2013年7月8日 商工文教委員会
「青年の生活と雇用を守る措置を求める請願」に関する質疑大要
・最低賃金引き上げと中小企業支援について
【斉藤委員】
青年の雇用、生活の問題は、ある意味で今の矛盾の集中点になっていると思う。
地域別最低賃金の引き上げは、今までも県議会で採択されてきた経過があり、岩手は653円と。この賃金では生活できない。自立できない。そういう意味では、最低賃金というのは、青年が被害が一番大きく、青年を含めて最賃の引き上げというのは切実に共通な要求になっているのではないか。
最低賃金引き上げのための中小企業支援策の抜本的強化、政策的にはここが鍵だと思う。諸外国の動向は把握されているか。アメリカも中小企業に対する抜本的支援をやり最低賃金を上げた。そしたら景気が回復した、中小企業も助かったと。EUでは、それ以上の中小企業支援策をやり、だいたいここは自給1000円以上である。それなりの中小企業支援策をやって、労賃が上がることが地域の経済・景気を活性化させる力になっているということで、欧米の動向を把握しているか。
それから、政府も検討チームを作り中小企業支援策を検討していると。検討の中身、中間報告などが出ているのか。どういうことが検討されているか。
【労働課長】
中小企業支援について、国の方で検討したアウトプットは施策として出ており、それが中小企業の相談支援事業とか業務改善といったことになっている。省庁とすれば、厚労省と経産省の2つで検討してこの施策を打ち出したとうかがっている。
他国の最低賃金の状況だが、平成23年の数字だが、フランスでは1015円、アメリカ586円、カナダ752円以上、イギリス658円というような金額になっている。こうした最低賃金とあわせ、さまざま中小企業に対する支援措置も講じて所要の効果を上げているという報道を読んだことがある。アメリカについては、日本のようにバラバラではなく、連邦最低賃金という形で国として一律になっているとお聞きしている。
【斉藤委員】
政府の検討結果がその程度だというところに日本の中小企業対策の貧困さを感じる。だいたい中小企業対策の予算が2000億円いかない。全国の事業者の99%を占めるといわれ、労働者の7割、岩手だったら9割近いのではないか。全国の労働者・地域経済を支えているのは中小企業である。先月、経済三団体により中小企業憲章が閣議決定されて3周年ということで集まりがあり、私たちもご案内されてきたが、そこでも、中小企業は日本経済の根幹だと位置づけされているが予算が全然ともなっていないと。アメリカは、中小企業の支援策をやって今は853円ぐらいまで引き上げている。引き上げたことにより景気が良くなった。これがアメリカの教訓である。EUは先ほどフランスが紹介されたようにほとんど1000円を超えており、アメリカ以上の支援策を当然のようにやっている。いわば中小企業支援というのが最低賃金を引き上げる上では前提条件である。それは世界の常識である。請願にこのように提起されたのはそういう趣旨で、最低賃金引き上げと中小企業支援はセットだということで、ぜひ国に中小企業支援策の抜本的強化を強く求めていく必要がある。
・雇用の確保、非正規雇用の正規化、待遇の改善について
【斉藤委員】
雇用の確保、非正規雇用の正規化、待遇の改善の問題で、岩手県の実態も示された。実は就業構造基本調査の速報で、岩手県の非正規雇用は37.5%である。5年前は33.5%だった。労働者は54万3900人から51万4400人に減った。減った中で、正規の労働者は36万1100人から32万1400人に減っている。ところが非正規は、18万2400人から19万3000人に増えている。労働者全体は減ったが非正規は増えている。率も増えた。これは全体だが、青年の場合は非正規が5割を超えている。本当に働いても自立ができない、低賃金に置かれている。こういう状況が今の青年の深刻な実態ではないのか。
安定した雇用、これを行政の支援で強めていく必要があるのではないか。特に、保育士不足、保育士の免許を持っている人はたくさんいるのに、あまりにも低賃金で、臨時が5割を超える中で、保育士になれない。保育士が足りないから、待機児童があっても解消されない。こういうのは、待遇改善をして、しっかり保育士を増やせば、労働者にとっても、子どもをもつ家庭にとっても改善されるのではないか。介護労働というのも離職率が14%とか18%とか言われる。これも増えている職種だが、待遇が悪いために、寿退社といえば男性が辞める。一家を支えていけないので。ここの待遇改善もしっかりやっていかないと、人の面倒を看る専門的な力量が問われる職種で、そういう仕事にふさわしい待遇というのを改善していく必要があるのではないか。
山形県が大変良い施策をした。正規雇用を増やしたら1人20万円補助するというので、特に介護分野でこの活用が進んでいるというのが先日NHKのニュースで紹介された。行政が正規雇用化を進めるという点で、一歩踏み出した、おそらく全国初めての施策ではないかと思うが、この正規雇用化を行政も知恵を出してほしいし、関係機関にも働きかけるということは必要ではないのか。
先ほど、長時間労働を計算してみたら、年間で1904時間である。だいたい政府は1800時間を目標にしている。平均して100時間。実は30代40代というのは一番労働時間が長い。子育てする時期が一番月40時間とか50時間となっている。そういう意味でいけば、こういう青年層の状況を改善すれば、雇用を逆に増やせる。そういうことに知恵を出して、この対策を進めていく必要があるのではないか。県行政としてこうした実態をどう把握し、この間どういう取り組みをしてきたのか。
【雇用対策労働室長】
非正規はたしかに増えており、その中身を見ると、派遣社員自身は9000人から7000人と減っているが、契約社員が増えており、25500人から37100人という形で増えている。派遣の方も正規の方も減って、中間的なところが増えているのが特徴かなと思っている。ただ明らかに期限を定めない雇用、正規の雇用が必要だということで、正規雇用を増やすために、県と労働局や市町村と共同し、各経営団体に陳情・要望等をしている。今年度も実施したところである。
山形の事例だが、国においては、有期社員3年間未満の方については、国がキャリアアップ助成という形で、山形県は3年を超えて5年のところ、5年になると無期になるので、その穴を埋める形でやったと聞いている。県としてはその動向等は注視していきたい。
現実につくっている事業復興型補助金を、できる限り安定的な補助にするということで考えているので、そういう形で場をつくっていきたい。また反対に若年者そのものについては、能力開発等も必要ということもあるので、橋渡し訓練などといった形で助成していくといったことが鍵だと思っている。
ある程度有効求人倍率が1近くなってきて、雇用の質を上げていくのが課題だと思っている。
・公契約条例の早期制定について
【斉藤委員】
これは本当に早くやってほしい。先ほどの説明では、第2回の打ち合わせをやった、あり方検討チームをつくったと、内部の検討にとどまっている。当事者がいるわけだから、ワーキンググループとか懇談会をやって、もっと公契約に関わる人たちの意見・要望を聞きながら進めるということが必要だと思う。さいわい県議会で請願が採択されて、県レベルで条例制定すれば全国初となる。そういう意気込みをもってやってほしい。
やはり公共事業を受けても、4次5次になると、生活費を下がるような労賃になってしまう。公契約条例で末端まで労賃を補償せよというのが公契約条例の核心中の核心である。それで下支えをしていく。やれば、下請労働者の労賃も最低限補償されていく。そういう意味でいくと、全国に先駆けた立派な条例をつくっていくという意気込みで、その際に、ぜひ関係団体との意見交換、ワーキンググループを一緒につくっていくということをやっていく必要があるのではないか。少なくとも1年ぐらいを目途に作り上げていくということが必要だと思うがいかがか。
【労働課長】
公契約条例の制定については、これまでも県内の労働団体の方々から何度か要請あったところだが、具体的な制度設計にあたり、労働団体の方、使用者団体の方、さまざまな立場の方からご意見をしっかり聞かなくてはならないものと考えている。先ほどは庁内の検討組織の話をさせていただいたが、労使の関係団体の皆さまからも意見徴収は必要と考えている。どのような形でやったらいいのか、きちんと考えたい。
公契約条例の制定・施行は、一定程度社会的な影響があるものと見込んでおり、これを県の一方的な考え方でとり進めるというよりは、労働団体の方々、使用者団体の方々、さまざまな立場の方から十分に意見をうかがいながら進めていくということが大切だと考えている。そういう意見をうかがう中で、条例の制定事務についても検討していきたい。
【斉藤委員】
公契約条例というのは、ILO条約にちゃんと規定された国際的条約、そういうレベル・水準のものである。これが日本になかったということがあまりにも遅れているという話である。そういう意味では、日本全体が遅れているから県議会の請願採択が画期的だったのだが、決して途方もないということをやろうということではなく、当たり前のことをやるということである。
公契約条例はやはり意気込みが大事である。全国に先駆けて立派なものを、行政だけではない、各関係者・団体の英知も協力も得ながらやっていくということで部長の意気込みをお聞きしたい。
【商工労働観光部長】
公契約条例の今後の考え方だが、公の契約である、あるいは民間の契約であるを問わず、契約の履行にあたっては、労働者の賃金等の労働条件が適正な水準に確保されるということが重要なことと認識している。こうした適正な賃金水準の確保に向けた方策の1つと考えている。
議会での請願採択を受け、条例制定に向けた検討を鋭意進めている。まだ検討・整理されるべき課題は多々あるようなので、条例制定にあたっては、十分な調査・研究をしながら慎重に進めていきたい。