2013年7月8日 商工文教委員会
「学生の学費負担軽減、奨学金の拡充についての請願」に関する質疑大要
・学費、奨学金の問題について
【斉藤委員】
県立大学の場合、初年度納入金、入学金・授業料を含めるとどのぐらいになるのか。
県立大学で奨学金を借りている学生はどのぐらいいるか。授業料減免、滞納という状況があれば示していただきたい。
【管理課長】
入学金だが、岩手県内の学生は22万5600円、他県の学生は33万8400円となっている。
県立大学の授業料の減免については、平成19年度までは当該年度の授業料収入の5%の枠内で授業料の免除を行ってきたが、平成20年度に、経済的な理由で就学が困難な学生を支援するために、追加免除枠として2000万円増額し緊急支援策を行ってきた。さらに平成21年度からは、授業料の免除額、授業料収入の5%から7%に拡大しており、さらに22年度においては、不景気等の影響による申請者の増加に対応するため、新たに3分の1の免除を制度化している。さらに平成23年度からは、被災した学生にたいし、経済的支援として授業料の全額免除を行っている。
県立大学の日本学生支援機構からの奨学金の状況は、昨年8月現在の数字で、貸与を受けている奨学生は、無利子が512名、上限3%の有利子が805名、併用型が149名ということで1466名、学生総数の57.2%が貸与を受けている。
【斉藤委員】
初年度納入金は76万円余になる。県外の学生は80万円を超えると。私が大学に入ったのは1970年だったが、ひと月1000円、12000円だった。隔世の感がある。実は奨学金問題の最大の根本は、高い学費である。こんな高い学費だから、今親の仕送りはどんどん減っている。奨学金を借りて大学に行かざるを得ない。根本的には、高い学費を改善しないといけない。
実は高等教育無償化という国際人権規約第2条C項、政府が留保していたのをやっと留保撤回した。いわば、大学から義務教育まで、授業料は基本的に無償化するという、この国際条約の留保を撤回したので、この流れに沿うという方向に今なっているので、高校授業料の一部無償化というのはその流れの1つだったと。大学もそういう方向に世界は行っている。これは歴史の流れであり時代の流れだと思う。ただ、標準額そのものが引き下がらないと下がらないので、そういうことを、県教委としても総務部としても強く求めていくべきではないかと思うが、そうした流れをどう受け止めているか。
【教育長】
岩手の子どもたちが将来岩手を担う、それは大学・高校などいろんな面で教育を受ける。現在は、高校までは一部無償化ということで、授業料不徴収ということになる。これ自体いろんな議論がなされているが、現状はそういうことで安定はしてきている。一方で、やはり将来を担う子どもたち、どういった投資を行って、将来を支えてもらうか、そのために費用負担はどうあるべきかということについては、いろんな意味で国レベルでの議論が必要かと思っているので、我々教育を担当する部門としては、やはり子どもたちに対する予算の割合が増えて、子どもたちが安心して学べる環境が望ましいと思っているのでそういう方向を望んでいる。
【斉藤委員】
欧州は、高等教育、大学まで基本的に無償である。考え方が違う。子どもたちの教育は、将来の投資という考え方で、社会が支えて当たり前と。日本の場合は、受益者負担主義である。大学に行くのは自分の利益のためだと。それで1970年代から授業料と入学金が毎年交互に値上げすると。私は1971年に授業料値上げ反対闘争をやった。このときから始まっている。その時は阻止したのだが。当時私は、大学の授業料が20万円になると言って驚かれた。今は50万円である。普通の人は教育ローンを受けないと払えないということになってしまった。
国際人権規約第13条2項、b項c項、これが高等教育の無償化を含めた斬新的無償化を定めた条約で、留保撤回で日本もそれに賛成するという立場を今とっているので、ぜひこういう声をあげるようにやっていただきたい。
奨学金の問題で、県立大学の場合、1466人57.2%が活用していると。ここにも生活苦が反映されている。だいたい月10万円を4年間借りたら480万円の借金、7割方の人が有利子で、結局600万円ぐらいになる。私たち働いている世代でも、600万円の借金を抱えたら返せるか不安である。だいたい大学を卒業して、初任給20万円いかない。これを20年間で返すとなっているが、青年の2人に1人が非正規、安定した仕事に就けない。だから返せない。そして滞納と。いま33万人の滞納で876億円の滞納額と。これが大変だということで、学生支援機構は、回収をしている。保証人からも本人からも取り立てる。延滞すれば、信用機関に情報を提供、ブラックリスト、そして回収機構に回される。これだったらサラ金である。奨学金の制度は今サラ金化してしまっている。それが今大きな社会問題になった。奨学金対策全国会議というのが弁護士中心に作られ、地方紙の各紙でも国会でもこの問題は取り上げられている。文科省もこの問題について、学生に対する経済的支援について検討が始まったが、その状況を把握しているか。
【堀江教育次長】
詳しい情報については、こちらでは承知していない。
【斉藤委員】
中間まとめ案というのが出されて、これは夏までに中間まとめを出すということである。
いま延滞すると10%の高利貸しである。あっという間に倍に増えてしまいサラ金地獄である。それを5%にしようという提案がされている。わたしは5%の利息でも払いきれないと思う。
実はいま、奨学金の中に、震災特例奨学金というのがある。岩手育英奨学会、この奨学金の制度、利用者はどうなっているか。
【堀江教育次長】
財団法人・岩手育英奨学会が高校生を対象にしている事業の状況だが、まずタイプAとして、平成17年度から国の事業を移管する形で引き継いでいるもので、県内に有する子どもさんで、高校等の就学が困難な方々に貸与するものであり、ある程度の学力がある方々に対象として一定額、例えば公立だと、自宅から通う生徒には月額18000円、自宅外では23000円などという形で貸与するものである。
もともと育英奨学会で独自に行っていたタイプBは、さらに中学時点での成績が優秀な生徒・児童を対象に行うものであり、この方々には、一時金として入学費に公立だと5万円を貸与。さらにその生徒の家庭の希望により4種類、15000円〜30000円までの中から選択していただきながら貸与する。
タイプCは、東日本大震災津波を受けて実施したものであり、今回の大震災津波により被災したことが原因で、例えば家族の方が亡くなった、あるいは家屋が全壊・半壊等したといったようなものに該当する生徒・児童を対象にして貸与するものであり、金額はタイプAと基本同じだが、高校卒業時あるいは就学時において、一定の所得がないということを確認した場合は、貸与した金額については全額免除となる。
【斉藤委員】
タイプCの震災特例、これは就学時、就職したときに、一定の所得がなければ免除される。年収300万円と聞いている。こういう奨学金制度にしなければいけないと思う。返せるだけの収入、安定した仕事に就くのであれば一定返せるだろうが、そうでない場合は免除すると。震災特例で導入された制度は、少なくとも当面、全体の奨学金制度に拡充すべき内容ではないか。実際に利用している人数も含め示していただきたい。
【堀江教育次長】
現時点での貸与者の数は、平成24年時点でタイプAが1950人、タイプBが94人、タイプCが186人の計1730人となっている。
タイプCについては、大震災津波で大きな被害を受けられたご家族の生徒・児童に対するものということで、このような免除も含めた対応をさせていただいているが、そもそも奨学金の考え方とすれば、学ぶ段階においてなかなか経済的な状況が苦しいといったときに支援をして学んでいただき、そしてその後に社会でご活躍いただいた中でお返しいただくという趣旨で始まったものと理解しており、もちろんいろんな状況は変わってきておりいろんなご家庭があるのは承知している。ケースによっては給付型の奨学金といったものも必要だとは思っているが、すべてにそういう形になるのが良いのかどうか、生徒・児童の社会での活躍ということを考えたときに、よく議論して検証しながら進めるべきではないかと感じている。
【斉藤委員】
認識がきわめて不十分である。諸外国の奨学金がどうなっているか分かるか。
【堀江教育次長】
諸外国の奨学金については承知していない。
【斉藤委員】
少なくとも欧州はほとんど給付制の奨学金である。授業料がほとんど無料で、奨学金が給付制なのである。日本の場合は、学費が高額、奨学金に7割は利子がついており二重の異常である。基本的には給付制の奨学金にすべきだと。ただ、当面有利子が7割を占めているという状況の中では、せめて無利子にすべきである。なぜこうなったかというと、奨学金が拡充されるときに、これは銀行・証券会社の資金を使った。そこを導入して枠を拡大したために、利息で返すということになってしまった。そういう意味で、国からの奨学金への財源を増やすべきだというのはそういう理由である。だいたい証券会社から借りて、ローンの教育ローンをやっているようなものである。3ヶ月すぎると延滞利息がつく。今の奨学金問題というのは文字通り異常な事態になっているのではないか。給付制奨学金を導入することは、かなり多くの方々の共通の要求になっていると思う。そして緊急の課題としては、有利子の奨学金を無利子にすると。
それと現実問題、返済できない方々が33万人876億円の滞納と。こういう実際に返せない方々に対する緊急対策が必要だと思う。例えば、返済猶予期間5年になっているが、5年を過ぎたらどうなるか。やはりこういう返済猶予期間5年ということではなく、延長する。また、延滞利息は10%から5%にしようとしているが、5%だって高利貸しである。こういう延滞利息は基本的にかけないとか減免するという制度を導入しなければこの問題は解決しないのではないか。奨学金滞納問題は新しい貧困化の問題、青年の未来を奪う問題である。だから、沖縄タイムスだとか京都新聞など地方紙がこの問題を取り上げて、県や府にたいし実態調査を求めている。そういう社会問題である。県が事業主体ということでなく、青年の未来に関わる問題としてこうした実態を把握して、やはり必要な対策を国に求めていく、県も講じていくということが必要ではないか。
【教育長】
震災特例の奨学金について次長が申し上げたが、あれは本県は実は「給付型奨学金を何とか作ってくれ」という要望をした。震災であれだけ大きな被害を受けた子どもたちなので。文科省もそのつもりで、一生懸命財務省と調整してくれたが、残念ながら財務省の理解が得られなかった、国全体の理解が得られなかった。ただ、文科省は、とは言いながら、実質的に給付型にすると。就学時・就職時に一定規模であれば返還の必要がないというレベルを上げ、実質的に給付型に近いものにした。ただ、文科省も給付型で要望して、東日本大震災津波というああいう現実がありながらなかなか国全体での理解が得られなかったと。それはやはり高等教育機関に進む子どもたちにたいして、国全体でどう支えるのか、そこまでの議論がなかなか理論突破できなかった。したがい、将来のわが国を担う子どもたち、特にその中で高等教育機関に進む子どもたち、進まない子どもたち、そういった中でどう社会全体で負担を分かち合い支援するのかという国民全体のコンセンサスが必要なんだろうと。そこで文科省が非常に苦労している。国の財政状況もある。したがい我々として、当面いま高等学校に進む子どもたちについて、何とか負担をいくらかでも軽減する方策を講じてほしいということを当面お願いしているわけですし、引き続いては、将来のある子どもたちについての負担を社会全体としてより分かち合ってほしいという要望を引き続き我々としてはやっていきたい。
【斉藤委員】
文科省自身も財務省に要望したが残念ながら予算化までいかなかった。しかし今教育長が述べたように、震災特例の奨学金は実質給付型で実現したと。風穴を開けたと思う。そういう意味では、1つ1つの段階で手立てをとりながら、給付制奨学金の道を開いていくと。
今度の請願は本当によく考えられた請願だと思う。給付制奨学金の創設を求めつつ、無利子の奨学金の枠を増やす、さらには返還が困難な返済額については、税控除ができるというのは実務的な話、これは税務課所管になると思うが、そういう具体的な軽減策、もう1つは、実際に滞納に陥った人たちの手立てをとらないとただ借金が増えるだけである。これは本当に早くやらないと、サラ金地獄にすでに陥っている。それへの具体的手立て、免除措置や債権の放棄などやらないと救われないと思う。
そういうことが今大きな社会問題になりつつあるので、ぜひこうした請願を契機に岩手県議会から大いに積極的な声を上げていくことが必要ではないか。