2013年6月25日 6月定例県議会・本会議
給与改定議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第2号から第5号、給与改定議案について知事ならびに関係部局長に質問します。
知事に質問します。今回の給与削減は、民主党野田内閣のもとで昨年2月に、民自公の談合による議員立法で、わずか1日の審議で強行された国家公務員給与の平均7.8%削減を地方自治体にも押し付けようとするものであります。この問題は、労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度、地方にあっては人事委員会勧告制度を無視する憲法違反ともいうべきものではないでしょうか。また、地方交付税の一方的な削減は、地方固有の財源に対する攻撃であり、地方自治を否定するものと言わなければなりません。大幅な給与の削減は県職員・地方公務員の生活を脅かすとともに、地域経済にも打撃を与えます。復興に献身的に取り組んでいる県職員に対して賃金引き下げで対応することは許されない冷たい仕打ちというべきやり方ではないでしょうか。大震災復興のためと言いながら、復興予算をすでに3兆6千億円も被災地以外に流用していることこそ正すべきではないでしょうか。くらしと経済の問題では、デフレ不況の打開が大きな課題です。デフレ不況の最大の原因は10年以上にわたって労働者の賃金が下がり続け、国民の所得が減少したことだと思います。こうした時に、公務員賃金を大幅に引き下げることは、デフレ不況の打開にも逆行するのではないでしょうか。こうした給与削減に関する問題について、知事の具体的な認識を伺います。給与改定による県職員と地域経済への具体的な影響額も示していただきたい。また、副知事が県経営者協会を訪ねて、民間企業では賃金の引き下げを行わないよう要請しました。県に準拠してきた各団体にも今回の賃下げは波及させるべきではないと考えますがどうなっているでしょうか。
【達増知事】
職員給与の減額に関する認識について。今年度の地方財政対策において、地方公務員給与の減額を前提に地方交付税が削減されたことについては、地方固有の財源である地方交付税を給与引き下げの要請手段として用いたと受け止めざるを得ず、本来条例により自主的に決定されるべき給与について、地方のこれまでの行財政改革の努力を考慮することなく、一方的に引き下げ要請が行われたことは地方自治の根幹に関わる大きな問題だと認識している。一方この措置は今年度限りとはいえ、その影響はきわめて大きいものであり、県民サービスを安定的に継続するためには、今年度において、この歳入減にしっかりと対応していかなければならず、人件費も含めた財源確保の努力を行っていく必要があると判断した。
県職員と地域経済への影響について。県職員にかかる給与減額の総額は、普通会計で49億9千万円程度、個々の職員についてモデル的に試算すると、行政職の25歳主事級の職員で7万6千円程度、45歳主任主査級の職員で25万1千円程度、54歳総括課長級の職員で47万6千円程度の減となる。この減額の地域経済に対する波及効果については、産業連関表を用いて計算した場合78億円程度と見込まれる。
なお今回の措置は、地方交付税の削減にともない、本県の財政状況等を踏まえたものであり、県に準拠した給与体系となっている団体も含め、民間従業者の方々の給与が県に追随して下がることのないよう配慮する必要がある。そのためにも先般、県経営者協会に特段の配慮をお願いしたところであり、また今般の職員給与の減額を背景に、県の事務事業の相手方となる団体に対する補助金・委託料等を減額するようなことは行わないこととしている。
【斉藤議員】
総務部長に質問します。一方的な給与削減を押し付ける地方交付税の削減額、義務教育費国庫負担金の削減はどうなっているでしょうか。また、削減額の一部が「地域の元気づくり推進費」として交付税に算定されますがその見込み額はどうなっているでしょうか。給与削減について、全国の都道府県の動向、東北6県の対応と動向はどうなっているでしょうか。復興のために、任期付職員を採用していますが、こうした任期付職員まで給与削減の対象とすべきではないと思いますが、いかがでしょうか。任期付職員の状況を含め示していただきたい。
【総務部長】
給与削減にともなう地方交付税等の影響額について。地方交付税は74億8千万円、義務教育費国庫負担金は8億6千万円の減額を見込んでいる。地域の元気づくり推進費は22億6千万円が措置されるものと見込んでいる。
全国の動向だが、総務省が行った地方公共団体における給与減額措置の取り組み状況調査によると、6月13日公表現在で、47都道府県中38団体が給与減額措置を行うこととし、職員団体等と協議中または協議を終結し、うち8団体が議会に関係条例案を提出している。東北6県の対応状況は、青森・宮城が職員団体との協議を終結し、すでに給与減額措置を行う関係条例案を6月議会に提出しており、秋田・福島・山形についても、給与減額措置を行う方向で職員団体と協議または調整を進めていると聞いている。
任期付き職員への対応について。本県に任用されている一般的任期付き職員は、4月2日現在で255人となっている。任期付き職員については、震災復興のため全国から熱意をもって応募いただいているところであり、給与を減額することは心情的に心苦しい部分もあるが、一方で任期の定めはあるものの、我々と同じ県の一般職員であり、同じ仕事をし同じ給与体系の中にあることから、今回の給与減額措置について差異を設けることは難しいと考えている。
【斉藤議員】
政策地域部長に質問します。県職員の給与削減は、平成11年以来15年連続となります。その総額は年間ベースで309億8400万円に及びます。その地域経済への波及効果はどうなるでしょうか。県内市町村の対応状況はどうなっているでしょうか。
【政策地域部長】
平成11年度からの給与の減少額である309億8400万円をベースに、産業連関表を用いて波及効果を試算すると、488億円程度と見込まれている。
市町村の給与削減の対応状況だが、6月20日現在で22市町村が平成25年度の給与減額措置の実施を決定または実施する方向であり、5市町村が給与減額措置を実施しない方向、6市町村が検討中と聞いている。
【斉藤議員】
医療局長に質問します。医療局職員の対応はどうなるでしょうか。削減するとすれば総額いくらの削減となるでしょうか。医師は対象としないとのことですが、民間との給与水準の比較はどうなっているでしょうか。看護師不足も深刻です。岩手医科大学では昨年度の期末勤勉手当の引き下げも行わず、退職金の引き下げも、今回の給与削減も県に準拠しないとしています。岩手医大の看護師との比較はどうなるでしょうか。看護師も給与削減の対象から外すべきではないでしょうか。看護師の削減分の総額はどうなっているでしょうか。看護師の給与は削減する一方で看護師の採用は減少しています。中央病院の看護師を14人増員するという県議会での答弁は実現しているのでしょうか。月9日夜勤や朝5時出勤など厳しい労働条件のもと、給与削減ではなく、思い切った看護師の増員こそ実現すべきと考えますがいかがでしょうか。
【医療局長】
医療局の対応だが、医療局職員の給与は、医療局職員の給与の種類および基準を定める条例により、県の一般職の職員の給与の額を基準とし、企業の特殊性および実態を考慮して定めることとされており、医療局の職員も県政運営の一翼を担っていることなどを総合的に勘案して、原則として知事部局と同様に対応したいと考えている。医師および歯科医師については、県立病院における医師不足が続く中にあり、医師の確保が最重要課題となっていることから、給与の減額支給措置を実施しない考えでいる。これによる医療局における給与の減少額は、7億2600万円程度と見込んでいる。
医師の民間との給与水準の比較だが、県立病院に勤務する医師の平均給与月額は、平成23年度決算では、期末勤勉手当を除き134万7786円となっており、県人事委員会による平成24年度職種別民間給与実態調査によれば、県内の民間医療機関に勤務する医師の平均給与月額は一時金を除き123万4651円となっている。
看護師についてだが、県立病院に勤務する看護師の平均給与月額は、平成23年度決算では期末勤勉手当を除き36万3699円となっているが、岩手医大に勤務する看護師の給与水準については承知していない。また看護師も給与削減の対象外にすべきとの指摘があった。病院事業を行っていく上で、看護師の確保は重要な課題ではあるが、現時点では、通常の採用試験において、必要な人員の確保が可能と見込まれるなど、医師とは異なる状況にあることも勘案し、今回看護師については給与減額措置の対象に含める考えであり、その給与の減少額は4億9700万円程度と見込んでいる。
中央病院の看護師の増員についてだが、4月からの14名の増員予定にたいし、1名が採用を辞退したため13名を増員したところであり、現在行っている職員の特別募集により欠員の解消を図っていく。また県立病院の看護師の配置人員については、診療報酬における入院基本料の算定に必要な人員の確保を前提としながら、患者数の動向や看護必要度など、病棟ごとの業務状況等を踏まえ措置している。
【斉藤議員】
人事委員会委員長に質問します。今回の国による一方的な地方交付税の削減による県職員の給与削減のやり方は、人事委員会制度を無視するものと考えますが、労働基本権制約の代償措置としての人事委員会勧告制度をどうとらえ、今回の国による措置をどう受け止めているでしょうか。今回の給与削減が実行されれば、民間給与と比べても大幅に低くなると思いますが、人事委員会として今年勧告ができるのでしょうか。人事委員会ではどう議論されたでしょうか。
【人事委員会委員長】
人事委員会勧告制度について。今回の措置は、勧告制度の趣旨に反するものであると認識しているが、本委員会としては、これまでと変わりなく勧告制度は労働基本権制約の代償措置として、本来あるべき適正な給与水準を示すことにより、職員の適正な処遇を確保することを目的とするものであり、地方公務員法上の給与決定の諸原則にしたがい、必要な勧告および報告を行うものであるととらえている。
今回の国による措置について。条例案に対する意見で述べている通り、今回の措置は、東日本大震災を契機とした国からの要請や地方交付税等の減額をはじめ、諸般の情勢に鑑み、特例的な措置によらざるを得なかったものと考えるが、地方交付税等を国が政策目的達成のための手段として用いることは誠に遺憾であると考えている。
今回の措置が実施された場合の人事委員会勧告について。現在、職種別民間給与実態調査を進めているところであり、その結果を踏まえ、これまで通り人事委員会として勧告の内容を検討していきたいと考えている。
人事委員会における議論について。議論の中では、条例案に対する意見で述べている内容のほか、国の関わり方については、地方におけるこれまでの行財政改革の努力や経緯を考慮しない一方的な要請、あるいは実質的な強制ではないかという意見や、地方自治の本旨に反し地方分権の流れに逆行するものではないかなどという意見があったところである。
≪再質問≫
【斉藤議員】
かなり具体的な問題を指摘して知事の認識を問うたが、例えば、いま我々は本当に全力で取り組んでいる。全国から150人とか500人を超える規模で応援を受け、それでも不足している。不足している中で、今まで以上の奮闘をしている県職員に賃金引き下げで対応するということは、血も涙もないやり方ではないか。復興に取り組む県職員にたいして、どういうメッセージを知事は出しているか。
アベノミクスでデフレ不況打開と言っているが、国民の所得を増やすようなやり方だったらこれに逆行するのではないか。言っていることとやっていることが違うのではないか。こういう点でも愚策だと思うがいかがか。
戦後、こういう形で人事委員会勧告制度を無視して、賃金削減を交付税削減で押し付けるやり方はなかったと思うが、前代未聞のやり方だったと思うが、その点についてもお聞きする。
【達増知事】
全国からの応援もいただきながら復興に取り組んでいる中で、私から職員団体の代表にたいしても、先ほどの答弁で述べたような、今回の国からの措置が地方財政対策において地方公務員給与の減額を前提に地方交付税が削減されたということで、地方固有の財源である地方交付税を給与引き下げの要請手段として用いたということ、地方のこれまでの行財政改革の努力を考慮することなく一方的に引き下げ要請が行われたということで、地方自治の根幹に関わる大きな問題であるという認識を伝えた。そして県民サービスを安定的に継続するためには、今年度において、この歳入減にしっかり対応しなければならず、人件費も含めた財源確保の努力を行っていく必要があると判断したということも伝え、それが苦渋の決断だったということを伝えた。また、以上のような趣旨のことは、記者会見を通じて私から職員に対しての気持ちだということで、公にしたところでもある。
国民の所得を増やす必要についてはその通りであり、NHKの朝ドラであまちゃんが放送されているが、地域資源を発掘、拾ったウニをさらに弁当にして鉄道の中で販売、6次産業化、琥珀のようなものもまさに発掘し磨き上げ、そして商品化、観光にもつなげていく、そうした地域の現場から国民の所得を増やしていくような、いわば「アマノミクス」というようなものが求められていると思う。
【斉藤議員】
交付税の削減は約83億円で、地域づくり推進費が23億円弱なので実質60億円の削減と。50億円余の賃金削減ということなので、それでもまだ足りないということにはなると思うが、最大限今回賃金削減を理由とした交付税の削減については、地域づくり推進費を含めて補てんをすべきだと思う。
任期付き職員は255人と。これも復興に取り組む職員である。任期付き職員というのは基本的に3年である。最長5年まで延長できる。実は任期付き職員は、今回の交付税削減の算定に入っていないはずである。3年ないしは5年という短い期間の中で、途中で賃金削減するということを示さないで採用した。少なくとも任期付き職員というのは、こういう突発的な一時的な賃金削減の対象にすべきではないと思うがいかがか。
【総務部長】
地域の元気づくり推進費20億円余だが、これをできるだけ当初予算で組んでいる県単事業等も活用し、負担をかけるような形にならないように努めていきたい。
任期付き職員だが、交付税の削減については、ご指摘の通り任期付き職員の給与分について、考慮した形になっているものではなく、交付税は標準的な職員構成や給与水準により算定されるものとなっている。
【斉藤議員】
平成11年以来、15年連続の賃金引き下げの年間ベースの減額が309億8400万円と。これは県庁職員一人当たり平均で122万円である。122万円の減少というのは、これは職員給与のどのぐらいの比率を占めるのか。
488億円という経済波及効果が示された。改めて調べてみたが、実は309億円というのには、医療局・企業局の職員の減額分は入っていない。おそらくこれは350億円とか400億円近い削減額になり、地域経済波及効果はもっと大きくなると思うが、そういう実態はもっと大きな規模の削減額になるのではないか。
【政策地域部長】
11年度以降の給与減少額の一人当たりの影響額といったような話もあったが、申し訳ないが資料を持ち合わせていないのでご了承願いたい。
11年度以降総額で309億円余の減少額になっているが、これは前提としては、普通会計ベースの数値であるので、それ以外の部分も含めると当然これよりは大きな数字になってくるものと考えている。
【斉藤議員】
医師は対象にしないと。看護師も基本給では東北各県の看護師より基本給は低い。そして今深刻な看護師不足なので、本当に看護師の賃金引き下げはやるべきでない。
【医療局長】
基本的なスタンスとしては、医療局職員も県政運営の一翼を担っているということなどを総合的に勘案し、原則として知事部局と同様の対応をしたいという考えだが、その中において、医師については、慢性的な医師不足が続いており、地域医療を守るためにやはり特例措置としてその確保を図る必要があるということでの特例措置と考えている。看護師については、他の医療職種と同様に、医師とは採用の方法が違い、試験による採用で行っているが、現時点では試験において必要な人員の確保が可能と見込まれるなど、医師とは状況が異なるということから、今回は減額措置の対象に含める考えとした。
【斉藤議員】
意見を見させていただいたが、人事委員会勧告制度の趣旨に反する、早期に適正な運用がなされるようにと。これは人事委員会としては不本意だと受け止めていいのか。人事委員会としては賛成できないがやむを得ないというニュアンスなのか。
そして改めて知事に、この人事委員会の意見をどのように受け止めているか。
【達増知事】
人事委員会の意見については誠実に受け止めさせていただきたい。
【人事委員会委員長】
職員の給与については、地方公務員法の諸原則にしたがい定めるようにというように定められている。またそれに基づき、労働基本権制約の代償措置として、中立公正な立場で人事委員会としては職員のあるべき給与水準を報告または勧告しているところである。それに基づき、最終的には条例提案権者である知事が、諸事情を勘案した上で給与決定の必要性を判断し、なおかつ最終的に議会において決定される仕組みになっている。人事委員会の使命としては、我々が出した勧告案ということはできるだけ最大限に尊重されて執行していただきたいと考えており、今回の国の措置を契機としたこのような事態については遺憾であると考えている。