2013年7月9日 6月定例県議会・最終本会議
発議案第12号「TPP交渉参加からの即時撤退を求める意見書」に対する賛成討論


 日本共産党の斉藤信でございます。日本共産党を代表して、発議案第12号、TPP交渉参加からの即時撤退を求める意見書に賛成の討論を行います。
 そもそも、安倍首相によるTPP交渉参加表明は、昨年12月の総選挙での自民党の国民に対する公約に反する明白な公約違反でありました。自民党は総選挙の公約では、@政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する、A自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、B国民皆保険制度を守る、C食の安全安心の基準を守る、D国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、E政府調達・金融サービス等は、我が国の特性を踏まえる―の6項目を掲げていたのであります。
 重大なことは、その後のアメリカとの事前協議を通じて、公約違反の実態がいよいよ明らかになったことであります。4月12日にはアメリカとの事前協議「合意」を経て、4月下旬には、交渉11カ国すべての同意を取り付けるなど、交渉参加への道をしゃにむに突き進みました。
 安倍首相は、交渉参加の表明にあたって、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、国益にかなう最善の道を追及する」と述べました。しかし、アメリカとの事前協議では、コメ、乳製品、砂糖など、重要農産物の関税について、何一つ維持できるという保障を取ることができませんでした。その一方で、日本の交渉参加の条件とされた「入場料」と呼ばれる牛肉、自動車、保険の3分野でのアメリカの要求を、丸のみしたのであります。しかも、TPP交渉と並行して、自動車、保険、投資、知的財産、規格・基準、政府調達、競争政策、衛生植物検疫などの非関税措置の撤廃・緩和に向けた日米2国間協議を行い、TPP交渉の妥結までにまとめることを約束させられました。アメリカに続いて日本の交渉参加に同意したオーストラリアやニュージーランドも、全品目の「高い自由化の実現」こそ、参加条件だと念押しをしています。
 この間の交渉経過が示していることは、安倍首相の言う「強い交渉力」のかけらもないアメリカいいなりの姿であり、TPP交渉に参加すれば、農林水産物の関税撤廃が迫られ、我が国の農林漁業など「守るべきものが守れない」という実態ではないでしょうか。
 TPP交渉への参加は、岩手県の農林漁業の死活にかかわる問題です。岩手県の試算でもコメの生産額は50%、乳牛は100%、サケ・マスは57%減少し、農林水産額1015億円の生産額の減少、これは全体の生産額の33%におよぶものであります。その経済波及効果は1438億円に及ぶとしています。岩手の製造業の柱である食料品製造業、地域経済に与える影響も甚大です。東日本大震災の復興にも逆行します。被災地で復興に取り組んでいる漁協の組合長は、「国の支援を受けて復興しても、TPPでつぶされかねない」と厳しく指摘しています。
 政府の試算でも農業生産額は3兆円も減少し、食料自給率は27%まで低下します。農業だけではなく、全産業で10.5兆円も生産が減少し、190万人の失業者が出るとされているのであります。
 非関税障壁の撤廃では、混合診療や医療への株式会社の参入、公共事業の「地元優先発注」の撤廃、食品の安全基準や自動車排ガス規制の大幅な緩和などが標的とされています。
 地球規模で食料不足が大問題になっているときに、自国の農業をこわし、食料を外国に頼る国にする、そして、雇用も地域経済も破壊する―こうした亡国への道を許してはなりません。
 安倍首相のTPP交渉参加表明から、アメリカとの事前協議、各国との協議の経過が示すことは、アメリカいいなりに、アメリカの要求を丸のみしている日本政府のあまりにもみじめな姿ではないでしょうか。「守るべきものが守れない」のがTPP交渉だということがはっきりしてきたのではないでしょうか。
 岩手県議会は、3月県議会の最終日に、公明党1人の反対だけで、「TPP交渉参加の撤回を求める意見書」を採択しました。この間の経過は、安倍内閣の公約違反がますます明確になるとともに、アメリカいいなりの交渉の実態であります。岩手県議会が、改めて「TPP交渉参加の撤回を求める」ことは当然のことであり、岩手県民の利益、岩手の農林漁業と地域経済の死活にかかわる重大な課題だと言わなければなりません。
 もし、この意見書に反対するというなら、TPP交渉参加撤回という3ヶ月前の立場を変えるものとして、県民の厳しい審判を受けざるを得ないものであります。
 国民に対する公約は、政党と政治家にとっては、いのちともいうべき大事なものであります。その公約、県民への約束をコロコロ変える政党・政治家は、県民の厳しい審判を受けざるを得ないものです。
 今回の「TPP交渉参加からの即時撤退を求める意見書」の提案は、単なる手続きの問題ではありません。この間の事前協議などの重大な情勢の変化に対応するものであります。岩手の農業と地域経済、県民のくらしといのちに関わる問題だということを重ねて強調して、私の賛成討論といたします。