができるのではないでしょうか。
 救急を全て県立大船渡病院にゆだねることは、逆に大船渡病院の負担を増やすことにもなりかねません。
 県立高田病院の再建整備の基本方針については、仮設病院での実績、地域住民の要望と医療関係者の意向と努力を踏まえて見直すべきであります。
 第二の理由は、基幹病院とともに、地域病院の医師確保にも全力で取り組むべきだということです。現在、県・市町村等による医師確保のための奨学生は226人で、年間55名の奨学生枠を今後も活用するなら、平成28年度以降から本格的に医師確保が可能となり、9年後の平成34年度には、国で実施した必要医師数293名を超える300名余の医師が養成される見込みです。基幹病院とともに地域病院の医師確保に全力で取り組むべきであります。
 第三の理由は、看護師の労働条件の抜本的な改善をはかるべきだということです。
 予算特別委員会の審議でも指摘したように、県立中央病院では、看護師不足から「朝5時からの早出勤務」「朝7時から仕事をしても昼休みも取れない」「いつ医療事故が起きてもおかしくない」「いつでも辞める覚悟で働いている」という状況です。看護師の大幅な増員で安全安心の医療の確保、働きがいのある労働条件の改善をはかるべきであります。ところが、県医療局は、今年度152名が退職予定にもかかわらず、来年度の採用見込みは142名と10名も削減する計画です。152名の退職者のうち、実に76名、50%が定年前の普通退職者であります。県立中央病院の看護師の年次休暇取得は年間わずか5.7日で、14日以上は休みも取れずただ働きの状態となっています。中央病院全体では約2憶円余のタダ働き状態であります。中央病院の看護師については14名の増員の答弁がありましたが、4−4の夜勤体制が確保されるようにすべきであります。
 第四に、消費税の10%大増税が県立病院の存立にかかわる大問題であり、消費税増税を許さないあらゆる取り組みを行うべきだということであります。
 これまでの県立病院における消費税の手当されない負担額は139億7700万円に及びます。これは累積赤字205億円の68%であります。消費税の負担が県立病院の赤字の最大の原因となっています。もし、消費税が8%に増税されるなら負担額は年間10億円、10%増税なら15億円となることが示されました。
 消費税の大増税は、県民のくらしはもとより、県立病院と地域医療を守る上でも許されない悪政であります。知事、医療局長を先頭に、全国自治体病院協議会、医師会等とも協力して消費税の大増税の中止を求めるべきであります。
 また、安倍首相は3月15日、TPP交渉への参加を表明しました。TPPは「日米共同声明」でも明記されているように、すべての品目を対象とした関税の撤廃とともに、あらゆる非関税障壁の撤廃をめざすものであります。アメリカには公的医療保険がなく、混合診療の解禁とともに薬価の引き上げが求められかねません。事実上国民皆保険制度が崩されかねないのがTPPであります。弱肉強食のアメリカのルールを押し付け、一部の多国籍企業が自由にぼろもうけできる仕組みを作ろうとするTPP交渉への参加は、県立病院と地域医療を守る立場からも絶対に許されないものであります。こうした実態と問題点を知事と医療局長は県民に積極的に明らかにすべきであります。また強力に政府に申し入れることを求めるものであります。
 以上を申し上げ、2013年度岩手県立病院等事業会計予算に対する反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。